ディック作品でよく語られる事ですが、
身の回りの世界が実は作りモノで真実の世界が裏に隠れており何かのきっかけで突然それが見えて来る、それまでの世界がガラガラと音を立てて崩れてしまう「現実崩壊感覚」。
ディックならではのシュールな感覚です。(気持ち悪いと感じる人も多いが)
私も38年前からこの感覚が快感でディック・ファンを続けて居ます。
残念ながらこの作品では初めからネタバレしているので強烈な「現実崩壊感覚」はありませんが、そこが入門編たる所以でもあります。
他にも「人間そっくり」(電気掃除機の場合もある(笑))なのに殺人機械(又は宇宙人)だったりする、繰り返しディック作品に現れる「偽モノ」のモチーフ(映画「ターミネーター」で当たり前のものになっちゃいましたが)。
また物語の終盤に二重三重の「どんでん返し」が仕掛けられている事が多い(これも快感〜!)。
これらはディック作品の凄さ・面白さなのは確かなのですが。
それに対し、あまり触れられないフィリップ・K・ディックという作家の「優しさ」について語りたいと思います。
フィルは(敢えてフィルと呼びます)実生活と作品内で「優しさ」を実践しました。
「人間にとって一番大切な事は何なんだ?」を常に考え行動したフィルの自宅には食いっぱぐれたジャンキー達が何人も住み着いていた時代があったし(フィルが養っていた。その経験から「スキャナー・ダークリー」を書いたと言われる)、
また作品中の登場人物は(一部ですが)家族隣人友人にたいへん優しいのです。
「最後から二番目の真実」のニコラス・セントジェームスは本当に思い遣り深い優しい人物です。
この「優しさ」がフィルの最大のメッセージなのです。人間に出来て機械に出来ない事、他人を思いやること優しく接すること。
そんなフィリップ・K・ディックの「優しさ」に触れてみてください。
心が洗われます。
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最後から二番目の真実 (創元SF文庫 テ 1-18) 文庫 – 2007/5/1
- 本の長さ373ページ
- 言語日本語
- 出版社東京創元社
- 発売日2007/5/1
- ISBN-10448869618X
- ISBN-13978-4488696184
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登録情報
- 出版社 : 東京創元社 (2007/5/1)
- 発売日 : 2007/5/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 373ページ
- ISBN-10 : 448869618X
- ISBN-13 : 978-4488696184
- Amazon 売れ筋ランキング: - 500,648位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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上位レビュー、対象国: 日本
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2021年4月18日に日本でレビュー済み
この『最後から二番目の真実』は、ディックの数あるSF小説の中でも、簡単に説明できないほどストーリーが込み入っていて、しかし作品として体をなす範囲内にギリギリ収まっている作品だと思います。
お話の筋書きはこう。
…時は、近未来。大戦争によって地上は放射能で汚染され、人々は地下シェルター都市で暮らしています。
人々は、今も地上で戦争をつづけている政府から生活物資を供給してもらう代わりに、シェルター内の工場で兵士ロボットの部品を製造。ノルマの達成に日々喘いでおります。
ここで、組み立て作業において不可欠な存在のエンジニアが膵臓ガンで死亡。残された者たちは、彼の遺体を速攻で冷凍保存。エンジニアを蘇らすべく、人工膵臓を調達せんと危険を覚悟で地上へと赴く─。
これだけで充分普通のSFモノになっているのですが、さすがはディック、そのままストーリーはうまく転がりません。ここから話は二転三転…いや、九転十転くらいして、最後に主人公たちは地下シェルターに帰ってきます。
この間、様々な偽物が次々と登場。しまいには何が本物なのか、本当にわけがわからなくなってきます。
ディック本人も混乱しているかもしれません。
現実を一度疑いだしたら、全てが作り物かもしれないと、虚無におちいる。
虚無におちいると、昨日まで現実と思っていたこともそれは本当に現実なのかと疑念にくれる。
疑念にくれるうち、そもそも現実とは何か、さっぱりわからなくなってくる。
おまけに、私たち読者は読み進むうちに小説の最初の方は少しずつ忘却していってるわけで、何が本当で何が偽物なのか、本当に何が何だかわからなくなってきます。
もしもディックが読者の混乱までをも考慮した上でストーリーを十転させているなら、これはもう「あっぱれ」としか言いようがないです。
しかし、あらためて読み直してみると、いろんなアイデア(思いつき、妄想などなど)を無造作にぶち込んでいるだけなような気が…。
いやいや、やっばりある程度、確信犯的に混乱させているのでないか…。
結局、どっちかわからないです。
最近の映画やアニメで急展開に次ぐ急展開がありますが、それになれてしまっている令和・日本の若い人たちには、ディックっぽさ全開の九転十転も、そんなに違和感を感じないかもしれません。
ディックの名作を一通り読んでしまって少々駄作でも構わないから未読の作品を読んでみたいという方、あるいはディックっぽさだけでもいいから味わいたい〜という重症患者の方にオススメ。
はじめてディックを読む人は、読んじゃダメだよ。
お話の筋書きはこう。
…時は、近未来。大戦争によって地上は放射能で汚染され、人々は地下シェルター都市で暮らしています。
人々は、今も地上で戦争をつづけている政府から生活物資を供給してもらう代わりに、シェルター内の工場で兵士ロボットの部品を製造。ノルマの達成に日々喘いでおります。
