本書に収められている三編は、そのどれもが男女の間の愛の話です。しかしながら、そこに伴う焦燥や憎しみといった裏地の部分が、それぞれの語り手により、主役と等価に描かれた物語となっています。登場人物に関係図とともに、その構造を把握することは簡単に思えるのに、常に割り切れない、微熱のような心情に、事態の展開が整地かつ非現実なものとして最後まで話されるため、これしかないのかという嘆息が、運命の二語を引き寄せます。時代も舞台も異なるのに、滔々と流れるものが本書には存在します。
各編について言えば、『復讐』はコミカルで恐ろしく、『ドン・ファンの冒険』は読み終えて後、現れる皮肉が痛々しく、そして表題作でもある『木に登る王』は、背筋正しい悲劇となって読者を最後まで導きます。待ち望んだ作者の新刊として、二度、三度と頷く一冊です。
是非、一読してみて下さい。
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木に登る王:三つの中篇小説 単行本 – 2017/6/22
スティーヴン・ミルハウザー
(著),
柴田 元幸
(翻訳)
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購入オプションとあわせ買い
《緻密な幻視、緊迫の描写、作家が示す到達点》
男女関係の綾なす心理を匠の技巧で物語る傑作集。「復讐」「ドン・フアンの冒険」、トリスタンとイゾルデ伝説を踏まえた表題作を収録。
ミルハウザーが59歳だった2003年に刊行された本書は、匠の技巧を堪能できる、粒ぞろいの中篇集だ。ミルハウザーは、『三つの小さな王国』『魔法の夜』が証明するように、優れた中篇作家でもあるのだ。
売りに出した自宅を女性が客に案内するなかで、思いがけない関係が浮かび上がる「復讐」、官能の快楽に飽いた放蕩児が、英国の貴婦人に心を乱される「ドン・フアンの冒険」、王妃と騎士の不義を疑う王の煩悩、王の忠臣が悲運を物語る表題作を収録。
「木に登る王」では、騎士トリスタンと王妃イゾルデと王の悲劇を傍観しつつ、重要な節目では当事者ともなる王の忠臣トマスの語りが冴える。三角(もしくは四角)関係の当事者・準当事者たるこの三人の心理のさまざまな層が、ミルハウザーならではの律儀な丁寧さで――意外性を伴って――仔細に述べられてゆく。
本書は、「複雑怪奇化した男女関係」というテーマの一貫性が、書物としての統一感を生み出し、三つの中篇作品の累積的な読みごたえにおいて、ミルハウザーのひとつの到達点と言えるだろう。
男女の複雑怪奇な心理の綾、匠の技巧が光る極上の物語!
[原題]The King in the Tree : Three Novellas
男女関係の綾なす心理を匠の技巧で物語る傑作集。「復讐」「ドン・フアンの冒険」、トリスタンとイゾルデ伝説を踏まえた表題作を収録。
ミルハウザーが59歳だった2003年に刊行された本書は、匠の技巧を堪能できる、粒ぞろいの中篇集だ。ミルハウザーは、『三つの小さな王国』『魔法の夜』が証明するように、優れた中篇作家でもあるのだ。
売りに出した自宅を女性が客に案内するなかで、思いがけない関係が浮かび上がる「復讐」、官能の快楽に飽いた放蕩児が、英国の貴婦人に心を乱される「ドン・フアンの冒険」、王妃と騎士の不義を疑う王の煩悩、王の忠臣が悲運を物語る表題作を収録。
「木に登る王」では、騎士トリスタンと王妃イゾルデと王の悲劇を傍観しつつ、重要な節目では当事者ともなる王の忠臣トマスの語りが冴える。三角(もしくは四角)関係の当事者・準当事者たるこの三人の心理のさまざまな層が、ミルハウザーならではの律儀な丁寧さで――意外性を伴って――仔細に述べられてゆく。
本書は、「複雑怪奇化した男女関係」というテーマの一貫性が、書物としての統一感を生み出し、三つの中篇作品の累積的な読みごたえにおいて、ミルハウザーのひとつの到達点と言えるだろう。
男女の複雑怪奇な心理の綾、匠の技巧が光る極上の物語!
