老練な政治家は、なかなか手強い。経験が圧倒的にあるからだ。
一方で、若い政治家の武器は何であろうか。
阿部正弘の武器は、彼を支える有能なブレーンと巧みな政治術である。さらには、本心を覆い隠す見た目であった。
いつも漂々としていて、一見すると何を考えているかわからない。これが、ある意味強い武器となりえるのだ。
水野忠邦や徳川斉昭と渡りあい、開国への道筋を敷いた政治家は、幕末にはなくてはならない存在であった。
歴史の中に埋もれた名政治家の手腕は、学ぶ所が多いと感じる。
本書は、若き政治家・阿部正弘を描いた本である。
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阿部正弘: 日本を救った幕末の大政治家 (PHP文庫 そ 3-1) 文庫 – 2002/6/1
祖父江 一郎
(著)
開国維新を断行した救国の宰相・阿部正弘の生涯を描く長編歴史小説である。
幼少期から次代の幕政を担うエースとして嘱望されていた阿部は、17歳で家督を継ぎ、25歳で老中就任、27歳にして享保の改革を推進した水野忠邦の失脚の後をうけて老中首座に就く。以後、周囲の期待に応え責務を果たしてきた正弘であったが、西欧諸国の相次ぐ通商要求、さらにはペリー来航という空前の国家存亡の危機に直面する。幕府の対応如何では、内乱あるいは欧米の植民支配に屈するという状況であった。阿部はまず、世界情勢を的確に把握することに努め、対外貿易等の策を慎重に施しながら、一方で国内の開国派・攘夷派の対立エネルギーを見事に封じ込め、国論を開国へと統一していくのである。
一部の者から、瓢箪鯰、昼行灯などと酷評されながらも、為政者として如何にあるべきかを常に問い、国家の行末に命をかけた若き宰相を再評価する意欲作である。文庫書き下ろし。
- 本の長さ377ページ
- 言語日本語
- 出版社PHP研究所
- 発売日2002/6/1
- ISBN-104569577547
- ISBN-13978-4569577548
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登録情報
- 出版社 : PHP研究所 (2002/6/1)
- 発売日 : 2002/6/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 377ページ
- ISBN-10 : 4569577547
- ISBN-13 : 978-4569577548
- Amazon 売れ筋ランキング: - 680,891位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2010年1月25日に日本でレビュー済み
阿部正弘を主人公にした、オーソドックスな佳作時代劇。
水野忠邦の失政後、疲弊し機能を失いつつある幕府、迫りくる西欧列強に対し、幅広い視野と行動力で立ち向かい、日本を近代化の道へ推し進める。大塩平八郎、鳥居耀蔵、江川太郎、徳川成昭など、よく知られているキャラクターも次から次に登場する。
やや文体や構成がのっぺりしていて話の筋を追いにくい印象がある。もうひとひねりすればもっとエキサイティングな物語になったのではないか。
水野忠邦の失政後、疲弊し機能を失いつつある幕府、迫りくる西欧列強に対し、幅広い視野と行動力で立ち向かい、日本を近代化の道へ推し進める。大塩平八郎、鳥居耀蔵、江川太郎、徳川成昭など、よく知られているキャラクターも次から次に登場する。
やや文体や構成がのっぺりしていて話の筋を追いにくい印象がある。もうひとひねりすればもっとエキサイティングな物語になったのではないか。
2014年6月17日に日本でレビュー済み
この書き下ろし作品は、副題が「日本を救った幕末の大政治家」とある。主人公の阿部伊勢守正弘(1819‾1857 備後福山藩主)は、弱冠25歳にして徳川幕府の老中を拝命、「27歳という史上最年少の若さ」(p.266)で老中首座となり、国事多難、内憂外患状態だった幕末において、見事な舵取りを行った英明なる宰相であった。私は、幕末維新の動乱期において、正史を派手に飾る尊攘派・武力倒幕派の面々よりも、国政に重い責任を負う 幕府方の為政者たち に強い関心があるのだけれど、その中でも阿部正弘は第一級の人物と考えている。彼は「秋海棠の君」(p.280)と呼んでいた妻謹子や夭折した子の後を追うように、39歳にして泉下の人となってしまったが、もう少し長命であらばや…と思わせる程の能才であった。もし、そうなれば「維新」のかたちも変わったものになったかもしれない。
