私が世界史を高校で学んだのは、1960年代前半だが、その世界史は振り返れば、著者の杉山正明氏が指摘するように、正に西欧から見た西欧中心の世界史であった。爾来、半世紀以上が経ち、この間の著者杉山正明氏らの丹念な研究(特にユーラシア史)により世界史からMade In Europeの人種的バイアスが徐々に取り払われつつあり、世界史は様相を一変しつつあることを本書で知った。俄然、著者の他の著作も読んでみたいという衝動に駆られるほど、知的好奇心を掻き立てられた。
ロシアは歴史的に帝国主義的膨張主義が続いている国で、ソ連の解体で一旦は小休止したが、体質は変わっておらず、その証拠の一つとして2008年に起きたグルジアとの紛争を詳しく解説している。評者は、グルジア紛争については初めて知ることばかりで目から鱗が落ちる思いだったが、小国を圧倒的軍事力で制圧するやり方は、ソ連の東欧自由化運動圧殺と変わりないやり方のようだ。この5日間の紛争は“Five days war”という映画になっており、you tube で見ることができるので、お勧めしたい。本書出版の2010年時点で、ウクライナ領のクリミアはロシアが欲しがっている火薬庫だと評されているが、案の定、2014年、ロシアは強引に併合を強行し、2017年現在米国を筆頭とする西側諸国からの制裁を招いている。
本書を通じて、著者の歴史学者としての真摯で使命感に溢れた生き様が伝わってくるのが誠にすがすがしく、素晴らしい。日中交流に大きな足跡を残した足利市の故山浦啓榮氏との出会い、交流もさりげなく末尾に書いているが、感動的で、深く印象に残る。高潔な人とは山浦氏のような人を言うのだろう。足利という土地を近々訪ねたい。
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ユーラシアの東西: 中東・アフガニスタン・中国・ロシアそして日本 単行本 – 2010/12/1
杉山 正明
(著)
歴史とは現在のためにある。イラク・アフガン戦争の本質、地政学で見るロシア・中国、大陸視点からの後醍醐天皇――。ユーラシアをひとつの塊として眺めれば異なる地平が浮かび上がる。日本発の世界史への試み。
- 本の長さ290ページ
- 言語日本語
- 出版社日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
- 発売日2010/12/1
- 寸法13.5 x 2.6 x 19.5 cm
- ISBN-10453216771X
- ISBN-13978-4532167714
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登録情報
- 出版社 : 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版; New版 (2010/12/1)
- 発売日 : 2010/12/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 290ページ
- ISBN-10 : 453216771X
- ISBN-13 : 978-4532167714
- 寸法 : 13.5 x 2.6 x 19.5 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 415,259位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 6,199位世界史 (本)
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2017年12月26日に日本でレビュー済み
2011年3月7日に日本でレビュー済み
梅棹忠夫「文明の生態史観」を読んだのは遥か昔の高校時代であるが、正に眼から鱗の書であった。しかし本書で杉山教授は、この京大の大先輩の説をあっさり否定する。当時の日本人は西ヨーロッパと同じ温帯地域に入れてもらって気持ち良かっただろうが、野蛮で残酷な文明しか出現しないと言われる砂漠地域から出たモンゴル帝国こそが実は洗練された世界帝国であると。(筆者はハンチントンも奇矯な学者として否定。けっこう口が悪い。)
確かに単なる武断主義だけで400年もの間、ユーラシアにまたがる帝国を支配することなどできるわけはない。そこにはよく練られた政治・行政組織があったわけだ。著者はモンゴル史を中心に、ヨーロッパ中心主義の「世界史」ではなく新しい視点で視ることを提案する。
現在のロシアがモンゴルの後継であるという話や(本書とは離れるが現在のロシア人にはモンゴルの血を引く者が数%いるという)、清朝が満州族とモンゴル族の合同政権だったこと、「元寇」の常識を見直すこと、パシュトゥン人はイギリスによってアフガニスタンとパキスタンに勝手に分けられている、など自分にとっては新鮮な話であった。
ただし、最初から一冊の本として書かれたものではなく、一般向けの講演や他の書籍の解説、かなり前の対談などをまとめたもので、まとまりに欠く。今度は他の著書も読んでみたい。
確かに単なる武断主義だけで400年もの間、ユーラシアにまたがる帝国を支配することなどできるわけはない。そこにはよく練られた政治・行政組織があったわけだ。著者はモンゴル史を中心に、ヨーロッパ中心主義の「世界史」ではなく新しい視点で視ることを提案する。
現在のロシアがモンゴルの後継であるという話や(本書とは離れるが現在のロシア人にはモンゴルの血を引く者が数%いるという)、清朝が満州族とモンゴル族の合同政権だったこと、「元寇」の常識を見直すこと、パシュトゥン人はイギリスによってアフガニスタンとパキスタンに勝手に分けられている、など自分にとっては新鮮な話であった。
ただし、最初から一冊の本として書かれたものではなく、一般向けの講演や他の書籍の解説、かなり前の対談などをまとめたもので、まとまりに欠く。今度は他の著書も読んでみたい。
2021年1月13日に日本でレビュー済み
タイトルだけ見れば,シルクロード本のように思われがちだが,実は地政学本.
