「中央銀行は物価の番人」 とよく評されるが、そのタイトルを皮肉って
日銀がデフレの番人だとするのだから、岩田氏のスタンスが
よく判る。
かねてから、日銀の金融政策に対して、批判的な論説を加えてきた
岩田氏だから、さもありなんというところ。しかも、冒頭で紹介されている
のが、2012年2月14日に日銀が発表したインフレターゲット政策もどき
(岩田氏の評)の政策である。
岩田氏の主張は突き詰めるところ、FRBなどが採用している世界標準の
金融政策を日銀も採用すべきということ。
つまり、インフレターゲット政策を導入し、デフレ脱却のために量的緩和を
一層進めるべきなのだが、日銀は独自の 「理論」 を展開して頑なに
岩田氏の薦める政策を拒否しているということだ。
本書での特筆すべき点は、
他の先進国の金融政策と日銀の政策の 「成績」 をつけていることと、
インフレ目標政策を採用・実践している国のパフォーマンスの検証だ。
岩田氏からすれば、日銀はFRBに先行されて、あわてて インフレターゲット
政策もどきを採用したが、決定的に違うのは、インフレ目標値に対する
コミットメントと透明性の点だ。
その象徴が日銀が使った 「目途」という言葉だ。英語では、FRBの使った
言葉と同じ 「goal」 だが、日本語の 「目途」 では、達成すべき目標なのか
単なる政策を実行していくための参考指標なのか、確かにはっきりしない。
テクニカルなことだが、物価指標をどう定義しているかについても、日銀は
不明確だと岩田氏の批判は続く。
これ以上の詳細な論点の紹介は省略するが、
現代の金融政策論として、非常に優れている。
岩田氏はFRBの政策を支持しているので、FRBの政策と日銀の政策の
違いが、根本的なところから理解することができる。
また、単なる論争ではなく、計量的な検証をしようとしているところにも特徴が
あると思う。
最新の金融政策論を学ぶ者にとって、好個の教科書になっており、
一読を薦めたい。
<追記>
2012年9月13日に、FRBが発表したQE3政策によって、再び日本でも
デフレ脱却のための金融政策論争と日銀批判が渦巻くことが予想される。
こうした観点からも、本書は、論点整理をきちんとしているので参照されるべき
である。
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日本銀行デフレの番人 単行本 – 2012/6/1
岩田 規久男
(著)
この2月に導入された日銀のインフレ目標による「成果」は、皮肉にもこれまでの異常な日銀理論と政策の誤りを実証した。しかし、その後の政策は迷走している。日銀のデフレ脱却の本気度を検証し、「最適金融政策」を提言する。
- 本の長さ238ページ
- 言語日本語
- 出版社日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
- 発売日2012/6/1
- 寸法11 x 1.6 x 17.4 cm
- ISBN-104532261627
- ISBN-13978-4532261627
登録情報
- 出版社 : 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版; New版 (2012/6/1)
- 発売日 : 2012/6/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 238ページ
- ISBN-10 : 4532261627
- ISBN-13 : 978-4532261627
- 寸法 : 11 x 1.6 x 17.4 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 731,968位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2013年7月15日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
経済学もこれほど実証的に科学的に分析できるものなのだと、ほんとうに驚きました。
現在、日本のデフレ脱却のシナリオはこの通り進んでいて、全くその通りなのにも驚きです。
