そして一つの物語も終わった。
第1巻から10巻、いやーそれにしても長く楽しませてもらいました。
最後の最後は少しあっけなく、でもそれなりに感動の終焉を迎えた。
何十万人?何百万人の生命を犠牲にして勝ち取ったものはそれだけの価値を有すのかが問われるのはこれから先の人類の行動にかかっている。
よく言う新たなスタート地点に立ったと言う事だろう。
現実世界でも国家や宗教の対立や抗争は枚挙にいとまがない。
人間達のなんと愚かなことか。しかし渦中にいる、巻き込まれている人達には選択肢が無いのかもしれない。
平和な現代の日本にいてはわからないことがあまりに多いのだろう。
でも、でもでもでも‥‥
考えさせられるキッカケになった。
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銀河英雄伝説 〈10〉 落日篇 (創元SF文庫) 文庫 – 2008/8/30
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- 本の長さ352ページ
- 言語日本語
- 出版社東京創元社
- 発売日2008/8/30
- ISBN-104488725104
- ISBN-13978-4488725105
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登録情報
- 出版社 : 東京創元社 (2008/8/30)
- 発売日 : 2008/8/30
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 352ページ
- ISBN-10 : 4488725104
- ISBN-13 : 978-4488725105
- Amazon 売れ筋ランキング: - 246,353位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 127位創元SF文庫
- - 1,361位SF・ホラー・ファンタジー (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
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1952年10月22日、熊本県生まれ。学習院大学大学院修了。1978年在学中に「緑の草原に…」で、幻影城新人賞受賞。1988年「銀河英雄伝説」にて第19回星雲賞受賞(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 野望円舞曲〈9〉 (ISBN-13: 978-4199052019 )』が刊行された当時に掲載されていたものです)
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2023年11月6日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
全巻通してスピード感がありとても面白いです。
著者らしくめちゃくちゃ死にます。狂信者も怖いです。
アルスラや創竜伝に比べると文章がかため。
アルスラや創竜伝に比べると登場人物が多いうえ退場も激しいので誰だっけ?となりやすいかも。
ハッピーエンドでもバッドエンドでもなく歴史は続くエンドかなと。
戦闘シーン戦術シーンがとても面白いのでそういうのが苦手な方はおすすめできません。
著者らしくめちゃくちゃ死にます。狂信者も怖いです。
アルスラや創竜伝に比べると文章がかため。
アルスラや創竜伝に比べると登場人物が多いうえ退場も激しいので誰だっけ?となりやすいかも。
ハッピーエンドでもバッドエンドでもなく歴史は続くエンドかなと。
戦闘シーン戦術シーンがとても面白いのでそういうのが苦手な方はおすすめできません。
2021年9月20日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
銀河英雄伝説を読むのは、2回目であるが、やはり寂しさを感じる最終巻である。結局・・ままでの戦いは、宇宙を統一するまでの話では終わらずに・・ラインハルトの死で終わりを迎えるのかと・・。
しかし、時間は止まらず・・これからの帝国・共和国がこれからどの様になって行くのが知りたい所ではあるが・・本編の中に、少しずつその方えがあるのかもしれない。
