話がどんどん大きくなっていくところがとってもSF的で気持ちよかった。
また、大きくなり続けた話で、最後に主人公が行うことが「物語」を伝えるというところがとてもよかった。
また、仮定体の正体も、無価値的で適応度最大化のプロセスという説明は、すっと腹に落ちる感じがした。
だいぶ違うが、ダーゥズム的なネオプラグマティズム(リチャードローティ的)の真理観を連想した。
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連環宇宙 (創元SF文庫) (創元SF文庫) 文庫 – 2012/5/12
ロバート・チャールズ・ウィルスン
(著),
茂木 健
(翻訳)
一万年後の未来に復活させられたタークたちは、死に絶えた地球で超越存在“仮定体"の真実と人類の運命を知る──ヒューゴー賞受賞『時間封鎖』に始まる三部作、遂に完結!
- 本の長さ512ページ
- 言語日本語
- 出版社東京創元社
- 発売日2012/5/12
- ISBN-104488706061
- ISBN-13978-4488706067
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登録情報
- 出版社 : 東京創元社 (2012/5/12)
- 発売日 : 2012/5/12
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 512ページ
- ISBN-10 : 4488706061
- ISBN-13 : 978-4488706067
- Amazon 売れ筋ランキング: - 446,309位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 231位創元SF文庫
- - 2,348位SF・ホラー・ファンタジー (本)
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カスタマーレビュー
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2012年7月17日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
あまりに第一作が凄すぎた。
3作目は二つの世界の同時進行というSFの常道を進んでしまった。
内容は面白く、最後まで飽きずに読み通せたけれども、これだけって言う感じも否めない。
ホーガンの3部作も4作目を作らなければっていう感じだし、SFの連作は難しい。
3作目は二つの世界の同時進行というSFの常道を進んでしまった。
内容は面白く、最後まで飽きずに読み通せたけれども、これだけって言う感じも否めない。
ホーガンの3部作も4作目を作らなければっていう感じだし、SFの連作は難しい。
2013年5月27日に日本でレビュー済み
面白いことは面白いんですが…
例によって気に入らない点が2つ。
(P145から)
----- Original Message -----
サンドラはビールをすすった。彼女がビールを飲むことなど、滅多になかった。古い靴下を思わせる臭いと味が、大嫌いだったからだ。
----- Original Message 終了-----
ひ、ひどい表現。ビール好きとしては許せない暴言。でも何となく言いたいことは分かるw
それはそれとして。
もう一つは、例の無邪気な地球温暖化仮説信仰。
(P193から)
----- Original Message -----
すでに人類は、石炭、石油、天然ガスといった地球が蓄えてきた炭素を大量に燃やしており、それだけでも環境を悪化させるには充分すぎるほどだった。ところがイクウェイトリアの砂漠に大規模な油田が発見され、ほいほいと採掘された大量の原油が船に積まれ仮定体のアーチを通過したことによって、地球は遂に死刑台の階段を上りきった。もし放出されたのが地球起源の二酸化炭素だけであれば、なんとか死なずにすんだかもしれない。だが別の星に溜めこまれていた二酸化炭素まで気前よく大気中にぶちまけたものだから、どれほど立派な対処機構があったところで、もはや完全にお手上げだった。
----- Original Message 終了-----
>もし放出されたのが地球起源の二酸化炭素だけであれば、
>なんとか死なずにすんだかもしれない。
そそ、そういうことw
(P492から)
----- Original Message -----