多くのデータを検討しながら、著者が出した結論なので、当然と言えば当然なのですが、これほど明快に経済事象を説明出来る人を私は知りません。
このような実証的な立場を取れば、経済分析もインチキが無くなるでしょう。
このような力作が1000円以内で読める事はほんとうにすごいことだと思います。著者に感謝、感謝です。
現在、日本のデフレ脱却のシナリオはこの通り進んでいて、全くその通りなのにも驚きです。
多くのデータを検討しながら、著者が出した結論なので、当然と言えば当然なのですが、これほど明快に経済事象を説明出来る人を私は知りません。
このような実証的な立場を取れば、経済分析もインチキが無くなるでしょう。
このような力作が1000円以内で読める事はほんとうにすごいことだと思います。著者に感謝、感謝です。
2013年3月19日に日本でレビュー済み
全体的に、デフレの原因をすべて日銀の金融政策に帰結させようとする独特な論理展開がなされているという印象を受ける。
デフレの根本的な原因は、この本自体のP215に書かれているように需給ギャップにある。そのことを筆者自身も認めているにもかかわらず、責任はすべて日銀の金融政策にあるかのように論理展開されている。
需給ギャップの原因は、もっと複雑かつ輻輳しているのではないか。少子高齢化による国内需要の低迷(この影響はないとする論が優勢だがはたして簡単にそう言い切ってしまってよいのか)、新興国からの安い輸入品の流入、新興国と先進国の賃金格差、国内の生産設備の過剰など様々な要因があり、これに円高(金融政策)が加わる。
著者が展開するデフレ脱却のシナリオは以下のとおりである。
中央銀行がインフレ目標値にコミットしマネタリーベースを増やすと、予想インフレ率が上昇する(実際のインフレ率も予想インフレ率に近い値となる)。これに資本市場が反応し、円安と株価の上昇が発生し、円安による輸出増加と株価上昇による企業の設備投資の増加から生産が活発になり、賃金があがり消費が増えて、需給ギャップが解消し、デフレは終わる、というのが大体の要約である。評者なりに解釈すると、大胆な量的緩和を行い貨幣価値を下げ通貨を切り下げる近隣窮乏化政策である。
論理展開が分かりやすい点では、最近読んだリフレ関係の書籍の中ではましなほうである。浜田宏一氏の「アメリカは日本経済の復活を知っている」よりはしっかり書かれている。しかし、あまりにも見通しが楽観的で本当にそうなのかと突っ込みたくなる。通貨切り下げ政策という意味合いではうなずけるが、最後のところはどうだろう?本当に賃金があがって消費が増えるだろうか。
さらに気になるのは、金融政策のみで為替相場の変動を説明しようとしている傾向である。特に第1章で2012年2月14日の「中長期的な物価の安定の目途」の前後の金利、予想インフレ率、為替相場の変化を示して、金融政策の変更がこれらの変化をもたらしたとしているが、本当に金融政策の変更だけでこれらの変化が起こったのであろうか。ここにあげられた為替相場を決める要因(予想インフレ率と金利)のほかにもう一つ重要な要因がある。それは貿易収支である。貿易収支が赤字の国の通貨は下がり、黒字の国の通貨は高くなる。このことがばっさりと切り捨てられている。「目途」の発表の約1週間後の2月20日には、平成24年1月の貿易収支(速報)が発表されている。この月の貿易収支は1兆4750億円の赤字でその時点での過去最大の赤字となっている。このことが全く為替相場や予想インフレ率に影響しなかったと言い切れるであろうか。貿易収支の悪化に全く触れずに「目途」の発表だけに着目するのは少し視野狭窄ではなかろうか。
参考までにジョージ・ソロスは著書「ソロスの錬金術」の中で、為替相場を決定する需要と供給の源になる要因として貿易収支、非投機的資金取引、投機的資金取引の3つをあげている。
いずれにしてもこの本の著者は、日銀の副総裁に就任していることから、これからどういう考え方で何が行われようとしているかを知る入門書としてはお勧めできる。
デフレの根本的な原因は、この本自体のP215に書かれているように需給ギャップにある。そのことを筆者自身も認めているにもかかわらず、責任はすべて日銀の金融政策にあるかのように論理展開されている。