しかし、時間は止まらず・・これからの帝国・共和国がこれからどの様になって行くのが知りたい所ではあるが・・本編の中に、少しずつその方えがあるのかもしれない。
2009年10月26日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
・10巻を読み進むうちに、宇宙時代に入る前の人類の歴史と、
その先に続くであろう歴史の広がりを見つめたような気持ちを味わえました。
・宇宙空間に生活圏を広げた人間の物語という点で、
ガンダムシリーズの小説と共通する部分がいくつかあります。
-人と組織の関係の描写、政治組織に触れていること、宇宙時代に入る前の
人の歴史を俯瞰的に見た視点に立脚している点などが共通しています。
・ガンダムの小説より特に優れている点は、用兵の戦略、
戦術の描写が活き活きと描かれている点です。
-またガンダムが地球を物語の主たる舞台としているのに対して、
銀河英雄伝説では、地球はすでに過去の存在となっている点が大きな違いとなっています。
-そのうえで、現在地球にあるような宗教というものも同時に、過去の思想的商品として
歴史的評価を与えられている点も、画期的な表現に思えます。
・本書10巻の小説にわたって言えることは、登場人物の歴史的な人物評価など、
同じ文章を何度も入れているため、若干くどいと思える部分があります。
・ラインハルトとヤンには、同じ結論を与えておきながら、
個人的には納得のいく終わり方であったと感じています。
その先に続くであろう歴史の広がりを見つめたような気持ちを味わえました。
・宇宙空間に生活圏を広げた人間の物語という点で、
ガンダムシリーズの小説と共通する部分がいくつかあります。
-人と組織の関係の描写、政治組織に触れていること、宇宙時代に入る前の
人の歴史を俯瞰的に見た視点に立脚している点などが共通しています。
・ガンダムの小説より特に優れている点は、用兵の戦略、
戦術の描写が活き活きと描かれている点です。
-またガンダムが地球を物語の主たる舞台としているのに対して、
銀河英雄伝説では、地球はすでに過去の存在となっている点が大きな違いとなっています。
-そのうえで、現在地球にあるような宗教というものも同時に、過去の思想的商品として
歴史的評価を与えられている点も、画期的な表現に思えます。
・本書10巻の小説にわたって言えることは、登場人物の歴史的な人物評価など、
同じ文章を何度も入れているため、若干くどいと思える部分があります。
・ラインハルトとヤンには、同じ結論を与えておきながら、
個人的には納得のいく終わり方であったと感じています。
2023年3月19日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
壮大なスペースオペラの完結編のようです。
続きが気になって気になって、あっという間に読み終わりました。
しかし、最後のほうは寂しかったなぁという印象。
戦争を繰り返して勝利を掴み、とうとう宇宙まで手に入れたラインハルトは、結局夢を叶えられたのか。
物語の最後の最後、彼の一言で本当は何が欲しかったのか分かった気がしました。
落日編というタイトルに相応わしく、それでいて新たな始まりを感じさせてくれる素晴らしいラストだったと思います。
続きが気になって気になって、あっという間に読み終わりました。
しかし、最後のほうは寂しかったなぁという印象。
戦争を繰り返して勝利を掴み、とうとう宇宙まで手に入れたラインハルトは、結局夢を叶えられたのか。
物語の最後の最後、彼の一言で本当は何が欲しかったのか分かった気がしました。
落日編というタイトルに相応わしく、それでいて新たな始まりを感じさせてくれる素晴らしいラストだったと思います。
2019年9月4日に日本でレビュー済み
銀英伝でヤンやラインハルトを「普通の人」呼ばわりしてる理解力の低い輩がいるようですが、人間の集団というのは極めて愚鈍であるという現実を知らないのでしょうか?
かつての日本帝国を持ち出すまでもなく、例えば現在の日本でも
中国や北朝鮮と軍事同盟を結ぶ、といった戦略的柔軟性のある
政治家や官僚が一人でもいるでしょうか。
日米同盟は永遠で現在の日本国のあり方が永遠だと
あなたも信じているのではないですか?
