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資本主義は江戸で生まれた 文庫 – 2002/5/1
- 本の長さ325ページ
- 言語日本語
- 出版社日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
- 発売日2002/5/1
- ISBN-104532191246
- ISBN-13978-4532191245
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商品の説明
商品説明
たとえば、著者は「江戸の金遣い、大坂の銀遣い」のように異なる通貨が存在した江戸時代の三貨(金・銀・銭)体制と、その交換比率が時々の相場で変動したことを「現代の円・ドルの変動相場制と基本的には同じだった」と論じる。また、相場を見ながら金・銀の両替や売買を行っていた大両替商に着目して、現在の為替ディーラーによる為替取引の構造と変わらないと指摘する。同様に、信用取引や投機、市場金利など、現代の市場と錯覚するかのような構造を次々と明らかにしている。
市場があるのならば景気の変動もあったと見るのが自然だが、その点で著者は「現象としては大小の景気循環の波はあった」と主張。天下普請、参勤交代、火事を、有効需要を生む「江戸のケインズ政策」と見なしたり、江戸の三大改革を「経済拡大基調を打ち消し、米本位制度に経済構造を引き戻そうとする緊縮政策だった」と読み解いたりしている。また、その背景にある幕府官僚と業界団体の相互依存体質や談合の意思決定慣行など「日本的システム」の源流も鋭い切り口でとらえている。
こうして、江戸300年の経済が、本書に生き生きと立体的に描き出されている。現代と隔絶した世界と見なされがちな江戸時代を、経済史的に地続きのものとして浮上させた本書の意義は大きい。(棚上 勉)
登録情報
- 出版社 : 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版; New版 (2002/5/1)
- 発売日 : 2002/5/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 325ページ
- ISBN-10 : 4532191246
- ISBN-13 : 978-4532191245
- Amazon 売れ筋ランキング: - 349,255位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 422位江戸時代
- - 4,611位日本史一般の本
- - 36,330位ビジネス・経済 (本)
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タイトルは少々センセーショナルであるけれども、本書の読後感を一言で表現するならば、「チョンマゲ資本主義」(造語)の玄妙さだ。
先ず、江戸時代の経済システムは、基本的に「米本位経済」と「貨幣経済」が並立し、しかも通貨については世界的にみても珍しい「三貨制」(「江戸(東)の金遣い・上方(西)の銀遣い」プラス銅貨(銭))であった。当然のことながら、金と銀という本位貨幣の交換比率は、現代の円−ドル(又はユーロ)のごとく変動するわけで、チョンマゲ・トレーダーたち(!)の苦労が本書で偲ばれる。ただ、これらの経験が幕末の開国以降における対外取引(貿易)に大いに役立ったことは言うまでもないだろう。
さらに特筆すべきは、泰平の世において有効需要を創出させた「大江戸ケインズ政策」である。具体的には、大型公共事業(?)としての天下普請、参勤交代そして大火事(!)がそれである。計量経済史的な研究結果によれば、18世紀末以降の日本の1人当たりGDP成長率は、当時の最先進国イギリスのそれを大幅に上回っていた、とみられており(岡崎哲二『江戸の市場経済』参照)、守旧派による巻き返しなどがあったものの、江戸時代は総体として、実に巧みな経済運営を行っていたことが本書で判る。
最後に重要なポイントは、江戸時代の経済システムにおける「公(おおやけ)=公共性」への自覚である。このことに関しては、筆者である鈴木浩三氏が06年2月24日付け『読売新聞』で「江戸の市場経済と自律」と題した論攷を発表しており、詳しくは述べない。しかし、「江戸時代から日本人に備わってきた市場経済システムに関するDNAの再認識とともに、新たな『公』意識の構築」(本書)が今こそ求められており、私たちは「与古為新(古きに与り新しきを為す)」(司空図)の精神を忘れてはならないだろう。
本書は、数字で裏付けられた江戸の経済史、社会史、である。しかも、江戸を説きながら現在を説いている。現象論であるから当然単純に理論化できるわけではないが、著者の主張しようとしているのは、江戸時代とくに元禄以降の時代の官僚と民間との関係の構造は、明治以降も保存され戦後も継続していた、つまり基本的な構造は明治維新で断絶してはいなかった、ということである。
むしろ、高度成長期を過ぎたあと、その構造の構成員に変質が生じた、それが問題だ、と指摘している。それは、構成員が公(おおやけ)の心を失ったからだ、という。だから、官も民も公私混同し、私利私欲で行動するようになってしまったのだ、と主張している。小泉の「改革」は未熟なアメリカのシステムの導入であるから日本には適さない、日本を救うのは「公の心」の復活である、と主張している。
本書は小さな本だが、憂国の志を持つ持たないにかかわらず、国民必読の書である。