海の富栄養化と地球の運命については、説得力のある悲観論を展開するピーター・ウオードの著書Under a Green Sky(未訳)と『地球生命は自滅するのか?――ガイア仮説からメデア仮説へ』(青土社)を参考にした。
----- Original Message 終了-----
ああ、なるどねー。
「二酸化炭素による海の富栄養化」って説がありますけど…
18世紀、大気中のCO2濃度が280ppmくらいだったのが、今や400ppmてことで大騒ぎしてますよね。
しかし、およそ1億年前(恐竜全盛時代)は、2000ppm以上あったんですよ。その頃、海の生物が絶滅してたかというと、決してそんなことはない。むしろ大繁栄していたんです。そもそも「化石燃料」は、その時期の貯金なわけだし。
そうそう。わたくしが、ワインよりビールを好むのは、炭酸ガスが含有されているから。
ああ、道理で気が合わないわけだ(笑)
例によって気に入らない点が2つ。
(P145から)
----- Original Message -----
サンドラはビールをすすった。彼女がビールを飲むことなど、滅多になかった。古い靴下を思わせる臭いと味が、大嫌いだったからだ。
----- Original Message 終了-----
ひ、ひどい表現。ビール好きとしては許せない暴言。でも何となく言いたいことは分かるw
それはそれとして。
もう一つは、例の無邪気な地球温暖化仮説信仰。
(P193から)
----- Original Message -----
すでに人類は、石炭、石油、天然ガスといった地球が蓄えてきた炭素を大量に燃やしており、それだけでも環境を悪化させるには充分すぎるほどだった。ところがイクウェイトリアの砂漠に大規模な油田が発見され、ほいほいと採掘された大量の原油が船に積まれ仮定体のアーチを通過したことによって、地球は遂に死刑台の階段を上りきった。もし放出されたのが地球起源の二酸化炭素だけであれば、なんとか死なずにすんだかもしれない。だが別の星に溜めこまれていた二酸化炭素まで気前よく大気中にぶちまけたものだから、どれほど立派な対処機構があったところで、もはや完全にお手上げだった。
----- Original Message 終了-----
>もし放出されたのが地球起源の二酸化炭素だけであれば、
>なんとか死なずにすんだかもしれない。
そそ、そういうことw
(P492から)
----- Original Message -----
海の富栄養化と地球の運命については、説得力のある悲観論を展開するピーター・ウオードの著書Under a Green Sky(未訳)と『地球生命は自滅するのか?――ガイア仮説からメデア仮説へ』(青土社)を参考にした。
----- Original Message 終了-----
ああ、なるどねー。
「二酸化炭素による海の富栄養化」って説がありますけど…
18世紀、大気中のCO2濃度が280ppmくらいだったのが、今や400ppmてことで大騒ぎしてますよね。
しかし、およそ1億年前(恐竜全盛時代)は、2000ppm以上あったんですよ。その頃、海の生物が絶滅してたかというと、決してそんなことはない。むしろ大繁栄していたんです。そもそも「化石燃料」は、その時期の貯金なわけだし。
そうそう。わたくしが、ワインよりビールを好むのは、炭酸ガスが含有されているから。
ああ、道理で気が合わないわけだ(笑)
2017年8月3日に日本でレビュー済み
時間封鎖三部作の完結編。物語は、スピンが解除された時代の地球と、一万年後の地球で人類が生活するヴォックスという移動都市の二つが交互に組み合わされている。二つの世界を結ぶノートがあり、それが媒体となって二つの世界が融合していく。時間SFのようなストーリー展開だ。一方で人間ドラマもしっかりしており、ロマンチックでもある。最後は壮大な話になるが、無理な展開でもなく、素直に情景を楽しめる。仮定体の正体もとりあえず特定され、これだったら続篇もありえるのではないかと思った。スピンだけにスピンオフ作品が出てもいいだろう。少し期待したい。
2012年5月18日に日本でレビュー済み
『
無限記憶
』はイマイチ印象がなく、『
時間封鎖
』はいい思い出だったな……なんてことにならなければいいけど、という漠然とした不安の末に、とうとう最終巻。
う〜ん、面白い!
二つのパートが交互に語られていく。
時間封鎖解除直後の地球と、1万年後の惑星イクウェイトリア。その1万年後の未来は現在(封鎖解除直後だけど)の精神科医の患者の手記に書かれたものであり、しかもそれは『無限記憶』の続きとなっている。そうなると、面白くなかった(言っちゃった)前作に俄然意味が出てくる。連続性があるのか、それとも1冊まるまる作中作だったというのか!?
