他の方も指摘されているが、
Fete of West(西洋の運命)というタイトルは、西洋の終わりと和訳されたが、
日本の分析の章もあるので、先進国の運命、終わりの方がしっくりくる気がします。
西洋の終わりというタイトルはインパクトがあるが、若干誇張のようにも感じる。
西洋が時代を牽引してきた時代の終わり?ということだろう。
本書の内容は19、20世紀から今日に至るまで、経済発展において確固たる地位を築いてきた西洋、日本の国内問題を指摘しています。
その内容については、普段から経済新聞やネットニュース、または他の経済書籍などを多数読んでいる方なら、そんなに新鮮味はないと思う。
豊かだったはずの国では、国内格差、移民問題他、様々な事が生じている(いつの時代も問題はありますが)。それに加え、BRICsなどの経済発展の勢いに圧倒され、西洋は逼迫してきている。
だが、本書には明確な打開策などは記述されていない。
著者の立場はあくまでジャーナリストで、アカデミズムからの見解ではない。
開放性と平等は必要だと思うが、不平等、不公正はいつの時代にもある。
これから先の未来、ネットを介してのさらなるグローバル化の加速、仮想通貨の普及などで、国家という枠組みをはみ出し、多国籍の民間企業などが成長していき、今よりさらに国家の力を縮小する事が増えていくかもしれない。
これからの未来、国境なんて関係ないと
言っていた学者がいたが、一方で、トランプ政権誕生、イギリスのEU脱退やスコットランド、スペイン国内の独立運動、移民排斥などといった動き、右よりの思想が、世界中で増えてきているのは、本書にもあるが、世界が閉鎖的になってきている証拠だろう。
それは今までグローバル化として行ったことと真逆のことだ。
その中でも、移民問題は常々ニュースになっているし、尚且つ、イスラム国が絡んでいるので収束がまだまだつきそうにない。
日本についての正規と非正規問題などは、これからのアベノミクスでどう変わっていくのかを注視していくべきである。
東西南北、世界の動きが活発になり、どの国が世界を引っ張っていくのだろう(主軸はまだアメリカのままだろうが)。
各国の今とその背景をザッと知るという意味では、読む価値はあると思う。
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「西洋」の終わり: 世界の繁栄を取り戻すために 単行本 – 2017/7/1
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購入オプションとあわせ買い
「池上彰の大岡山通信 若者たちへ」にて、「教え子たちと読んだ本」として紹介されました!
NHK「おはよう日本」にて紹介されました!
日経新聞、朝日新聞、毎日新聞、読売新聞、日経ヴェリタス、日経ビジネス、週刊ダイヤモンド……各紙誌で話題! !
大ベストセラー著者が先進国の未来に警鐘を鳴らす!
■グローバル化の進展がもたらした不平等の拡大を背景に、世界中で移民排斥や孤立主義を訴える政党の支持率が上昇し、世界は急速に閉鎖的な空間になりつつある。
■蔓延するポピュリズムは、第二次世界大戦以降の西側先進国の「繁栄」を実現してきた「西洋」の理念――開放性と平等――を捨て去り、各国の協調関係を分断し、一国内でも断絶を引き起こすかもしれない。
■私たちはいま、「西洋の繁栄」の終わりの始まりにいる。それを避けるために、一人ひとりと国家は何をすべきか?
■知日派として名高い国際ジャーナリストが、米国、英国、欧州、日本、スイス、スウェーデンを事例に「自由」と「豊かさ」を守るためにいま取るべき行動を提言する。
NHK「おはよう日本」にて紹介されました!
日経新聞、朝日新聞、毎日新聞、読売新聞、日経ヴェリタス、日経ビジネス、週刊ダイヤモンド……各紙誌で話題! !
大ベストセラー著者が先進国の未来に警鐘を鳴らす!
