サトクリフの邦板作品はほぼ全制覇しましたが、その最後に読みました。
私はローマ好きで、「第九軍団のワシ」からサトクリフ作品に入ったので、正直アラビア世界の話はそんなに期待せずに読み始めましたが、どんどん読めて良かったです。
アラビアのロレンスをかなり遡った実在のスコットランド人を描いています。
ネットが定着した結果国際情勢や各地の文化情報が共有されている現代と異なり、当時は国境を跨ぐと未知の世界。
ましてや故郷から遠く離れた地で言葉すら通じないと来ると、トマスの困惑やいかに、と考えずにはいられません。
文化差を跨いだ友情と言う意味では、サトクリフお得意のブリトン族とアングロ・サクソン族との間の友情・憎悪に通じる物があります。それを拡大したような物でしょうか。
戦いなどの様子は他作品同様、非常に細かに描写されていますので満足できますし、中東の戦法がわかるのも面白いです。
少し寂しいのは、実在の人物の物語だけに、死は非常にあっさりと描かれています。脚色しないと言う意味で歴史に敬意を払ったサトクリフらしい話ではあるのですが、あまりの結末の簡素さに寂寥感が漂います。
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