経営思想史上の巨人たちの生い立ちと裏話を集めた本です。その裏話に関して相当数の引用文献を載せています。
登場するのは、、
『科学的管理法』(
The Principles of Scientific Management
)のフレデリック・テイラー
子供たちの書いた『
一ダースなら安くなる
』で有名なギルブレス夫妻とガント・チャートのガント
テイラー主義の経営コンサルタントのメアリ・フォレット
ホーソン実験のメイヨー
『
経営者の役割
』を書いたチェスター・バーナード
統計学的品質管理のエドワーズ・デミング
誰もが知っているピーター・ドラッカー
です。
なお、最初の章はアメリカ史の中の奴隷、紡績女工、移民労働者の扱われ方の歴史です。
アメリカ人の書いた本ですので、アメリカ人またはアメリカで活躍した人物のみが対象です。また、アメリカで売る本ですので、アメリカ中心の記述です。デミングの章など、日本人から見ると一方的と思われるような記述もあります。総じて、欠点の指摘が多くあります。テイラーに大言壮語する癖があったというのは別として、身長が低かったこと、また、フォレットが女同士で結婚していたなどの推測は余計なことと思ってしまいました。
なお、翻訳はあまり上手とは言えません。明らかな誤訳とまでは言い切れないかもしれませんが、変な翻訳です。読みにくかったので、ネットで一部公開されている部分と比較してみました。証拠も出さずに翻訳を云々できないので、以下に書きますが、興味がなければ飛ばしてください。
第一章のタイトル 「・・・人材マネジメント」
原文 Handling People in Early America
対案 「労働者の扱い」
第1行目 「明らかな矛盾があるように・・・」
原文 seems a contradiction in terms.
対案 「矛盾した言い方に聞こえるかもしれない。」
注釈 オンラインの英和辞典によると、熟語in termsに「明らかに」という意味もあるようですが、この場合の意味は「用語の矛盾に見える」でしょう。
第3行目 「民主主義的な政治感」
原文 democratic political values at heart of American culture.
対案 「アメリカ文化の核心である民主的な運営という価値観」
注釈 企業の経営の話ですから、政治ではなく、管理の仕方やものごとの進め方です。Policyが政策でないのと同じです。
第4行目 「・・・この点を覆い隠そうとしてきたが、本書では、むしろこの点を・・・」
原文 This book argues that remembering that contradiction rather than covering it up, as many gurus have done, is ...
対案 「本書はこの矛盾を、経営論の大家たちがしてきたようにうやむやにするのではなく、むしろ・・・」
注釈 「この点」だと何を指しているのかわかりません。原文にあるように「この矛盾」というべきです。
第6行目 「『非アメリカ的である』とのレッテルを貼るのがよいだろう。」
原文 Calling management un-American is a good way to remember its contradiction of democracy.
対案 「マネジメントが非アメリカ的だというのは民主主義との矛盾を忘れないための言い方だ。」
注釈 原文は第1行目の表現が繰り返されています。ですので、同じ言い方をすべきです。「レッテルを貼る」という言い方には「勝手な決め付け」という語感があります。
第10行目 「プラトンやマキャベリといった・・・」
原文 serious thinkers from Plato to Machiavelli ...