■グローバル化の進展がもたらした不平等の拡大を背景に、世界中で移民排斥や孤立主義を訴える政党の支持率が上昇し、世界は急速に閉鎖的な空間になりつつある。
■蔓延するポピュリズムは、第二次世界大戦以降の西側先進国の「繁栄」を実現してきた「西洋」の理念――開放性と平等――を捨て去り、各国の協調関係を分断し、一国内でも断絶を引き起こすかもしれない。
■私たちはいま、「西洋の繁栄」の終わりの始まりにいる。それを避けるために、一人ひとりと国家は何をすべきか?
■知日派として名高い国際ジャーナリストが、米国、英国、欧州、日本、スイス、スウェーデンを事例に「自由」と「豊かさ」を守るためにいま取るべき行動を提言する。
- 本の長さ350ページ
- 言語日本語
- 出版社日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
- 発売日2017/7/1
- 寸法13.8 x 2.4 x 19.4 cm
- ISBN-104532357373
- ISBN-13978-4532357375
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商品の説明
著者について
ビル・エモット
国際ジャーナリスト
世界的に著名な国際ジャーナリスト。知日派、アジア通として名高い。1956年イギリス生まれ。80年からエコノミスト誌に勤務し、ブリュッセル特派員を経て、83年に東京支局長として来日。86年に帰国し、93年に同誌編集長就任。13年間の在任中、同誌の発行部数を50万部から110万部に倍増させ、数多のジャーナリズム賞を受賞。90年には日本のバブル崩壊を予測した『日はまた沈む』を発表し、ベストセラーに。2006年には日本の経済復活を宣言した『日はまた昇る』を、2008年に日中印の覇権争いを描いた『アジア三国志』を発表し、話題を呼んだ。現在は国際ジャーナリストとして政治経済、世界情勢をめぐる著書や記事の執筆を行ない日経ビジネスやFTに定期的に寄稿するほか、自身が設立したNPO「The Wake Up Foundation」の理事長を務める。2016年に旭日中綬章を受章。
伏見 威蕃
翻訳家
翻訳家。1951年生まれ。早稲田大学商学部卒。ノンフィクションからミステリー小説まで幅広い分野で活躍中。ビル・エモット『アジア三国志』、トーマス・フリードマン『フラット化する世界』、マーク・グリーニー「暗殺者グレイマン」シリーズなど、訳書多数。
国際ジャーナリスト
世界的に著名な国際ジャーナリスト。知日派、アジア通として名高い。1956年イギリス生まれ。80年からエコノミスト誌に勤務し、ブリュッセル特派員を経て、83年に東京支局長として来日。86年に帰国し、93年に同誌編集長就任。13年間の在任中、同誌の発行部数を50万部から110万部に倍増させ、数多のジャーナリズム賞を受賞。90年には日本のバブル崩壊を予測した『日はまた沈む』を発表し、ベストセラーに。2006年には日本の経済復活を宣言した『日はまた昇る』を、2008年に日中印の覇権争いを描いた『アジア三国志』を発表し、話題を呼んだ。現在は国際ジャーナリストとして政治経済、世界情勢をめぐる著書や記事の執筆を行ない日経ビジネスやFTに定期的に寄稿するほか、自身が設立したNPO「The Wake Up Foundation」の理事長を務める。2016年に旭日中綬章を受章。
伏見 威蕃
翻訳家
翻訳家。1951年生まれ。早稲田大学商学部卒。ノンフィクションからミステリー小説まで幅広い分野で活躍中。ビル・エモット『アジア三国志』、トーマス・フリードマン『フラット化する世界』、マーク・グリーニー「暗殺者グレイマン」シリーズなど、訳書多数。
登録情報
- 出版社 : 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版; New版 (2017/7/1)
- 発売日 : 2017/7/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 350ページ
- ISBN-10 : 4532357373
- ISBN-13 : 978-4532357375
