タイトルだけ見ると大仰な民主主義論に見えるかもしれないが、本書のテーマは選挙制度や政党制度など、民主主義を活性化させるための選挙関連の制度をいかにしていくべきか、というものである。
重要だがある意味でテクニカルな側面に注力した本であり、「政治家は本当に国民を代表しているのか」「多数派はどこまでの(少数派の見解と異なる)決定を下していいのか」「国民が必ずしも賢明でない状況で民主主義でいいのか」のようなそもそも論は論じられていないし「ポピュリズムは問題か」のような現代社会の争点のような話も出ていない。
そうした議論を期待すると期待外れに終わるので、そのあたりは注意してもらいたい。
まず第I部では小選挙区、比例代表といった選挙制度の話が出ている。小選挙区だと大政党への集約が起きる一方で、比例代表だと(連立交渉などで誰が与党になるか分からないし、そもそも与党のどの党の責任か分からないため)失政への責任追及がしづらくなる。そして中選挙区制は双方の悪い部分がより現れる制度で、妥当性は非常に乏しい位置づけがなされている。
第I部の内容は、
日本の選挙
の内容をややかみ砕いたものに近いと思うといいだろう。
第II部は政党システムの話である。政党は嫌われがちだが、個人レベルの無原則で継続性の乏しい政治を避けて、継続的で安定した政治を実現するには政党は必要である。そのためには政党ラベルが機能するため、一貫性が必要である。自民党の党内審議システムは党の中での賛成を取り付けて、党員のバラバラで勝手な行動を避けるのに役立っていた。政党のリーダーを巡っては党内争いも起こりがちだが、選挙結果を踏まえての交代というのは理にかなっているし受け入れられやすい。逆に野党が選挙と無関係のタイミングで党首選を行って内部分裂を起こすのはあまり合理的でないと筆者は指摘する。
政党は政治に必要なものなので助成がされているが、日本は政党の要件が緩すぎるという指摘もある(ドイツでは「政党法」があり、政党の意思決定方法や党員の権利などが定められている)
III,IV部では続けて二院制、地方政治との関係、選挙管理、選挙のタイミングなど多様な話題が概説されている。
基本的な解説から始めているが、なかなか鋭い指摘も多い。
本書で印象に残った指摘を少し挙げておく
・比例復活は嫌われがちだが、地域(選挙区)のためよりも党や国全体のために選挙期間は活動し、そういう人の当選を確保するという面もある。ドイツのコール首相は4回も落選して比例復活している。
・女性議員比率の高い国は比例制を導入している国が多い。実際、小選挙区でジェンダー比のコントロールをすることは難しい。
・政党間での差異よりも、同一政党内の地域間の差異の方が大きいこともある
・一票の格差の話はほとんど両端の選挙区を調整するだけで、全体の不均衡はほとんど解消されていない
・県境を維持し、市は分割せず、飛び地を作らないという条件下では、一票の格差が2倍を下回るような選挙区分割は困難
・2013参院選の高松や2014衆院選の仙台などで、選管が票を紛失し、それをごまかすために白票を水増ししたという不正が報告されている。
選挙の制度や枠組、あるいは政党制度など、渋いけれども重要な要素を平易に書いてくれている好著である。
本書では議論されていない、現代の民主主義のそもそもの理念と現実の関係は、
代議制民主主義
が鋭い指摘の多い好著であり、本書と部分的には重なりつつも相補的な役割を果たしてくれるだろう。
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民主主義の条件 単行本 – 2015/3/27
砂原 庸介
(著)
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大人が学んでおきたい「政治のしくみ」基礎のキソ。
民主主義の根幹を、サントリー学芸賞受賞・新進気鋭の政治学者が一からわかりやすく解説する。
日本政治をリアルに理解するための新常識が、この1冊に凝縮!
・そもそも選挙で「いちばんいい候補」を選べるの?
・自民党はなぜ強いのか?これからも強いのか??
・なぜ、町村議会議員は「無所属」ばかりなのか?
・18歳が選挙権を持つってどういうこと?
・ダメ党首を辞めさせるには?
・参議院っていらなくない?
・どうして「高齢者」と「農村」が優先されるのか?