それってゴールデンバウム王朝の貴族や臣民、フェザーン、
同盟の市民たちと同じ思考の硬直ですよね。
この体制は永続すると。人が必ず死ぬように国家も必ず滅ぶ。
銀河英雄伝説で繰り返し語られる警句ですが、
ヤンやラインハルトを「普通の人」呼ばわりしてる人はこの点を
読み落としているのではないでしょうか。
国家は巨大な互助会であり、人の暮らす上での道具に過ぎず、まして人の上位者ではありません。
ヤンやラインハルトは傑出した戦略的・政略的柔軟性を
備えた稀有な天才であると理解できたでしょうか
ラインハルトやヤンと戦い破れた敵将らは軍事常識的に極まっとうな
思考経路を辿っている。これを引き立て役として
愚将やら痴将呼ばわりしてるのは
個人戦闘と大軍の指揮官を混同してる阿呆だけだろう
銀英伝の戦闘が三次元的ではないという的はずれな難癖してる
輩の同類であろう。
よく読解力の無い輩が銀英伝の戦闘は宇宙なのに二次元的だと笑ってるが、
それこそ失笑ものの感想だ。
宇宙の大艦隊戦だからこそ表記が二次元的なのだ。
戦艦と言えど、ある程度まとまってなければ戦力として意味がないのが銀英伝だ。
自然、数千隻~数万隻の群団として動くため、天頂方向から俯瞰してみれば
動きは二次元的に制約さる。上や下から攻撃しようとしても
何万隻もの艦隊戦では隊列がいたずらに伸び遊兵を作るだけで意味がない。
つまり、近世的な散兵方式ではなく
中世的な集団戦法にならざるを得ないのが未来の宇宙における艦隊戦なのだ。
また銀英伝はラノベではない。まったくもってライトではないし
元々が新書で発売された重厚な「小説」である
かつての日本帝国を持ち出すまでもなく、例えば現在の日本でも
中国や北朝鮮と軍事同盟を結ぶ、といった戦略的柔軟性のある
政治家や官僚が一人でもいるでしょうか。
日米同盟は永遠で現在の日本国のあり方が永遠だと
あなたも信じているのではないですか?
それってゴールデンバウム王朝の貴族や臣民、フェザーン、
同盟の市民たちと同じ思考の硬直ですよね。
この体制は永続すると。人が必ず死ぬように国家も必ず滅ぶ。
銀河英雄伝説で繰り返し語られる警句ですが、
ヤンやラインハルトを「普通の人」呼ばわりしてる人はこの点を
読み落としているのではないでしょうか。
国家は巨大な互助会であり、人の暮らす上での道具に過ぎず、まして人の上位者ではありません。
ヤンやラインハルトは傑出した戦略的・政略的柔軟性を
備えた稀有な天才であると理解できたでしょうか
ラインハルトやヤンと戦い破れた敵将らは軍事常識的に極まっとうな
思考経路を辿っている。これを引き立て役として
愚将やら痴将呼ばわりしてるのは
個人戦闘と大軍の指揮官を混同してる阿呆だけだろう
銀英伝の戦闘が三次元的ではないという的はずれな難癖してる
輩の同類であろう。
よく読解力の無い輩が銀英伝の戦闘は宇宙なのに二次元的だと笑ってるが、
それこそ失笑ものの感想だ。
宇宙の大艦隊戦だからこそ表記が二次元的なのだ。
戦艦と言えど、ある程度まとまってなければ戦力として意味がないのが銀英伝だ。
自然、数千隻~数万隻の群団として動くため、天頂方向から俯瞰してみれば
動きは二次元的に制約さる。上や下から攻撃しようとしても
何万隻もの艦隊戦では隊列がいたずらに伸び遊兵を作るだけで意味がない。
つまり、近世的な散兵方式ではなく
中世的な集団戦法にならざるを得ないのが未来の宇宙における艦隊戦なのだ。
また銀英伝はラノベではない。まったくもってライトではないし
元々が新書で発売された重厚な「小説」である
2020年5月19日に日本でレビュー済み
銀河英雄伝説の主人公は誰か。通常はラインハルトとヤンとするのが普通だと思う。
しかし実は銀河英雄伝説は3重の入れ子構造になっている。
ラインハルトとヤンおよび周囲を取り巻く英雄達自身の視点。
