1969年から1975年にかけて雑誌やオリジナルアンソロジーに発表されたギル・ハミルトン・シリーズの3つの中編と、ニーブン自身がSF推理小説について語った20枚程の「決定版SF探偵論」を併載した中編集です。
ノウン・スペース・シリーズに属するとされており、登場人物や設定の一部が関連しますが、各編の舞台は地球上なので、スペースオペラらしさはほとんどありません。ただ、第一話で主人公のギルが過去を回想するシーンは、彼がべルターだった時代の物語です。
原題からサイボーグ義手の主人公の話かと思っていたのですが、大間違い。まさか、3本目の腕とは。
舞台は2100年代前半。地球の人口は180億人を越え、過剰な人口を宇宙に送り出そうとしています。
移植医療が進んだことによって多くの人々が移植による健康回復を希望するようになったため臓器不足が深刻になっており、誘拐した人を解体して売り払う臓器密売が大きな問題になっています。
主人公は国連警察“ARM”の捜査官として、臓器密売の捜査、致命的な革新技術の監視、人口抑制関連法の徹底を任務としています。
第1話は自殺死体として発見された親友の死の真相を解明する話。
第2話は蘇生困難とされる冷凍睡眠者を臓器提供者とする法律の制定を巡る殺人事件。社会派です。
第3話は〈分子鎖〉で有名な発明家レイモンド・シンクレアが“星間ドライブ”を開発中に怪死した事件を解決する話。
人口過剰な世界で、移植臓器の確保が最優先されるようになった時に何が起こるかをベースにして、密室殺人などハードSF作家ニーブンならではのミステリが展開されます。
本作は移植臓器ドナーの問題を強調するために、クローン技術や人工臓器は脇役に追いやられていますが、巻末のエッセイ等でその問題に触れています。
当時は予想もできなかったiPS細胞の実現で全ての問題が解決すればよいのですが、おそらく、そこにもそれなりの問題が出てくるのでしょう。
70年代前半までに発表された作品群ですが、プラグに接続された人間、人体改造が当たり前になった世界など、70年代後半から爆発的に普及するアイデアの先駆的作品とも言えます。
ところで、第3話「腕」で、フィールド内の釣竿の先端部の挙動に問題があるような気がするのですが、どうでしょう?物理的状態が異なる空間の接合面には何が起こるのでしょうか?
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不完全な死体 (創元推理文庫 668-4) 文庫 – 1984/12/1
- 本の長さ345ページ
- 言語日本語
- 出版社東京創元社
- 発売日1984/12/1
- ISBN-104488668046
- ISBN-13978-4488668044
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登録情報
- 出版社 : 東京創元社 (1984/12/1)
- 発売日 : 1984/12/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 345ページ
- ISBN-10 : 4488668046
- ISBN-13 : 978-4488668044
- Amazon 売れ筋ランキング: - 820,425位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2017年11月29日に日本でレビュー済み
2010年7月9日に日本でレビュー済み
この世界の医療技術では既に人体パーツの移植は当然のように行われているのだが、その提供者としてまず死刑囚が挙げられている。そこに描かれる図式は
移植を望む人が増える→死刑囚の体の有効利用
→需要の増加→死刑制度適用枠の拡大化
である。しかし本来の目的である抑止力が働き
→犯罪の減少→パーツ不足→臓器密売の横行
と、発展していく。
更には新しい法律により、密売業界が落ち込んだり盛んになったりする。これらの描写こそが、この小説の優れた点であると感じた。
臓器移植が珍しいものでなくなっていく今日において、この小説は既にあいまいな予言ではなく確実性をもった「予測」なのだ。
そして恋人役の「私にとって移植用の材料はただの道具なの。それがどこからどうやってくるのか知りたくないのよ。」という台詞。
納得できる、この物語のリアリティを支える台詞だと思う。
おそらくは本筋であろう主人公のESP能力や、トリックなどは、私にとっては特に重要ではなかった。SFでもミステリでもなく、しかし(私にしては珍しく)再読する気になるほど、この世界は魅力的なのである。
移植を望む人が増える→死刑囚の体の有効利用
→需要の増加→死刑制度適用枠の拡大化
である。しかし本来の目的である抑止力が働き
→犯罪の減少→パーツ不足→臓器密売の横行
と、発展していく。
更には新しい法律により、密売業界が落ち込んだり盛んになったりする。これらの描写こそが、この小説の優れた点であると感じた。
臓器移植が珍しいものでなくなっていく今日において、この小説は既にあいまいな予言ではなく確実性をもった「予測」なのだ。
そして恋人役の「私にとって移植用の材料はただの道具なの。それがどこからどうやってくるのか知りたくないのよ。」という台詞。
納得できる、この物語のリアリティを支える台詞だと思う。
おそらくは本筋であろう主人公のESP能力や、トリックなどは、私にとっては特に重要ではなかった。SFでもミステリでもなく、しかし(私にしては珍しく)再読する気になるほど、この世界は魅力的なのである。
2007年1月28日に日本でレビュー済み
・快楽による死
・不完全な死体
・腕
「パッチワーク・ガール」より年代記的には前の話で、キャラも複数が共通するが、
「パッチ〜」のトリックのヒントになるアイデアが既に語られているので、
こちらを読めば「パッチ〜」を読む必要はなくなるので、こっちだけ読んでおけばいい。
・不完全な死体
・腕
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