・「AKB総選挙」とふつうの選挙の共通点は?
・「統一地方選挙」って何の意味があるの?
読めば、こんなソボクな疑問もスッキリ解けて、
明日からニュースの見方が変わる!
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- 本の長さ239ページ
- 言語日本語
- 出版社東洋経済新報社
- 発売日2015/3/27
- 寸法13.2 x 1.5 x 18.8 cm
- ISBN-104492212205
- ISBN-13978-4492212202
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商品の説明
著者について
砂原 庸介(スナハラ ヨウスケ)
政治学者(大阪大学大学院法学研究科准教授)
大阪大学大学院法学研究科准教授。専門は行政学・地方自治。1978年、大阪府生まれ。東京大学教養学部卒業、同大学院総合文化研究科後期博士課程単位取得退学。博士(学術)。日本学術振興会特別研究員(PD)、大阪市立大学大学院法学研究科准教授を経て現職。著書に『地方政府の民主主義――財政資源の制約と地方政府の政策選択』(有斐閣、日本公共政策学会賞受賞)、『大阪――大都市は国家を超えるか』(中公新書、サントリー学芸賞受賞)などがある。
政治学者(大阪大学大学院法学研究科准教授)
大阪大学大学院法学研究科准教授。専門は行政学・地方自治。1978年、大阪府生まれ。東京大学教養学部卒業、同大学院総合文化研究科後期博士課程単位取得退学。博士(学術)。日本学術振興会特別研究員(PD)、大阪市立大学大学院法学研究科准教授を経て現職。著書に『地方政府の民主主義――財政資源の制約と地方政府の政策選択』(有斐閣、日本公共政策学会賞受賞)、『大阪――大都市は国家を超えるか』(中公新書、サントリー学芸賞受賞)などがある。
登録情報
- 出版社 : 東洋経済新報社 (2015/3/27)
- 発売日 : 2015/3/27
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 239ページ
- ISBN-10 : 4492212205
- ISBN-13 : 978-4492212202
- 寸法 : 13.2 x 1.5 x 18.8 cm
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トップレビュー
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2015年5月13日に日本でレビュー済み
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選挙制度の仕組みを中心に民主主義について書いた本です。
したがって精確には民主主義の条件の一部を書いた本と言えます。
選挙制度の多様性
選挙制度を変えることで政治家に与える影響
選挙制度が政党に与える影響
これからの選挙制度をどうしていくべきか
といった内容になっており、選挙制度を考える人以外にはお勧め出来ません。
したがって、多くの人がぜひ読むべき!とまではいかないと思います。
したがって精確には民主主義の条件の一部を書いた本と言えます。
選挙制度の多様性
選挙制度を変えることで政治家に与える影響
選挙制度が政党に与える影響
これからの選挙制度をどうしていくべきか
といった内容になっており、選挙制度を考える人以外にはお勧め出来ません。
したがって、多くの人がぜひ読むべき!とまではいかないと思います。
2024年2月12日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
「選挙や政党に注目しながら、民主的な意思決定を実現するための政党政治のルール(p.216)」を考える書。選挙と政党についてのみ書かれていて、書名よりはかなり限定的な議論である。
10年近く前の刊行なのでやや古びた内容もあるが(たとえばAKB48総選挙)、制度論なので現在も十分通用する。著者によれば「選挙や政党などの民主主義を前提とした政治制度をめぐる議論は……冷戦が終結した1990年頃から、大きく進歩しました。(p.233)」とのこと。現実の政治の動向が政治学を変えるということか。
興味深いのは、「本書のポイントは、『私たちが意思決定を行うとき、どのようにして多数派を作るか』を考える(p.13)」「鍵になるのは『政党』です。(p.15)」等とあり、政党の意義を重視している点。政党不信・代議制民主主義不信への警鐘と言うべきか。