それを同時代の証言者として見つめるユリアンの視点。
さらにそれをある程度の時間を隔てて見つめる後世の歴史家達の視点。
この3つの視点を行ったり来たりすることで、読者は本作をラインハルトやヤンという主人公の独白劇とも見なせるし、ユリアンを主人公とする口承文学とも見なせるし、さらにそれらを包含する後世の歴史家による歴史劇とも見なせる構造になっている。
ユリアンは英雄達と後世の歴史家をつなぐポイントとなっており、ただ単に主人公の1人であるに留まらない非常に重要な役割を担っているのである。
本作品の第3の主人公であるユリアンの登場は、英雄たちの時代の終わりと歴史の始まりを示す転換点となる。
それは、物語後半に入り、後世の歴史家の視点での語りが多くなってくることからも暗示される。おそらく作者は意図的である。
そもそも本作の第1巻は、2801年に西暦が廃止され、宇宙暦が開始してから800年間の歴史劇を概略するところから物語が始まる。最初は悠久たる大河のようであった歴史の流れが、本作の舞台となる僅か数年間、転変極まりない激流に変わり、視点はズームアップして生き生きと躍動する英雄達のドラマを映し出す。そして物語終盤では再び大きく引いて俯瞰する視点に変わる。あたかも幾世紀を隔てた歴史上の人物達を歴史書越しに覗き込んでいるような視点に、徐々に変わっていくのである。
恒星間国家が倒れても、人々の営みだけが変わらず続いていく。ユリアンは英雄達の激動の時代が終わったことを示すために最後に舞台中央に現れ、ドラマの幕を引いて舞台から去っていく。
無数の後世の歴史家たちが、やがてラインハルトとヤンという2人の傑出した天才とその周囲の群像劇を記述していくだろう。
ユリアンはこの舞台の終幕を演じる役者であると同時に、同時代に立ち会った歴史の証言者の1人として後世の歴史家達に肉声を伝えバトンを渡す役割を担っている。
かつてヤンに憧れ民主政治を守護する軍人を志していたユリアンであるが、最終巻では軍事指導者を退き歴史家を志すであろう事が示唆されている。劇中の当事者から客観的な観察者への転換である。
ユリアンは器用貧乏と表現される事がある。戦略はヤンに劣り、空戦はポプランに劣り、格闘戦技はシェーンコップに劣る。
また、軍事指導者としての資質は、ヤンの描いた路線の極めて忠実な継承者ではあったが、それを超えるものではなかったとも後世の歴史家からは評されている。
しかし本作の通奏低音となっているテーマは、「国家でさえ、自由と民主主義という価値観でさえ永遠のものではない」というものである。ユリアンやヤン艦隊の人々が血を流して勝ち取ったハイネセンの内政自治権ですら永劫に続く保証はない。カリンがいみじくも言い当てたように「たったそれだけ」のことなのである。
しかし同時に、ヤンがシェーンコップに語るように、たかだか数十年の平和、その「短い平和はその1/10の期間の戦争より勝る事、幾層倍か」の価値を持っているのだ。
ラインハルトのような歴史の主体的な創造者であった事はなく、常に制約された役割と権限の中で必ずしも望まない役割を演じることを強いられたヤンと、更にその忠実すぎる後継者としてヤンのデザインした政治・軍事的均衡の舵取りという針の穴を通すような難しい役割を任されたユリアン。
しかし、そこに現れたユリアンの軍事的・政治的才幹をヤンやラインハルトと単純に比較して地味なプレイヤーだねと言い捨てる事は、実はあまり意味はない。
ユリアンはこの灼熱した数年間を生き抜く中で、いつしかその記憶を後世に残すのが、この時代を生きた者の義務であり責任であると思うようになる。
ヤンが志しつつも実現できなかった歴史の伝道者としての可能性をユリアンは大きく開花させるのである。
