「世界の国々で、外国映画を上映する場合、ほとんどが吹き替えで、字幕が主流なのは日本だけである。」という冒頭の文章で、読者は先ず惹きつけられるでしょう。その理由をあらゆる角度から説明してくれています。それを読むと往年のアメリカ映画で、ドイツ兵同士が、ロシア人同士が、そして日本兵さえも英語を話していた理由が納得いきます。又、日本には移民が少なく、加えて文盲の人が少なく識字率が高いこともその一因という観点にはなるほどと思わされます。
そして映画のスクリーンに字幕を入れるプロの技術や経験を語りますが、次々と我々の知らない苦労が披露され、誠に読ませます。字幕作業と翻訳とは別物であるという著者の見解にも、なるほどと納得させられます。これはある意味で単なる技術論を越えて、立派な映画論でもあり、語学論にもなっているようです。それをある時は具体的に個々の映画を取り上げ、その中のセリフを挙げて説明し、楽しく読めるようにしている作者の文章力にも感心しました。一昔前の出版物ですが、もっと読まれてよい一冊でしょう。さすが、白水社が出版しただけのことはあります。
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字幕の中に人生 (白水Uブックス 1036 エッセイの小径) 新書 – 1997/6/1
戸田 奈津子
(著)
外国映画に必要不可欠な映画字幕はどのように作られるのだろう。本書はひっぱりだこの人気と実力を誇る字幕翻訳の第一人者が、一秒四文字、十字×二行以内のせりふ作りにすべてを賭ける世界を、独特の翻訳技術やシステムを紹介しながら余すところなく書き下ろす、すばらしきシネマ・ライフ。
- 本の長さ237ページ
- 言語日本語
- 出版社白水社
- 発売日1997/6/1
- ISBN-104560073368
- ISBN-13978-4560073360
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
1秒4文字、10字×2行以内のせりふ作りにすべてを賭ける字幕翻訳の第一人者が、独特の翻訳技術やシステムを紹介しながら、今日までの半生を書き下ろす、すばらしきシネマ・ライフ。再刊。
登録情報
- 出版社 : 白水社 (1997/6/1)
- 発売日 : 1997/6/1
- 言語 : 日本語
- 新書 : 237ページ
- ISBN-10 : 4560073368
- ISBN-13 : 978-4560073360
- Amazon 売れ筋ランキング: - 202,646位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2016年11月17日に日本でレビュー済み
2003年9月25日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
たまたまテレビで、自身の人生をお話されている場面を見て
あの字幕翻訳の第一人者の著者が歩んだあきらめない人生を
読みたくて、この本を手に取りました。
読んだ感想は、テレビで本人が話していた方がビンビンきた。
どうしても事実を丁寧に書いたという文章で、感情移入が難しかった
のが正直な気持ち、。
しかし彼女がとても長い間、翻訳の仕事をしたくとも、関わること
すら難しい時代、外人とも直接話す機会にめぐまれなかった不遇の
時代において、何十年もあきらめずに、自分を信じて思い続けたという
真実には感動した。
本人はさらりと書いてはいるが、並々ならぬ努力と、プロフェッシ
ョナルなこだわりと仕事への厳しさを教えられた気がした。
年間40本を越す翻訳家の仕事。今までに字幕をつけた映画は300本以上
その仕事の多くはアシスタントもなく、本人が一人で付けるというから
まさに驚異的な偉業です。
ほんと学ぶべきことが多い良書でした。
もし英語や映画に興味がなくても、一読されることをお勧めします。
あの字幕翻訳の第一人者の著者が歩んだあきらめない人生を
読みたくて、この本を手に取りました。
読んだ感想は、テレビで本人が話していた方がビンビンきた。
どうしても事実を丁寧に書いたという文章で、感情移入が難しかった
のが正直な気持ち、。
しかし彼女がとても長い間、翻訳の仕事をしたくとも、関わること
すら難しい時代、外人とも直接話す機会にめぐまれなかった不遇の
時代において、何十年もあきらめずに、自分を信じて思い続けたという
真実には感動した。