「選挙サイクルも、広い意味での選挙制度として考えることが重要なのです。(p.163)」、(首相の解散権について)「恣意的な解散を封じるというだけでは、首相をはじめ政党のリーダーが、政党のメンバーを従わせる重要な手段が失われることになります(p.165)」等、「そこは考えていなかったなー」と思う記述が何カ所も。
どちらかというと著者は「政治に対し責任を問いやすい制度(p.54)」として多数制(小選挙区制)を支持しているらしいところも「へえ」と思った。私は、民意の(比例的な)反映という点から比例制が良いだろうと思い込んでいたので。
文章は平易で、各章末にまとめもあり読者フレンドリーである。
10年近く前の刊行なのでやや古びた内容もあるが(たとえばAKB48総選挙)、制度論なので現在も十分通用する。著者によれば「選挙や政党などの民主主義を前提とした政治制度をめぐる議論は……冷戦が終結した1990年頃から、大きく進歩しました。(p.233)」とのこと。現実の政治の動向が政治学を変えるということか。
興味深いのは、「本書のポイントは、『私たちが意思決定を行うとき、どのようにして多数派を作るか』を考える(p.13)」「鍵になるのは『政党』です。(p.15)」等とあり、政党の意義を重視している点。政党不信・代議制民主主義不信への警鐘と言うべきか。
「選挙サイクルも、広い意味での選挙制度として考えることが重要なのです。(p.163)」、(首相の解散権について)「恣意的な解散を封じるというだけでは、首相をはじめ政党のリーダーが、政党のメンバーを従わせる重要な手段が失われることになります(p.165)」等、「そこは考えていなかったなー」と思う記述が何カ所も。
どちらかというと著者は「政治に対し責任を問いやすい制度(p.54)」として多数制(小選挙区制)を支持しているらしいところも「へえ」と思った。私は、民意の(比例的な)反映という点から比例制が良いだろうと思い込んでいたので。
文章は平易で、各章末にまとめもあり読者フレンドリーである。
2021年11月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
本書のタイトルは「民主主義の条件」であるが、内容は「機能する多数派」論に基づいた政治評論である。政治家達が組織を形成することの効能が強調される本書の中で、著者が常に注意を促すのは、取られる政策が一貫しないこと、政党の統率がとれないことなどである。
著者は、有権者の不満を大多数の有権者の決定が議会に反映されにくことに求めている。しかし、多くの有権者がそもそも自分達の代表がいないと感じたり、無理な選択を強制されていると感じている可能性に十分に触れることはない。それゆえに、小党分立や党内不一致・中選挙区制復活論に対する著者の批判的な筆致は一方的で説得力を欠く。著者の問題意識が、政治から疎外されがちな一国民の視点ではなく、行政の一貫性といった大所高所に立った官僚的な視点にあるからであろうか。
著者は選挙制度について多くのページを割き、選挙制度を理念的に論じることの必要性を説く。しかし、本書には併用制や連用制についての理論的で丁寧な説明はなく、ドント式のロジックについても高等学校の教科書レベルの解説にとどまる。著書は、おかしな混合制度への選挙制度改革論を批判するが、その原因の一端が、このような政治学者の努力不足・実力不足にある可能性については言及がない。また、本書の終わりでは、第三者機関による選挙制度改革を提唱されている。しかし、発足以来、小選挙区制導入に走らんがために、国会決議を無視して定数是正をサボタージュしてきた選挙制度審議会の負の歴史には全く触れていない。
本書の論旨は、加藤秀治郎「日本の選挙」と重なるところが多く、「日本の選挙」と同時に読んで見ることでワーキングマジョリティ論についての理解が深まるであろう。
著者は、有権者の不満を大多数の有権者の決定が議会に反映されにくことに求めている。しかし、多くの有権者がそもそも自分達の代表がいないと感じたり、無理な選択を強制されていると感じている可能性に十分に触れることはない。それゆえに、小党分立や党内不一致・中選挙区制復活論に対する著者の批判的な筆致は一方的で説得力を欠く。著者の問題意識が、政治から疎外されがちな一国民の視点ではなく、行政の一貫性といった大所高所に立った官僚的な視点にあるからであろうか。