- 寸法 : 13.8 x 2.4 x 19.4 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 289,982位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 1,962位外交・国際関係 (本)
- - 46,451位ノンフィクション (本)
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2017年8月25日に日本でレビュー済み
昨今の日本ではジャーナリストに対する信頼度は低下傾向にあるが、西欧での調査ではすでにかなりの程度で信頼されていない。その証左の一端をこの書物に見ることができると思う。諸問題を整理して述べてあることにはいささかの異論もない。例えば日本では正規と非正規の労働者の間に分断があり、これが社会の分裂につながる危険をもたらす。加えてアメリカではこの状況にさらに人種の問題が絡む。このように問題点はうまく整理されているのだが、その解決のためには、民主主義的価値観の再確認が必要だと言われても、あまりに抽象的でどこか他人事である。これが言論人の弱点ではないか。格差の問題についてマグマのような怒りの沈潜が広く社会にあることへの危機感が足りないように感じた。トランプを大所高所からお行儀の良い民主主義的価値観で説教したり批判しても、何も届かないし、トランプ現象が表している社会の分断状況に対して何のインパクトもないのではないか。
2018年6月13日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ビル・エモット氏の訳本が、しばらくぶりに出たので購入した。
タイトルの「西洋」に限定することなく、米国やアジアを含めた比較政治経済論を展開している。
目まぐるしく変化する世界情勢の中で、鋭い視点での理論には感服させられる。
ただ、編集ミスが散見しているのは残念である。
これが日経新聞社が出している書籍かと思うとイメージダウンになる。
タイトルの「西洋」に限定することなく、米国やアジアを含めた比較政治経済論を展開している。
目まぐるしく変化する世界情勢の中で、鋭い視点での理論には感服させられる。
ただ、編集ミスが散見しているのは残念である。
これが日経新聞社が出している書籍かと思うとイメージダウンになる。
2017年10月29日に日本でレビュー済み
★2017年10月28日読了『西洋の終わり 世界の繁栄を取り戻すために』ビル・エモット著 評価B+
日本の上空でさえもミサイルが平気で通過する混沌とした世界情勢の本質を整理し、いかに住みよい世界を取り戻すのか、その方策を提示した意欲作。前半はかなり概念的な話がぎっちり詰まっていて、なかなか読み進むのに正直骨が折れた。しかし、後半は一転、具体論と積極的な解決策(決して簡単ではないが、実現したスウェーデン、スイスを例とする。)が示され、信念をもって、人々がそれに取り組めるかどうかにかかっていると説く。ただの悲観論に終わっていないところがよい。ただし、これらの政策の実行となると、それが出来そうな政治家は、暗愚が民衆を反映してか、今のところ、世界には見当たらない気はする。しかし、希望はあると思う。それだけの信念を語れる国を、世界を思う政治家が現れるか?!
日本についても1章コメントされており、過去の日本の成功は、柔軟性と活力が源泉であったが、それが古い既得権益団体により制度が硬直化したことが長期低迷の原因。本当の規制緩和を行い、カルテルを破壊し全面的な競争を導入するアベノミクス第三の矢が放てるかどうか?が日本の未来を左右するとのこと。
序 西洋という理念
第1章 戦いを開始しろ
第2章 不平等と公平性
第3章 民主主義と自縄自縛
第4章 アメリカを正道に戻す
第5章 イギリス、彼らのイギリス
第6章 欧州の麻痺
第7章 日本という謎
第8章 スウェーデンとスイスのフーディーニ
第9章 シルバーヘアとスマート・ドローン
第10章 野蛮な来訪者
第11章 西洋の運命
<備忘>
■著者が言う西洋とは、自由民主主義の先進諸国のこと。ソ連崩壊後、資本主義の勝利を素直に信じ、大いなる高揚感に包まれていた。それもつかの間、それら西洋世界が、内なる弱さ、政策の失敗、民主主義の自縄自縛に陥り、制度が硬直化。さらには、高齢化、財政問題、移民問題、民族主義の台頭、富と権力の集中とそれに対する人々の不満、新大国中国の急激な勢力拡大、米国の孤立主義への回帰、など問題山積している。
