題名の通り、２０世紀における代表的な美術作品と思想家をコンパクトに纏めた著書。
本書は前半を「美術」、後半を「思想」という形で編集している。
先ず前半は国別に分けた上で各国の代表的なアーティストとその作品を紹介し、それに詳細な説明を加える事に依って作品が作られた背景を解説している。
勿論、全てを紹介しきれる訳ではなく、扱っているのはほんの一握りの作品だけなので若干の物足りなさは感じてしまうものの、扱われている作品に関しては記述も丁寧で、然も全て良質のカラー図版が掲載されている為に楽しみながら読む事が出来るであろう。
欲を言えば、個々の作家の略歴等を載せてくれると一層良かったように思う。
と言うのも、必ずしも誰もが２０世紀の美術家をくまなく知っている訳ではないと思うので（実は私自身がそうであるー取り分け中東・アジアの作家について恥ずかしながら殆ど知らなかった）、経歴や主な活動を紹介してくれたら、より理解し易かったかもしれない。
個人的には寧ろ、思想家に付いて総纏めした後半を興味深く読んだ。
２０世紀の美術はどうしても「思想」、そして「運動」とは切り離せない関係にある。
一番単純な例を挙げるならば、アンドレ・ブルトンなくしてはシュルレアリスムは存在し得なかったであろうし、また、シュルレアリストの画家達が生まれなければブルトンの活躍も行き詰ったであろう。
両者が緊密に絡み合いながら存在していた事を鑑みるにつけ、思想家の活動を知らずして２０世紀美術を理解する事は不可能と言っても過言ではない。
20世紀美術に関する優れた書籍は幾らでもあるが、思想家達をここまで完璧に網羅している著書は意外にも少ない為、その点が非常に貴重だと感じられたし、20世紀美術の理解への大きな助けになってくれる事は間違いないであろう。
２０世紀美術と思想をたった一冊に凝縮するのにはやや無理があるものの、その一方で、最低限必要不可欠なものを収めた便利な一冊でもある。
実は私が本書を購入したのはかなり前の事になるが、今でも必要に応じて便利に使っているので、この時代の美術を学ぶ方は手引書として手元に置いておくと良いと思う。
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