ここで、組み立て作業において不可欠な存在のエンジニアが膵臓ガンで死亡。残された者たちは、彼の遺体を速攻で冷凍保存。エンジニアを蘇らすべく、人工膵臓を調達せんと危険を覚悟で地上へと赴く─。
これだけで充分普通のSFモノになっているのですが、さすがはディック、そのままストーリーはうまく転がりません。ここから話は二転三転…いや、九転十転くらいして、最後に主人公たちは地下シェルターに帰ってきます。
この間、様々な偽物が次々と登場。しまいには何が本物なのか、本当にわけがわからなくなってきます。
ディック本人も混乱しているかもしれません。
現実を一度疑いだしたら、全てが作り物かもしれないと、虚無におちいる。
虚無におちいると、昨日まで現実と思っていたこともそれは本当に現実なのかと疑念にくれる。
疑念にくれるうち、そもそも現実とは何か、さっぱりわからなくなってくる。
おまけに、私たち読者は読み進むうちに小説の最初の方は少しずつ忘却していってるわけで、何が本当で何が偽物なのか、本当に何が何だかわからなくなってきます。
もしもディックが読者の混乱までをも考慮した上でストーリーを十転させているなら、これはもう「あっぱれ」としか言いようがないです。
しかし、あらためて読み直してみると、いろんなアイデア(思いつき、妄想などなど)を無造作にぶち込んでいるだけなような気が…。
いやいや、やっばりある程度、確信犯的に混乱させているのでないか…。
結局、どっちかわからないです。
最近の映画やアニメで急展開に次ぐ急展開がありますが、それになれてしまっている令和・日本の若い人たちには、ディックっぽさ全開の九転十転も、そんなに違和感を感じないかもしれません。
ディックの名作を一通り読んでしまって少々駄作でも構わないから未読の作品を読んでみたいという方、あるいはディックっぽさだけでもいいから味わいたい〜という重症患者の方にオススメ。
はじめてディックを読む人は、読んじゃダメだよ。
2012年1月13日に日本でレビュー済み
ディックの本はほとんど読んだつもりでしたが、この本は未読でした。
それもそのはず、以前サンリオSF文庫で出ていて、永らく絶版になっていたタイトルだからです。
中身は新訳で、サンリオSF文庫版とは別ものだそうですが、今になってディックの長編を読むことができるとは思いもよらないことでした。
世界観や小道具もディックらしいものばかり、しかもそれらが濃縮されてぎゅっと詰まった感じです。シミュラクラ、ポスクレッド、模造品、コナプトなんていうおなじみのものがたっぷりと出てきます。ストーリーも面白くて、ディックファンなら絶対楽しめるはずです。ディック初心者の方にはお勧めしませんが、ファンの方には絶対に楽しめる内容だと思いますよ。
ひとつ気になったのは、誤字や言い回しがおかしなところが目立つことです。訳は悪くないと思うんですが、読めば簡単に見つけられるようなミスが何点かありますね。
それもそのはず、以前サンリオSF文庫で出ていて、永らく絶版になっていたタイトルだからです。
中身は新訳で、サンリオSF文庫版とは別ものだそうですが、今になってディックの長編を読むことができるとは思いもよらないことでした。
世界観や小道具もディックらしいものばかり、しかもそれらが濃縮されてぎゅっと詰まった感じです。シミュラクラ、ポスクレッド、模造品、コナプトなんていうおなじみのものがたっぷりと出てきます。ストーリーも面白くて、ディックファンなら絶対楽しめるはずです。ディック初心者の方にはお勧めしませんが、ファンの方には絶対に楽しめる内容だと思いますよ。
ひとつ気になったのは、誤字や言い回しがおかしなところが目立つことです。訳は悪くないと思うんですが、読めば簡単に見つけられるようなミスが何点かありますね。
2008年1月5日に日本でレビュー済み
1964年の作品。未来、地上で続く核戦争から逃れ、地下都市で何年も専制政治のもとで圧迫された生活を送りながらも地上に出られない人々の世界が舞台だが、実は地上では戦争などとうの昔に終わっていて、彼らの地下都市の上にはすでに復興された都市が栄えているというアイデアが抜群にいい。
キング・オブ・アイデアことディック、軸になる登場人物の数が多く、細かい設定を犠牲にしても読者を楽しませようびっくりさせてやろうという、エンターテナーぶりがスゴい。種明かし的なトリックにサスペンスSF屈指の決め技であるアレを持ってくるあたりはご愛嬌だが、地下でだまされ迫害されている人民よりもむしろ、地上でその罪の意識にもがき苦しんでいる支配者階級により焦点が当てられているところは敬服。「支配するものは、支配されているものによって、支配されているのだ」と書いたオーウェルの「1984年」の影響、そして事実60年代冷戦時の世界がその世界観に近づいていた、その下で、この作品にはアイディアだけに終わらないディックの真摯な世界への目線を感じる。特にマス・メディアへの批判は痛烈だ。
ディックによる、意外に正統派なディストピアものとして、特異な部分のある小説ではある。読み出したら止まらないスリリングなサスペンスものであるのはもちろんのことだが。
キング・オブ・アイデアことディック、軸になる登場人物の数が多く、細かい設定を犠牲にしても読者を楽しませようびっくりさせてやろうという、エンターテナーぶりがスゴい。種明かし的なトリックにサスペンスSF屈指の決め技であるアレを持ってくるあたりはご愛嬌だが、地下でだまされ迫害されている人民よりもむしろ、地上でその罪の意識にもがき苦しんでいる支配者階級により焦点が当てられているところは敬服。「支配するものは、支配されているものによって、支配されているのだ」と書いたオーウェルの「1984年」の影響、そして事実60年代冷戦時の世界がその世界観に近づいていた、その下で、この作品にはアイディアだけに終わらないディックの真摯な世界への目線を感じる。特にマス・メディアへの批判は痛烈だ。
ディックによる、意外に正統派なディストピアものとして、特異な部分のある小説ではある。読み出したら止まらないスリリングなサスペンスものであるのはもちろんのことだが。