かつて日本企業は強かった。
その強みの源泉は、「企業内に発達した横のネットワークを基盤としてミドル・マネジメントたちが自由闊達に議論を戦わせ、緊密なコミュニケーションをとりながら戦略(創発戦略)を生成し、その実行にコミットしていくという組織(3ページ)」にあった。
しかし、現在の日本企業は過剰な組織内調整が必要な重い組織になり、戦略不全に陥っている。
本書は、上記の問題に対して、大手日本企業19社の111BU(Business Unit)に対するアンケート調査を分析することにより、その因果構造を明らかにしようという一橋大学のプロジェクトの成果である。
まず、「組織の重さ」の指標を定義し、その後の章でアンケート項目と「組織の重さ」の関係を、6つの視点から分析している。ここで、「計画と組織の重さ」や「BU長のパワーと組織の重さ」など興味深い結果が示されている。
詳細な分析をベースにして、本書の終章では、重い組織を克服して、再び創発戦略を機能させる組織を取り戻すためには、BU長の強力なリーダーシップやヒエラルキーを流れる情報の増加等、機械的(軍隊的)組織の充実が必要であるとしている(208ページ)。一般的には、組織を軽くするためには、権限を委譲して組織を自律分散型にすべきと思いがちだが、日本企業においてはその逆ではないか!というのが本書の主張であり、面白い点である。
データの読み方には恣意性は不可避である。本書の主張が正しいかどうかは、本書に記されているデータを眺めながら、各自で考えてみるべきだろう。データを見ずに結果だけを参照するのは本書の正しい読み方ではないし、大規模な実証調査を遂行した著者の本意でもないと思う。
もちろん、本書が日本型組織の再活性化に向けた処方箋を考えるための貴重な「材料」であることは間違いない。本分野の研究者にとっては必読の書であるが、企業の現場のマネジャーにも読んでもらいたい本である。
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組織の〈重さ〉: 日本的企業組織の再点検 単行本 – 2007/8/1
沼上 幹
(著)
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- ISBN-104532133378
- ISBN-13978-4532133375
- 版New
- 出版社日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
- 発売日2007/8/1
- 言語日本語
- 本の長さ262ページ
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登録情報
- 出版社 : 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版; New版 (2007/8/1)
- 発売日 : 2007/8/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 262ページ
- ISBN-10 : 4532133378
- ISBN-13 : 978-4532133375
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2010年9月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2011年4月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
「重い組織」とは「通常の組織運営や創発戦略の生成・実現に際してミドル・マネジメント層が苦労する組織」であり、そのような「組織劣化の程度」を<重さ>としています。
一番面白かったのは、ミドル/ロワーの構成員が組織の「重さ」を比較的感じないのは、有機的組織と機械的組織が共存している状態、言い換えると縦の公式組織と横の非公式組織が共に機能している状態であることです。組織論の基本となるいわゆる官僚的な縦の支持命令報告ルートを適切な情報が流れ、かつ非公式なつながりに基づく有機組織が補完している状態、とはどちらかに極端に触れやすい組織論において、当然かもしれませんが王道を行く回答の証明と言えるのではないでしょうか。奇抜な非現実的なアイディアを提示するのではなく、学術的に、実務家としての実感をしっかりサポートしてくれる良著です。
一番面白かったのは、ミドル/ロワーの構成員が組織の「重さ」を比較的感じないのは、有機的組織と機械的組織が共存している状態、言い換えると縦の公式組織と横の非公式組織が共に機能している状態であることです。組織論の基本となるいわゆる官僚的な縦の支持命令報告ルートを適切な情報が流れ、かつ非公式なつながりに基づく有機組織が補完している状態、とはどちらかに極端に触れやすい組織論において、当然かもしれませんが王道を行く回答の証明と言えるのではないでしょうか。奇抜な非現実的なアイディアを提示するのではなく、学術的に、実務家としての実感をしっかりサポートしてくれる良著です。
2008年5月2日に日本でレビュー済み
経営に関する本では、
経営者・コンサルタントの著作であればまだしも、
アカデミックな研究書であっても、
恣意的で少数の事例からの帰納か、実証のない「べきである」でまとめられているものが多い。
その中にあって、丹念なデータ分析に基づいた本書は稀有な存在である。
日本の企業という身近にある観察対象をじっくりと見つめなおし、
ブームやプロパガンダではない、きちんとした研究成果として評価できる。
日本企業の経営実態は、
80年代後半に、相対的なパフォーマンスの良さから、
世界をリードする“日本的経営”と礼賛され、
バブル崩壊とともに、諸悪の根源にまで貶められた。
この10年、多くのコンサルタントや経営学者が
その良し悪しを真摯な姿勢で見つめもせずに、あれこれしなければならないと説いてきた。
そして、そのほとんどは、「アメリカでは、こうしている」という、
なんとも寂しい話ばかりであった。
本書は継続的に行われるプロジェクトの第一弾としての成果物であり、
今後の分析研究が期待される。
