タイトルからは現代の環境危機を取り上げた本に見えるが、1970年代に小松左京氏が現代文明の危機について書いたものを改訂再録したものである。当時は地球の寒冷化が危機として認識されていたわけで、逆の事実が同じような文脈でとらえられているのはそれだけで大きなる皮肉だ。本書が今日出版されることに成った経緯は知らないが、著者も出版社も、その皮肉が言いたいと感じていたのではないだろうか。どちら向きにせよ、今日の問題を人類全体の歴史の文脈でとらえようとする姿勢、そして、様々な歴史や科学の視点が飛び出す博覧強記さは痛快で、久しぶりに「小松左京」を堪能した。
その中で、第3章の「ユートピアの終焉」は少し異質であったが、きわめて興味深かった。私はトマス・モアの『ユートピア』というのが理想社会について書いたものであるとは聞いていた。本書によればその「理想社会」というのは、指導者の導く全体主義社会なのだ。著者はその「ユートピア」の先祖をプラトンやアウグスティヌスに求め、スウィフトやオーウェルへと連なる系譜として読者に提示する。当然、ナチスドイツやソビエト連邦はそれが具現化したものとされている。これは、「ユートピア」という言葉への認識を一変させ、「理想社会」という言葉の持つ危険性を気付かせてくれる。
まったく「理想」てのは危険物で取扱注意なんだよなあ。「善意」もね。
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
天変地異の黙示録: 人類文明が生きのびるためのメッセージ (日本文芸社パンドラ新書 47) 新書 – 2006/6/1
小松 左京
(著)
- 本の長さ187ページ
- 言語日本語
- 出版社日本文芸社
- 発売日2006/6/1
- ISBN-104537254017
- ISBN-13978-4537254013
登録情報
- 出版社 : 日本文芸社 (2006/6/1)
- 発売日 : 2006/6/1
- 言語 : 日本語
- 新書 : 187ページ
- ISBN-10 : 4537254017
- ISBN-13 : 978-4537254013
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,021,389位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
1931年大阪生まれ。京都大学文学部卒業。星新一、筒井康隆とともに「御三家」と呼ばれる、日本を代表するSF作家(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 小松左京セレクション1 宇宙漂流 (ISBN-13: 978-4591118603)』が刊行された当時に掲載されていたものです)
カスタマーレビュー
星5つ中4つ
5つのうち4つ
1グローバルレーティング
評価はどのように計算されますか?
全体的な星の評価と星ごとの割合の内訳を計算するために、単純な平均は使用されません。その代わり、レビューの日時がどれだけ新しいかや、レビューアーがAmazonで商品を購入したかどうかなどが考慮されます。また、レビューを分析して信頼性が検証されます。