晩年の三笠宮にロングインタビューした貴重な資料である。
東條暗殺計画に三笠宮がどこまで絡んでいたかが最大の焦点であるが、積極的な賛成・教唆はなくとも相当なシンパシーを寄せていたようである。
そのこと自体は国を憂うる行動としてわからないでもないが、母貞明皇太后に厳しく叱責されたため主導者の津野田少佐を裏切る形になったことが三笠宮の良心の呵責となったようである。後年、読売のインタビューで関与を否定したのも保身のためだろう。津野田少佐が長年の沈黙を破って暴露本を出したのもこのインタビューを読んで慨嘆したからだそうだ。
著者のインタビューでも、津野田少佐から暗殺計画書を受け取っているのは確実なのにトボけているし、貞明皇后に相談したことも白ばっくれている。著者は貞明皇后の名を表に出せないジレンマだと三笠宮に同情し理解を示しているが、最晩年になっても自分の黒歴史には正直になれないのは皇族も人の子、人間の性である。
戦後の三笠宮の紀元節復活廃止論も万世一系否定も八路軍賛美も、確固たる信念からというよりもナイーブで潔癖なこの人の性格からのように見受ける。最晩年に男系継承を支持するに至ったことからも三笠宮は"赤い皇族"では決してないと思う。
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三笠宮と東條英機暗殺計画 極秘証言から昭和史の謎に迫る (PHP新書) 新書 – 2017/1/13
加藤 康男
(著)
暗殺は実行寸前だった……。
昭和史の全貌を知る最後の皇族、12時間の長時間インタビュー。
平成28年10月27日に百年のご生涯をまっとうされ、薨去された三笠宮崇仁親王。実は、将来発表されることを望まれて、封印された歴史について証言を遺されていた。
昭和19年夏。日本が絶対国防圏と定めたサイパンが危機に陥ると、首相、陸将、参謀総長などを兼ねる東條英機への批判が巻き起こる。「このままでは日本は蹂躙される」。意を決したある陸軍少佐が、東條抹殺を企図。計画書を三笠宮に渡そうとする。そして……。
石原莞爾、小畑敏四郎、高松宮宣仁親王、東久邇宮稔彦王、そして憲兵隊の目。様々な関係者が交錯するなか、事態は急展開することになる。当時、戦局を憂うる人々は何を考え、いかに行動しようとしたのか。どんな打開策がありえたのか。
三笠宮殿下のロングインタビューや未公開史料から、昭和史上、稀に見る怪事件の謎を解き明かし、歴史の闇に迫る。
序章:三笠宮からの電話と書簡
第1章:津野田少佐と牛島辰熊
第2章:知将・石原莞爾、小畑敏四郎
第3章:東條暗殺へ動く三つの影
第4章:三笠宮の翻意、津野田逮捕へ
第5章:戦後民主主義と三笠宮
昭和史の全貌を知る最後の皇族、12時間の長時間インタビュー。
平成28年10月27日に百年のご生涯をまっとうされ、薨去された三笠宮崇仁親王。実は、将来発表されることを望まれて、封印された歴史について証言を遺されていた。
昭和19年夏。日本が絶対国防圏と定めたサイパンが危機に陥ると、首相、陸将、参謀総長などを兼ねる東條英機への批判が巻き起こる。「このままでは日本は蹂躙される」。意を決したある陸軍少佐が、東條抹殺を企図。計画書を三笠宮に渡そうとする。そして……。
石原莞爾、小畑敏四郎、高松宮宣仁親王、東久邇宮稔彦王、そして憲兵隊の目。様々な関係者が交錯するなか、事態は急展開することになる。当時、戦局を憂うる人々は何を考え、いかに行動しようとしたのか。どんな打開策がありえたのか。
三笠宮殿下のロングインタビューや未公開史料から、昭和史上、稀に見る怪事件の謎を解き明かし、歴史の闇に迫る。
序章:三笠宮からの電話と書簡
第1章:津野田少佐と牛島辰熊
第2章:知将・石原莞爾、小畑敏四郎
第3章:東條暗殺へ動く三つの影
第4章:三笠宮の翻意、津野田逮捕へ
第5章:戦後民主主義と三笠宮
- 本の長さ248ページ
- 言語日本語
- 出版社PHP研究所
- 発売日2017/1/13
- ISBN-104569832725
- ISBN-13978-4569832722
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商品の説明
著者について
編集者、近現代史研究家
登録情報
- 出版社 : PHP研究所 (2017/1/13)