需給ギャップの原因は、もっと複雑かつ輻輳しているのではないか。少子高齢化による国内需要の低迷(この影響はないとする論が優勢だがはたして簡単にそう言い切ってしまってよいのか)、新興国からの安い輸入品の流入、新興国と先進国の賃金格差、国内の生産設備の過剰など様々な要因があり、これに円高(金融政策)が加わる。
著者が展開するデフレ脱却のシナリオは以下のとおりである。
中央銀行がインフレ目標値にコミットしマネタリーベースを増やすと、予想インフレ率が上昇する(実際のインフレ率も予想インフレ率に近い値となる)。これに資本市場が反応し、円安と株価の上昇が発生し、円安による輸出増加と株価上昇による企業の設備投資の増加から生産が活発になり、賃金があがり消費が増えて、需給ギャップが解消し、デフレは終わる、というのが大体の要約である。評者なりに解釈すると、大胆な量的緩和を行い貨幣価値を下げ通貨を切り下げる近隣窮乏化政策である。
論理展開が分かりやすい点では、最近読んだリフレ関係の書籍の中ではましなほうである。浜田宏一氏の「アメリカは日本経済の復活を知っている」よりはしっかり書かれている。しかし、あまりにも見通しが楽観的で本当にそうなのかと突っ込みたくなる。通貨切り下げ政策という意味合いではうなずけるが、最後のところはどうだろう?本当に賃金があがって消費が増えるだろうか。
さらに気になるのは、金融政策のみで為替相場の変動を説明しようとしている傾向である。特に第1章で2012年2月14日の「中長期的な物価の安定の目途」の前後の金利、予想インフレ率、為替相場の変化を示して、金融政策の変更がこれらの変化をもたらしたとしているが、本当に金融政策の変更だけでこれらの変化が起こったのであろうか。ここにあげられた為替相場を決める要因(予想インフレ率と金利)のほかにもう一つ重要な要因がある。それは貿易収支である。貿易収支が赤字の国の通貨は下がり、黒字の国の通貨は高くなる。このことがばっさりと切り捨てられている。「目途」の発表の約1週間後の2月20日には、平成24年1月の貿易収支(速報)が発表されている。この月の貿易収支は1兆4750億円の赤字でその時点での過去最大の赤字となっている。このことが全く為替相場や予想インフレ率に影響しなかったと言い切れるであろうか。貿易収支の悪化に全く触れずに「目途」の発表だけに着目するのは少し視野狭窄ではなかろうか。
参考までにジョージ・ソロスは著書「ソロスの錬金術」の中で、為替相場を決定する需要と供給の源になる要因として貿易収支、非投機的資金取引、投機的資金取引の3つをあげている。
いずれにしてもこの本の著者は、日銀の副総裁に就任していることから、これからどういう考え方で何が行われようとしているかを知る入門書としてはお勧めできる。
2013年1月19日に日本でレビュー済み
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総務省統計によれば、1990年代に入ってはじめて消費者物価の前年比がマイナスになった94年以降の205ヶ月間で、マイナスだったのは124ヶ月(60%)、残りの81ヶ月(40%)は物価は上昇しているか横ばいでした。(詳しくは佐々木融氏著「弱い日本の強い円」)
つまりデフレとは言いがたい状況でした。
岩田氏は2012年2月14日の日銀白川総裁の「中長期的な物価上昇率を1%の目途へコミットする。」の発言が、その後の株価と為替(円安・ドル高)にどれだけ効果を及ぼしたかについて回帰分析されている。
しかしマーケットは難解な分析を試みるまでもなく当然ニュースには反応するものです。
デフレが絶対的であるという認識でミスをし、微細なマーケットの反応を絶対真理のごとく考察ミスをする経済学者って何なんでしょう。
均衡した経済環境のもとでは種々の金融政策も有効でしょうが、日本のように政府債務がGDPの200%に積み上がれば期待した効果は得られないばかりか、低位均衡が崩れて過度のインフレになる危険があります。
日銀は「デフレの番人」ではなく、本来の責務を果たしている「物価の番人」であったような気がします。
(追記 2013.2.9)