対案 「プラトンからマキャベッリまでの真摯な思想家たち」
注釈 原文は単なる併記ではなくプラトンからマキャベリまでの長い年月を強調したいのです。
もう少し丁寧に翻訳してあれば読みやすい本だったと思います。原文と比べ無駄に長くなっているようにも感じます。
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経営理論 偽りの系譜―マネジメント思想の巨人たちの功罪 単行本 – 2006/2/1
- 本の長さ255ページ
- 言語日本語
- 出版社東洋経済新報社
- 発売日2006/2/1
- ISBN-104492521593
- ISBN-13978-4492521595
登録情報
- 出版社 : 東洋経済新報社 (2006/2/1)
- 発売日 : 2006/2/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 255ページ
- ISBN-10 : 4492521593
- ISBN-13 : 978-4492521595
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,041,981位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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- - 95,940位ビジネス・経済 (本)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2007年6月18日に日本でレビュー済み
この本の基本的な考え(ごく簡単に書くと)
1、マネジメントは、パワーや恐れを用いるなど、民主主義の思想と反するものである。
2、しかし、企業活動において、パワーや恐れなどを用いるのは不可避で、それをボトムアップにしようとしたり、心理療法を施そうとしたり、経営者に道徳を求めたりするのは、企業活動の本質を隠避するので、よくない。
3、ゆえに、企業における権力行使に道徳的正統性がないことを直視して、権力を用いる側も用いられる側もそれなりの対応をすべきである。
評価
基本的な考えに沿って一貫した批判がなされている。ただ、イマイチ主張が悲観的なところがあるので評価は分かれるだろう。ゆえに、星1つ減らして、星4つ。
1、マネジメントは、パワーや恐れを用いるなど、民主主義の思想と反するものである。
2、しかし、企業活動において、パワーや恐れなどを用いるのは不可避で、それをボトムアップにしようとしたり、心理療法を施そうとしたり、経営者に道徳を求めたりするのは、企業活動の本質を隠避するので、よくない。
3、ゆえに、企業における権力行使に道徳的正統性がないことを直視して、権力を用いる側も用いられる側もそれなりの対応をすべきである。
評価
基本的な考えに沿って一貫した批判がなされている。ただ、イマイチ主張が悲観的なところがあるので評価は分かれるだろう。ゆえに、星1つ減らして、星4つ。
2006年10月13日に日本でレビュー済み
・厳しいご批判をされる本かもしれませんが、MBA程度の学力をお持ちの方々は、「これは面白い」と思って、読み進んでおられることと推測されます。なぜなら、どこの経営学入門書にもあるような「定食メニュー」でなく、著者の偏見的な選択眼に適った「経営学の巨人」たちを取り上げているからであろう。
・筆者としては、ガント(QC7つ道具のガントチャートで有名)、デミング(デミング賞、QCで有名)、フォレット女史(ドラッカーに影響与えた)、ドラッカー(正に経営学の巨人)の4章が、特に気に入っています。彼・彼女らの伝記であり、裏話も諸処に盛り込んであり楽しく読めます。
・アメリカと言う「夢を追った人々」が創った新興国ならばこそ、このような「マネジメント」が発達したことが分かります。
・さらに、アメリカ独特の奴隷制を第一章において語り始めたことは「変な違和感」を読者に持たせるが、それが「マネジメントの持つ本質」とも言えるので興味を持って読み進んで仕舞います。
・ただ一点、文中に「彼らの遺した理論は、結果として企業や社会の現実からかけ離れたものになってしまった」、「今日、経営者やマネジャーたちが誤った行動をとる原因は、こうした偉大な思想の幻影に惑わされているからではないかーー」とあるが、こうした誤った行動のお陰でアメリカはじめ今の先進国は経済的に豊かな国になりえたとも言えるので、筆者はこの文には賛成出来かねる。今後はこの豊かさを人間的な豊かさを求める方向に持って行くことが大切であると考える。
・筆者としては、ガント(QC7つ道具のガントチャートで有名)、デミング(デミング賞、QCで有名)、フォレット女史(ドラッカーに影響与えた)、ドラッカー(正に経営学の巨人)の4章が、特に気に入っています。彼・彼女らの伝記であり、裏話も諸処に盛り込んであり楽しく読めます。
・アメリカと言う「夢を追った人々」が創った新興国ならばこそ、このような「マネジメント」が発達したことが分かります。
・さらに、アメリカ独特の奴隷制を第一章において語り始めたことは「変な違和感」を読者に持たせるが、それが「マネジメントの持つ本質」とも言えるので興味を持って読み進んで仕舞います。
・ただ一点、文中に「彼らの遺した理論は、結果として企業や社会の現実からかけ離れたものになってしまった」、「今日、経営者やマネジャーたちが誤った行動をとる原因は、こうした偉大な思想の幻影に惑わされているからではないかーー」とあるが、こうした誤った行動のお陰でアメリカはじめ今の先進国は経済的に豊かな国になりえたとも言えるので、筆者はこの文には賛成出来かねる。今後はこの豊かさを人間的な豊かさを求める方向に持って行くことが大切であると考える。