山崎さんはコミュニティデザイナーという立場で、とても興味深く、自分自身、参考になる活動・行動・仕事をしている方で、今回もどんな書籍なのか、読む前から大変楽しみにしていました。
タイトルに含まれている縮充は、この前に読んだ『ふるさとを元気にする仕事』にも書かれていた言葉で、これから少子化が進む日本において、とても重要なキーワード。活動人口を増やすことで、場を、環境を充実させる(=縮小する状況を、活動で濃くするという意味)の言葉です。あとがきを読むとご自身としては、「参加についての学習帳」ぐらいのタイトル付けでも良かったと書いてありましたが、編集者が決めたこのタイトルは、本の内容にまさにピッタリだと、読んだあと感じました。
テーマは日本社会となっていますが、自分ごととして、自分の身の回り、会社や家族、その周辺と捉えても、たくさんのヒントが詰まっている本のように感じています。「創造的過疎」や「参加→参画→協働」といったあたりについては、改めていろいろと考えてアウトプットしてみたいところです。
それと、「情報の流動食化」はかなりするどい視点だなーと。自分の中ではこれからつねに意識していこうと思いました。
また、まとめにあった"「この人と一緒にやりたい」と相手に思ってもらえること。「これを一緒にやろう」と自分から働きかけていくこと。"はまさにそのとおりですね。感じるだけではなくて行動につなげたいです。
それ以外にも、ここ10年ぐらい、いろいろと活動させてもらっている、IT系コミュニティに関する観点から見ても、通じる部分、さらに、この先、3年、5年、10年の何かとつながるポイントが全体を通じて多数あったように思います。
この本もぜひみんなで読み合わせ会してみたい一冊です。
最後に、本の内容の中から、個人的にピックアップしておきたい部分をまとめてみました。
=====
- 縮みながら充実させて、質感が良く温かい地域社会を作ること。いわば「少数精鋭化」する未来について考えてみたいのだ。
- 「活動人口=住民参加」が社会システムの基盤を支えていた時代が、過去の日本には確実に存在していたのである。
- 「わたしたちごと」が日本では「みんなのこと」になってしまったように感じる。
- 僕らの世代は、じつは社会主義や共産主義の記憶も実体験もないまま、理屈抜きに「それは触れてはいけないもの」として刷り込まれたような気がする。
- 参加には発展性がある。参加→参画→協働。
- 目指したのは創造的過疎です。
- 効率やスピードが要求されるようになったのは、特殊な100年の間に工業化が進んだからだ。戦後民主主義のおかげで日本が近代化できたという側面は否定できない。そして、「権力」と「参加」の適正なバランスを取ろうとする市民の動きも、戦後民主主義によって欧米諸国よりも10年ほど遅れて日本でも起こりはじめたように思う。
- とりわけ「和を以って貴し」の精神でコミュニティを形成してきた日本人には、否定から入る議論で課題を解決に導く方法は向いていないように思う。
- 成長という言葉が与える幻想を、「平均点の高いクラスに転入すれば自分のテストの点数も上がると思い込むようなもの」
- 社会のためになる活動というと、自己犠牲の精神が問われるイメージもあるが、自分がやりたいことを基準に行動するエコロジストが現れたことは、参加意識の大きな変化の象徴といえる。
- 「エシカル消費」も定着してきた新しい言葉だ。
- つくった後の使い方が重要であり、使い勝手をみんなで考えていく時代になった。
- 情報の流動食化
- 日々の行動が、ネットの向こう側にいる人たちの目に左右されているのだとしたら、自己実現の欲求はモチベーションにはならなくなる可能性がある。
- 主義や思想と同じように、ソーシャルメディアをどう使うかということが、これからの僕らが解決していかなければならない課題なのである。
- ソーシャルメディアから発生するお祭りは、社会を変えていこうとする住民運動やデモに匹敵するくらいのエネルギーを秘めているかもしれない。参加する人たちを短期間で集める力もある。ただ、一気に集約された「熱」がピークを過ぎたときは、はたして予熱がどれだけ続くのかが心許ないところではあるが。
- 参加型アートは、参加した人の意識に何かの火を灯してくれるのだろう。だからこそ市民参加によるアートプロジェクトは、批評性という基軸に縛られることなく、地域を豊かにしていく活動として大きな広がりを見せているのだと思う。