最近の岩田氏の発言で「(インフレターゲット政策を採用していれば、)18年前から毎年4%成長していたと仮定して計算すると、現在の名目GDPは千兆円を超えていた。」との週刊誌記事を読み、既に氏は冷静さを欠いていると感じた。マーケットに知識のある者ならば「経済予想はウソよ」「経済予測はクソよ」という言葉がある。言論プラットフォームアゴラ上での九条清隆氏の言葉「経済学者が自説をあたかも科学的に証明できるかのように堂々と語るのは、・限界を認識したうえで、立場上うそぶいている/・本当の勉強おたくのどちらかでしかありえない。」を引用しておこう。
つまりデフレとは言いがたい状況でした。
岩田氏は2012年2月14日の日銀白川総裁の「中長期的な物価上昇率を1%の目途へコミットする。」の発言が、その後の株価と為替(円安・ドル高)にどれだけ効果を及ぼしたかについて回帰分析されている。
しかしマーケットは難解な分析を試みるまでもなく当然ニュースには反応するものです。
デフレが絶対的であるという認識でミスをし、微細なマーケットの反応を絶対真理のごとく考察ミスをする経済学者って何なんでしょう。
均衡した経済環境のもとでは種々の金融政策も有効でしょうが、日本のように政府債務がGDPの200%に積み上がれば期待した効果は得られないばかりか、低位均衡が崩れて過度のインフレになる危険があります。
日銀は「デフレの番人」ではなく、本来の責務を果たしている「物価の番人」であったような気がします。
(追記 2013.2.9)
最近の岩田氏の発言で「(インフレターゲット政策を採用していれば、)18年前から毎年4%成長していたと仮定して計算すると、現在の名目GDPは千兆円を超えていた。」との週刊誌記事を読み、既に氏は冷静さを欠いていると感じた。マーケットに知識のある者ならば「経済予想はウソよ」「経済予測はクソよ」という言葉がある。言論プラットフォームアゴラ上での九条清隆氏の言葉「経済学者が自説をあたかも科学的に証明できるかのように堂々と語るのは、・限界を認識したうえで、立場上うそぶいている/・本当の勉強おたくのどちらかでしかありえない。」を引用しておこう。
2013年3月3日に日本でレビュー済み
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専門的な用語と数&図表など、素人には難しいが、主張していることの概要は理解できる。
2015年10月7日に日本でレビュー済み
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リフレ派の真髄がここにある、という感じですね。
日銀をもっともっと、変革してもらえるとうれしいです。
日銀をもっともっと、変革してもらえるとうれしいです。
2012年9月5日に日本でレビュー済み
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本のタイトルが、「日本銀行デフレの番人」となってるように日銀はデフレを容認し円高対策を何もしてこなかった。
という事がよくわかった。日銀は欧米の世界標準から大きく遅れてしまった。
その為日本の企業は疲弊し特に電機メーカーは大量のリストラせざるをえなくなり、可処分所得は下がり続けて消費も低迷している。
又民主党も日銀同様デフレ円高対策に無策である。為替市場介入は1次的円安になるが続かない。
この本には、デフレ円高脱却し財政再建のヒントが書かれている、日本人なら1人でも多くの人が読むべきである。
という事がよくわかった。日銀は欧米の世界標準から大きく遅れてしまった。
その為日本の企業は疲弊し特に電機メーカーは大量のリストラせざるをえなくなり、可処分所得は下がり続けて消費も低迷している。
又民主党も日銀同様デフレ円高対策に無策である。為替市場介入は1次的円安になるが続かない。
この本には、デフレ円高脱却し財政再建のヒントが書かれている、日本人なら1人でも多くの人が読むべきである。
2013年4月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
古い日銀は、自らの無力さを執拗に主張し続けてきた。それは世界各国の前例を無視したマスコミ統制で守られてきた。
これからの、政策と効果を予感できる一冊。
これからの、政策と効果を予感できる一冊。