いわゆる「西欧近代」という時代が、いかにして生まれ、どういった性格をもっていて、どのように捉えられるのか、その時々の思想家の理論に触れながら、著者の見方が述べられている。「西欧近代」の性格がはっきり表れてくる過程において、キリスト教が西欧社会で果たした役割の大きさは日本人にはあまり実感が湧かないが、庶民のみならず思想家の中でも、キリスト教を信仰する者にとっても、キリスト教から距離を取ろうとする者にとっても、その影響力が極めて大きかったことがわかる。上巻では、ホッブズ、ルソー、ウェーバー、ニーチェ、フーコーらの思想の(著者流の)要約を行いながら議論が進められており、この本を読めば手っ取り早く大学一般教養レベルの「西欧政治思想」の知識が得られる点もおすすめである。
個人的には、上巻第5章のアメリカ独立革命とフランス革命を取り上げたところで、アーレントの『革命について』に触れ、二つの革命の違いを説明しているところと、おそらく著者の思想に近いと思われるバークのフランス革命に対する考察を紹介している部分が興味深かった。
現在は文庫化されているみたいなので、欲しい人はそちらを買った方が良いと思われる。
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人間は進歩してきたのか: 現代文明論上 「西欧近代」再考 (PHP新書 274) 新書 – 2003/10/1
佐伯 啓思
(著)
西欧的な意味での近代は、私たちに光をもたらしたのか。国民主権、資本主義、個人主義など自明の価値体系から「進歩」の本質を問い直す。
「西欧近代とは何か?」。だれもが疑わなかった理想社会に齟齬が生じはじめた。その現実を前に、再認識を余儀なくされている「近代」の意味。
自由、平等、民主主義、市場経済……アメリカが掲げる輝かしい「文明」は、同時に形式的な官僚主義、空虚なニヒリズムを生み出した。信ずべき確かな価値を見失い、茫然自失する私たち。人類が獲得した果実ははたして「進歩」だったのか。
ホッブズ、ルソー、ウェーバーなど、近代を決定づけた西欧思想を問いなおし、現代文明の本質と危うさに真っ向から迫る新しい文明史観。教科書には決して書いていない近代史の流れを、行き詰まる現実を視野に洞察する。
「西欧近代とは何か?」。だれもが疑わなかった理想社会に齟齬が生じはじめた。その現実を前に、再認識を余儀なくされている「近代」の意味。
自由、平等、民主主義、市場経済……アメリカが掲げる輝かしい「文明」は、同時に形式的な官僚主義、空虚なニヒリズムを生み出した。信ずべき確かな価値を見失い、茫然自失する私たち。人類が獲得した果実ははたして「進歩」だったのか。
ホッブズ、ルソー、ウェーバーなど、近代を決定づけた西欧思想を問いなおし、現代文明の本質と危うさに真っ向から迫る新しい文明史観。教科書には決して書いていない近代史の流れを、行き詰まる現実を視野に洞察する。
- 本の長さ269ページ
- 言語日本語
- 出版社PHP研究所
- 発売日2003/10/1
- ISBN-104569631886
- ISBN-13978-4569631882
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登録情報
- 出版社 : PHP研究所 (2003/10/1)
- 発売日 : 2003/10/1
- 言語 : 日本語
- 新書 : 269ページ
- ISBN-10 : 4569631886
- ISBN-13 : 978-4569631882
- Amazon 売れ筋ランキング: - 551,554位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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著者について
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1949(昭和24)年、奈良県生まれ。京都大学大学院人間・環境学研究科教授。東京大学経済学部卒。同大学院経済学研究科博士課程単位取得。2007年正論大賞受賞。著作に『隠された思考』(サントリー学芸賞)、『現代日本のリベラリズム』(読売論壇賞)、『反・幸福論』等多数(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『日本の宿命 (ISBN-10: 4106105020)』が刊行された当時に掲載されていたものです)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2016年2月8日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
きれいなものを予定よりも早く届けてもらいました。また取引したい。
2012年6月25日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
哲学といいながらも、学生への講義をベースにしているために非常に分かりやすく仕上がっています。
アメリカの対テロ戦争は、近代文明とそれに敵対する組織という構図を用いて始まりました。
その近代文明とは一体どういうものなのでしょうか。
ほとんど西洋だけが文明化に成功したのは何故でしょうか。
