本作にはキリスト教的文化背景を超えた普遍性が確かにあるが、私はやはり、キリスト教的文化背景の文脈での理解が一番正当な理解だろうと考えている。
キリスト教への無条件の帰依が形骸化して本質的には絶望と虚無しか残されていない現代人の姿を、本作は象徴的に描いていると私は考えたい。
それは日本人にはわかりにくい心の在り方だから、日本人としてはキリスト教を超越した普遍性として捉えた方がしっくりくるのだろうが、それでは西欧的な伝統文化を無視しすぎているように、つまり日本人の都合に合わせすぎているように思える。
それを小説ではなく戯曲として作品化したことはどうい意味であろうか？
小説のような雑駁な形式ではなく、戯曲だとエッセンスのみを象徴的に描くのに適しているのだろう。
知的な面白さを十分に堪能させてくれるすぐれた作品に違いない。
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