読む者の存在を揺るがす「メビウスの輪」形式の幻想・形而上学的小説の傑作。主人公が失踪した友人のシャヴィエルを探すためにインドの各地を訪れるという旅行記の様な体裁をしているのだが、上述した通り、読む者は眩暈感に浸らざるを得ない。インドという舞台設定も巧く、混沌、神秘的、汚濁、呪術的といったインドの世俗的イメージを本作に織り込んでいる。主人公とシャヴィエルとの詳細な関係を説明していない点もミソ。
主人公は各地であるエピソードに合い、必ずしもそれらの含意は一貫していない(理解出来ないものも多かった)が、幾つか挙げると以下の様。
ある駅で「肉体は魂を運ぶための鞄」と告げられる。極めて形而上学的で、<主人公=肉体>、<シャヴィエル=魂>とも取れる。それを強調するのが、子供の占い師の言葉で、この世には、<マーヤー=この世の仮の姿>と<アトマン=個人の魂>が存在し、「主人公はマーヤーで、そのアトマンは探せない」と断言する。すると、本作は<マーヤー>が<アトマン>を探す物語となる(即ち、2人は一心同体で、平たく言えば"自分探し")。また、修道士は「シャヴィエルなど存在しない。幽霊にすぎない。わしらはみな死人だ」と死生観を述べる。更に、アメリカのサラーリーマンは恒星の崩壊の過程とブラック・ホールの誕生に触れ、宇宙観とも死生観とも取れる発言をする。読んでいて途方にくれるのも無理はないと思う。
そして、ラストで一人称が一転してシャヴィエルに移り、「この本を書いているのは僕なんだよ」と述べるのだから、まさに「メビウスの輪」である。"まえがき"に本作は「不眠の本」とあるが、それに相応しい魅惑的な傑作だと思った。
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インド夜想曲 (白水Uブックス 99 海外小説の誘惑) 新書 – 1993/10/20
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- 本の長さ163ページ
- 言語日本語
- 出版社白水社
- 発売日1993/10/20
- ISBN-104560070997
- ISBN-13978-4560070994
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
失踪した友人を探してインド各地を旅する主人公、彼の前に現れる幻想と瞑想の世界。インドの深層にふれるミステリアスな内面の旅行記。イタリア文学の鬼才が描く十二の夜の物語。
登録情報
- 出版社 : 白水社 (1993/10/20)
- 発売日 : 1993/10/20
- 言語 : 日本語
- 新書 : 163ページ
- ISBN-10 : 4560070997
- ISBN-13 : 978-4560070994
- Amazon 売れ筋ランキング: - 122,073位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 15位イタリア文学研究
- - 24位アジア文学 (本)
- - 30位イタリア文学 (本)
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2019年12月14日に日本でレビュー済み
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2023年3月31日に日本でレビュー済み
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この何気ない旅行記は静かな夜更けに読むべきである。ショパンの夜想曲などを聴きながら読んでいると心は軽くなってこの著者の旅行の同行者となって、著者と同じ匂いを嗅ぎ、同じ触感を感じ、同じ視覚まで共有した気になる。名著であり名訳である。
2023年12月21日に日本でレビュー済み
インドで行方不明になった知人を探す、というテーマなのに主人公が脈絡もなく旅をしていて、スラムに行ったかと思えば超高級ホテルに泊まったり…煙に巻かれた気分になりました。
誰かと話をする場面でも、お互いの質問に必ずしも答えておらず、話が噛み合っていないのに会話が淡々と続いたりします。
不思議なことに、意味が分からないのに不快にはなりませんでした。まるで夢を見ているような話でした。
最後まで読むと、最初からヒントが示されていたことに気づきます。
薄い本で字も大きいのであっという間に読み終わると思います。
誰かと話をする場面でも、お互いの質問に必ずしも答えておらず、話が噛み合っていないのに会話が淡々と続いたりします。
不思議なことに、意味が分からないのに不快にはなりませんでした。まるで夢を見ているような話でした。
最後まで読むと、最初からヒントが示されていたことに気づきます。
薄い本で字も大きいのであっという間に読み終わると思います。
2012年11月12日に日本でレビュー済み
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この小説は境界を行き来する。
インドとヨーロッパの間を。
ヒンズー教とキリスト教の間を。