本人はさらりと書いてはいるが、並々ならぬ努力と、プロフェッシ
ョナルなこだわりと仕事への厳しさを教えられた気がした。
年間40本を越す翻訳家の仕事。今までに字幕をつけた映画は300本以上
その仕事の多くはアシスタントもなく、本人が一人で付けるというから
まさに驚異的な偉業です。
ほんと学ぶべきことが多い良書でした。
もし英語や映画に興味がなくても、一読されることをお勧めします。
2003年2月24日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
1994年に書かれたものなので一部の情報は少し古い感じがするが、字幕製作の苦労話、裏話が盛り沢山で面白い。多くはないが実際の作業の材料(脚本、フィルムなど)の写真も載っている。著者自身の「映画論」も随所に書いてあって、大変参考になった。また、さすが翻訳の名家だけあって、文章自体が歯切れが良くて読みやすい。映画が好きな人にお薦め。
2020年11月13日に日本でレビュー済み
著者の戸田女史の字幕翻訳のひどさは有名です。
雰囲気を壊さないように敢えて意訳するのはもちろん必要なことですが、彼女の場合は要らん色気を出そうとして明らかに事実を誤って伝えていることが多すぎます。
でなければ、「50口径機関銃」を「50ミリ機関銃」と訳したり、「北アフリカ」と英語字幕で書いてある地名をわざわざ「南スペイン」などと表示する事は有り得ません。明らかに意図的に内容を損ねています。
おそらくご本人は、こういった誤訳の数々を「自分にしかできない仕事」とでも思って居るのでしょうが、実際は「彼女しかやらないミス」です。
戸田女史ほどの大物になるとファンも多いようですが、英語力、解釈力、仕事に対する態度などあらゆる点でプロとはいいがたい。日本の映画字幕翻訳のレベルを下方向へ引っ張り続けている。
雰囲気を壊さないように敢えて意訳するのはもちろん必要なことですが、彼女の場合は要らん色気を出そうとして明らかに事実を誤って伝えていることが多すぎます。
でなければ、「50口径機関銃」を「50ミリ機関銃」と訳したり、「北アフリカ」と英語字幕で書いてある地名をわざわざ「南スペイン」などと表示する事は有り得ません。明らかに意図的に内容を損ねています。
おそらくご本人は、こういった誤訳の数々を「自分にしかできない仕事」とでも思って居るのでしょうが、実際は「彼女しかやらないミス」です。
戸田女史ほどの大物になるとファンも多いようですが、英語力、解釈力、仕事に対する態度などあらゆる点でプロとはいいがたい。日本の映画字幕翻訳のレベルを下方向へ引っ張り続けている。
2008年4月24日に日本でレビュー済み
映画「地獄の黙示録」(1980年、日本公開)は観ていても、その字幕翻訳者の名前まで記憶している人は多くはないであろう。この仕事で戸田奈津子は業界での地位を確立した。「字幕への道を志して20年がたっていた」という。巻末には、著者の仕事の一覧がある。1995年には、なんと50本!
字幕は、縦1行10字、2行以内が原則。
フィルムと共に台本が送られてくる。試写は3回だけ! 1回目の試写では「ここからここまでが1つの字幕」という区切り(箱書き)を台本に記し、録音しておく。そして、せりふの字幕原稿を書く。この作業が1週間。
2回目の試写で、原稿に訂正を入れ、次の行程(書き屋さん)に回す。数日後、字幕の入った「初号フィルム」ができあがる。このフィルムで3回目の試写をして、最終訂正を入れ、翻訳者の仕事は終わる。なお、字幕の翻訳は買い取られ、印税はない。
なぜ、ビデオを使わなかったのだろうか? 考えてみて下さい。
最後に著者の名言を1つ。
【人間にはストーリーを聞きたいという本能がある】
字幕は、縦1行10字、2行以内が原則。
フィルムと共に台本が送られてくる。試写は3回だけ! 1回目の試写では「ここからここまでが1つの字幕」という区切り(箱書き)を台本に記し、録音しておく。そして、せりふの字幕原稿を書く。この作業が1週間。
2回目の試写で、原稿に訂正を入れ、次の行程(書き屋さん)に回す。数日後、字幕の入った「初号フィルム」ができあがる。このフィルムで3回目の試写をして、最終訂正を入れ、翻訳者の仕事は終わる。なお、字幕の翻訳は買い取られ、印税はない。
なぜ、ビデオを使わなかったのだろうか? 考えてみて下さい。
最後に著者の名言を1つ。
【人間にはストーリーを聞きたいという本能がある】
2003年7月7日に日本でレビュー済み