- これからの地域福祉に必要な知恵を、「わたしたち」は、どこで学ぶのか。現場で学べばいい。地域の活動に参加して、人と人とのつながりのなかで体験し、発見し、感動し、共感しながら知恵を会得することに勝る教育はない。その生き方(Life)こそが、21世紀を生きていく「わたしたち」にとって最高の財産(Wealth)になるであろう。
- マニュアル化された授業をこなすのは情報処理能力であり、総合的な学習の時間に求められたのは情報編集力だったと分析している。
- 「不可避的な課題の解決」のための参加→「公共的な課題の解決」のための参加→「関係性の課題の解決」のための参加
- 市民参加には反発・批評・提案・実行という段階がある
- 「この人と一緒にやりたい」と相手に思ってもらえること。「これを一緒にやろう」と自分から働きかけていくこと。
- 参加型社会が協働型社会になるには優れたコーディネーターが不可欠だ。
- 活動の質を高めることは、働き方をデザインすることと同義になる。質を高めるには、自分自身が絶えず学び続けていなければならない。だが、自分一人で何でもやる必要はない。苦手なことや、できないことは、あっていいし、あるのが人間だろう。

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縮充する日本 「参加」が創り出す人口減少社会の希望 (PHP新書) 新書 – 2016/11/15
山崎 亮
(著)
人口増加と経済成長を前提としたモデルが機能しなくなった日本。人口や税収が縮小しながらも、地域の営みや住民の生活が充実したものになる仕組みを編み出さなければならない時期を我々は迎えている。さまざまな対策が議論されているが、そうした「縮小」を「縮充」へと導く唯一の解が「参加」である、と山崎氏は言う。すでに周りを見渡せば、まちづくり、政治・行政、マーケティングから芸術、福祉、教育まで、あらゆる分野で胎動する「参加」の潮流を目撃できるだろう。本書では、各分野における「参加」の潮流を丹念に辿り、かつ、そうした各分野を牽引するリーダーと山崎氏が対話を行うことで、「なぜいま参加なのか」「これから日本はどう変わっていくのか」がみごとに体系立てられ、解き明かされていく。参加なくして未来なし! コミュニティデザインの第一人者が、人口減少社会・日本に灯した新しい希望の光。
●序 章:なぜいま「参加の時代」なのか
●第1章:コミュニティデザインと﹁参加﹂は表裏一体だ ――僕が「参加」に強く惹かれる理由
●第2章:国に頼り切るという時代の終わり ――まちづくりにおける「参加」の潮流
●第3章「:苦情」や「抵抗」から「自主運営」へ ――政治・行政における「参加」の潮流
●第4章「:楽しい消費者運動」が環境を改善する ――環境分野における「参加」の潮流
●第5章:オープンソースと「共有型経済」の胎動 ――情報分野における「参加」の潮流
●第6章「:共創」が社会に新しい価値をもたらす ――商業分野における「参加」の潮流
●第7章「:参加型アート」の勢いはとまらない ――芸術分野における「参加」の潮流
●第8章:真の「福祉社会」の実現をめざして ――医療・福祉分野における「参加」の潮流
●第9章:主体性を育む「アクティブラーニング」 ――教育分野における「参加」の潮流
●終 章「:縮充する日本」の未来図を描こう
●序 章:なぜいま「参加の時代」なのか
●第1章:コミュニティデザインと﹁参加﹂は表裏一体だ ――僕が「参加」に強く惹かれる理由
●第2章:国に頼り切るという時代の終わり ――まちづくりにおける「参加」の潮流
●第3章「:苦情」や「抵抗」から「自主運営」へ ――政治・行政における「参加」の潮流
●第4章「:楽しい消費者運動」が環境を改善する ――環境分野における「参加」の潮流
●第5章:オープンソースと「共有型経済」の胎動 ――情報分野における「参加」の潮流
●第6章「:共創」が社会に新しい価値をもたらす ――商業分野における「参加」の潮流
●第7章「:参加型アート」の勢いはとまらない ――芸術分野における「参加」の潮流
●第8章:真の「福祉社会」の実現をめざして ――医療・福祉分野における「参加」の潮流
●第9章:主体性を育む「アクティブラーニング」 ――教育分野における「参加」の潮流
●終 章「:縮充する日本」の未来図を描こう
- 本の長さ445ページ
- 言語日本語
- 出版社PHP研究所
- 発売日2016/11/15
- ISBN-104569827373
- ISBN-13978-4569827377
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商品の説明