著者は、ルネサンス以降の西洋文明や哲学史を読み解き、近代化=西洋化と図式が成り立ってしまう理由を精神的な観点から解説します。
通説を批判的に述べるその姿勢は、進歩するものを尊いとする近代文明の常識までも議論の対象としていきます。
ホッブズ、ルソー、バーク、マックス・ウェーバーの思想を追いながら、近代文明の成立過程が手に取るように理解できます。
新書でここまで出来てしまうことに、正直驚いています。
宗教を失った近代文明がたどり着いたニヒリズムまで述べ、下巻になだれ込みます。
アメリカの対テロ戦争は、近代文明とそれに敵対する組織という構図を用いて始まりました。
その近代文明とは一体どういうものなのでしょうか。
ほとんど西洋だけが文明化に成功したのは何故でしょうか。
著者は、ルネサンス以降の西洋文明や哲学史を読み解き、近代化=西洋化と図式が成り立ってしまう理由を精神的な観点から解説します。
通説を批判的に述べるその姿勢は、進歩するものを尊いとする近代文明の常識までも議論の対象としていきます。
ホッブズ、ルソー、バーク、マックス・ウェーバーの思想を追いながら、近代文明の成立過程が手に取るように理解できます。
新書でここまで出来てしまうことに、正直驚いています。
宗教を失った近代文明がたどり着いたニヒリズムまで述べ、下巻になだれ込みます。
2013年7月23日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
じっくり読まないと頭に入らない。大学の授業を聞いている感じだね。
2016年7月1日に日本でレビュー済み
この本を読めば政治学科の学生は授業に出なくてもよいと言っても差し支えないほど素晴らしいです。前知識がなくても読めると思いますが高校の政経程度の知識はあった方が読みやすいと思います(その知識は全て覆されますが)。また、佐伯先生の言論活動における立場を知っているとさらに理解が深まります。
2006年3月29日に日本でレビュー済み
分析は面白いし勉強になる。現代の問題点への指摘も的を射ていると思う。しかし結論がない。
日本の書籍には、分析はたっぷりするが結論は読者任せというパターンが多い気がする。もちろん軽々しく結論は出せないだろうし、読者にしっかり考えて欲しい気持ちも分かる。自分だって別に、意見をパクろうとか考える事を放棄しようとかそういう気持ちではない。ただ単に、「この点が間違っている。だからこう改善したらどうだろうか」という流れは当然のものだと思うのだ。そうでなければいったい何のために、著者は労力をかけて本を書き、読者はカネと時間をかけて本を読むのか。
日本の書籍には、分析はたっぷりするが結論は読者任せというパターンが多い気がする。もちろん軽々しく結論は出せないだろうし、読者にしっかり考えて欲しい気持ちも分かる。自分だって別に、意見をパクろうとか考える事を放棄しようとかそういう気持ちではない。ただ単に、「この点が間違っている。だからこう改善したらどうだろうか」という流れは当然のものだと思うのだ。そうでなければいったい何のために、著者は労力をかけて本を書き、読者はカネと時間をかけて本を読むのか。
2010年9月23日に日本でレビュー済み
現代の行きづまりを「自由」と「秩序」を巡る思考が上手く機能しない、いわゆる、西洋の近代思想の挫折ととらえ、西洋の近代思想について丁寧かつ分かりやすく書かれた本です。
基本的に前提知識なしで読める本と言えると思います。
まず、現代の置かれた思想的な立場を明らかにします。それは、進歩思想、歴史は抑圧に対する解放、自由の獲得のための歴史であるという前提です。
しかし、その歴史の終わりに出現した9.11の文脈、本当に進歩思想は正しいのかということに移るまえに、その思想的な前提として、西洋近代思想の成立へと話は進みます。
西洋思想は宗教戦争後の知的混沌からデカルトによる合理的精神の誕生、そして、同じく宗教的な混乱により神の絶対的権威の喪失による国家の権威創出のための思想が生まれてくることになります。
そこでの一貫した理念は、「自由」に対する欲求です。
この「自由」こそは、宗教道徳に対する「自由」であり、その行き着く先が9.11、イスラム文明(宗教道徳の遵守)との衝突であることは、一つの論理的必然性を伴う結末とも言えそうです。
そのあたりを詳細に分かりやすく論じた本書は、非常に有益だと思います。
基本的に前提知識なしで読める本と言えると思います。
まず、現代の置かれた思想的な立場を明らかにします。それは、進歩思想、歴史は抑圧に対する解放、自由の獲得のための歴史であるという前提です。
しかし、その歴史の終わりに出現した9.11の文脈、本当に進歩思想は正しいのかということに移るまえに、その思想的な前提として、西洋近代思想の成立へと話は進みます。
西洋思想は宗教戦争後の知的混沌からデカルトによる合理的精神の誕生、そして、同じく宗教的な混乱により神の絶対的権威の喪失による国家の権威創出のための思想が生まれてくることになります。
そこでの一貫した理念は、「自由」に対する欲求です。
この「自由」こそは、宗教道徳に対する「自由」であり、その行き着く先が9.11、イスラム文明(宗教道徳の遵守)との衝突であることは、一つの論理的必然性を伴う結末とも言えそうです。
そのあたりを詳細に分かりやすく論じた本書は、非常に有益だと思います。