■著者は、西洋諸国の中で、それらの問題を解決してきたスウェーデンとスイスにそのヒントを見出す。
◎人口が少なく、等質性と共同体意識が醸成されやすいこと。
◎スウェーデン=信頼と総意の社会。80年代から開放と経済の自由化、所得税改革、年金改革と包括的な税制改革により課税基盤拡大と税率下げを実施。自由化により競争は増加し、新たなクリエイティブ企業が増加、結果税収は増え、税率は減らしても高い社会福祉支出は維持できた。(公的年金支出は対GDP比7.4%に過ぎない。)懸念点は、公立校の水準低下と移民問題。
◎スイス=UBS、クレディスイスの二行は、秘密保護法問題、金融危機を乗り越え、世界のトップバンクの一角に残る。製造業はGDPの19%を占め、化学・医薬品、精密機器、機械工業に注力。2007年の規制緩和以降、世界の頭脳が移民して、今や810万人のうちの24%が外国人。結果大学と民間企業の研究開発、協力が隆盛。
■良き社会を作る条件となりそうなこと。
◎不動産登記、輸出入、納税などが容易、生産年齢の4/5が雇用され勤労者のほぼ全員が納税者となる。そして納税に見合う質の高いサービスを提供できる効率の良い政府になること。
◎住民は、60歳もしくは65歳以上にならないと引退しずらい年金ルールを制定することで、経済活動と財政にメリットが生ずる。
◎寛容な社会のセーフティーネットと職権濫用を防ぐ政府の透明性を確保し、社会の信頼感がある。
■西洋が直面する4つの国際関係問題、国家安全保障問題
①中国が国際情勢で自分の領域を確立するために、自国の利益になるように国際ルールの新解釈や改変を行おうと要求と圧力をかけている。
②力が衰えているのに、ロシアが国家アイデンティティを復活または守るために世界中で猛威をふるい、今のルールに従わないにもかかわらず、対応できない。
③ISやその先駆者がもたらす反文明思想をもって、全世界が現代性と見なしている物事に反対し、それを拠り所に運動やアイデンティティを築き、世界のあらゆるところに戦いの場を求める。
④北アフリカ、中東、中央アジアに失敗国家が存在し、そこに過激組織が活動できる領域が存在する。
■良き社会、良き西洋(健全な自由資本主義社会)の復活への条件
①理想、競争、新しいエリート、幅広い機会などの開放性とだれでも受け入れる公民権と幅広い公益の確立
②特定の集団が幅広い公共の利益を犠牲にして利得を得る障壁や特権の排除=規制緩和、自由化
③政治的権利の平等と社会的信頼が守られること。
④現状の苦難を乗り切り、時には一部の人間に苦痛を強いるも全体のために開放と平等という信念を貫ける成功し持続するリーダーシップ
■八原則
1.開放性が幅広い公共の利益を犠牲にして、利益を得る障壁、特権を撤去。
2.平等こそがすべてだが、それには金だけが重要ではない。不公平な特権の固定化や社会移動や選択の自由を妨害するものを監視できるか?
3.あらゆるレベルと年代の教育は平等を支える重要な柱であるとともに、国の存続に欠かせない経済的、社会的資源。
4.若年層と高齢者の世代間平等は社会階級間や民族集団の平等と同じように重要。
5.法の支配は平等の保証であり、市民間、国家間の信頼を強める。
6.言論の自由は、開放性と平等に欠かせないもの:メディアができるだけ自由で多元性を維持できるように管理することがたいせつ。
7.退屈で変わらないことが経済成長の好ましい目標。
8.国際的な法の支配と国際協調を育むことが必要不可欠。
日本の上空でさえもミサイルが平気で通過する混沌とした世界情勢の本質を整理し、いかに住みよい世界を取り戻すのか、その方策を提示した意欲作。前半はかなり概念的な話がぎっちり詰まっていて、なかなか読み進むのに正直骨が折れた。しかし、後半は一転、具体論と積極的な解決策(決して簡単ではないが、実現したスウェーデン、スイスを例とする。)が示され、信念をもって、人々がそれに取り組めるかどうかにかかっていると説く。ただの悲観論に終わっていないところがよい。ただし、これらの政策の実行となると、それが出来そうな政治家は、暗愚が民衆を反映してか、今のところ、世界には見当たらない気はする。しかし、希望はあると思う。それだけの信念を語れる国を、世界を思う政治家が現れるか?!