SFとしては、ゲートによって幾つもの惑星の海が連結され、大陸を船にして航行する1万年後のパートに目が行くけど、物語としては、ほとんどSF度がない現在のパートが面白い。キャラクターの行動原理のバックボーンがしっかりしているため血肉を備えており、手記の真相という、シリーズを読んできたものなら気にならずにはいられないミステリが、強力な推進力になっている。
1章が短いため物理的にリーダビリティがよく、同時に二つのパートの展開が気になるという、ツインカムエンジンな構成(笑)
しかも、絶対に交差するはずのない二つの時間軸が、現在と未来が衝突するかのように、終盤で一方がも一方の物語を補完させ、読者に一つの物語であるということを強くしらしめる巧さ。
仮定体の正体なんてちゃんと風呂敷たためなくても別にいいよ、と思わせちゃうドラマの巧さがウィルスンの強みだと思うんだけど、ラストではSFとしてもなかなか満足できる超巨視的なヴィジュアルを提供してくれる。
確かに、1年=1億年という第一部の強烈なインパクトは超えられてないけど、がっかりさせないまとめ方は職人芸的だし、何より小説として面白かった。
三作まとめて、オススメ。
う〜ん、面白い!
二つのパートが交互に語られていく。
時間封鎖解除直後の地球と、1万年後の惑星イクウェイトリア。その1万年後の未来は現在(封鎖解除直後だけど)の精神科医の患者の手記に書かれたものであり、しかもそれは『無限記憶』の続きとなっている。そうなると、面白くなかった(言っちゃった)前作に俄然意味が出てくる。連続性があるのか、それとも1冊まるまる作中作だったというのか!?
SFとしては、ゲートによって幾つもの惑星の海が連結され、大陸を船にして航行する1万年後のパートに目が行くけど、物語としては、ほとんどSF度がない現在のパートが面白い。キャラクターの行動原理のバックボーンがしっかりしているため血肉を備えており、手記の真相という、シリーズを読んできたものなら気にならずにはいられないミステリが、強力な推進力になっている。
1章が短いため物理的にリーダビリティがよく、同時に二つのパートの展開が気になるという、ツインカムエンジンな構成(笑)
しかも、絶対に交差するはずのない二つの時間軸が、現在と未来が衝突するかのように、終盤で一方がも一方の物語を補完させ、読者に一つの物語であるということを強くしらしめる巧さ。
仮定体の正体なんてちゃんと風呂敷たためなくても別にいいよ、と思わせちゃうドラマの巧さがウィルスンの強みだと思うんだけど、ラストではSFとしてもなかなか満足できる超巨視的なヴィジュアルを提供してくれる。
確かに、1年=1億年という第一部の強烈なインパクトは超えられてないけど、がっかりさせないまとめ方は職人芸的だし、何より小説として面白かった。
三作まとめて、オススメ。
2012年7月8日に日本でレビュー済み
ヒューストン市の精神科医サンドラ・コールはジェファーソン・ボース巡査が連れて来たオーリン・メイザーという少年を患者として受け入れる。少年はノートを携行していたが、そこには1万年後の世界で繰り広げられるタークとアリスンという男女の奇妙な物語が綴られていた…。
『 時間封鎖 』、『 無限記憶 』と紡がれ続けてきた謎の “仮定体”の物語の、私にとっては待望の最終編です。
時間封鎖を乗り越えた時代のサンドラ、ボース、オーリンの物語と、オーリンが綴ったとされる1万年後のタークたちの物語が交互に描かれます。この二つの物語がどこでどう繋がるのか、その連結点がなかなか見えないまま奇妙なストーリーが展開していくのです。