著者は選挙制度について多くのページを割き、選挙制度を理念的に論じることの必要性を説く。しかし、本書には併用制や連用制についての理論的で丁寧な説明はなく、ドント式のロジックについても高等学校の教科書レベルの解説にとどまる。著書は、おかしな混合制度への選挙制度改革論を批判するが、その原因の一端が、このような政治学者の努力不足・実力不足にある可能性については言及がない。また、本書の終わりでは、第三者機関による選挙制度改革を提唱されている。しかし、発足以来、小選挙区制導入に走らんがために、国会決議を無視して定数是正をサボタージュしてきた選挙制度審議会の負の歴史には全く触れていない。
本書の論旨は、加藤秀治郎「日本の選挙」と重なるところが多く、「日本の選挙」と同時に読んで見ることでワーキングマジョリティ論についての理解が深まるであろう。
2015年4月11日に日本でレビュー済み
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政治、とりわけ選挙制度について分かりやすくまとまっている。高校生、大学生への政治の教科書として良いのではないか。
2016年7月18日に日本でレビュー済み
現行日本と世界の政治制度の実像とその問題点を、きわめて平易な語り口で解き明かしている。
もとは東洋経済新報の連載であり、一般向けに書かれている。
政治制度-その中核は選挙制度になるだろうが、多数制と比例制とそれぞれに理念があり
国ごとにどちらかを選択するのが普通。その原則から言えば日本の参院選と
県議選はまったく理念のない無秩序状態というべきものであること。
改革するべきはこの2つであり、県議選は非拘束名簿式比例代表制が考えられること。
参院選は1県1人の地域代表性も考えられること。
以上のような、既存の制度をぶち破るような大胆な論考であるにも関わらず
力まずに述べられていて、現行制度の問題点や遠大な改革策も
冷静な筆致の政治学者の手にかかればこのように平易に語られるのだから恐れいった。
もとは東洋経済新報の連載であり、一般向けに書かれている。
政治制度-その中核は選挙制度になるだろうが、多数制と比例制とそれぞれに理念があり
国ごとにどちらかを選択するのが普通。その原則から言えば日本の参院選と
県議選はまったく理念のない無秩序状態というべきものであること。
改革するべきはこの2つであり、県議選は非拘束名簿式比例代表制が考えられること。
参院選は1県1人の地域代表性も考えられること。
以上のような、既存の制度をぶち破るような大胆な論考であるにも関わらず
力まずに述べられていて、現行制度の問題点や遠大な改革策も
冷静な筆致の政治学者の手にかかればこのように平易に語られるのだから恐れいった。
2015年7月19日に日本でレビュー済み
日本という国で、民主主義がどのように誤解されてきたのか、というのはある。
多数決がすべてではなく、少数派の意見も聞くべきだとか。
とまあ、そういう背景の上で、本書は民主主義を実現するための選挙制度と政党のあり方にフォーカスされているといってもいい。
でも、違和感の方が大きい。選挙制度には、小選挙区制と大選挙区・比例代表制とあって、有権者の支持多数をより多くして国会で決定しやすくするか、比例代表制で多様な意見を反映させるか、とかそんなことになるのだけれども。でも、その前提がそもそも共有されていると思えない。直近でいえば、アベノニクスによる景気回復を信用して多くの投票を得た政権が、実はアベノミクスにまったく興味がなく、安保/戦争法案に暴走する姿は、多様な価値観を二択になってしまう小選挙区制ではすくいとれないということを示しているのだと思う。
そして、これは政党のあり方についても、著者との間で違和感がある。ガバナンスみたいなこと以前に、政党として公約したことについては、個々の政治家がそこにしたがっていくというのは、当然なのだけれども、個々の政治家の掲げている政策というのもある。これも、多様な問題がある中で、政党として決めることができないような問題があるということだけれども。国会議員は単純に政党の頭数の問題ではなく、いろいろと仕事をしてほしいと思うし、多様な課題に対応するために、多様な政治家がそこに参加するというものなのだろうと思う。実際に、米国では共和党や民主党には、強い党議拘束はないし、どんなに一方の政党が過半数をとっていても、個々の政治家を納得させていかないと法案は成立しない。