日本についても1章コメントされており、過去の日本の成功は、柔軟性と活力が源泉であったが、それが古い既得権益団体により制度が硬直化したことが長期低迷の原因。本当の規制緩和を行い、カルテルを破壊し全面的な競争を導入するアベノミクス第三の矢が放てるかどうか?が日本の未来を左右するとのこと。
序 西洋という理念
第1章 戦いを開始しろ
第2章 不平等と公平性
第3章 民主主義と自縄自縛
第4章 アメリカを正道に戻す
第5章 イギリス、彼らのイギリス
第6章 欧州の麻痺
第7章 日本という謎
第8章 スウェーデンとスイスのフーディーニ
第9章 シルバーヘアとスマート・ドローン
第10章 野蛮な来訪者
第11章 西洋の運命
<備忘>
■著者が言う西洋とは、自由民主主義の先進諸国のこと。ソ連崩壊後、資本主義の勝利を素直に信じ、大いなる高揚感に包まれていた。それもつかの間、それら西洋世界が、内なる弱さ、政策の失敗、民主主義の自縄自縛に陥り、制度が硬直化。さらには、高齢化、財政問題、移民問題、民族主義の台頭、富と権力の集中とそれに対する人々の不満、新大国中国の急激な勢力拡大、米国の孤立主義への回帰、など問題山積している。
■著者は、西洋諸国の中で、それらの問題を解決してきたスウェーデンとスイスにそのヒントを見出す。
◎人口が少なく、等質性と共同体意識が醸成されやすいこと。
◎スウェーデン=信頼と総意の社会。80年代から開放と経済の自由化、所得税改革、年金改革と包括的な税制改革により課税基盤拡大と税率下げを実施。自由化により競争は増加し、新たなクリエイティブ企業が増加、結果税収は増え、税率は減らしても高い社会福祉支出は維持できた。(公的年金支出は対GDP比7.4%に過ぎない。)懸念点は、公立校の水準低下と移民問題。
◎スイス=UBS、クレディスイスの二行は、秘密保護法問題、金融危機を乗り越え、世界のトップバンクの一角に残る。製造業はGDPの19%を占め、化学・医薬品、精密機器、機械工業に注力。2007年の規制緩和以降、世界の頭脳が移民して、今や810万人のうちの24%が外国人。結果大学と民間企業の研究開発、協力が隆盛。
■良き社会を作る条件となりそうなこと。
◎不動産登記、輸出入、納税などが容易、生産年齢の4/5が雇用され勤労者のほぼ全員が納税者となる。そして納税に見合う質の高いサービスを提供できる効率の良い政府になること。
◎住民は、60歳もしくは65歳以上にならないと引退しずらい年金ルールを制定することで、経済活動と財政にメリットが生ずる。
◎寛容な社会のセーフティーネットと職権濫用を防ぐ政府の透明性を確保し、社会の信頼感がある。
■西洋が直面する4つの国際関係問題、国家安全保障問題
①中国が国際情勢で自分の領域を確立するために、自国の利益になるように国際ルールの新解釈や改変を行おうと要求と圧力をかけている。
②力が衰えているのに、ロシアが国家アイデンティティを復活または守るために世界中で猛威をふるい、今のルールに従わないにもかかわらず、対応できない。
③ISやその先駆者がもたらす反文明思想をもって、全世界が現代性と見なしている物事に反対し、それを拠り所に運動やアイデンティティを築き、世界のあらゆるところに戦いの場を求める。
④北アフリカ、中東、中央アジアに失敗国家が存在し、そこに過激組織が活動できる領域が存在する。
■良き社会、良き西洋(健全な自由資本主義社会)の復活への条件
①理想、競争、新しいエリート、幅広い機会などの開放性とだれでも受け入れる公民権と幅広い公益の確立
②特定の集団が幅広い公共の利益を犠牲にして利得を得る障壁や特権の排除=規制緩和、自由化
③政治的権利の平等と社会的信頼が守られること。
④現状の苦難を乗り切り、時には一部の人間に苦痛を強いるも全体のために開放と平等という信念を貫ける成功し持続するリーダーシップ
■八原則
1.開放性が幅広い公共の利益を犠牲にして、利益を得る障壁、特権を撤去。
2.平等こそがすべてだが、それには金だけが重要ではない。不公平な特権の固定化や社会移動や選択の自由を妨害するものを監視できるか?
