「時間封鎖」や「クロノリス」などの作者であるロバート・チャールズ・ウィルスンの短編集です。ただし内容的には「ホラー」もしくは「ファンタジー」に分類するのが適当な作品で構成されています。ウィルスンのSFだーーーー! と思って買うと当てがはずれるので注意。
各短編はおそらく1900年〜2000年(+α)くらいの幅広い年代を舞台にしているらしく、主人公が貧しい移民の少年という設定の時代だったり、インターネットが普通に存在したり遺伝子制御酵素がニュースになったりする時代だったりします。そしてこれらの作品のほとんどに「ファインダーズ古書店」という古本屋が顔を出します。この古書店が中心になる話もありますし、ほんのちょこっっと背景の一部のように出てくるだけのこともありますが、この古書店を通じて各短編が緩い繋がりをもつという構成になっています。
(唯一、この古書店が出てこない「観測者」という短編については、著者あとがきで「サンドラはファインダーズ古書店に行ったことがあるのだろうか? ある。私がそう断言するのだから、間違いない」と言っているので、間違いなく繋がりはあるのでしょうw)
それぞれの短編はどれも幻想的でありながら、話が進むにつれて狂気じみた展開になってゆきます。自分と他人が入れ替わる、人間に混じって人間でない悪意に満ちた存在が闊歩している、街の中に誰にも知られない別の街が存在する、等々、読んでいるうちに「これはそういう設定の話なのか? 主人公が狂気に蝕まれているだけなのか?」と読者である自分のほうが不安になったりしました。
短編集の最後に収録されている「パール・ベイビー」はこの短編集のために書き下ろされた作品ということですが、さすが大トリをつとめるだけあって舞台は「ファインダーズ古書店」そのもの、主人公はなんと店主本人(と言っていいでしょう)。「ファインダーズ古書店」という存在を締めくくる形になっていて、短編集として良い終わり方だと思いました。
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ペルセウス座流星群 (ファインダーズ古書店より) (創元SF文庫) 文庫 – 2012/11/10
ロバート・チャールズ・ウィルスン
(著),
茂木 健
(翻訳)
星降る夜に扉は開く──広大無辺な宇宙と、ささやかな日々の営みの交錯。古書、望遠鏡、チェス盤や鏡がもたらす、異界への招待状。《時間封鎖》の著者が新たな側面を見せる、珠玉の連作短編集。
- 本の長さ438ページ
- 言語日本語
- 出版社東京創元社
- 発売日2012/11/10
- ISBN-104488706088
- ISBN-13978-4488706081
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登録情報
- 出版社 : 東京創元社 (2012/11/10)
- 発売日 : 2012/11/10
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 438ページ
- ISBN-10 : 4488706088
- ISBN-13 : 978-4488706081
- Amazon 売れ筋ランキング: - 627,590位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 305位創元SF文庫
- カスタマーレビュー:
カスタマーレビュー
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2012年12月22日に日本でレビュー済み
カナダのトロントを中心に,また,そこに建つ古ぼけた古書店と謎の主人をキーにしつつも,
あとがきや解説で『ゆるやか』と表現されるように,物語や登場人物らに大きな繋がりはなく,
時には古書店が街並みの一つとして扱われるなど,各篇もそれぞれ独立したものとなっています.
中身の方は,出版レーベルこそ『SF』の冠があるものの,,ホラーやダークファンタジに近く,
多くはこの地球上で,しかも道を逸れ,『あちら』へと足を突っ込んでしまった人たちが描かれ,
きらびやかな科学アイテムや,宇宙船や未知の惑星といった,『わかりやすい』宇宙はありません.
しかし,そんな彼らの中に広がる暗闇,その得体の知れない存在への恐怖は,やはり宇宙であり,
期待していたSFとは違う様子に戸惑いながらも,世の真理を覗かせる物語は,宇宙への意識を広げ,
正気と狂気,日常と非日常,ファインダース(発見者)の通り,別の視点を与えられるかのようです.
また,あとがきや解説が丁寧で,各篇,また作品全体についても詳しく語られているのは好印象.
