この本に書かれているのは、偉大な数学者の生涯ではない。
自分以外に振り向ける激しい憎悪のゆえに自壊していく、若い狂気の思想家・活動家の
それであった。
狂気でありながら若さゆえにあまりに純粋でもあった。自らの思想が祖国を変えること
を無邪気に信じ、愛する女性を無邪気に信じ、ごく自然な流れの中に決闘へと追い込ま
れてゆく。
数学者としてのガロアしか知らなければ「なぜ数学者が決闘を?」という点が不可解に
思えるだろう。しかしそうではなかった。必然的に決闘で夭折した一人の男が、たまたま
偉大な数学者であったということも、この本によって理解できる。
必ず仇を討つと誓う弟に対し「人々を憎むな。それは組織なんだ。個人ではない。復讐は
いけない」と虫の息で語りかける場面は、激しい憎悪に苛まれた生涯とは対象的に穏やか
である。この最期の穏やかさがなかったら、死してなお偉大な数学者にはなりえなかった
かも知れない。
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ガロアの生涯 第2版: 神々の愛でし人 ペーパーバック – 1979/1/1
- 本の長さ388ページ
- 言語日本語
- 出版社日本評論社
- 発売日1979/1/1
- ISBN-104535781230
- ISBN-13978-4535781238
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登録情報
- 出版社 : 日本評論社 (1979/1/1)
- 発売日 : 1979/1/1
- 言語 : 日本語
- ペーパーバック : 388ページ
- ISBN-10 : 4535781230
- ISBN-13 : 978-4535781238
- Amazon 売れ筋ランキング: - 513,800位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 6,873位数学 (本)
- - 30,748位歴史・地理 (本)
- - 84,666位ノンフィクション (本)
- カスタマーレビュー:
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2014年1月6日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
古い書籍なのでそれなりの経年変化で色あせてはいるが、想定した範囲であり、入手できたことをありがたく思う。
2015年2月10日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
本書からうかがえるガロア像は、思索と革命が同居する名状しがたい奇人変人である。数学への孤独な探求と革命への青い情熱が交互に立ち上る。
その人間性は茫としてつかみどころがない。ガロアの葬儀には3000人の共和主義者が列席したそうだが、それほどの魅力を持った人物とは思いがたいのである。
その辺について、著者は創作を控えめにしたと後書きに記している。学者らしく、創作と資料に基づく記述を分離することにこだわっている。享年二十歳の若者に関する資料などたかが知れており、それ故、ガロアの人物像を活き活きと描き出すことは不可能だったのだろう、と推測はできる。
推測はしても、ガロアの内面の掘り下げが甘いことに、残念な思いを禁じ得ない。
もっと人間的なガロアの物語を読んでみたかった。
「神々の愛でし人」というロマンチックなタイトルにすっかり騙された気分である。本書と神々の接点は、当時の民衆運動と対立していたカソリック程度である。そしてガロアはカソリックを嫌っていた。ガロアを愛でた神々はいったいどこへ行ったのだ。
想像の翼をはためかせ、数学に生き革命に死んだ天才の二十年の生涯を活き活きと描き出す作家の現れんことを心から願う次第である。
その人間性は茫としてつかみどころがない。ガロアの葬儀には3000人の共和主義者が列席したそうだが、それほどの魅力を持った人物とは思いがたいのである。
その辺について、著者は創作を控えめにしたと後書きに記している。学者らしく、創作と資料に基づく記述を分離することにこだわっている。享年二十歳の若者に関する資料などたかが知れており、それ故、ガロアの人物像を活き活きと描き出すことは不可能だったのだろう、と推測はできる。
推測はしても、ガロアの内面の掘り下げが甘いことに、残念な思いを禁じ得ない。
もっと人間的なガロアの物語を読んでみたかった。
「神々の愛でし人」というロマンチックなタイトルにすっかり騙された気分である。本書と神々の接点は、当時の民衆運動と対立していたカソリック程度である。そしてガロアはカソリックを嫌っていた。ガロアを愛でた神々はいったいどこへ行ったのだ。
想像の翼をはためかせ、数学に生き革命に死んだ天才の二十年の生涯を活き活きと描き出す作家の現れんことを心から願う次第である。
2012年11月28日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
最近はほかの伝記なども結構出てきたようだが、これが最も有名なガロアの伝記である。この本を読んで数学を志した人間も多いようであり、ガロアや数学に興味を持ったなら、読んで損はない。インフェルトといえばアインシュタインとの共著の物理啓蒙書としても有名だが、あのレオポルトである。みすず書房あたりから本人の著書も出ていたと思う。
こまかい歴史学的なところについてはいろいろと所論もあるようであるが、そういった細かいところはともかく、まずガロアについて知りたいのであれば真っ先に読んでおくべき本。誕生から最期まで、ひと通りの有名なエピソードは書いてあると思う。ガロアの時代も現代も、能力のある人間は生きづらいことには変わりはないように思える。