- 発売日 : 2017/1/13
- 言語 : 日本語
- 新書 : 248ページ
- ISBN-10 : 4569832725
- ISBN-13 : 978-4569832722
- Amazon 売れ筋ランキング: - 823,377位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
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2018年3月8日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2017年2月12日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
以前から三笠宮の東條英樹暗殺計画は聞いてはいましたが、それらは全て暗殺計画の他の方々の記録であり、三笠宮の言葉ではありませんでした。今回出版されたこの本はまさに三笠宮の直接のお言葉であり、読んでいて今までの疑問がある程度晴れました。
東條英樹暗殺計画はいくつか計画されていることを知っていましたが、これら全てがサイパン陥落時に計画されていたようです。
海軍首脳による計画、近衛文麿による計画、石原莞爾などの陸軍による計画です。これらは高松宮、三笠宮へと集約され成功の際には東久邇宮を首相にし先帝には退位頂き秩父宮を摂政にし和平を図る、との大まかな青写真でした。
サイパンは当時の日本の絶対防衛間であり、ここが落ちれば日本の敗北は確定でした。
当時の東條英樹は首相と陸相と参謀長を兼務し、一身に権力を集中させていました。しかしながらサイパン防衛に関しては十分な兵力を用意せず手も無く全滅。
サイパン陥落後の先帝に対する報告も大好きな精神論を打つだけでなんらの手もなかったために後日、昭和天皇によって元帥会議を開く事になるものの奪還の余地は見られませんでした。
この時点で日本の敗北は確定でした。
東條英機辞任により計画は流れましたが・・・早くの和平が実らなかったのが残念でなりません。
東條英樹暗殺計画はいくつか計画されていることを知っていましたが、これら全てがサイパン陥落時に計画されていたようです。
海軍首脳による計画、近衛文麿による計画、石原莞爾などの陸軍による計画です。これらは高松宮、三笠宮へと集約され成功の際には東久邇宮を首相にし先帝には退位頂き秩父宮を摂政にし和平を図る、との大まかな青写真でした。
サイパンは当時の日本の絶対防衛間であり、ここが落ちれば日本の敗北は確定でした。
当時の東條英樹は首相と陸相と参謀長を兼務し、一身に権力を集中させていました。しかしながらサイパン防衛に関しては十分な兵力を用意せず手も無く全滅。
サイパン陥落後の先帝に対する報告も大好きな精神論を打つだけでなんらの手もなかったために後日、昭和天皇によって元帥会議を開く事になるものの奪還の余地は見られませんでした。
この時点で日本の敗北は確定でした。
東條英機辞任により計画は流れましたが・・・早くの和平が実らなかったのが残念でなりません。
2017年6月6日に日本でレビュー済み
2016年に薨去された三笠宮崇仁親王に2006年~2007年にかけて著者夫妻が行ったインタビューの中でも、通称「津野田事件」或いは「東條英機暗殺計画」(※但しこの本でも言及されているが、東條英機の暗殺計画自体は分かっているだけでも3つはあったようだ)と言われる事件に関する証言を中心として、三笠宮及び日本の戦中戦後をたどった一冊です。
ただこの本の序章でも書かれていますが、三笠宮はいったんインタビューでは回答はした物の、後で非常に後悔したらしく、何度も筆者に口止めをしたために、この本の出版が2017年までずれ込んだことも明らかにされています。なお、口止めされなかった部分については、筆者の妻である工藤美代子氏が『 母宮貞明皇后とその時代―三笠宮両殿下が語る思い出 (中公文庫) 』として既に上梓しています。
さて、肝心の三笠宮の「証言」自体ですが、そこまで神経質になるほどズバリ核心を突く証言というのは、正直無いです。何で後で加藤氏に堅く口止めしたのか、私には理解できませんでした。