ただし著者は戦略学ではなく歴史学畑の人であり,したがって本書もそのような内容.
講演録などを一冊の本に纏めたもので,要旨は
「現在,学校で教えられているような『世界史』は,西洋中心主義視点のまがいもの.
すなわち,ヨーロッパ人が19世紀以降,自己本位な形でこしらえたもの(p.196-199)
ユーラシア史こそ真の世界史なり」
といったところか.
▼
ブワイフ朝やセルジュク朝のバクダード入城は「上洛」(p.9-11)
十字軍史で言う「"フランク"は,事実上で西ヨーロッパの諸国とその住民たちを言い,アラビア語で"フィランジュ""イフランジュ",ペルシャ語で"フィラング""イフラング""ファラング""アフラング"などと呼ばれた」(p.10-11)
モンゴルによるバグダード虐殺はあったのか?(p.14)
「リビア」の本来の意味(p.17)
湾岸戦争におけるフランス軍の「妨害行為」と,その「動機」(p.21-24)
アフ【ガ】ーニスタンに大国が関わる事になるのは,地政学上の「マニフェスト・デスティニー 明白なる運命」(p.30-31)
「東アジア」という発想や括り方は,せいぜいここ百年あまりのもの(p.31-37)
「東南アジア」が一個の地域単位とする認識(p.170)
その認識に影を落とした,アメリカのヴェトナム戦争(p.170)
ランド・パワーだったドイツ帝国とロシアの結び付きに対抗するためだからこその日英同盟(p.43-44)
地政学とは?(p.44-45)
戦後,地政学を放棄してしまった日本(p.45)
「もし中東やアフ【ガ】ーニスタンに踏み込むならば,周到な用意の元,ロシア・中国などの諸国も挙げて協力せざるを得ない形に持っていくべきだった」(p.47-48)
イスタンブールで生まれ育つと自然とマルチリンガルになれるので,19世紀までは,彼らは各国の大使や公使クラスにまで出世できた(p.72-73)
「アジアは野蛮」イメージを広めたドーソン(p.76-77)
おそらく名誉欲・支配欲の強かった玄奘三蔵(p.82)
支那という呼称のルーツ(p.82-83)
チベットと清朝の宗教的位置関係(p.87-90)
本来は農業適地ではない内モンゴルや新彊などに,水をガンガン使って無理矢理作っている,中国の農産物(p.93-94)
ロシアの特徴の一つは,異常なほどの愛国主義(p.97-98)
ロシアの構造的な脆さ(p.106)
南オセチア紛争による,CISの事実上の空洞化(p.133)
ロシアの周辺諸国の持つ「プラハの春」シンドローム(p.134)
オリジナルな研究水準と,やや分厚すぎるまでの研究者層をようしながら,ともすれば枠内で自足しがちであり,かつ,おおむね世界史へのまなざしを欠いている中国史研究(p.178)
アフ【ガ】ーンの地政学的価値(p.194)
▼
唐突にハードルを高くして,国費留学生から恨みを買う日本政府(p.56-57)
現状,お金持ちの子弟ばかりが留学生になっているので,留学生を公募せよ(p.59-60)
勉強したくてもやっていけない子供が,日本でもかなり増えている(p.61)
▼
蒙古軍の博多上陸の実際(p.203)
種子島銃に対する弓の優位説(p.203-204)
蒙古迎撃戦における「少弐の作戦ミス」(p.204-205)
後醍醐天皇の専制体制と,モンゴル帝国のものを真似た可能性(p.208-211,213-215,217-220)
蒙古にとって都合のよかった朱子学(p.216-217)
「バサラ」は大陸ファッション(p.226)
「遊牧地域から出てくるのは,単なる破壊のエネルギーだろうか」(p.234)
▼
全体として言えば,講演,対談などの集成につき,纏まりは欠如.
