なぜ日本が10年以上もの間デフレに陥ったのかについて書いた本は沢山あります。
安達氏は外資系金融機関に勤務しながら、マクロ経済学の知見に基づいた立場でデフレが終わるとき何が起こるのかを予言します。巷に氾濫する経済ハルマゲドン本とは全く趣を異にする名著です。
昔、歴史の授業では「ある日突然ニューヨークの株式市場が大暴落して世界中が不景気になり、第2次大戦が起こってその戦争特需で景気が復活した」、と習いました。しかし、これではあまりにも事実を端折りすぎです。なぜ恐慌(デフレ)が発生したのか、そしてそこから先人たちはどうやって脱出したのか、肝心な事は何も分かりません。
金本位制は通貨の発行量が金の産出量によって制限されます。よって、取引される物に対して十分な通貨が供給できなくなるとデフレになります。よって、金本位制は基本的にはデフレレジームです。
世界恐慌は第1次大戦後各国が金本位制に復帰したことにより発生しました。よって、金本位制を再び放棄した国から、経済はすばやく復活します。元々金本位制を取らなかったスペインでは恐慌そのものが発生しませんでした。
今日本でとられている量的緩和政策は多少乱暴な田対比ですがこの金本位制放棄と同等の効果を持っています。
「早すぎる量的緩和政策の解除(いわゆる出口政策)はデフレへの急激な逆戻りを招きかねない。」ということを安達氏は繰り返し述べています。
70年前の世界恐慌からの回復過程を詳細に追うと、レジーム転換は2段階で行われることが分かります。日本の場合その2段階とは「金本位制からの離脱」と「日銀による国債の直接引き受け」でした。
現在の日銀の政策審議委員には債券市場(というか短資会社)の回し者のようなMさんという人がいます。彼はしきりに「市場機能の復活が必要だ」とか言いつつ、量的緩和の早期解除を主張しています。Mさんのような歴史に学ばない人々によって、日本は経済政策を誤り続けてきました。
レジーム転換は2段階で行われるのであれば、量的緩和は第1段階です。ですから、今は量的緩和の解除よりも、日銀による国債の直接引き受け(長期国債の買い切りオペレーションの上限を撤廃)こそ早期に実施すべきだとする著者の主張には非常に説得力があります。
私のような経済学のトレーニングを受けていないDQNでもこの本の内容は理解できました。この不況の原因を単なる根性論(構造改革)で片付けることに疑問を感じている人にはお勧めの1冊です。
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デフレは終わるのか 単行本 – 2005/2/1
安達 誠司
(著)
日本経済の本格的な停滞脱出はまだなのか? デフレが終わるとき、マーケットには何が起きるのか? 気鋭の実力派エコノミストが、データに基づいて緻密な予想を繰り広げる。
- 本の長さ286ページ
- 言語日本語
- 出版社東洋経済新報社
- 発売日2005/2/1
- ISBN-104492394362
- ISBN-13978-4492394366
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登録情報
- 出版社 : 東洋経済新報社 (2005/2/1)
- 発売日 : 2005/2/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 286ページ
- ISBN-10 : 4492394362
- ISBN-13 : 978-4492394366
- Amazon 売れ筋ランキング: - 331,168位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2005年5月23日に日本でレビュー済み
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デフレは純粋に貨幣的現象であるから、正しい金融政策が実行されることによって必ず克服できる、ということが解説されている。金融面に焦点を当てながらも、幅広い側面から語られていてわかりやすい。(特に数学嫌いの私には数式の出てこない経済書はありがたい。)
デフレが貨幣的現象であることの説明として、過去のデフレ期に金本位制が密接にかかわっていたとの事例はわかりやすかった。通貨の供給不足と為替政策の関係も興味深く読んだ。ただ、純粋に貨幣的現象であるとしても、デフレに構造要因の影響がほとんど無いという議論はやはりどうもぴんと来ない。中国の安価な製品が原因との説を唱えていたのはエコノミストよりはジャーナリストであったにしても、その他諸々の構造要因説はそれなりに説得的であるし、身の回りのミクロ的現象を見ても、やはり何らかの構造的背景の無いところにデフレ現象だけが出現するとは思い難い。
何れが原因であるにせよ、純粋な貨幣現象であることの認識がデフレ克服のレシピにはまず必要、という点は十分説得的だった。
デフレが貨幣的現象であることの説明として、過去のデフレ期に金本位制が密接にかかわっていたとの事例はわかりやすかった。通貨の供給不足と為替政策の関係も興味深く読んだ。ただ、純粋に貨幣的現象であるとしても、デフレに構造要因の影響がほとんど無いという議論はやはりどうもぴんと来ない。中国の安価な製品が原因との説を唱えていたのはエコノミストよりはジャーナリストであったにしても、その他諸々の構造要因説はそれなりに説得的であるし、身の回りのミクロ的現象を見ても、やはり何らかの構造的背景の無いところにデフレ現象だけが出現するとは思い難い。
何れが原因であるにせよ、純粋な貨幣現象であることの認識がデフレ克服のレシピにはまず必要、という点は十分説得的だった。
2005年2月28日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
デフレに関するトピックスをまとめたもの。二、三年前から経済論戦で激論になった話題についての平易な解説もなされており、極めてわかりやすい経済書。著作のトピックスの多くは、多くのエコノミストによってこれまでも新聞や週刊誌などで議論されているが、そのほとんどが感情論や言葉遊びに過ぎず、知的な欲求不満状態だったが、この本ではこれを解消させてくれるに十分な冷静な分析がなされている。ということでいい本。