資生堂の山名文夫、森永製菓の新井静一郎らを中心とする企業広告を企画・作成する人たちが、内閣情報局、大政翼賛会の依頼を受け、なぜ国家情宣活動(プロパガンダ)に取り組んだのか、どのようにして取り組んだのか、を描いた作品。
著者は門外漢の評者でもその名前を知っていた広告企画制作マン。
現代に生きる著者が、戦時下、プロパガンダに関わった広告制作のプロ達をどのように捉えているのかという興味から本書を手に取った。
もちろん、著者は山名や新井が残した著作などを参考文献とし、そこから彼らの心情を推し量りながら筆を進めたのだと思うが、著者自らが「広告の本質」と「広告の限界」を考えながら、その時、自分であれば彼等と同じ行動をとったのか、とらなかったのかを見詰め直すという視点、広告マンとしての正直な視点が作品全体から感じられた。
著者は、山名らがプロパガンダに積極的に取り組むことになった動機を、「広告という職業人のもって生まれた業以外のなにものでもない」と記している。表現は異なるが同種の文章は作品中何度も登場する。これが作品全体を覆うトーンとなっている。
こういった作品を書く以上、当然彼らの「戦争責任」に触れることになるし、広告マンである著者がそれに触れずに素通りすることはこの作品を書く意味がないと言えるが、この点についても広告マンとしての正直な意見が記されている。
著者は、軍部の依頼を受けプロパンガンダに関わった広告制作者達、そして文学者、音楽家、画家達を、広告制作者達は自分の企画力を最大限にして得意先(クライアント)の作品の創出にあたり、表現者たちが、表現者として未体験の世界を覗きたいという誘惑に駈られることが犯罪になるのだろうか、彼らの戦争責任を追及する人々の視点からは、戦争に加担せざるを得ない表現者の資質と表現者の資質と、また、そうしなければ暮らせなかった生活者としての視点に欠けるのではないかとし擁護している。
そして、文学・美術・音楽界にあっての責任者は、創造者達の業を利用した国家に他ならないと記している。
また、山名達と同じ立場に置かれたときの自らの考えもはっきりと記している。
山名らのとった行動、戦争責任に対する著者の考えを非難することは簡単だ。評者も素直に首肯することに躊躇を覚えてしまう。
ただ、自らも表現者である著者がこの問題に真正面から取り組み、そして自身に正直に意見を述べていることには共感を持った。
読む価値のある一冊だと思う。
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戦争と広告 単行本 – 2010/9/18
馬場 マコト
(著)
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広告依頼主は内閣情報局。仕事は第二次大戦での戦意高揚をはかるポスター制作など。引き受けた山名文夫ら、当時の精鋭が取り組んだ最前線の成果を通して考える、戦争の悲しい宿命。
- 本の長さ237ページ
- 言語日本語
- 出版社白水社
- 発売日2010/9/18
- ISBN-104560080917
- ISBN-13978-4560080917
商品の説明
出版社からのコメント
《広告のもたらす力と悲劇》
広告依頼主は内閣情報局。仕事は戦意高揚をはかるためのポスター制作や、全国で開かれる展示会の開催など。任されたのは、当時最前線の感性とノウハウをもとに、大きな注目を浴びていた男たち--。
その一人を山名文夫といった。アール・デコ調に彩られ、流れるような曲線を活かしながら、洗練された女性をイメージさせる「資生堂スタイル」を確立したデザイナー(当時は図案家)だ。今もその名を冠した権威ある賞がつづいている。
もう一人は、森永製菓宣伝課に入社したばかりの新井静一郎。上司の小泉武治とともに、当時あこがれのお菓子として知られていたチョコレート部門を担当していた。
