山本氏は御自身の戦争での体験から孫子と精神論一点張りの帝國陸軍との根本的発想のあまりの違いに脳天を叩かれたような衝撃を受けたという。たしかに日本軍には孫子的意味での大きな戦略的発想が不思議なくらい欠如していたように思える。
「計篇」では戦争を行う前に相手と自国との優劣を比較し結果の自明な戦争は避けるべきという。その比較の基礎として「道」(統治者と国民との一体感)、「天」(時間的条件、国際情勢等)「地」(地理的条件、地勢、地域、地形等)「将」(将帥の器量)「法」(制度、組織原則)をあげる。上村彦之丞がウラジオ艦隊を逃したといって国民が上村邸に投石したように日露戦争時は国民も真剣であり、上下の一体感も無く「言論統制」を行わざる得なかった昭和の大戦時と大きな違いである。
「謀攻篇」逆説的だが孫子も呉子も闘わないことが最上という。百戦百勝は愚行であるという。日中戦争も伊藤正徳氏によると56戦中1敗1引き分けであるが国力の消耗激しく戦死傷者を多く出した。秀吉は晩年はともかく「高松城の水攻め」などで有名なように決して無理押しせず、その面で天才的であった。
結局は至極当たり前に思えることを原則どおりにおこなった者が勝つ。ところが窮地に立たされた人間は後から考えると明らかな失敗の道を選択してしまうことがあるのだ。先人から学び心胆を練る理由はここにあるのだろう。山本氏自らの体験と「呉子」からの引用もふまえ現代の企業についても縦横無尽に語る。古典がはじめてゾクゾクするほど面白いと思った。
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
「孫子」の読み方 文庫 – 2005/8/1
山本 七平
(著)
兵法書として名高い『孫子』。「彼を知り己を知れば、百戦して殆うからず」「算多きは勝ち、算少なきは勝たず」――いずれもビジネス社会にも通じる鉄則だ。陸軍将校の体験をふまえて、参謀はどうあるべきかを説く。
- 本の長さ236ページ
- 言語日本語
- 出版社日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
- 発売日2005/8/1
- ISBN-104532193028
- ISBN-13978-4532193027
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
登録情報
- 出版社 : 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版; New版 (2005/8/1)
- 発売日 : 2005/8/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 236ページ
- ISBN-10 : 4532193028
- ISBN-13 : 978-4532193027
- Amazon 売れ筋ランキング: - 34,629位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう
カスタマーレビュー
星5つ中3.8つ
5つのうち3.8つ
全体的な星の数と星別のパーセンテージの内訳を計算するにあたり、単純平均は使用されていません。当システムでは、レビューがどの程度新しいか、レビュー担当者がAmazonで購入したかどうかなど、特定の要素をより重視しています。 詳細はこちら
22グローバルレーティング
虚偽のレビューは一切容認しません
私たちの目標は、すべてのレビューを信頼性の高い、有益なものにすることです。だからこそ、私たちはテクノロジーと人間の調査員の両方を活用して、お客様が偽のレビューを見る前にブロックしています。 詳細はこちら
コミュニティガイドラインに違反するAmazonアカウントはブロックされます。また、レビューを購入した出品者をブロックし、そのようなレビューを投稿した当事者に対して法的措置を取ります。 報告方法について学ぶ
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2011年10月6日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2010年1月26日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
著者の本を読んだのは初めてである。著者は、過去の合戦を例に取りながら、「孫子」を一つ一つ解説していく。
その合戦は、いわゆる戦国時代の話しが多いのだが、それに限らず、日露戦争だの、ナポレオンの戦いだの、太平洋戦争だの、枚挙に暇がない。
そのそれぞれが「孫子」の言っていることに、ずばずばはまるのだが、本当にこんなにうまくはまるものなのだろうかと思ってしまう程である。
まあ、その事実関係を指摘するほど私も歴史を詳しくないし、今回は「孫子」の本を理解することが重要なので、そういった意味では非常に分かり易い解説であった。
しかし、著者の太平洋戦争時代の日本人に対する嫌悪感と言うのは凄まじい。
過去の日本人、しかもほんのちょっと最近までの、は素晴らしく、昭和になるとまるで違う人種にでもなってしまったかのような見解が徹頭徹尾行われている。
戦争でつらい体験をされたのは理解しますし、感謝もします。だけど、戦国時代の兵や民の方がもっとひどいことをされていただろうに。