したがって、著者の意見とは異なり、今の日本の政党に必要なものは、政策立案能力なのだと思う。それは政党が政策シンクタンクを抱えることもあるだろうし、個々の政治家が政策立案スタッフを持つこともあると思う。それがないから、役所に丸投げしてしまう、そっちの方がはるかに問題。
結局のところ、日本が抱える政治の問題は、本質的には制度の問題や形式の問題などではなく、単純に「考えていないこと」だし、だから「考えるしくみ」が必要。という意味で、本書は今の日本において、あまり有意義ではないと思う。
多数決がすべてではなく、少数派の意見も聞くべきだとか。
とまあ、そういう背景の上で、本書は民主主義を実現するための選挙制度と政党のあり方にフォーカスされているといってもいい。
でも、違和感の方が大きい。選挙制度には、小選挙区制と大選挙区・比例代表制とあって、有権者の支持多数をより多くして国会で決定しやすくするか、比例代表制で多様な意見を反映させるか、とかそんなことになるのだけれども。でも、その前提がそもそも共有されていると思えない。直近でいえば、アベノニクスによる景気回復を信用して多くの投票を得た政権が、実はアベノミクスにまったく興味がなく、安保/戦争法案に暴走する姿は、多様な価値観を二択になってしまう小選挙区制ではすくいとれないということを示しているのだと思う。
そして、これは政党のあり方についても、著者との間で違和感がある。ガバナンスみたいなこと以前に、政党として公約したことについては、個々の政治家がそこにしたがっていくというのは、当然なのだけれども、個々の政治家の掲げている政策というのもある。これも、多様な問題がある中で、政党として決めることができないような問題があるということだけれども。国会議員は単純に政党の頭数の問題ではなく、いろいろと仕事をしてほしいと思うし、多様な課題に対応するために、多様な政治家がそこに参加するというものなのだろうと思う。実際に、米国では共和党や民主党には、強い党議拘束はないし、どんなに一方の政党が過半数をとっていても、個々の政治家を納得させていかないと法案は成立しない。
したがって、著者の意見とは異なり、今の日本の政党に必要なものは、政策立案能力なのだと思う。それは政党が政策シンクタンクを抱えることもあるだろうし、個々の政治家が政策立案スタッフを持つこともあると思う。それがないから、役所に丸投げしてしまう、そっちの方がはるかに問題。
結局のところ、日本が抱える政治の問題は、本質的には制度の問題や形式の問題などではなく、単純に「考えていないこと」だし、だから「考えるしくみ」が必要。という意味で、本書は今の日本において、あまり有意義ではないと思う。
2015年5月18日に日本でレビュー済み
政治嫌いで投票にもほとんど行かなかったが、さすがによくないと思い始めた時にこの本を知った。
なぜ自分が政治嫌いなのかはっきり意識することができた。
1つは選挙で自分の意思は反映されないだろうと思えること。
もう1つは、選挙ごとの検討事項の多さ。どうやら今の仕組みでは、政党や被選挙者は選挙のたびに違うことを言わざるを得ない仕組みになっているらしい。
初心者向けの政治の本をそれほど読んだわけではないけど、かなりわかりやすい本ではないだろうか。
流暢な文体でなく最初は読みづらかったが、目的がはじめに示されており、章立ても分かりやすく1章が短いのでコツコツと読み進めることができる。
あくまで専門家以外に向けて書かれているので、政治音痴でも読めばきちんと理解できる。
決して政治に参加しろと声高に言っているわけでもないけど民主主義の仕組みの価値が語られていて、選挙に参加することに意味はあるかもと感じられた。
なぜ自分が政治嫌いなのかはっきり意識することができた。
1つは選挙で自分の意思は反映されないだろうと思えること。
もう1つは、選挙ごとの検討事項の多さ。どうやら今の仕組みでは、政党や被選挙者は選挙のたびに違うことを言わざるを得ない仕組みになっているらしい。
初心者向けの政治の本をそれほど読んだわけではないけど、かなりわかりやすい本ではないだろうか。
流暢な文体でなく最初は読みづらかったが、目的がはじめに示されており、章立ても分かりやすく1章が短いのでコツコツと読み進めることができる。
あくまで専門家以外に向けて書かれているので、政治音痴でも読めばきちんと理解できる。
決して政治に参加しろと声高に言っているわけでもないけど民主主義の仕組みの価値が語られていて、選挙に参加することに意味はあるかもと感じられた。