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先ず、私は、反原発派である事を述べておく。その反原発派の私から見れば、中曽根さんは日本に原子力発電を導入した人物であり、石原慎太郎氏は、原発推進派政治家の代表的存在である。従って、中曽根、石原両氏とは政治的な立場は非常に異なる。一方で、私は、憲法改正論者であり、靖国神社国家護持論者でもある。以下の書評は、その様な政治的立場に立つ私の感想である事を留意して頂きたい。
非常に面白い本であった。反原発派である私にとって、原子力発電についての話が出て来ない事は拍子抜けであったが、原子力については中曽根、石原両氏と対局の立場に在る私が、夢中に成って読むほど面白い対論であった。感銘を受ける部分も多々有った。特に、中曽根、石原両氏の生い立ちや精神的遍歴についての回想や、宗教や文化についての発言には、考えさせられる部分が多かった。私とは、政治的な立場の異なるお二人だが、二人とも、人物であると思った。
その一方で、私は、この本の有る部分に非常に興味を持った。それは、1983年に起きたソ連による「大韓航空機撃墜」事件についての石原氏の以下の発言である。
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KAL機撃墜事件の真相とは−−石原
「中曽根さんの総理時代の話を伺いたいのですが、1983年にKAL(大韓航空)機がオホーツク海上でソビエト空軍によって撃墜されるという事件が起こりましたね。日本人乗客を含む269名の乗客と乗員すべてが死亡したのですが、空軍の戦闘機が民間機を撃墜したということで、世界を大いに震撼させました。
この5年前には、やはりKAL機がムルマンスク上空に侵入して氷原に強制不時着させられた。それが今度はペトロバブロフスク上空を通過して、撃墜されたわけです。二つの戦略基地はソ連にとっては最重要戦略基地ですから、東西冷戦の最中、その上空を侵犯して撃墜させられるのはある意味で当たり前でもあります。
この事件が日本にとって大きな意味を持っていたのは、撃墜されたKAL機のコックピットから成田の管制塔に向かって、交信が行われていたことです。これによって日本は、どの国にも先駆けて、この事件に関する重要な情報を入手することができた。
とくに注目したいのは、「デルタ、010」という言葉です。じつは、この言葉は、大韓航空とアメリカのCIAの間に設けられた暗号だった。その意味はいまだにわかりませんが、普通の国の飛行機が、アメリカの情報機関と暗号コードを交わすことなど考えられません。これは、あのときのKAL機が偶然、領空侵犯したのではなく、アメリカの意向を受けての行動だったことを、ほぼいい表している。
もっとも、KAL機が何を目的としていたか、アメリカがそこに関与していたかどうかという真相は、すべて藪の中です。あの事件について国会でも、社会党の大出俊議員が私の書いたものも含めていろいろな情報をもとに質問しましたが、政府はアメリカの関与をいっさい否定しました。「デルタ、010」という暗号の存在も認めなかった。
しかし私は政府はあの暗号の意味はもちろん、少なくとも中曽根さんをはじめ、高官の人たちは、なぜあの事件が起きたかも知っていると思っています。日本はKAL機との交信記録をはじめ、貴重な情報をいろいろと持っていた。また政府はこれを、かなりの部分アメリカに渡しましたが、その過程でアメリカからさまざまな情報を得ることもできたでしょう。
私はこの事件を、韓国とソ連だけの問題ではなく、アメリカや日本も絡んだ、まさに冷戦構造の中でこそ起きた、特殊な事件だと思っています。もちろん、いまも言えないことはあるでしょうが、あれから20年近く経って、ぜひ中曽根さんの口から、当時のことについて、いろいろお聞きしたい。
その前に、私はあの事件に強い関心があって、自分で出かけて当時のJAL、ANA、JAS大手三社の整備担当の重役と部長に一人一人会って確かめました。出発前にコックピットにいる三人のスタッフが、三人とも間違ってコースをインプットすることなど、百兆分の一もないと全員がいっていましたがね。」
(本書 140〜142ページより)
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石原氏のこの指摘に対する中曽根氏の答えは、この本を読んで頂く事として、生存者が居たとする説までをも含めて、様々な分析や憶測が流れ続ける「大韓航空機撃墜」事件に関する石原氏のこの発言には、この事件を解明する上での史料的価値が有ると思ふ。
後世の人々が、興味を持って読み続ける本であると思ふ。
(西岡昌紀・内科医/「大韓航空機撃墜」事件から28年目の夜に)