スラムと超高級ホテルの間を。
自己と他者の間を。
夢と現実の間を
生と死の間を。
終わりと始まりの間を。
そして境界が次第にぼやけてくる。
ずっと変わらずあるのは夜だけだった。
欧米の小説にしては珍しく曖昧な、
気持よく煙に巻かれたとてもよい小説だった。
インドとヨーロッパの間を。
ヒンズー教とキリスト教の間を。
スラムと超高級ホテルの間を。
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そして境界が次第にぼやけてくる。
ずっと変わらずあるのは夜だけだった。
欧米の小説にしては珍しく曖昧な、
気持よく煙に巻かれたとてもよい小説だった。
2016年6月16日に日本でレビュー済み
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書き出しはボンベイのマリーン・ドライヴをタクシーで突っ走るシーン。空港を出てタクシーを拾ってホテルまで。不安と期待の入り混じる誰もが経験する旅の第一歩。ボンベイについたばかりの、恐らくは著者の分身である主人公とタクシーの運ちゃんとのやり取りを描いて、のっけから読む者をインドの旅へとトリップさせてくれます。トリップには薬物などによって幻覚状態になるという意味もありますが、本書がまさにそう。と言ってももちろんドラッグはでてこない。これは不眠の本であるとともに旅の本である、という不思議なプロローグが示す通り、失踪した友人を探しにインドに来たはずの主人公は、行方不明の友人のことなどすっかり忘れてボンベイ、マドラス、ゴアと旅を続ける。ラストはゴアの高級リゾートで謎(?)の美女とのディナー。なんだ、ただの女たらしのイタリア男の旅物語か、と結論付けるのは早計。そう思ったあなたは、旅のプロセスの中で、随所に散りばめられたトリックを見落としているのかもしれません。時折、姿をのぞかせる失踪した友人の影・・・いや、そんなトリックなんて思い過ごしさ、などと嗤う人もいるかもしれませんが、そこで冒頭のプロローグに立ち戻って、そうなのだ、これは不眠の本なのだ、辻褄あわせなんて無意味なのだ、と自分自身に言い聞かせ、もしかしておれは著者のタブッキに弄ばれただけなのかも、と思ってしまう。濃密なインドの夜の闇。何といってもタイトルが夜想曲だ。こんなに強烈に夜のイメージを放つ小説はない!夢遊病者のごとくインドを彷徨う主人公と旅の途中で出会うどこか現実離れした人たち。彼らと一体となっていつの間にか読む者もインドの夜の闇に沈み込んでいってしまうような、そんな不思議な魅力あふれる小説です。
2021年8月4日に日本でレビュー済み
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どこの書評を見ても大変高評価な本ですが、自分にはそこまで響きませんでした。
序盤のサスペンス的な始まりはおもしろくなりそうな気配を感じたし、
文体からわいてくるにおいや湿度なども素晴らしく、バスの停留所にいる兄弟やスラム、
病院の迷宮のような雰囲気、くしゃくしゃになった巨大なペニスを腹の上にのせている老人など、
部分的には好みの描写も多々ありました。
しかしどうにも会話文になじめず、無機質なやり取りに感じてしまい、
頭にさっぱり入ってこず、自分には物足りませんでした。
描写は本当にすばらしいので、別の作品にも挑戦してみようと思います。
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文体からわいてくるにおいや湿度なども素晴らしく、バスの停留所にいる兄弟やスラム、
病院の迷宮のような雰囲気、くしゃくしゃになった巨大なペニスを腹の上にのせている老人など、
部分的には好みの描写も多々ありました。
しかしどうにも会話文になじめず、無機質なやり取りに感じてしまい、
頭にさっぱり入ってこず、自分には物足りませんでした。
描写は本当にすばらしいので、別の作品にも挑戦してみようと思います。
2017年1月12日に日本でレビュー済み
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インド在住で、インドを学習中です。
インド学習の一環として、本作品を読みました。
自身が感じているインドとは違う部分がありました。
ちょっと美化しすぎな感じだと思いました。
同時に、イタリア人がインドを旅すると、こう見えるんだろうなぁ、とも思えました。
不思議で、素敵で、ミステリアスなインドの旅の描写だと思いました。
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ちょっと美化しすぎな感じだと思いました。
同時に、イタリア人がインドを旅すると、こう見えるんだろうなぁ、とも思えました。
不思議で、素敵で、ミステリアスなインドの旅の描写だと思いました。
2019年9月13日に日本でレビュー済み
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女性の私には少し難しいですね
でも興味深くスローペースで読んでます。
でも興味深くスローペースで読んでます。