『無限記憶』読了後の私は、“仮定体”が『 2001年宇宙の旅 』に出てくるコスモ・エネルギーのネットワークのようなものだと見なしていました。しかし、最終編であるこの『連環宇宙』の最終段階で明かされる“仮定体”の正体は、『2001年宇宙の旅』に登場したような超越的とはいえ温もりをもって人類を包み込む壮大新奇な存在ではありませんでした。
私はむしろジェイムズ・P・ホーガンの『 造物主の掟 』『 造物主の選択 』に登場するライフメーカーから温もりを抜き去った代物を見た思いがして、心さびしく感じたのです。
3部作合計で1700頁を越える長大なSF小説を苦もなく読むことが出来たのは、作者ロバート・チャールズ・ウィルソンの優れた筆力にあることはもちろんですが、茂木健の巧みな翻訳力も忘れてはならないと思います。R・C・ウィルソンの次回作に注目するとともに、茂木翻訳の次回作も見逃すことないよう気をつけておきたいものです。
『 時間封鎖 』、『 無限記憶 』と紡がれ続けてきた謎の “仮定体”の物語の、私にとっては待望の最終編です。
時間封鎖を乗り越えた時代のサンドラ、ボース、オーリンの物語と、オーリンが綴ったとされる1万年後のタークたちの物語が交互に描かれます。この二つの物語がどこでどう繋がるのか、その連結点がなかなか見えないまま奇妙なストーリーが展開していくのです。
『無限記憶』読了後の私は、“仮定体”が『 2001年宇宙の旅 』に出てくるコスモ・エネルギーのネットワークのようなものだと見なしていました。しかし、最終編であるこの『連環宇宙』の最終段階で明かされる“仮定体”の正体は、『2001年宇宙の旅』に登場したような超越的とはいえ温もりをもって人類を包み込む壮大新奇な存在ではありませんでした。
私はむしろジェイムズ・P・ホーガンの『 造物主の掟 』『 造物主の選択 』に登場するライフメーカーから温もりを抜き去った代物を見た思いがして、心さびしく感じたのです。
3部作合計で1700頁を越える長大なSF小説を苦もなく読むことが出来たのは、作者ロバート・チャールズ・ウィルソンの優れた筆力にあることはもちろんですが、茂木健の巧みな翻訳力も忘れてはならないと思います。R・C・ウィルソンの次回作に注目するとともに、茂木翻訳の次回作も見逃すことないよう気をつけておきたいものです。
2012年8月22日に日本でレビュー済み
一発目の[spin]が凄すぎて、期待先行、
二作目の[axis]が、拍子抜け過ぎて、こりゃ三作目は駄目だろうなあ…と
半ばあきらめていたのですが、予想以上の出来に驚きました。
正直、二作目を無しにして、[vortex]を一作目のように上下巻の厚さにしてしまえば、
伝説に残る?シリーズになれたような気もします。
spin後の世界で、何故かそこから更に1万年後!の世界の手記が見つかります。
どうして?というミステリーと、1万年後の世界がどうなるのか?というSFの
2本立ての様な感じでスリリングに進んでいきます。
惜しむらくは、シリーズ最大の謎が、割とあっさりしている?ことと、
最終章が、イーガン「ディアスポラ」などの作品に似てしまっている事でしょうか。
何より、久しぶりに楽しめた正統派SFでした。 これはおススメです。
二作目の[axis]が、拍子抜け過ぎて、こりゃ三作目は駄目だろうなあ…と
半ばあきらめていたのですが、予想以上の出来に驚きました。
正直、二作目を無しにして、[vortex]を一作目のように上下巻の厚さにしてしまえば、
伝説に残る?シリーズになれたような気もします。
spin後の世界で、何故かそこから更に1万年後!の世界の手記が見つかります。
どうして?というミステリーと、1万年後の世界がどうなるのか?というSFの
2本立ての様な感じでスリリングに進んでいきます。
惜しむらくは、シリーズ最大の謎が、割とあっさりしている?ことと、
最終章が、イーガン「ディアスポラ」などの作品に似てしまっている事でしょうか。