だが、時代は軍国主義一色で、彼らは思うような広告活動ができない。思い余った彼らは「報道技術研究会」を立ち上げ、広告の可能性を探ろうともがいていた。そこに目をつけたのが内閣情報局だった。国民の意識を戦争協力へと向かわせるための情宣活動に彼らを利用していく。
そして戦後。依頼主側も受け手側も、何事もなかったかのように、再び元の仕事に戻る者もいれば、固く沈黙を守ったまま、別の業種へと移る者もいた。
本書は第一線で活躍中のアートディレクターが、「もし当時自分が依頼されたらどうするか」という独自の視点で、彼らの足跡を追った力作である。全力で仕事をこなそうとする彼らを描きながら、戦争のもつ悲しい宿命を提示していく。
広告依頼主は内閣情報局。仕事は戦意高揚をはかるためのポスター制作や、全国で開かれる展示会の開催など。任されたのは、当時最前線の感性とノウハウをもとに、大きな注目を浴びていた男たち--。
その一人を山名文夫といった。アール・デコ調に彩られ、流れるような曲線を活かしながら、洗練された女性をイメージさせる「資生堂スタイル」を確立したデザイナー(当時は図案家)だ。今もその名を冠した権威ある賞がつづいている。
もう一人は、森永製菓宣伝課に入社したばかりの新井静一郎。上司の小泉武治とともに、当時あこがれのお菓子として知られていたチョコレート部門を担当していた。
だが、時代は軍国主義一色で、彼らは思うような広告活動ができない。思い余った彼らは「報道技術研究会」を立ち上げ、広告の可能性を探ろうともがいていた。そこに目をつけたのが内閣情報局だった。国民の意識を戦争協力へと向かわせるための情宣活動に彼らを利用していく。
そして戦後。依頼主側も受け手側も、何事もなかったかのように、再び元の仕事に戻る者もいれば、固く沈黙を守ったまま、別の業種へと移る者もいた。
本書は第一線で活躍中のアートディレクターが、「もし当時自分が依頼されたらどうするか」という独自の視点で、彼らの足跡を追った力作である。全力で仕事をこなそうとする彼らを描きながら、戦争のもつ悲しい宿命を提示していく。
登録情報
- 出版社 : 白水社 (2010/9/18)
- 発売日 : 2010/9/18
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 237ページ
- ISBN-10 : 4560080917
- ISBN-13 : 978-4560080917
- Amazon 売れ筋ランキング: - 976,720位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 28,329位日本史 (本)
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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TaroTaro
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ahum
「広告」とは、世間的に意味嫌われるものでもある。
この本を読むと、「戦争」という不幸な状態において
極限に追い込められる事により、「広告」が持つ「力」を発露していく。
外国では「プロパガンダ」という手法で国民を煽動している事を
情報局が研究し、本国日本でもその実践を試みる。
その過程において、当時の第一線級クリエイター達が集合する。
軍部が放つオリエンを、当時の先人達はどうプレゼンしていくのか?
という流れで読み解くと、大変面白いし、貴重な資料でもある。
この本を読むと、「戦争」という不幸な状態において
極限に追い込められる事により、「広告」が持つ「力」を発露していく。
外国では「プロパガンダ」という手法で国民を煽動している事を
情報局が研究し、本国日本でもその実践を試みる。
その過程において、当時の第一線級クリエイター達が集合する。
軍部が放つオリエンを、当時の先人達はどうプレゼンしていくのか?