[原題]The King in the Tree : Three Novellas
- 本の長さ288ページ
- 言語日本語
- 出版社白水社
- 発売日2017/6/22
- ISBN-104560095515
- ISBN-13978-4560095515
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商品の説明
著者について
1943年、ニューヨーク生まれ。アメリカの作家。1972年『エドウィン・マルハウス』でデビュー。『マーティン・ドレスラーの夢』で1996年ピュリツァー賞を受賞。邦訳に『イン・ザ・ペニー・アーケード』『バーナム博物館』『三つの小さな王国』『ナイフ投げ師』(1998年、表題作でO・ヘンリー賞を受賞)、『ある夢想者の肖像』『魔法の夜』がある(以上、白水社刊)。ほかにFrom the Realm of Morpheus 、Dangerous Laughter: Thirteen Stories 、We Others: New and Selected Stories (2012年、優れた短篇集に与えられる「ストーリー・プライズ」を受賞)、Voices in the Night がある。
登録情報
- 出版社 : 白水社 (2017/6/22)
- 発売日 : 2017/6/22
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 288ページ
- ISBN-10 : 4560095515
- ISBN-13 : 978-4560095515
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,020,244位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 14,611位英米文学
- カスタマーレビュー:
カスタマーレビュー
星5つ中3.5つ
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2017年9月8日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
WEB記事で、この本がスティーヴン・ミルハウザーらしくなくって良い。
男女の複雑な心理と書かれていたので、購入したが…
この手の文章(口語体というのかな)は…
個人的に苦手。
頑張って読もうとしたが、途中で断念しました。
男女の複雑な心理と書かれていたので、購入したが…
この手の文章(口語体というのかな)は…
個人的に苦手。
頑張って読もうとしたが、途中で断念しました。
2017年8月8日に日本でレビュー済み
この本の三つの中篇小説の中では、「木に登る王」という表題作が
オペラのようでおもしろかったです。
嫉妬にかられ、木に登って、王妃の不倫を見張るなんて、おもしろい王様。
結婚前の夫の恋人に嫉妬して、白い帆船を黒い帆船と嘘をつく恐ろしい新妻。
王様とイゾルト王妃と家来の騎士トリスタンの間の三角関係に巻き込まれ、
自らも四角関係におちいる忠臣トマス。
この中篇小説に登場する主な人物は、王様と若きイゾルト王妃、
家来の若き騎士トリスタン、その新妻の白き手のイゾルト(同名)、
王様の相談役で、本作の語り手で書き手でもある「私」トマス。
この作品で描かれるのは、
王様の愛と嫉妬とイゾルト王妃の愛。
トリスタンとイゾルト王妃の不倫の愛。
トリスタンの新妻の白き手のイゾルトの嫉妬と嘘。
王様と「私」トマスとの信頼感。
「表紙」の画が、愛に飢えた三人の手の葛藤のように見えてきます。
「表紙」の見返しには、飢えた者たちを救うパンを差し出す
お供トマスの右手がこころづよい。
イゾルト王妃が差し出す手に、応えるように伸ばされるトリスタンの右手。
そのトリスタンの手を、「ちょっと待った」とばかりに押しとどめる
かのように割って入る王様の左手。
この作品の最後の言葉は、ミルハウザー自身のことのように思われます。
「私、コーンウォールのトマス、
羊皮紙の君主、黒インキの長、全ての空間の王、魂たちを呼び寄せる者、
梨の木と波の沈黙の味方、夜に眠らず目を開けている全ての人々のお供」
オペラのようでおもしろかったです。
嫉妬にかられ、木に登って、王妃の不倫を見張るなんて、おもしろい王様。
結婚前の夫の恋人に嫉妬して、白い帆船を黒い帆船と嘘をつく恐ろしい新妻。
王様とイゾルト王妃と家来の騎士トリスタンの間の三角関係に巻き込まれ、
自らも四角関係におちいる忠臣トマス。
この中篇小説に登場する主な人物は、王様と若きイゾルト王妃、
家来の若き騎士トリスタン、その新妻の白き手のイゾルト(同名)、
王様の相談役で、本作の語り手で書き手でもある「私」トマス。
この作品で描かれるのは、
王様の愛と嫉妬とイゾルト王妃の愛。
トリスタンとイゾルト王妃の不倫の愛。
トリスタンの新妻の白き手のイゾルトの嫉妬と嘘。
王様と「私」トマスとの信頼感。
「表紙」の画が、愛に飢えた三人の手の葛藤のように見えてきます。
「表紙」の見返しには、飢えた者たちを救うパンを差し出す
お供トマスの右手がこころづよい。
イゾルト王妃が差し出す手に、応えるように伸ばされるトリスタンの右手。
そのトリスタンの手を、「ちょっと待った」とばかりに押しとどめる
かのように割って入る王様の左手。
この作品の最後の言葉は、ミルハウザー自身のことのように思われます。
「私、コーンウォールのトマス、
羊皮紙の君主、黒インキの長、全ての空間の王、魂たちを呼び寄せる者、
梨の木と波の沈黙の味方、夜に眠らず目を開けている全ての人々のお供」