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時間衝突 (創元推理文庫 697-1) 文庫 – 1989/12/1
考古学者のもとに届けられた、三百年前に撮られた一枚の写真には、現在の姿よりもはるかに古びた遺跡が写っていた。この遺跡は日々新しくなっている! 謎を解明すべく、彼らはタイムマシンで過去へ遡るが……。未来から過去へ流れる時間というアイデアに真正面から挑んだ、波瀾万丈、究極の時間SF。日本版序文=ブルース・スターリング/訳者あとがき=大森望
- 本の長さ326ページ
- 言語日本語
- 出版社東京創元社
- 発売日1989/12/1
- ISBN-104488697011
- ISBN-13978-4488697013
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登録情報
- 出版社 : 東京創元社 (1989/12/1)
- 発売日 : 1989/12/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 326ページ
- ISBN-10 : 4488697011
- ISBN-13 : 978-4488697013
- Amazon 売れ筋ランキング: - 254,118位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
SF翻訳家、書評家、アンソロジスト。
1961年2月2日、高知県高知市生まれ。高知市立追手前小学校、土佐中・高等学校を経て、京都大学文学部文学研究科卒(英語アメリカ文学専攻)。
1986年、マリオン・ジマー・ブラッドリー『惑星救出計画』でSF翻訳者デビュー。訳書は、バリントン・J・ベイリー『時間衝突』『ロボットの魂』(以上、創元SF文庫)、P・K・ディック『ザップ・ガン』、コニー・ウィリス『ドゥームズデイ・ブック』『航路』など約100冊。共訳書に劉慈欣『三体』三部作、『円』『球状閃電』『超新星紀元』、『カート・ヴォネガット全短篇』全4巻(以上、早川書房)など。
編訳書に、シオドア・スタージョン『不思議のひと触れ』『輝く断片』(河出文庫)、コニー・ウィリス『最後のウィネベーゴ』(河出書房新社)、『マーブル・アーチの風』、(早川書房)など。
スタージョン「ニュースの時間です」、テッド・チャン「商人と錬金術師の門」、劉慈欣「流浪地球」(共訳)の翻訳により、第36回、第40回、第54回星雲賞海外短編部門を受賞。ベイリー『時間衝突』、劉慈欣『三体』『三体Ⅱ 黒暗森林』で星雲賞海外長編部門受賞。
〈小説奇想天外〉の翻訳SF時評「海外SF問題相談室」を皮切りに、各紙誌にコラム・書評を連載。〈本の雑誌〉新刊SF時評は1990年から(二度の中断をはさみ)継続中。
2004年3月に豊崎由美との共著『文学賞メッタ斬り!』を刊行。
2008年からアンソロジストとしても活動。創元SF文庫『年刊日本SF傑作選』(日下三蔵と共編)とその後継の『ベストSF』(竹書房文庫)、『不思議の扉』(角川文庫)の各シリーズや、『ゼロ年代日本SFベスト集成』全2巻、『時間SF傑作選 ここがウィネトカなら、きみはジュディ』などのSFアンソロジーを編纂。責任編集の河出文庫『NOVA 書き下ろし日本SFコレクション』全10巻で、第34回日本SF大賞特別賞、第45回星雲賞自由部門受賞。
著書に『20世紀SF1000』、『新編 SF翻訳講座』、『50代からのアイドル入門』、『現代SF観光局』など。
1995年4月に開設したウェブサイト(http://www.asahi-net.or.jp/~KX3M-AB/)の日記は、その一部が、『狂乱西葛西日記20世紀remix SF&ミステリ業界ワルモノ交遊録』にまとめられている。
ツイッターのアカウント(@nzm)は、http://twitter.com/nzm/
日本推理作家協会、本格ミステリ作家クラブ、日本SF作家クラブ会員。「ゲンロン 大森望 SF創作講座」主任講師。
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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翻訳についてだが、多少物理学用語のわかりにくいところもみられたが、小説として非常にうまく訳してあるようだ。その点が、邦文で読む本書の面白さを引き出していると思う。この小説は理論物理学者には訳しにくいだろう(なにせ、根本の理論が矛盾しているので)。個人的には「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」に次ぐ SF だと感じた。
「時間」を扱った全くの異色作。
時間の流れが複数ある という設定ならそれこそいくらでもあるが、
本書のように「同じ空間を占めながら、異なったそれも逆行する時間」を
扱った作は本書以外にはあり得ないだろう。
主人公も複数いる。「タイタン」の世界で考古学を専攻にする学者。
地球外に居住地を定めた(中国人を模した)レトルトシティの反逆者。