3.あらゆるレベルと年代の教育は平等を支える重要な柱であるとともに、国の存続に欠かせない経済的、社会的資源。
4.若年層と高齢者の世代間平等は社会階級間や民族集団の平等と同じように重要。
5.法の支配は平等の保証であり、市民間、国家間の信頼を強める。
6.言論の自由は、開放性と平等に欠かせないもの:メディアができるだけ自由で多元性を維持できるように管理することがたいせつ。
7.退屈で変わらないことが経済成長の好ましい目標。
8.国際的な法の支配と国際協調を育むことが必要不可欠。
2017年8月16日に日本でレビュー済み
本書はイギリスのビジネス誌「エコノミスト」で長年働き日本支局長も務めたことがある国際的なジャーナリスト、ビル・エモット氏による最新作です。エモット氏の本は過去何冊か拝読しましたが、過去の本と同じく全編通じて読みやすくできています。日本語の題名は「西洋」の終わり、現題は“The Fate of the West”(西洋の運命)ということで、第一印象は運命論者的、不可避的な西洋の没落を悲観的に書いた本かと思わせますが、そうではありません。むしろ逆で、不可避な運命というものはない、それを決めるのは人間、特に西側諸国(日本を含む)といわれている国の人々であって、西洋を没落させるかどうかはそれらの内部の人達の行動にかかっている、という趣旨です。
エコノミスト誌で働いていただけあって、全編通じて「開放性」「(機会の)平等」を高らかに信奉している旨が随所に出てきます。また西洋が今後どこに進んでいくかは我々内部の人間の行動いかんである、という点においては最近読んだロバート・ライシュ氏の論調(「最後の資本主義」)とも似通っている気がしました。全体的に興味深く拝読しましたが、1つだけケチをつけるとしたら、エモット氏の本は表面的な記述が多い印象がぬぐえないことです。端的に言えばこの本はエコノミスト誌の記事のロングバージョンという印象で、所詮は記事のレベルであること、そのため深い洞察や分析には基づいていない、という印象をうけました(※実際は違うのかもしれませんがあくまで個人的な印象です)。本書の全編を通じて世界各所で過去に起こったこと、起こっていることの事実羅列が多く、それへの対処方法は「開放性」「平等」だと結論づけられてしまうと、「ああエコノミスト誌の延長だね」という感じになってしまいます。その意味では、「この本は深い」「目を開かされた」といった印象はなく、星4つとさせてもらいました。
エコノミスト誌で働いていただけあって、全編通じて「開放性」「(機会の)平等」を高らかに信奉している旨が随所に出てきます。また西洋が今後どこに進んでいくかは我々内部の人間の行動いかんである、という点においては最近読んだロバート・ライシュ氏の論調(「最後の資本主義」)とも似通っている気がしました。全体的に興味深く拝読しましたが、1つだけケチをつけるとしたら、エモット氏の本は表面的な記述が多い印象がぬぐえないことです。端的に言えばこの本はエコノミスト誌の記事のロングバージョンという印象で、所詮は記事のレベルであること、そのため深い洞察や分析には基づいていない、という印象をうけました(※実際は違うのかもしれませんがあくまで個人的な印象です)。本書の全編を通じて世界各所で過去に起こったこと、起こっていることの事実羅列が多く、それへの対処方法は「開放性」「平等」だと結論づけられてしまうと、「ああエコノミスト誌の延長だね」という感じになってしまいます。その意味では、「この本は深い」「目を開かされた」といった印象はなく、星4つとさせてもらいました。