という流れで読み解くと、大変面白いし、貴重な資料でもある。
AREN
受けとり方は人それぞれだろう。だだ、小生には受け入れがたかった。
主に資生堂のマークのデザインなどで有名なデザイナー山名文夫の戦前、戦中、戦後を追いながら、第二次大戦中の戦意高揚のための広告を作った人々を描いている。
しかし、途中で中心人物であったはずの山名の存在感が薄くなり、作品の軸が散漫になっていたのが気になった。
作品をとおして広告制作者達が戦争という時代にあらがえかったことを、現代の広告制作者である作者がかばい続けている。
そこまでは、おもしろい視点だと思って読んだ。
ところが、あとがきで作者は自分も同じ立場であったらいつの時代でも戦意高揚のためのスバラシイ広告を作るだろうと言っている。
戦時中と現代とでは人類が学習して来た経験も違えば、情報の伝達方法も全くことなっているにも関わらず、この考えはあまりにも旧時代的なものだ。
しかも作者は自らを「時代の子」と称しているのがあまりにも痛々しかった。
作者は、戦争の責任は国家にあり、広告制作者は単に利用されたのみで責任はないとしている。
その反面、とにかく人類は戦争を起こさないと意思し続けるしかないとしている。
つまり作者は戦争はいやだが、起きてしまえばあらがわず広告を作ると言っているのだ。
それが広告制作者の「業」としている。
作者は自分を「時代の子」としているが、しょせん第二次大戦中と同じ時代感覚なのではないかと思った。
作品の最後に、そのような印象が残り、そのような作者が書いた本のを買ったこと、読んだことに、後悔した。
小生が感じたことはあくまでも個人的なことで、第二次大戦中の広告について知りたい方々にとっては貴重な資料となるのかもしれない。
主に資生堂のマークのデザインなどで有名なデザイナー山名文夫の戦前、戦中、戦後を追いながら、第二次大戦中の戦意高揚のための広告を作った人々を描いている。
しかし、途中で中心人物であったはずの山名の存在感が薄くなり、作品の軸が散漫になっていたのが気になった。
作品をとおして広告制作者達が戦争という時代にあらがえかったことを、現代の広告制作者である作者がかばい続けている。
そこまでは、おもしろい視点だと思って読んだ。
ところが、あとがきで作者は自分も同じ立場であったらいつの時代でも戦意高揚のためのスバラシイ広告を作るだろうと言っている。
戦時中と現代とでは人類が学習して来た経験も違えば、情報の伝達方法も全くことなっているにも関わらず、この考えはあまりにも旧時代的なものだ。
しかも作者は自らを「時代の子」と称しているのがあまりにも痛々しかった。
作者は、戦争の責任は国家にあり、広告制作者は単に利用されたのみで責任はないとしている。
その反面、とにかく人類は戦争を起こさないと意思し続けるしかないとしている。
つまり作者は戦争はいやだが、起きてしまえばあらがわず広告を作ると言っているのだ。
それが広告制作者の「業」としている。
作者は自分を「時代の子」としているが、しょせん第二次大戦中と同じ時代感覚なのではないかと思った。
作品の最後に、そのような印象が残り、そのような作者が書いた本のを買ったこと、読んだことに、後悔した。
小生が感じたことはあくまでも個人的なことで、第二次大戦中の広告について知りたい方々にとっては貴重な資料となるのかもしれない。
shizu
太平洋戦争中に市民の戦意をあおるための広告を作った人々を描いたドキュメンタリータッチの読みもの。
現代の良識ある一般人はその仕事を罪と思うだろうが、当時の広告業者にとってその仕事は家族を養うための生業であり、何の躊躇もなく飛びつき情熱を注がずにはいられないものだったとの擁護がされています。そして、作者自身もアコムの広告などを作って多くの人々を苦しみにいざなった経験があるそうで、そういった広告業者の行為を「業(ごう)」と呼び、仕方のないもののように結論づけられていました。
あとがきに、とにかく戦争はいやだ、二度とおこさないことだとありますが、そのために広告業者、もしくは広告を見る側がどうあるべきかといった未来につながるヒントのようなものはまったくありません。ひたすら戦争に対するひとりよがりな開き直りが展開されています。
戦意高揚の広告を作った人々として、資生堂のデザイナー山名文夫や、後に雑誌「暮らしの手帖」の名物編集長となる花森安治など有名な登場人物を引き合いに出し、おめでたい主張をまくしたてられていたような読後感でした。戦争という大きな傘を借りて、広告業者や作者自身の保身のための広告をお金を払って読まされる一冊です。