著者について
東北芸術工科大学教授
登録情報
- 出版社 : PHP研究所 (2016/11/15)
- 発売日 : 2016/11/15
- 言語 : 日本語
- 新書 : 445ページ
- ISBN-10 : 4569827373
- ISBN-13 : 978-4569827377
- Amazon 売れ筋ランキング: - 239,966位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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studio-L代表。東北芸術工科大学教授(コミュニティデザイン学科長)。慶応義塾大学特別招聘教授。
1973年愛知県生まれ。大阪府立大学大学院および東京大学大学院修了。博士(工学)。建築・ランドスケープ設計事務所を経て、2005年にstudio-Lを設立。地域の課題を地域に住む人たちが解決するためのコミュニティデザインに携わる。まちづくりのワークショップ、住民参加型の総合計画づくり、市民参加型のパークマネジメントなどに関するプロジェクトが多い。「海士町総合振興計画」「studio-L伊賀事務所」「しまのわ2014」でグッドデザイン賞、「親子健康手帳」でキッズデザイン賞などを受賞。
好きな食べ物は、三平汁、山菜、漬物、そば、ラーメン、飲むヨーグルトなど。
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2017年5月3日に日本でレビュー済み
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2017年5月22日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
新書だけど400ページ越え。
8つの分野に関する「参加」のこれまでのくだりとこれからの展望に関してです。
特に地方議員さんや首長さんには読んでいただいて、
下記の8つの分野に対する展望を語っていただきたいところです。
まちづくり:
政治・行政:
環境:
情報:
商業:
芸術:
医療・福祉:
教育:
とは言うものの、情報が多くてかなり当方もかなり消化不良。
論文読んだけど、更に読まなきゃいけない孫文献がたくさん出てきたような感じですが、
これから地域をどうしたいか考える際には羅針盤になる書籍かと思います。
8つの分野に関する「参加」のこれまでのくだりとこれからの展望に関してです。
特に地方議員さんや首長さんには読んでいただいて、
下記の8つの分野に対する展望を語っていただきたいところです。
まちづくり:
政治・行政:
環境:
情報:
商業:
芸術:
医療・福祉:
教育:
とは言うものの、情報が多くてかなり当方もかなり消化不良。
論文読んだけど、更に読まなきゃいけない孫文献がたくさん出てきたような感じですが、
これから地域をどうしたいか考える際には羅針盤になる書籍かと思います。
2020年7月11日に日本でレビュー済み
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率直な感想としては、この本が2016年に書かれているという事に驚きました。社会の変化、人口減少、若者の考え方、戦後に建てられた建築物の現代の課題など、当時、山崎さんが知識と経験を活かし、近い未来を予想し、書かれた本だと感じます。
本書にありました「楽しくなくては、参加しない。継続も出来ない」その通りだと思います。今の若い世代は、自分の好きな事に時間を使うライフスタイルを好んでいます。今後日本でテレワークが進み、住人が時間の活用を考えた時、自分が住んでいる地域に自ら課題を見つけ、解決しようと市民が動き出したら、まちは魅力的に変わっていく。「縮小」ではなく、「縮充」へと変わる。行政に頼るのではなく、住民が市民になり、まちづくりをライフワークにする時代が来たのではないかと本を読み感じました。
本書にありました「楽しくなくては、参加しない。継続も出来ない」その通りだと思います。今の若い世代は、自分の好きな事に時間を使うライフスタイルを好んでいます。今後日本でテレワークが進み、住人が時間の活用を考えた時、自分が住んでいる地域に自ら課題を見つけ、解決しようと市民が動き出したら、まちは魅力的に変わっていく。「縮小」ではなく、「縮充」へと変わる。行政に頼るのではなく、住民が市民になり、まちづくりをライフワークにする時代が来たのではないかと本を読み感じました。