2018年3月7日に日本でレビュー済み
久しぶりにいい本を読んだ。ビルエモット、彼はもともとエコノミストの編集長
日本に住んでいた経験もあり、知日派で有名だ。有名な著書は
日はまた沈む これはバブルを予見した本だった
そして日はまたのぼる これはバブルの終焉を予測した本だった
今回の本は戦後、つくりあげられてきた西洋を中心とした秩序が終わりつつあることを予見している。戦後、西洋は第二次世界大戦のあと、様々な仕組みを構築した。開放性、権利の平等、社会の信頼など西洋がつくりあげた信頼、秩序がそれらとはまったく無縁の中国の台頭により、西洋が是としたルールが揺らいでいる。ロシアの近隣諸国への強硬なる行動、これに欧州もなすすべがない。また、移民問題はシリアなどの度重なる内線により、深刻化している。多くの西洋諸国が移民の受け入れを拒否しはじめ、ナショナリズムが台頭している。ブレグジットにはじまる様々な事象は西洋のつくりあげてきた秩序が終わりつつあることをしめしている。しかしながらこうしたなかで西洋、そしてその西洋の秩序のなかで自由、平等の価値観のもと発展してきた日本も新たなる価値観をつくりあげなければならない。高齢化、人口動態、低成長の時代、こうしたなか、日本は西洋とともに、直面している様々な課題に解決していく術を見出していかなければならない。知日派の著者は何度も日本にも触れている。大いなるヒントを示してくれている、大変いい本だった
日本に住んでいた経験もあり、知日派で有名だ。有名な著書は
日はまた沈む これはバブルを予見した本だった
そして日はまたのぼる これはバブルの終焉を予測した本だった
今回の本は戦後、つくりあげられてきた西洋を中心とした秩序が終わりつつあることを予見している。戦後、西洋は第二次世界大戦のあと、様々な仕組みを構築した。開放性、権利の平等、社会の信頼など西洋がつくりあげた信頼、秩序がそれらとはまったく無縁の中国の台頭により、西洋が是としたルールが揺らいでいる。ロシアの近隣諸国への強硬なる行動、これに欧州もなすすべがない。また、移民問題はシリアなどの度重なる内線により、深刻化している。多くの西洋諸国が移民の受け入れを拒否しはじめ、ナショナリズムが台頭している。ブレグジットにはじまる様々な事象は西洋のつくりあげてきた秩序が終わりつつあることをしめしている。しかしながらこうしたなかで西洋、そしてその西洋の秩序のなかで自由、平等の価値観のもと発展してきた日本も新たなる価値観をつくりあげなければならない。高齢化、人口動態、低成長の時代、こうしたなか、日本は西洋とともに、直面している様々な課題に解決していく術を見出していかなければならない。知日派の著者は何度も日本にも触れている。大いなるヒントを示してくれている、大変いい本だった
2018年2月17日に日本でレビュー済み
西洋という概念が意味する所を考察した本。自由と平等といった、西洋を体現する価値観に基いて作った社会を西洋的と言っている。開放性を保ち、既得権益から開放されることで成長がもたらされるのだろう。既得権益を守ろうという動きが強いことで、社会が固定化し、皆が貧しくなり、特に若者、新参者は活躍の場が限られることになるのだろう。じゃあ、どうする。というのを考えさせられる