南オセチア紛争に関するくだりなど,重複記述も多し.
細部に関して言えば,「コサックのルーツ」の箇所には,コサック専門家からは異論が出るかも(p.41)
また,鉄道普及率だけをもって,アメリカを後進国と呼ぶ(p.48-49)のは,鉄道の代替を航空が担っているアメリカの状況を考えると,かなり疑問.
さらに南オセチア紛争に関する記述は,本書刊行後に色々と判明した事実から考えれば,誤謬多し.
一歩間違えれば,陰謀論に陥りかねない危うさが.
さらにまた,オバマが「イランと組みたがっている」(p.109)とする考察は,いくらなんでもありえなし.
著者自身,「準備なしの雑談」(p.115)と述べているように,考察に粗雑な箇所あり.
▼
しかし総合的に見れば,既成の世界史概念を破壊してくれる良書.
読め.
【関心率23.45%:全ページ中,当方にとって手元に残したいページがどれだけあるかの割合.当方の主観基準】
ただし著者は戦略学ではなく歴史学畑の人であり,したがって本書もそのような内容.
講演録などを一冊の本に纏めたもので,要旨は
「現在,学校で教えられているような『世界史』は,西洋中心主義視点のまがいもの.
すなわち,ヨーロッパ人が19世紀以降,自己本位な形でこしらえたもの(p.196-199)
ユーラシア史こそ真の世界史なり」
といったところか.
▼
ブワイフ朝やセルジュク朝のバクダード入城は「上洛」(p.9-11)
十字軍史で言う「"フランク"は,事実上で西ヨーロッパの諸国とその住民たちを言い,アラビア語で"フィランジュ""イフランジュ",ペルシャ語で"フィラング""イフラング""ファラング""アフラング"などと呼ばれた」(p.10-11)
モンゴルによるバグダード虐殺はあったのか?(p.14)
「リビア」の本来の意味(p.17)
湾岸戦争におけるフランス軍の「妨害行為」と,その「動機」(p.21-24)
アフ【ガ】ーニスタンに大国が関わる事になるのは,地政学上の「マニフェスト・デスティニー 明白なる運命」(p.30-31)
「東アジア」という発想や括り方は,せいぜいここ百年あまりのもの(p.31-37)
「東南アジア」が一個の地域単位とする認識(p.170)
その認識に影を落とした,アメリカのヴェトナム戦争(p.170)
ランド・パワーだったドイツ帝国とロシアの結び付きに対抗するためだからこその日英同盟(p.43-44)
地政学とは?(p.44-45)
戦後,地政学を放棄してしまった日本(p.45)
「もし中東やアフ【ガ】ーニスタンに踏み込むならば,周到な用意の元,ロシア・中国などの諸国も挙げて協力せざるを得ない形に持っていくべきだった」(p.47-48)
イスタンブールで生まれ育つと自然とマルチリンガルになれるので,19世紀までは,彼らは各国の大使や公使クラスにまで出世できた(p.72-73)
「アジアは野蛮」イメージを広めたドーソン(p.76-77)
おそらく名誉欲・支配欲の強かった玄奘三蔵(p.82)
支那という呼称のルーツ(p.82-83)
チベットと清朝の宗教的位置関係(p.87-90)
本来は農業適地ではない内モンゴルや新彊などに,水をガンガン使って無理矢理作っている,中国の農産物(p.93-94)
ロシアの特徴の一つは,異常なほどの愛国主義(p.97-98)
ロシアの構造的な脆さ(p.106)
南オセチア紛争による,CISの事実上の空洞化(p.133)
ロシアの周辺諸国の持つ「プラハの春」シンドローム(p.134)
オリジナルな研究水準と,やや分厚すぎるまでの研究者層をようしながら,ともすれば枠内で自足しがちであり,かつ,おおむね世界史へのまなざしを欠いている中国史研究(p.178)
アフ【ガ】ーンの地政学的価値(p.194)
▼
唐突にハードルを高くして,国費留学生から恨みを買う日本政府(p.56-57)
現状,お金持ちの子弟ばかりが留学生になっているので,留学生を公募せよ(p.59-60)
勉強したくてもやっていけない子供が,日本でもかなり増えている(p.61)
▼
蒙古軍の博多上陸の実際(p.203)
種子島銃に対する弓の優位説(p.203-204)
蒙古迎撃戦における「少弐の作戦ミス」(p.204-205)
後醍醐天皇の専制体制と,モンゴル帝国のものを真似た可能性(p.208-211,213-215,217-220)
蒙古にとって都合のよかった朱子学(p.216-217)
「バサラ」は大陸ファッション(p.226)
「遊牧地域から出てくるのは,単なる破壊のエネルギーだろうか」(p.234)
▼
全体として言えば,講演,対談などの集成につき,纏まりは欠如.