2017年9月27日に日本でレビュー済み
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人口減少が進む中、「参加なくして未来なし」とし、まちづくりや環境、芸術など8分野の「参加」の歴史をたどりながら、価値観及び生き方の変革を提案する。「金の代価としてサービスを要求するばかり」ではなく、様々な問題を他人事ではなく自分事とし、他者とともに課題を設定し、単なる「住民」から「市民」へ変貌すること。やや楽観的すぎて、『未来の年表』や『縮小ニッポンの衝撃』で指摘されている暗部に対する意見を聞きたくはなる。しかしながら、昔を夢見続け、成長の概念にこだわり、建前を掲げ、自分が逃げ切ることだけを考えるよりもはるかにマシだ。「課題があり、それを美しく解決する力がデザインなのだ」。それにしても、イギリスに始まる税金の使い道を可視化するプログラムは日本版もあるようだが、よりオープンになるべきだと思う。
2017年6月5日に日本でレビュー済み
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参加型がなぜ有効なのか、深掘りが必要かと思います。参加が無前提によいことのように書いてあります。ファブラボの紹介は良かったです。
2016年11月22日に日本でレビュー済み
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今年4月に上梓された「コミュニティデザインの源流 イギリス篇」と同様、山崎さんの「学者」の側面が強く出ている内容でした。
八つの分野(「まちづくり」「政治・行政」「環境」「情報」「商業」「芸術」「医療・福祉」「教育」)の『参加』の潮流を445ページにまとめたゴリゴリの学術書です。(新書ですが・・)
ただ、終章で、学者ではなく「コミュニティデザイナーとしての矜持」を感じる一文がありました。
(要約ですが)協働の時代には「これを一緒にやろう」と自分から働きかけて行くこと、コミュニケーションの技術、共感を得る力、責任感、道徳心などの能力もしくは「キャラ」が、高い専門性以上に求められている・・・
現場を知り尽くした「学者」じゃなければ、この一文は終章に自信を持って掛けなかったのではないか、と勝手に推測しました。
山崎さんは地域の課題が移り変わる中で、学者の視点で多面的に現状をインプット(把握)し冷静に分析したうえで、将来のために何がいいのかを、アウトプットしたのが、この一冊。福沢諭吉先生が「学者は国の奴雁(どがん)なり」と、言われていましたが、地域福祉の現場でいるものとして、将来予想される「難に備える」ための処方箋として、今後も活用させていただこうと思っています。
八つの分野(「まちづくり」「政治・行政」「環境」「情報」「商業」「芸術」「医療・福祉」「教育」)の『参加』の潮流を445ページにまとめたゴリゴリの学術書です。(新書ですが・・)
ただ、終章で、学者ではなく「コミュニティデザイナーとしての矜持」を感じる一文がありました。
(要約ですが)協働の時代には「これを一緒にやろう」と自分から働きかけて行くこと、コミュニケーションの技術、共感を得る力、責任感、道徳心などの能力もしくは「キャラ」が、高い専門性以上に求められている・・・
現場を知り尽くした「学者」じゃなければ、この一文は終章に自信を持って掛けなかったのではないか、と勝手に推測しました。
山崎さんは地域の課題が移り変わる中で、学者の視点で多面的に現状をインプット(把握)し冷静に分析したうえで、将来のために何がいいのかを、アウトプットしたのが、この一冊。福沢諭吉先生が「学者は国の奴雁(どがん)なり」と、言われていましたが、地域福祉の現場でいるものとして、将来予想される「難に備える」ための処方箋として、今後も活用させていただこうと思っています。
2017年11月22日に日本でレビュー済み
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縮充という見慣れない単語に戸惑いましたが、近未来を見据えてとても読み応えのあるものでした。
2017年7月15日に日本でレビュー済み
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講演会で著者の話を聞いたことをきっかけに興味を持ち拝読しました。未来について悲観的な話題が多くあるなかで、各分野の現場におきていることを踏まえかつ、近い未来に具体的なビジョンを提示しています。