何より、久しぶりに楽しめた正統派SFでした。 これはおススメです。
2012年6月25日に日本でレビュー済み
ロバート・チャールズ・ウィルスン著、茂木健訳『連環宇宙』はSF小説である。『時間封鎖』『無限記憶』に続く三部作の完結編であり、「スピン」や「仮定体」「アーチ」という独自の用語が登場するために本書から読み始める読者にはハードルが高そうであるが、意外にも読み進めることができた。
その一因として冒頭で路上生活者という現代的な問題が取り上げられていることが挙げられる。不十分な福祉予算や行政の臭いものに蓋をする体質など現代日本の住まいの貧困問題に共通する。このために時間封鎖後の地球という耳慣れない舞台設定ながらも、物語に入り込むことができた。
本書は現代に近い近未来のアメリカを舞台にした物語と一万年後の未来を舞台にした物語が交互に繰り返される。この点でミヒャエル・エンデ『はてしない物語』やエリザベス・コストヴァ『ヒストリアン』と共通する。これらは皆、主人公が物語を読んでいくという構成を採っている。
但し、『連環宇宙』の効果は類書とは異なる。『はてしない物語』などでは主人公が物語に引き込まれ、それが読者も物語に引き込む効果を持っている。主人公の世界の物語は、主人公の物語を読み進めるという行動が中心となり、付録のようなものになる。読者の関心は主人公が読む物語にある。
これに対して『連環宇宙』は主人公が物語を読むという描写が乏しい。物語とは直接関係しない陰謀が主人公の周囲で進行する。つまり、二つの物語が平行して展開する。ラストは壮大なスケールになり、最後の最初で原点に還る。
『連環宇宙』では仮定体の正体も明らかになる。それは決して慈悲深い菩薩のような存在ではなかった。ひたすらスクラップ&ビルドで経済発展という増殖を続ける現代のハイエナ資本主義のシステムを仮定体から連想した。一部の人々は仮定体を神のように崇めるが、それも神の見えざる手を信奉する市場原理主義者に重なる。市場原理主義が貧困と格差社会を生み出したように仮定体に委ねることは資源を搾取されるだけである。(林田力)
その一因として冒頭で路上生活者という現代的な問題が取り上げられていることが挙げられる。不十分な福祉予算や行政の臭いものに蓋をする体質など現代日本の住まいの貧困問題に共通する。このために時間封鎖後の地球という耳慣れない舞台設定ながらも、物語に入り込むことができた。
本書は現代に近い近未来のアメリカを舞台にした物語と一万年後の未来を舞台にした物語が交互に繰り返される。この点でミヒャエル・エンデ『はてしない物語』やエリザベス・コストヴァ『ヒストリアン』と共通する。これらは皆、主人公が物語を読んでいくという構成を採っている。
但し、『連環宇宙』の効果は類書とは異なる。『はてしない物語』などでは主人公が物語に引き込まれ、それが読者も物語に引き込む効果を持っている。主人公の世界の物語は、主人公の物語を読み進めるという行動が中心となり、付録のようなものになる。読者の関心は主人公が読む物語にある。
これに対して『連環宇宙』は主人公が物語を読むという描写が乏しい。物語とは直接関係しない陰謀が主人公の周囲で進行する。つまり、二つの物語が平行して展開する。ラストは壮大なスケールになり、最後の最初で原点に還る。
『連環宇宙』では仮定体の正体も明らかになる。それは決して慈悲深い菩薩のような存在ではなかった。ひたすらスクラップ&ビルドで経済発展という増殖を続ける現代のハイエナ資本主義のシステムを仮定体から連想した。一部の人々は仮定体を神のように崇めるが、それも神の見えざる手を信奉する市場原理主義者に重なる。市場原理主義が貧困と格差社会を生み出したように仮定体に委ねることは資源を搾取されるだけである。(林田力)