南オセチア紛争に関するくだりなど,重複記述も多し.
細部に関して言えば,「コサックのルーツ」の箇所には,コサック専門家からは異論が出るかも(p.41)
また,鉄道普及率だけをもって,アメリカを後進国と呼ぶ(p.48-49)のは,鉄道の代替を航空が担っているアメリカの状況を考えると,かなり疑問.
さらに南オセチア紛争に関する記述は,本書刊行後に色々と判明した事実から考えれば,誤謬多し.
一歩間違えれば,陰謀論に陥りかねない危うさが.
さらにまた,オバマが「イランと組みたがっている」(p.109)とする考察は,いくらなんでもありえなし.
著者自身,「準備なしの雑談」(p.115)と述べているように,考察に粗雑な箇所あり.
▼
しかし総合的に見れば,既成の世界史概念を破壊してくれる良書.
読め.
【関心率23.45%:全ページ中,当方にとって手元に残したいページがどれだけあるかの割合.当方の主観基準】
2011年3月12日に日本でレビュー済み
色々な講演、対談などを基にしているので、まとまりはない。ただ、そのような構成が、かえって杉山氏の驚異的な博識振りを際立たせることになっている。ただ、杉山氏の著作に共通する2つの短所から星1つ減らし、4つ。
・講演をそのまま文字起こしした1章は、他の本なら一文にまとめられているであろう、他の研究の批判(悪口?)がかなりストレートに長く載せられており、あまり気分のよいものではない。
・ところどころ、モンゴル・セントリズムに陥っているのではないかというところがある。
ただ一般に流布されているモノの見方と違う見方が提供されており読んで刺激になる。
・講演をそのまま文字起こしした1章は、他の本なら一文にまとめられているであろう、他の研究の批判(悪口?)がかなりストレートに長く載せられており、あまり気分のよいものではない。
・ところどころ、モンゴル・セントリズムに陥っているのではないかというところがある。
ただ一般に流布されているモノの見方と違う見方が提供されており読んで刺激になる。
2011年12月9日に日本でレビュー済み
杉山教授の想いのこもった記述が印象深い。モンゴル節は教授の他の著作でも読めるが、中国から贈られた2,000点あまりの拓本を一括して収蔵する建物「華雨蔵珍之館」に関する記述が異色。華雨蔵珍之館は中国山東省曲阜市名誉市民山浦啓榮氏(2003年死去)が創設したアンタレス山浦財団が1991年曲阜市の姉妹都市足利市に開館し、学者の研究だけでなく市民の閲覧に供している。若き日の杉山教授が山東省で山浦啓榮氏と出会ったのがきっかけとなり、組織的な拓本収集、公開に至るいきさつがドラマチックに語られる。
2021年3月28日に日本でレビュー済み
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杉山氏の著作は素晴らしいです。世界史を見直す、大きな視座ができます。嘘だらけの日本歴史、欧州を神格化した世界とは異質です。トプカプ博物館にはスゴイお宝が保存されているんだ。当商品、取り寄せに関しては、納期並びに梱包形状を含め、良好で良心的な業者さんだと好感を持ってます。