現代の良識ある一般人はその仕事を罪と思うだろうが、当時の広告業者にとってその仕事は家族を養うための生業であり、何の躊躇もなく飛びつき情熱を注がずにはいられないものだったとの擁護がされています。そして、作者自身もアコムの広告などを作って多くの人々を苦しみにいざなった経験があるそうで、そういった広告業者の行為を「業(ごう)」と呼び、仕方のないもののように結論づけられていました。
あとがきに、とにかく戦争はいやだ、二度とおこさないことだとありますが、そのために広告業者、もしくは広告を見る側がどうあるべきかといった未来につながるヒントのようなものはまったくありません。ひたすら戦争に対するひとりよがりな開き直りが展開されています。
戦意高揚の広告を作った人々として、資生堂のデザイナー山名文夫や、後に雑誌「暮らしの手帖」の名物編集長となる花森安治など有名な登場人物を引き合いに出し、おめでたい主張をまくしたてられていたような読後感でした。戦争という大きな傘を借りて、広告業者や作者自身の保身のための広告をお金を払って読まされる一冊です。
sasabon
筆者の馬場マコト氏は、JAAA(日本広告業協会)第4回クリエイター・オブ・ザ・イヤー特別賞の他新聞協会賞、ACC賞、電通テレビ部門賞、ロンドン国際広告賞など、国内外広告賞多数受賞している広告業界ではとても有名な方です。
広告という創造的な仕事に携わってきた方たちが、戦時中にどのような思いで戦争に関わり、その中で仕事をしていったかを多くの資料やエピソードを挿入しながら、臨場感あふれる描写で展開した本でした。どうしても広告業界寄りの視点で書かれていることを理解したうえで読まないといけません。
キャッチコピーという概念やイラストレーターという職業がない時代の言わば日本の広告の創世記にその業界に身を置いた青年たちの苦悩と意欲が書かれており、読み物としても興味深いものだと思います。
内閣情報局から戦意高揚を図るポスター制作とそれに関わるイベント企画立案といった仕事にそれぞれのクリエーターは果敢に挑戦しました。その仕事の是非を問うのではなく、今でもイメージが浮かぶ「資生堂スタイル」を確立したアールヌーボー調の山名文夫たちの生き様を浮かび上がらせることに主眼を置いていました。
9ページ掲載のイラストとコピーが全て同じ人物によって生み出されたことを思うと戦時中の過酷な厳しい状況にあえて挑戦した山名文夫を通して「いつの時代も、どの国にあっても、時代と並走することでしか、生き残る手段がないのが広告だからだ」という一文が本書の基調として感じられました。後世の批判は当然受けるわけですが・・・。
有名な人々が数多く登場しています。その中の林謙一氏が戦後「おはなはん」の原作者として自分の母を描いていたことを本書で知りました。
本書の章立てです。三つの文章と三点の図版、プラトン社と岩田専太郎、「NIPPON」と名取洋之助、資生堂と福原信三、森永製菓と新井静一郎、報道技術研究会と山名文夫、情報局と林謙一・小山栄三、大政翼賛会と花森安治、それぞれの戦後。
広告という創造的な仕事に携わってきた方たちが、戦時中にどのような思いで戦争に関わり、その中で仕事をしていったかを多くの資料やエピソードを挿入しながら、臨場感あふれる描写で展開した本でした。どうしても広告業界寄りの視点で書かれていることを理解したうえで読まないといけません。
キャッチコピーという概念やイラストレーターという職業がない時代の言わば日本の広告の創世記にその業界に身を置いた青年たちの苦悩と意欲が書かれており、読み物としても興味深いものだと思います。
内閣情報局から戦意高揚を図るポスター制作とそれに関わるイベント企画立案といった仕事にそれぞれのクリエーターは果敢に挑戦しました。その仕事の是非を問うのではなく、今でもイメージが浮かぶ「資生堂スタイル」を確立したアールヌーボー調の山名文夫たちの生き様を浮かび上がらせることに主眼を置いていました。
9ページ掲載のイラストとコピーが全て同じ人物によって生み出されたことを思うと戦時中の過酷な厳しい状況にあえて挑戦した山名文夫を通して「いつの時代も、どの国にあっても、時代と並走することでしか、生き残る手段がないのが広告だからだ」という一文が本書の基調として感じられました。後世の批判は当然受けるわけですが・・・。
有名な人々が数多く登場しています。その中の林謙一氏が戦後「おはなはん」の原作者として自分の母を描いていたことを本書で知りました。
本書の章立てです。三つの文章と三点の図版、プラトン社と岩田専太郎、「NIPPON」と名取洋之助、資生堂と福原信三、森永製菓と新井静一郎、報道技術研究会と山名文夫、情報局と林謙一・小山栄三、大政翼賛会と花森安治、それぞれの戦後。