個人的にはガロアが2日で読破したという伝説のルジャンドルの幾何学書が非常に気になるが、明治時代に訳出されたものが未だに絶版であるらしい。実に残念である。
こまかい歴史学的なところについてはいろいろと所論もあるようであるが、そういった細かいところはともかく、まずガロアについて知りたいのであれば真っ先に読んでおくべき本。誕生から最期まで、ひと通りの有名なエピソードは書いてあると思う。ガロアの時代も現代も、能力のある人間は生きづらいことには変わりはないように思える。
個人的にはガロアが2日で読破したという伝説のルジャンドルの幾何学書が非常に気になるが、明治時代に訳出されたものが未だに絶版であるらしい。実に残念である。
2015年4月16日に日本でレビュー済み
ずいぶん昔、高1の頃に数学セミナーで知って読んでました。
この本と高木先生の「解析概論」、数学セミナーの影響で数学科に進んだようなものです。
ガロアの理論は当時誰にも理解されず、決闘で死を選んだガロアは異端児です。
激情と止まらない数学への情熱が交錯した人生が描かれています。
私の人格形成に多大な影響を与えた本です。笑
学歴、偏差値、名誉、売名などとは無縁の異端児となったガロアを
今のブランド史上主義で大学に進学する学生さんが理解できるとも思えないが
一度自分を振り返るきっかけにはなるでしょうね。
この本と高木先生の「解析概論」、数学セミナーの影響で数学科に進んだようなものです。
ガロアの理論は当時誰にも理解されず、決闘で死を選んだガロアは異端児です。
激情と止まらない数学への情熱が交錯した人生が描かれています。
私の人格形成に多大な影響を与えた本です。笑
学歴、偏差値、名誉、売名などとは無縁の異端児となったガロアを
今のブランド史上主義で大学に進学する学生さんが理解できるとも思えないが
一度自分を振り返るきっかけにはなるでしょうね。
2002年2月15日に日本でレビュー済み
十九世紀パリで二十歳という若い身空で決闘に倒れた一人の少年の物語です。
彼は正真の数学史上の天才でありながら死後何十年を経て漸くその業績が認められた不遇の人生を激動の時代と絡めながら描き出した名著です。数式はありません。
数学の世界に留まらない生身の人間の実相を描き読む者の目頭を熱くする純粋な情熱が胸に迫ってきます。
生きることを熱烈に望みながら応分の待遇も受けられず失意のうちに潰えていく悲劇に涙。
彼は正真の数学史上の天才でありながら死後何十年を経て漸くその業績が認められた不遇の人生を激動の時代と絡めながら描き出した名著です。数式はありません。
数学の世界に留まらない生身の人間の実相を描き読む者の目頭を熱くする純粋な情熱が胸に迫ってきます。
生きることを熱烈に望みながら応分の待遇も受けられず失意のうちに潰えていく悲劇に涙。
2011年12月30日に日本でレビュー済み
シンのフェルマーの最終定理から入ったせいでしょうか、
第2版を読みましたが、少し読みずらい感じがしました。日本語訳も古めかしい。
シンの説明とは違う部分もあります。
数学者としてよりは、活動家としての話が多かったと思います。
シンの本を読んで、期待が大きかった分、星が少なくなりました。
叶うことなら、シンにガロアの本を書いて欲しいです。
黒髪の美女エーヴがとても魅力的でした。
第2版を読みましたが、少し読みずらい感じがしました。日本語訳も古めかしい。
シンの説明とは違う部分もあります。
数学者としてよりは、活動家としての話が多かったと思います。
シンの本を読んで、期待が大きかった分、星が少なくなりました。
叶うことなら、シンにガロアの本を書いて欲しいです。
黒髪の美女エーヴがとても魅力的でした。
2009年2月3日に日本でレビュー済み
最期は決闘で命を落とした若き天才数学者…。とかく伝説的な逸話がついてまわるガロアだが、一般には彼について知っていることというのはあまり多くないというのが実際のところではないだろうか。
本書では、非常に少ないガロア関連の資料を片っ端から検討して纏め上げられた「創作」伝記である。伝記はある程度「創作」や「逸話」が入ってしまうものだが、本書ではガロアの人物像をより際立たせるために、その「キャラ設定」まで立ち入って構成されている。そのおかげで、無機的な伝記と違って、天才であるがどこか傲慢、フランスの革命運動に翻弄される激情家…といったリアルで感情移入できる作品になっている。
激しやすく見栄っ張りな「ガロア」が、革命家・数学者として認められたいが故にたびたび獄中に入れられていたこと、決闘の元になった女性エーヴへのぎこちない接し方…面白いことに、彼の名を有名にした数学に関する(詳しい)記述はほとんどない。時代背景と感情面の動き、そういったものに焦点が当てられているため、ただの伝記ではない、生き生きとしたガロア像が印象的な一冊になっている。
本書では、非常に少ないガロア関連の資料を片っ端から検討して纏め上げられた「創作」伝記である。伝記はある程度「創作」や「逸話」が入ってしまうものだが、本書ではガロアの人物像をより際立たせるために、その「キャラ設定」まで立ち入って構成されている。そのおかげで、無機的な伝記と違って、天才であるがどこか傲慢、フランスの革命運動に翻弄される激情家…といったリアルで感情移入できる作品になっている。
激しやすく見栄っ張りな「ガロア」が、革命家・数学者として認められたいが故にたびたび獄中に入れられていたこと、決闘の元になった女性エーヴへのぎこちない接し方…面白いことに、彼の名を有名にした数学に関する(詳しい)記述はほとんどない。時代背景と感情面の動き、そういったものに焦点が当てられているため、ただの伝記ではない、生き生きとしたガロア像が印象的な一冊になっている。