それは、たかだか数十年の平和と民主政の価値をハイネセンに置いて守り抜く、ということ自体の価値もさることながら、その尊さを控えめに照れ臭そうに語ったヤン・ウェンリーという1人の思想家がいたことを後世に語り継ぐ、という点に意義がある。
ユリアンはヤンの政略・戦略面の弟子だと見るといささか狭く見誤る。ヤンが伝えたかったことを受け継ぐ真の意味での後継者なのである。
最後に、旧アニメ第1期で、小椋佳が歌うエンディングテーマ「光の橋を越えて」における印象的な描写を指摘したい。
「光の橋を越えて」をBGMとして、ユリアンはヤンとともに歩み、ヤンに導かれて様々な人々と出会い、別れていく。ユリアンの前に現れる人々は等身大で、ユリアンに挨拶を投げかける。ユリアンはここではあくまで劇中の当事者だ。
しかしやがて父以上であり師以上の存在であるヤンとも別れたユリアンの前に、まるで映画館のスクリーンいっぱいに大写しになったかのようなラインハルトが現れる。ラインハルトは一瞬、ユリアンに視線を向ける。その瞬間、ユリアンとラインハルトの人生は交錯する。ユリアンはその刹那、確かにラインハルトと同じ劇中の当事者であった。
しかしラインハルトはやがて遥か遠くに目を向ける。ユリアンは、いつしか舞台を降り、ラインハルトをいわば映画の中に登場する、歴史上の巨大な存在として眺めているところでエンドとなる。もはや劇中の当事者ではなく、観察者に立ち位置が変わっているのである。
ラインハルトは、「英明な独裁者による専制政治と腐敗した民主制のどちらがましか」という、簡単には解けない命題をユリアンに突きつける。その解答を見出す使命は後世の歴史家、あるいは現代を生きる私たち自身に委ねられるだろう。
英雄達の伝説の終わりと、歴史の始まりを象徴する幕引きではないだろうか。
しかし実は銀河英雄伝説は3重の入れ子構造になっている。
ラインハルトとヤンおよび周囲を取り巻く英雄達自身の視点。
それを同時代の証言者として見つめるユリアンの視点。
さらにそれをある程度の時間を隔てて見つめる後世の歴史家達の視点。
この3つの視点を行ったり来たりすることで、読者は本作をラインハルトやヤンという主人公の独白劇とも見なせるし、ユリアンを主人公とする口承文学とも見なせるし、さらにそれらを包含する後世の歴史家による歴史劇とも見なせる構造になっている。
ユリアンは英雄達と後世の歴史家をつなぐポイントとなっており、ただ単に主人公の1人であるに留まらない非常に重要な役割を担っているのである。
本作品の第3の主人公であるユリアンの登場は、英雄たちの時代の終わりと歴史の始まりを示す転換点となる。
それは、物語後半に入り、後世の歴史家の視点での語りが多くなってくることからも暗示される。おそらく作者は意図的である。
そもそも本作の第1巻は、2801年に西暦が廃止され、宇宙暦が開始してから800年間の歴史劇を概略するところから物語が始まる。最初は悠久たる大河のようであった歴史の流れが、本作の舞台となる僅か数年間、転変極まりない激流に変わり、視点はズームアップして生き生きと躍動する英雄達のドラマを映し出す。そして物語終盤では再び大きく引いて俯瞰する視点に変わる。あたかも幾世紀を隔てた歴史上の人物達を歴史書越しに覗き込んでいるような視点に、徐々に変わっていくのである。
恒星間国家が倒れても、人々の営みだけが変わらず続いていく。ユリアンは英雄達の激動の時代が終わったことを示すために最後に舞台中央に現れ、ドラマの幕を引いて舞台から去っていく。
無数の後世の歴史家たちが、やがてラインハルトとヤンという2人の傑出した天才とその周囲の群像劇を記述していくだろう。
ユリアンはこの舞台の終幕を演じる役者であると同時に、同時代に立ち会った歴史の証言者の1人として後世の歴史家達に肉声を伝えバトンを渡す役割を担っている。
かつてヤンに憧れ民主政治を守護する軍人を志していたユリアンであるが、最終巻では軍事指導者を退き歴史家を志すであろう事が示唆されている。劇中の当事者から客観的な観察者への転換である。