タイタンの総統すら主人公的役割を果たす。
文章も読みやすく、設定も優れているし、人物描写も深い。
だが、表題の通り「素直には楽しめなかった」。
理由は、あまりにも「生臭く」人物を描写していること。
タイタンの総統=リムニッヒは、そのままヒトラーを模した人物。
その言葉たるや、まるで実際のヒトラーが言ったような「人種差別用語」のオンパレード。
純血だの、混血だの「真人」だのの言葉。
著者が実際に思っているかと錯覚してしまう。
レトルトシティの住民は「チンク」。そのまま中国人のこと。
この単語を目にした時実に嫌な気持ちだった。
スペイン語の「チノ」と同じ、中国人の蔑称。そのまんまです。
また、物語の最終場面でタイタン軍の総攻撃があるが、それまた「特攻」の
ヨーロッパ版。
巧みにカリカチュアライズしてはいるが、アジアへの偏見を茶化したような言辞は
たとえフィクションとしても感心しない。
最悪なのがリムニッヒのこと。
本書を読んでユダヤ系の人なら、即この本を捨て手を消毒するだろう。
600万人(異説あり)の無辜の人を死に追いやった「ユダヤ人問題の最終的解決者」を
戯画化し、面白おかしく書いて、それで許されるというものではない。
はっきり言えば、著者の見識(そんなものがあるとすればだが…)を疑う。
たとえフィクションとしても、節度はあるべき。
読んでしばらくは気分が悪かった。
お勧めしない。
『カエアン』、『禅銃』、『ロボット』、『短編集』と人によってベストが異なるとは思うけれど、私的にはやっぱりこれが一番。再読して改めてそう思います。次点が『禅銃』かな。
12年前、出張帰りの車中で始めて読んだ時も傑作だとは思ったのだけれど、細かい部分は忘れてしまっていて、時間が衝突する凄い話だったという印象と、砂時計のイメージだけが残っていました。
あらためて読み直すと、ベイリーの長編には珍しく、構成は思いのほかシンプルなことに気付きます。絶望感あふれる白人優生思想の軍国主義社会、異星人との大戦争の痕跡、ぶっ飛んだ時間理論、込みいった宇宙都市、裏がありそうな気もする親切な中国人などが次から次に登場し、また、登場人物の視点が次々と切り替わるため、ストーリーに翻弄されるように感じますが、基本線ははっきりしています。
冒頭に登場する、徐々に新しくなっている遺跡という謎が物語を引っ張り、もしかしたら逆向きに流れている時間があるかもしれないという発想に、そんな馬鹿な話があるわけがないと思いながらも、縦横無尽に展開する奇想に引っ張られ続け、読み終えて思うのは、やっぱり、こんな話ってあり?という半ばあきれてしまう。じっくり考えるといくつか気になる点もありますが、それも気にならないくらい壮大に、かつ奔放に作り込まれた大怪作です。
二者対立の構造が繰り返し描かれているのが隠し味でしょうか。
ベイリーの小説には、人種差別や階級対立のように風刺なのかブラック・ユーモア(悪ふざけ)なのか理解に困るような設定がしばしば登場しますが、これは好き嫌いが別れるところかもしれません。
漆黒の恒星間空間に漂う砂時計のような形のレトルト・シティのイメージが美しい。
はじめの物語の舞台は未来の地球、白人種による圧倒的な軍事支配と苛烈な人種差別にあえいでいる小さな世界です。なんでも、その昔、異星人の襲来によって地球上の文明の遺産がことごとく滅したらしいのです。それから暗黒の四世紀が過ぎ、異星人が姿を消したのち、文明再興。それだけ聞くと、めずらしくない設定だと思われる方も多いでしょうね。
でも、ここに荒廃した異星人の遺跡を発掘する研究者たちがいます。物語は彼らのあいだからはじまります。というのも、彼らが今発掘している遺跡を写した古い写真が、あまりに奇異だったのです。なんとそこに写っていたのは、現在よりもはるかに古びた遺跡だったのです。三百年も前に撮られた写真なのに、なぜ今より荒廃が進んでいるのか――まさか遺跡がどんどん新しくなっている?
次の舞台は地球からへだたった宇宙空間。そこは生産系社会と娯楽系社会とが峻別された奇妙な世界です。暮らすのはすべて中華系の人々。その隔絶した社会のはざまに、ひとりの青年がいたたまれない面もちで立っていて、やがて歩き出し――複数の世界は、ついにまみえるわけです。
こうなってくると、単なる時間SFとは言えないかもしれないですね。
時間理論はむずかしいのですが、あまり静的ではなく、時間線の交差など、たいへんスリリングな展開の連続で、まあ、大変な時間SFなのでした。
そもそも時間とは一つしかないのか、ひょっとしたら時間は二つあるかもしれない。
と、この作品を読むまでそんなことは考えたこともなかったが、この作品では二つ存在するのである。
SFには、矛盾しない時間SFというものが存在するが、ひょっとしたらこれもひとつの矛盾しない時間SFなのかもしれない。
時間論が好きなら、考える価値のある作品。
そして、これを読まなければ思いつくわけもない時間論の作品。
ベイリーが生命といっているところを意識と置きかえれば、本当かもしれないと思える(ような気もする)しっかりとした時間SFである。
鬼才と呼ぶにたるSF作家バリントン・J・ベイリーの代表作。