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永遠なれ、日本 (PHP文庫 な 39-1) 文庫 – 2003/3/5
ゲーテの晩年の10年間をともに過ごした、ドイツ人の詩人で著述家のエッカーマン。本書はその著作『ゲーテとの対話』になぞらえて、石原氏自らが企画した、中曽根氏との対論集である。▼言うまでもなく、中曽根氏は元首相で現役の衆議院議員、石原氏は「東京から日本を変える」と訴える都知事である。この、こよなく日本を愛する政治家二人が本書で語り合っている内容は、安全保障と国防、アジアにおいて日本はどのような立場を採るべきかなど、日本という国のあり方についてである。▼ところが、本書はそうした、いわゆる政治的テーマの対論に止まっていない。お互いの人格を形成した青春時代の回顧、人間観や生死観、宗教や宇宙についての考え方ほど熱く語り合っているといってもよい。本書を通読すると、こうした確固たるバックボーンがあるからこそ、二人は数ある政治家の中、ブレのない政治家として存在していることがわかる。読み応え十分の対論集である。
- 本の長さ269ページ
- 言語日本語
- 出版社PHP研究所
- 発売日2003/3/5
- ISBN-104569579248
- ISBN-13978-4569579245
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登録情報
- 出版社 : PHP研究所 (2003/3/5)
- 発売日 : 2003/3/5
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 269ページ
- ISBN-10 : 4569579248
- ISBN-13 : 978-4569579245
- Amazon 売れ筋ランキング: - 875,633位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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著者について
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1932年神戸市生まれ。一橋大学卒。55年、大学在学中に執筆した「太陽の季節」で第一回文學界新人賞を、翌年芥川賞を受賞(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 オンリー・イエスタディ (ISBN-13: 978-4344414501 )』が刊行された当時に掲載されていたものです)
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2011年9月1日に日本でレビュー済み
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2014年6月4日に日本でレビュー済み
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10年以上前の対談(一応2ショットあり)だが読み応えある内容。
最初に2人が語るいわば「原体験」の部分が面白い。それは2人の政治行動にも少なからず影響を与えているのが各論読んでいくと覗える。
美化している部分もあろうが自身の原体験、政治家としての背景を成す事柄についてまず語れる政治家はいま殆どいない。その点だけとっても2人はひとかどの人物と言える。
石原氏の語るチャイナの「膨張性」、中曾根氏の語る「集団的自衛権」のくだりは先見性に富んでいる。
最初に2人が語るいわば「原体験」の部分が面白い。それは2人の政治行動にも少なからず影響を与えているのが各論読んでいくと覗える。
美化している部分もあろうが自身の原体験、政治家としての背景を成す事柄についてまず語れる政治家はいま殆どいない。その点だけとっても2人はひとかどの人物と言える。
石原氏の語るチャイナの「膨張性」、中曾根氏の語る「集団的自衛権」のくだりは先見性に富んでいる。
2018年11月6日に日本でレビュー済み
2003年頃の対談記事をもとにした一冊です
戦時中に最前線を経験した方々ですから、戦後日本の社会を憂う気持ちもわかりますが、2018年現在からしたら15年以上前の話をされているわけですから内容には少し食傷気味の感もあります
それでも、中曽根康弘と石原慎太郎の人となりを理解することはできるので、そうした視点で読むと価値が全くないわけではないと思います
戦時中に最前線を経験した方々ですから、戦後日本の社会を憂う気持ちもわかりますが、2018年現在からしたら15年以上前の話をされているわけですから内容には少し食傷気味の感もあります