ユリアンは器用貧乏と表現される事がある。戦略はヤンに劣り、空戦はポプランに劣り、格闘戦技はシェーンコップに劣る。
また、軍事指導者としての資質は、ヤンの描いた路線の極めて忠実な継承者ではあったが、それを超えるものではなかったとも後世の歴史家からは評されている。
しかし本作の通奏低音となっているテーマは、「国家でさえ、自由と民主主義という価値観でさえ永遠のものではない」というものである。ユリアンやヤン艦隊の人々が血を流して勝ち取ったハイネセンの内政自治権ですら永劫に続く保証はない。カリンがいみじくも言い当てたように「たったそれだけ」のことなのである。
しかし同時に、ヤンがシェーンコップに語るように、たかだか数十年の平和、その「短い平和はその1/10の期間の戦争より勝る事、幾層倍か」の価値を持っているのだ。
ラインハルトのような歴史の主体的な創造者であった事はなく、常に制約された役割と権限の中で必ずしも望まない役割を演じることを強いられたヤンと、更にその忠実すぎる後継者としてヤンのデザインした政治・軍事的均衡の舵取りという針の穴を通すような難しい役割を任されたユリアン。
しかし、そこに現れたユリアンの軍事的・政治的才幹をヤンやラインハルトと単純に比較して地味なプレイヤーだねと言い捨てる事は、実はあまり意味はない。
ユリアンはこの灼熱した数年間を生き抜く中で、いつしかその記憶を後世に残すのが、この時代を生きた者の義務であり責任であると思うようになる。
ヤンが志しつつも実現できなかった歴史の伝道者としての可能性をユリアンは大きく開花させるのである。
それは、たかだか数十年の平和と民主政の価値をハイネセンに置いて守り抜く、ということ自体の価値もさることながら、その尊さを控えめに照れ臭そうに語ったヤン・ウェンリーという1人の思想家がいたことを後世に語り継ぐ、という点に意義がある。
ユリアンはヤンの政略・戦略面の弟子だと見るといささか狭く見誤る。ヤンが伝えたかったことを受け継ぐ真の意味での後継者なのである。
最後に、旧アニメ第1期で、小椋佳が歌うエンディングテーマ「光の橋を越えて」における印象的な描写を指摘したい。
「光の橋を越えて」をBGMとして、ユリアンはヤンとともに歩み、ヤンに導かれて様々な人々と出会い、別れていく。ユリアンの前に現れる人々は等身大で、ユリアンに挨拶を投げかける。ユリアンはここではあくまで劇中の当事者だ。
しかしやがて父以上であり師以上の存在であるヤンとも別れたユリアンの前に、まるで映画館のスクリーンいっぱいに大写しになったかのようなラインハルトが現れる。ラインハルトは一瞬、ユリアンに視線を向ける。その瞬間、ユリアンとラインハルトの人生は交錯する。ユリアンはその刹那、確かにラインハルトと同じ劇中の当事者であった。
しかしラインハルトはやがて遥か遠くに目を向ける。ユリアンは、いつしか舞台を降り、ラインハルトをいわば映画の中に登場する、歴史上の巨大な存在として眺めているところでエンドとなる。もはや劇中の当事者ではなく、観察者に立ち位置が変わっているのである。
ラインハルトは、「英明な独裁者による専制政治と腐敗した民主制のどちらがましか」という、簡単には解けない命題をユリアンに突きつける。その解答を見出す使命は後世の歴史家、あるいは現代を生きる私たち自身に委ねられるだろう。
英雄達の伝説の終わりと、歴史の始まりを象徴する幕引きではないだろうか。
2015年2月10日に日本でレビュー済み
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第10巻までに至るまでの経過が壮大であり過ぎたので、ちょっと最後の落日はあっけない展開でしたが、そうでもしないと幕を一旦下ろせなかったのでしょう。