確かに、阿部正弘は「人材の登用」「冗費の節約」「武備の充実」といった施策をはじめ、欧米列強の「開国通市」要求に関して、広く意見を徴している。しかしながら、この評伝小説の真骨頂は、そういった彼の開明的な方策のみにあるのではなく、「組織(体制)内改革」というものの“重み”を知らしめている点にあろう。彼は、前任者の水野忠邦の「天保の改革」を以下のように批判する―改革とは折角あるものを不都合の名のもとに無闇になくすことではなく、不都合のみを改め生かすことである。あくまでも国家の根幹をゆるがすことなく、新たに価値を生み出すものでなければならぬ…(p.268)。また、阿部正弘は、こうも呟いている―世論に総論なし。整合性のない各論あるのみ。安易に従うべからず…と(p.170)。かてて加えて、「御政道を理論でもてあそんではならぬ」(p.335)とも戒めている。
こうした阿部正弘の政治姿勢は、勿論、著者である祖父江一郎さんの意念も反映されているかもしれないけれど、現代にも通ずる政治思想と看做せよう。「着眼大局・着手小局」的な彼が取り組んだ“国政改革”は、同時に“幕政改革”を伴う。そして、それは強烈な抵抗を生み出す。その象徴が「妖怪」こと鳥居耀蔵であったり、旧弊派の代表格といえる井伊直弼などであった。さらに、「開国」という大転換に際しての尊攘派の泰斗、水戸斉昭との“駆け引き”等も読み応えがある。他方、先述したように阿部正弘は、対外・国内政策を進めるにあたり、「我、一人ノ主ヲ求ム」と“求職活動”していた松平近直や矢部定謙、川路聖謨や江川坦庵(英龍)、岩瀬忠震などの逸材を、身分に関わらず活躍の場を与えた。これら阿部正弘を取り巻く群像についても、過不足なく描かれており、良質な歴史小説といえる。
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この書き下ろし作品は、副題が「日本を救った幕末の大政治家」とある。主人公の阿部伊勢守正弘(1819‾1857 備後福山藩主)は、弱冠25歳にして徳川幕府の老中を拝命、「27歳という史上最年少の若さ」(p.266)で老中首座となり、国事多難、内憂外患状態だった幕末において、見事な舵取りを行った英明なる宰相であった。私は、幕末維新の動乱期において、正史を派手に飾る尊攘派・武力倒幕派の面々よりも、国政に重い責任を負う 幕府方の為政者たち に強い関心があるのだけれど、その中でも阿部正弘は第一級の人物と考えている。彼は「秋海棠の君」(p.280)と呼んでいた妻謹子や夭折した子の後を追うように、39歳にして泉下の人となってしまったが、もう少し長命であらばや…と思わせる程の能才であった。もし、そうなれば「維新」のかたちも変わったものになったかもしれない。
確かに、阿部正弘は「人材の登用」「冗費の節約」「武備の充実」といった施策をはじめ、欧米列強の「開国通市」要求に関して、広く意見を徴している。しかしながら、この評伝小説の真骨頂は、そういった彼の開明的な方策のみにあるのではなく、「組織(体制)内改革」というものの“重み”を知らしめている点にあろう。彼は、前任者の水野忠邦の「天保の改革」を以下のように批判する―改革とは折角あるものを不都合の名のもとに無闇になくすことではなく、不都合のみを改め生かすことである。あくまでも国家の根幹をゆるがすことなく、新たに価値を生み出すものでなければならぬ…(p.268)。また、阿部正弘は、こうも呟いている―世論に総論なし。整合性のない各論あるのみ。安易に従うべからず…と(p.170)。かてて加えて、「御政道を理論でもてあそんではならぬ」(p.335)とも戒めている。
こうした阿部正弘の政治姿勢は、勿論、著者である祖父江一郎さんの意念も反映されているかもしれないけれど、現代にも通ずる政治思想と看做せよう。「着眼大局・着手小局」的な彼が取り組んだ“国政改革”は、同時に“幕政改革”を伴う。そして、それは強烈な抵抗を生み出す。その象徴が「妖怪」こと鳥居耀蔵であったり、旧弊派の代表格といえる井伊直弼などであった。さらに、「開国」という大転換に際しての尊攘派の泰斗、水戸斉昭との“駆け引き”等も読み応えがある。他方、先述したように阿部正弘は、対外・国内政策を進めるにあたり、「我、一人ノ主ヲ求ム」と“求職活動”していた松平近直や矢部定謙、川路聖謨や江川坦庵(英龍)、岩瀬忠震などの逸材を、身分に関わらず活躍の場を与えた。これら阿部正弘を取り巻く群像についても、過不足なく描かれており、良質な歴史小説といえる。