すでに多く触れられている通り、軽いエッセイです。ユニークな建築史学者、井上章一（
『つくられた桂離宮神話』
など）のファンで、なおかつピアノにも興味がある人なら、なかなか楽しく読める本ですが、ピアノを習おうという人にとっては、何のヒントにもならない本です。
ピアノと社会についての考察も少しはありますが、学術的なものではなく、読み物の域を脱していません。それなら
『ピアノの誕生』
や、
『ピアニストになりたい!』
のような学術的に優れた本が他にあります。
ただ、ピアノを取り巻くもろもろの、あの「嫌な感じ」はよくわかります。
私自身もピアノを含む鍵盤音楽（チェンバロ、クラヴィコード、オルガン、フォルテピアノ等）は好きですが、ピアノを子に習わせることの社会的ステイタスとか、親の見栄とか、楽器店でのピアノを子に習わせる親の傍若無人・嫌らしさとか、弾ければモテると言われてるとか、そういう周りを取り巻くもろもろが反吐が出るくらい嫌いなので「ああ、わかるよなあ」という共感はあるのですが、ただそれだけの本です。
あと、ドラマで素人が「別れの曲」を弾きこなすという設定は無理、という話は、まあ妙に納得です。「別れの曲」ではなく「別れのワルツ」なら、初心者でも頑張ればなんとかなるかもしれません。
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