自分の母親だけは処女のまま自分を産んだと思っているガキが、違うことに気付き、ずっと父母を怨んでいる姿に見える。
非常に深いところまで「孫子」を読み込んでいるのに何故自分の体験したことになるとこんなに物事への見方が変わってしまうのだろうか。
それだけが残念であった。
その合戦は、いわゆる戦国時代の話しが多いのだが、それに限らず、日露戦争だの、ナポレオンの戦いだの、太平洋戦争だの、枚挙に暇がない。
そのそれぞれが「孫子」の言っていることに、ずばずばはまるのだが、本当にこんなにうまくはまるものなのだろうかと思ってしまう程である。
まあ、その事実関係を指摘するほど私も歴史を詳しくないし、今回は「孫子」の本を理解することが重要なので、そういった意味では非常に分かり易い解説であった。
しかし、著者の太平洋戦争時代の日本人に対する嫌悪感と言うのは凄まじい。
過去の日本人、しかもほんのちょっと最近までの、は素晴らしく、昭和になるとまるで違う人種にでもなってしまったかのような見解が徹頭徹尾行われている。
戦争でつらい体験をされたのは理解しますし、感謝もします。だけど、戦国時代の兵や民の方がもっとひどいことをされていただろうに。
自分の母親だけは処女のまま自分を産んだと思っているガキが、違うことに気付き、ずっと父母を怨んでいる姿に見える。
非常に深いところまで「孫子」を読み込んでいるのに何故自分の体験したことになるとこんなに物事への見方が変わってしまうのだろうか。
それだけが残念であった。
2009年10月3日に日本でレビュー済み
レビューが低いですが、これは自分の知識のなさです。
孫子の解説本であり、それを現代に当てはめて著者の考えや実体験に基づき書いてあります。
私は、孫子自体読んだことがなく、この作品で初めて触れたのですが正直難しいですね。
孫子の考えが現代のビジネスに共通すると言うことは、一般論で言われていますが、元の文章が難解でどうしても世界に入りづらいです。
私にはとても、これを自分の考え方に取り組むことは出来そうにありません。
なので、作品自体どう評価して良いか解りませんが、私の視点ではどうしても低くなります。
孫子の解説本であり、それを現代に当てはめて著者の考えや実体験に基づき書いてあります。
私は、孫子自体読んだことがなく、この作品で初めて触れたのですが正直難しいですね。
孫子の考えが現代のビジネスに共通すると言うことは、一般論で言われていますが、元の文章が難解でどうしても世界に入りづらいです。
私にはとても、これを自分の考え方に取り組むことは出来そうにありません。
なので、作品自体どう評価して良いか解りませんが、私の視点ではどうしても低くなります。
2013年8月12日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
徹底したリアリストとしての孫子の言葉を解説しているところがすばらしい。
古典の読み方の基本なのだとは思うが、孫子の言葉の目的を理解して現在の環境をよく考察すれば活用できる場面は多いと思う。
古典の読み方の基本なのだとは思うが、孫子の言葉の目的を理解して現在の環境をよく考察すれば活用できる場面は多いと思う。
2005年12月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
孫子の内容を細かく区切り、それぞれの内容に照らして、日本の戦国時代や日露戦争、第二次世界大戦などの戦いが、適切だったのか、不適切だったのかを解説している。
さまざまな時代の事例を例示していることに加え、通常読まれている「孫子」と、後に付け加えられたと思われる部分を取り除いた天野鎮雄氏校訂版の孫子の両方を引用しているため、細切れの感が否めず、孫子を通読したという気がしない。
孫子がどのようなものかを手っ取り早く知るには良い本であるが、孫子を深く知るためには不十分であり、また、一読しただけで、実際のビジネスに応用できるようなものでもなく、私にとっては中途半端な孫子の解説書であった。
さまざまな時代の事例を例示していることに加え、通常読まれている「孫子」と、後に付け加えられたと思われる部分を取り除いた天野鎮雄氏校訂版の孫子の両方を引用しているため、細切れの感が否めず、孫子を通読したという気がしない。
孫子がどのようなものかを手っ取り早く知るには良い本であるが、孫子を深く知るためには不十分であり、また、一読しただけで、実際のビジネスに応用できるようなものでもなく、私にとっては中途半端な孫子の解説書であった。
2007年7月28日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
戦いにおいて武将必携の知識であった、名著「孫子」のエッセンスを様々な
歴史考証や実体験を交えて解説された、手軽な入門書ではないでしょうか。
情報将校として従軍した経験を持つ著者が、実際に体験した「戦争」という
モノの悲惨さ・無意味さ・無謀さの意味が、疲れ果てて読み直した「孫子」
に全ての答えがあり、その疑問が氷解したことが執筆の動機となっております。
主として「戦う」場面における情報・知識において「孫子」を知って、実践
するか否かが生死を決する、その証左が無謀な太平洋戦争であった、と喝破
しております。
何よりも、畳水練ではなく、実践できるか否かが重要である。経済活動においても
経営者の心得として非常に示唆に富む事例ではないでしょうか。
ただ、「孫子」の重厚な内容、そして主な名訳書の分析、幅広い歴史考証と、