やや取っつきにくい世界観ですが,これらを経て読み直せば,また新しい『発見』がありそうです.
あとがきや解説で『ゆるやか』と表現されるように,物語や登場人物らに大きな繋がりはなく,
時には古書店が街並みの一つとして扱われるなど,各篇もそれぞれ独立したものとなっています.
中身の方は,出版レーベルこそ『SF』の冠があるものの,,ホラーやダークファンタジに近く,
多くはこの地球上で,しかも道を逸れ,『あちら』へと足を突っ込んでしまった人たちが描かれ,
きらびやかな科学アイテムや,宇宙船や未知の惑星といった,『わかりやすい』宇宙はありません.
しかし,そんな彼らの中に広がる暗闇,その得体の知れない存在への恐怖は,やはり宇宙であり,
期待していたSFとは違う様子に戸惑いながらも,世の真理を覗かせる物語は,宇宙への意識を広げ,
正気と狂気,日常と非日常,ファインダース(発見者)の通り,別の視点を与えられるかのようです.
また,あとがきや解説が丁寧で,各篇,また作品全体についても詳しく語られているのは好印象.
やや取っつきにくい世界観ですが,これらを経て読み直せば,また新しい『発見』がありそうです.
2012年12月4日に日本でレビュー済み
世界を同じくする非連作短篇集。奇想と呼ぶよりは一寸奇妙な味の小説、SFと呼ぶよりはファンタジーに近い、そんな人間ドラマが多いが、考えてみると長編の方も論理的な謎解きよりも、そこで起こる人間ドラマの方が中心であったし、ここに収録されている短編の方が、作者の本質がよく出ているのかも知れない。
2012年12月29日に日本でレビュー済み
SF巨編『
時間封鎖
』三部作の作者ロバート・チャールズ・ウィルスンが、そのシリーズ以前に物した短編9編を集めた一冊です。
各編はファインダーズという名の古書店を軸に緩く結びついた怪異譚といったくくりができるでしょうか。
私が気に行ったのは巻頭を飾る『アブラハムの森』です。
チェス好きの少年ジェイコブはファインダーズ古書店の老主人ジーグラー氏と対戦しては戦利品的に店の古本を一冊受け取って帰ります。いつもチェスに負けるジーグラー氏にはひとつの目的があって…、という話です。手塚治虫の『火の鳥』シリーズの「 異形編 」に通じるお話は私の最も好むところです。
とはいえ、『アブラハムの森』以外の短編は、結末が明解ではないものが多いだけに、すっきりとはしない思いが残ります。巻末の解説で香月祥宏(かつきよしひろ)がいみじくも記しているように「傑作《時間封鎖》三部作を先に読んでしまった日本の読者にとっては物足りない」思いが残ります。
全短編をそれでも読みとおすことが出来たのは、物語展開を楽しむと言うよりは、茂木健氏のほれぼれするような流麗な訳文を最後まで味わってみたかったから。それにつきます。氏の翻訳は今回も冴えわたっています。
各編はファインダーズという名の古書店を軸に緩く結びついた怪異譚といったくくりができるでしょうか。
私が気に行ったのは巻頭を飾る『アブラハムの森』です。
チェス好きの少年ジェイコブはファインダーズ古書店の老主人ジーグラー氏と対戦しては戦利品的に店の古本を一冊受け取って帰ります。いつもチェスに負けるジーグラー氏にはひとつの目的があって…、という話です。手塚治虫の『火の鳥』シリーズの「 異形編 」に通じるお話は私の最も好むところです。
とはいえ、『アブラハムの森』以外の短編は、結末が明解ではないものが多いだけに、すっきりとはしない思いが残ります。巻末の解説で香月祥宏(かつきよしひろ)がいみじくも記しているように「傑作《時間封鎖》三部作を先に読んでしまった日本の読者にとっては物足りない」思いが残ります。
全短編をそれでも読みとおすことが出来たのは、物語展開を楽しむと言うよりは、茂木健氏のほれぼれするような流麗な訳文を最後まで味わってみたかったから。それにつきます。氏の翻訳は今回も冴えわたっています。