それでも、中曽根康弘と石原慎太郎の人となりを理解することはできるので、そうした視点で読むと価値が全くないわけではないと思います
2015年11月21日に日本でレビュー済み
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日本を代表する政治家、元総理大臣と元東京都知事の対話。歴史的事実や、彼らの原体験を伴う思想が分かる価値ある本だと思いました。両者が互いに時には賛成、時には反対する姿は彼らが本気で価値観をぶつけ合っているようで、読者に対する誠意すら感じます。共通して言えるのは両者共に戦前の生まれ、愛国心が強いとうこと。彼らの経験や考えは、これからの日本や日本人を考えるためにも踏襲しておくべきものだと思います。戦後生まれや党を越えた一流政治家の対談が、このような形でもっと出版されることを願います。
2010年9月18日に日本でレビュー済み
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二人の対米・安保観はもちろん、死生観・人生観まで知ることができて興味深い。政治家が直面する政治課題を処理するのは当然であるが、国家の将来まで責任を持つという気概があるのならば、自らの死生観・人間観をさらけ出し、共感を求めるべきであろう。そういう意味で、「社会、国家、世界まで含めて私の存在は無限の縁の連鎖の一部にすぎない」(60頁)との中曽根氏の発言は印象的。また、彼が原子力空母の入港を事前協議の対象と考えていたのは驚きだ。
2005年9月26日に日本でレビュー済み
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数年前に気まぐれで買った本を休日に読みました。掲題のような逸話をはじめ、2人の生い立ちや政治を志した背景など興味深い内容でした。国防論や教育論に加え、「人口80億限界論」や「アジア諸国との共生」のついての議論も熱く、「永遠なれアジア、永遠なれ世界」という題目でもいけそうです。
「中国・北朝鮮になめられるな。アメリカはいけ好かないがうまく利用しべし」とする過激な理想派である石原氏と「中国による台湾統一も理解できる。原子力空母の日本入りも慎重にすべし」とする穏健?で現実的な中曽根氏の対決がみられます。
国を愛して止まないこのお二人にはまだまだ日本の改革を進めていただきたいです。
「中国・北朝鮮になめられるな。アメリカはいけ好かないがうまく利用しべし」とする過激な理想派である石原氏と「中国による台湾統一も理解できる。原子力空母の日本入りも慎重にすべし」とする穏健?で現実的な中曽根氏の対決がみられます。
国を愛して止まないこのお二人にはまだまだ日本の改革を進めていただきたいです。
2003年5月22日に日本でレビュー済み
今、国家論を語れる数少ない政治家の2人が国家というものについて思う存分語りつくした一冊。最近やっと国防という国の根幹とも言える政策を議論できる状況になったが、まだまだそのレベルは高いものとはいえない。しかし、国民意識はゆっくりではあるが、現実的な方向へ変わりつつある。国家を語ると右翼というレッテルを貼られ危険人物とみなされがちだが、国家というものがいかに人間にとって大切かということをこの本は認識させてくれる。
若干強引な展開もあるが、今、一人でも多くの人に読んで欲しい書である。
若干強引な展開もあるが、今、一人でも多くの人に読んで欲しい書である。
2007年2月19日に日本でレビュー済み
世間は彼を「タカハ」だとか「右翼」だとか「過激だ」とかよく言ってるが、世界的に見れば彼はフツーだ。あの程度をタカハだとか右翼だとか過激だとか言ってたら、本物のタカハや右翼や過激な人達は一体どーなるのか。石原氏の言う事はいちいち御尤も。返す言葉も無い。彼が苛立つのもよく分かる。戦後日本は、いや、正確には戦前から何時からだろう、日本は全体的に女々しくなった。男と女の差が見えなくなったのだ。所謂「悪平等」だ。男も女も、親も子も、先生も生徒も境が見えなくなった。結果、男が男らしくなくても誰もあんまり気にしなくなった。結果、今の日本がある。父親が家族を守ることをしない。こういう大人ばかりだから、国家も誰が守るべきなのか分からなくなっている。石原氏が国家を熱く語る所以はこのあたりに有るといっていいだろう。つまり苛立っている。彼が男らしい振る舞いをすればするほど女々しい連中から非難を受ける。「男らしくするな。皆が迷惑する。」と言って。それは偏に女々しい連中を助長するだけなのだが…それで一番困るのは、イザという時に何も出来ない女々しい連中である事は言うまでも無い…