経営者・コンサルタントの著作であればまだしも、
アカデミックな研究書であっても、
恣意的で少数の事例からの帰納か、実証のない「べきである」でまとめられているものが多い。
その中にあって、丹念なデータ分析に基づいた本書は稀有な存在である。
日本の企業という身近にある観察対象をじっくりと見つめなおし、
ブームやプロパガンダではない、きちんとした研究成果として評価できる。
日本企業の経営実態は、
80年代後半に、相対的なパフォーマンスの良さから、
世界をリードする“日本的経営”と礼賛され、
バブル崩壊とともに、諸悪の根源にまで貶められた。
この10年、多くのコンサルタントや経営学者が
その良し悪しを真摯な姿勢で見つめもせずに、あれこれしなければならないと説いてきた。
そして、そのほとんどは、「アメリカでは、こうしている」という、
なんとも寂しい話ばかりであった。
本書は継続的に行われるプロジェクトの第一弾としての成果物であり、
今後の分析研究が期待される。
2008年5月12日に日本でレビュー済み
本書は、ミドルマネジャーの相互作用を通じて実現される「創発戦略」という日本企業の強みが、最近は機能不全に陥っているという問題意識のもと、機能不全を引き起こす組織構造・組織特性を明らかにしようとしている。具体的には、創発戦略の創出と実行を妨げる相互作用プロセス・組織内調整の難しさを「組織の重さ」と定義し、それを促進する要因を抽出している。検証方法としては、花王など18社の107事業単位を対象に大規模質問票調査を実施し、統計分析している。
結論は、以下の4点である。第一に、軽い組織は有機的組織と機械的組織の共存が見られること。第二、軽い組織には、タスク志向かつ人間関係志向のリーダーがいること。第三に、上記リーダー行動は組織構造に依存する面もあるが、組織構造にかかわらず望ましいリーダー行動をとれること。第四に、組織リーダーとメンバーとの認識ギャップを埋めるには、本社スタッフの役割が重要であること。
本書の貢献は、第一に、組織の重さという概念を提示したこと。第二に、大規模な質問票調査から結論を示していることである。今後、調査が継続されて、時間的推移が分析されると、その価値は増すであろう。
一方、課題としては、結論から導き出せる示唆が乏しいことである。従業員の平均年齢が上がったり、創業からの年数が高いと組織は重くなるため、その改善はなかなか難しそうだ。
本書は、研究者向けである。実務家が読む場合は、1・2・9・終章を読み、その他の章は興味のあるところだけ読めばいいだろう。
結論は、以下の4点である。第一に、軽い組織は有機的組織と機械的組織の共存が見られること。第二、軽い組織には、タスク志向かつ人間関係志向のリーダーがいること。第三に、上記リーダー行動は組織構造に依存する面もあるが、組織構造にかかわらず望ましいリーダー行動をとれること。第四に、組織リーダーとメンバーとの認識ギャップを埋めるには、本社スタッフの役割が重要であること。
本書の貢献は、第一に、組織の重さという概念を提示したこと。第二に、大規模な質問票調査から結論を示していることである。今後、調査が継続されて、時間的推移が分析されると、その価値は増すであろう。
一方、課題としては、結論から導き出せる示唆が乏しいことである。従業員の平均年齢が上がったり、創業からの年数が高いと組織は重くなるため、その改善はなかなか難しそうだ。
本書は、研究者向けである。実務家が読む場合は、1・2・9・終章を読み、その他の章は興味のあるところだけ読めばいいだろう。
2018年10月2日に日本でレビュー済み
組織のベクトル量を計り、そこから結論、示唆を導きだす、という試み自体は成功しているが、
その原因の核心、課題の核心には至れていない。
特に、ミドル、第一線メンバーの認識と、BU長の認識が異なる、という部分については、
BU長の意識認識の変化度合いを(若年層の頃から)経年的に追う、という調査項目を追加で加えることで、更なる深掘りができたのではないか、と感じる
また冒頭での問題意識にあった、なぜイノベーティブな組織への変革対応が出来てこなかったのか、という点についても、
変革の必要性の認識度合いと、その認識と行動の一致性を、組織の重さ軽さと関連付けて分析できればよかったのではないかと感じる。
アジェンダもしくは仮説の設定が、こうした経営組織分析における鍵であることを、改めて感じた一冊。
その原因の核心、課題の核心には至れていない。
特に、ミドル、第一線メンバーの認識と、BU長の認識が異なる、という部分については、
BU長の意識認識の変化度合いを(若年層の頃から)経年的に追う、という調査項目を追加で加えることで、更なる深掘りができたのではないか、と感じる
また冒頭での問題意識にあった、なぜイノベーティブな組織への変革対応が出来てこなかったのか、という点についても、
変革の必要性の認識度合いと、その認識と行動の一致性を、組織の重さ軽さと関連付けて分析できればよかったのではないかと感じる。
アジェンダもしくは仮説の設定が、こうした経営組織分析における鍵であることを、改めて感じた一冊。
2007年9月7日に日本でレビュー済み
本書の冒頭における、実証的組織論研究の停滞についての整理は非常に重要であると思う。アメリカ流の経営戦略論の日本への導入が進み定着し、経営戦略論から技術経営論へと進んでいく一方で、地道な組織特性、組織の具体的様相を研究することがおろそかにされていく様がサーベイされている。このところの組織論というと、ゲーム理論、契約・情報の経済学を使った、新制度派経済学的研究ばかりが目に付いた。
しかし、藤本隆宏教授のアーキテクチャ論が生産現場の実態を分析する視点として定着しつつあるなか、組織論においても実証化の波が来そうな気配。
このような研究にキチンと資金が配分されると、この国の企業統治、組織統治の度合いを測る適切な「通信簿」への道が開かれるのではないかと思われるのです。
しかし、藤本隆宏教授のアーキテクチャ論が生産現場の実態を分析する視点として定着しつつあるなか、組織論においても実証化の波が来そうな気配。
このような研究にキチンと資金が配分されると、この国の企業統治、組織統治の度合いを測る適切な「通信簿」への道が開かれるのではないかと思われるのです。