字幕制作の舞台裏について、字幕の第一人者戸田奈津子さんについて、知りたいと思うことはほぼ網羅されていると思います。戸田さんがいかにして映画と字幕と英語にひきつけられ、20年かけていかにして字幕のプロとなったか、そしてその後の活躍ぶりを、歯切れよいエッセイのうちに知ることができます。映画、字幕、映像翻訳、英語、戸田さんの人となりに興味のあるかたには収穫の多い1冊。
個性的なファッションに身を包んだ著者の姿、話しぶりを映像で見聞きできる機会が最近ますます増えています。並々ならぬ映画への愛情と字幕翻訳にたいするプロ根性は、つねに敬服とあこがれの対象でした。本書を読んで、その思いをますます強くしたしだいです。
戸田字幕へ火炎放射を浴びせる方々が目立つ昨今ですが、仕事にたいする女史の真剣さ、投入しているものの深さ大きさをけして無視していただきたくない。戸田さんはやはり「プロの中のプロ」といっても過言ではない存在だと思います。
個性的なファッションに身を包んだ著者の姿、話しぶりを映像で見聞きできる機会が最近ますます増えています。並々ならぬ映画への愛情と字幕翻訳にたいするプロ根性は、つねに敬服とあこがれの対象でした。本書を読んで、その思いをますます強くしたしだいです。
戸田字幕へ火炎放射を浴びせる方々が目立つ昨今ですが、仕事にたいする女史の真剣さ、投入しているものの深さ大きさをけして無視していただきたくない。戸田さんはやはり「プロの中のプロ」といっても過言ではない存在だと思います。
2008年4月6日に日本でレビュー済み
仕事で読むことになった。
私はアンチ戸田奈津子、とはいわないまでもその第一人者っぷりと
下記のエピソードであまり好きではなかった。
それは大好きな映画『フルメタル・ジャケット』、その翻訳をしてキューブリック監督の
逆鱗に触れて交代させられたことのあるのだ。
このことで"優等生的な翻訳をする人"と勝手にイメージを持ってしまい
好きになれずにいた。
しかしこの本でそのイメージは変わった。大好きになった、とは言わないが
偏見はなくなった。大御所的な方をイメージしており、その集客力で
発言力が高く、有無を言わせない存在のように思っていた。が、実際は
多くの場面で"原文信仰者"の攻撃にあい続け、それでも仕事をこなしている
真摯な姿を垣間見た気がした。
字幕入門書としては他に良書があるし、
エッセイとして面白いか?というとそれほどでもないかと。
それでも字幕翻訳家の第一人者の著書として楽しめると思います。
私はアンチ戸田奈津子、とはいわないまでもその第一人者っぷりと
下記のエピソードであまり好きではなかった。
それは大好きな映画『フルメタル・ジャケット』、その翻訳をしてキューブリック監督の
逆鱗に触れて交代させられたことのあるのだ。
このことで"優等生的な翻訳をする人"と勝手にイメージを持ってしまい
好きになれずにいた。
しかしこの本でそのイメージは変わった。大好きになった、とは言わないが
偏見はなくなった。大御所的な方をイメージしており、その集客力で
発言力が高く、有無を言わせない存在のように思っていた。が、実際は
多くの場面で"原文信仰者"の攻撃にあい続け、それでも仕事をこなしている
真摯な姿を垣間見た気がした。
字幕入門書としては他に良書があるし、
エッセイとして面白いか?というとそれほどでもないかと。
それでも字幕翻訳家の第一人者の著書として楽しめると思います。
2002年6月9日に日本でレビュー済み
字幕翻訳の仕事 を世の人にポピュラーならしめた女史の功績は大きく、将来この仕事につきたい と言う人が急増したとも耳にしました。映画字幕の第一人者であることは改めて語る必要などないわけですが、この本はご自身が語った「字幕」人生でさすがにトップの座にある方だけに説得力があります。と同時に物事をきわめるには並大抵の努力では成し遂げられない、と全編を通じて知らされます。
あのまるで空気のごとく当たり前に脳が画像と自動的にミックスして楽しんでいる字幕が、一朝一夕では完成され得ない汗と涙の努力の結晶だということが心に伝わってくるのです。英語の勉強を別の側面から捉えた指南書です。これからも静かにロングセラーの道を歩んでいく英語修行の一冊だと確信します。
あのまるで空気のごとく当たり前に脳が画像と自動的にミックスして楽しんでいる字幕が、一朝一夕では完成され得ない汗と涙の努力の結晶だということが心に伝わってくるのです。英語の勉強を別の側面から捉えた指南書です。これからも静かにロングセラーの道を歩んでいく英語修行の一冊だと確信します。