様々なチャレンジを行っている割にはページ数が不足している感は否めません。
軽く通読する分にはいいかもしれませんが、「孫子」をより深く勉強するには、
もう1〜2冊の同類書物の購読が必要ではないでしょうか。そのような意味からも
入門書という位置づけが妥当かと思料します。
歴史考証や実体験を交えて解説された、手軽な入門書ではないでしょうか。
情報将校として従軍した経験を持つ著者が、実際に体験した「戦争」という
モノの悲惨さ・無意味さ・無謀さの意味が、疲れ果てて読み直した「孫子」
に全ての答えがあり、その疑問が氷解したことが執筆の動機となっております。
主として「戦う」場面における情報・知識において「孫子」を知って、実践
するか否かが生死を決する、その証左が無謀な太平洋戦争であった、と喝破
しております。
何よりも、畳水練ではなく、実践できるか否かが重要である。経済活動においても
経営者の心得として非常に示唆に富む事例ではないでしょうか。
ただ、「孫子」の重厚な内容、そして主な名訳書の分析、幅広い歴史考証と、
様々なチャレンジを行っている割にはページ数が不足している感は否めません。
軽く通読する分にはいいかもしれませんが、「孫子」をより深く勉強するには、
もう1〜2冊の同類書物の購読が必要ではないでしょうか。そのような意味からも
入門書という位置づけが妥当かと思料します。
2006年7月12日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
「孫子」だとか、「君主論」だとかのいわゆる古典は、原典(翻訳も含む)にあたるのがよいことがわかってはいても、そのとっつきにくさについ解説本に頼ってしまう。しかし解説本は解説者の解釈が入っているため、その解釈の妥当性、あるいは読者とのフィットの有無が問われることになる。当然ビジネスマン向けの解説書と、実際の戦争に向けての解説書では、フォーカスの当て方が異なって当然である。
ビジネスマン向けの解説書として、本書は他の解説書にあるようにあまり「親切」にビジネスにとってのインプリケーションを押し付けることもなく、かといってよく考えて読めばビジネスへの幅広い応用を可能にするような解説がなされている。孫子解説書の中では最も私にフィットした本であった。
ビジネスマン向けの解説書として、本書は他の解説書にあるようにあまり「親切」にビジネスにとってのインプリケーションを押し付けることもなく、かといってよく考えて読めばビジネスへの幅広い応用を可能にするような解説がなされている。孫子解説書の中では最も私にフィットした本であった。
2005年9月28日に日本でレビュー済み
孫子が言っていることは、
① 競争とは実力涵養競争であり、国民を疲弊させる戦争はいたずらにするな
・ 実力涵養競争であるから、勝負は予め決まっている。戦争は本来無意味
・ 負ける戦争はするな。勝てる戦争でもあらゆる手段で避けよ
・ しかしそうなったら、早く切り上げよ
② その認識の上で、合目的で、勝てる引き合う戦争だけをしろ
・ 目的には義がなければならない
③ 勝つことを確かにするために、頭(戦略)を使え
・ 戦略とは、ロジスティクスを計算し、その計算の上に兵力が決まり勝敗が決する、この当り前の計算をまずすること
・ 戦う場所を知り、戦う日を知ること
・ 遠くからきた敵を待ち、休養した兵で疲労した敵を待ち、飢えた敵を待つこと。秩序整然と来襲する敵を迎撃してはならず、堂々たる構えの敵を攻撃してはならない。敵の精鋭は攻めてはならない。帰国する敵を阻止してはならない。敵を包囲したら必ずどこかを空けておく。部下の健康管理を完璧とすること。これら当り前の戦闘上の法則を守ること
・ 情報を得、あらゆる兆候から相手の実態を見抜くこと。兵士が武器を杖にしているのは疲れているからである
孫子は極めて合理的で、この枠組みで過去の戦争や自分・組織の経験を振り返ること(山本氏も随所に実例を引き合い)で、相応の分析になります。「さまざまな問題への対処方法をその中から汲み取る」に格好の書と言えるでしょう。面白い。
① 競争とは実力涵養競争であり、国民を疲弊させる戦争はいたずらにするな
・ 実力涵養競争であるから、勝負は予め決まっている。戦争は本来無意味
・ 負ける戦争はするな。勝てる戦争でもあらゆる手段で避けよ
・ しかしそうなったら、早く切り上げよ
② その認識の上で、合目的で、勝てる引き合う戦争だけをしろ
・ 目的には義がなければならない
③ 勝つことを確かにするために、頭(戦略)を使え
・ 戦略とは、ロジスティクスを計算し、その計算の上に兵力が決まり勝敗が決する、この当り前の計算をまずすること
・ 戦う場所を知り、戦う日を知ること
・ 遠くからきた敵を待ち、休養した兵で疲労した敵を待ち、飢えた敵を待つこと。秩序整然と来襲する敵を迎撃してはならず、堂々たる構えの敵を攻撃してはならない。敵の精鋭は攻めてはならない。帰国する敵を阻止してはならない。敵を包囲したら必ずどこかを空けておく。部下の健康管理を完璧とすること。これら当り前の戦闘上の法則を守ること
・ 情報を得、あらゆる兆候から相手の実態を見抜くこと。兵士が武器を杖にしているのは疲れているからである
孫子は極めて合理的で、この枠組みで過去の戦争や自分・組織の経験を振り返ること(山本氏も随所に実例を引き合い)で、相応の分析になります。「さまざまな問題への対処方法をその中から汲み取る」に格好の書と言えるでしょう。面白い。