三笠宮の証言はp.15、p.50、p.61~62、p.152,p.172、p.190、p.202~203、p.206、p.225~228に掲載されています。そんなに文量は多くないと感じましたが、それでも後に加藤氏に口止めしたのは、加藤氏の推察通り、母の貞明皇后が深く関わってきた-と言うか、三笠宮が関わらせてしまったといった方が正しいかも知れない事件でもあり、三笠宮は母に泥をかぶせたくなかったんだろうなあ、と感じました。個人的にはそこまで神経質になる事項でもないと思うのですが、今でも皇族と政治/軍事の関わりで些細なことで鬼の首を取ったように騒ぐ人種が存在するので、三笠宮の気持ちも致し方ないところかな、とも思いました。
ただ、その三笠宮の行動が、晩年の津野田知重を怒らせ、あの『 わが東条英機暗殺計画―元・大本営参謀が明かす「四十年目の真実」 』(のちに『 秘録・東条英機暗殺計画―元・大本営参謀が明かす (河出文庫) 』と改題され再版)の出版へ繋がっていくのですから、何とも皮肉なことです。
ちなみにこの本でも一部が写真で掲載されていますが、三笠宮はこの津野田の証言本を入手し細かくチェックしていたようで、いかにこの事件を亡くなるまで気にしていたかが伺えます。
本全体の内容は、今まで出版された東條英機暗殺計画に関する証言や検証本などを統合してまとめた、と言った物で、既にそれらの諸本を読んだことのある人には既知の話が多く、物足りないかも知れないです。
個人的には、三笠宮と辻政信に関する証言(p.48~50)、ソ連スパイ説がかなり濃厚なハーバート・ノーマンが戦後三笠宮の家庭教師をしていた話(p.217~224)は、本題とは関係のない個所ですが興味深く読みました。三笠宮殿下ですら、辻の幻想に騙されたままお亡くなりに為られたのかと思うとショックですが。
ただこの本の序章でも書かれていますが、三笠宮はいったんインタビューでは回答はした物の、後で非常に後悔したらしく、何度も筆者に口止めをしたために、この本の出版が2017年までずれ込んだことも明らかにされています。なお、口止めされなかった部分については、筆者の妻である工藤美代子氏が『 母宮貞明皇后とその時代―三笠宮両殿下が語る思い出 (中公文庫) 』として既に上梓しています。
さて、肝心の三笠宮の「証言」自体ですが、そこまで神経質になるほどズバリ核心を突く証言というのは、正直無いです。何で後で加藤氏に堅く口止めしたのか、私には理解できませんでした。
三笠宮の証言はp.15、p.50、p.61~62、p.152,p.172、p.190、p.202~203、p.206、p.225~228に掲載されています。そんなに文量は多くないと感じましたが、それでも後に加藤氏に口止めしたのは、加藤氏の推察通り、母の貞明皇后が深く関わってきた-と言うか、三笠宮が関わらせてしまったといった方が正しいかも知れない事件でもあり、三笠宮は母に泥をかぶせたくなかったんだろうなあ、と感じました。個人的にはそこまで神経質になる事項でもないと思うのですが、今でも皇族と政治/軍事の関わりで些細なことで鬼の首を取ったように騒ぐ人種が存在するので、三笠宮の気持ちも致し方ないところかな、とも思いました。
ただ、その三笠宮の行動が、晩年の津野田知重を怒らせ、あの『 わが東条英機暗殺計画―元・大本営参謀が明かす「四十年目の真実」 』(のちに『 秘録・東条英機暗殺計画―元・大本営参謀が明かす (河出文庫) 』と改題され再版)の出版へ繋がっていくのですから、何とも皮肉なことです。
ちなみにこの本でも一部が写真で掲載されていますが、三笠宮はこの津野田の証言本を入手し細かくチェックしていたようで、いかにこの事件を亡くなるまで気にしていたかが伺えます。
本全体の内容は、今まで出版された東條英機暗殺計画に関する証言や検証本などを統合してまとめた、と言った物で、既にそれらの諸本を読んだことのある人には既知の話が多く、物足りないかも知れないです。
個人的には、三笠宮と辻政信に関する証言(p.48~50)、ソ連スパイ説がかなり濃厚なハーバート・ノーマンが戦後三笠宮の家庭教師をしていた話(p.217~224)は、本題とは関係のない個所ですが興味深く読みました。三笠宮殿下ですら、辻の幻想に騙されたままお亡くなりに為られたのかと思うとショックですが。
2017年6月7日に日本でレビュー済み
他の方が概要あらましを記されていますので、読後感などを。
一通り読んだうえで当時の軍部と宮家の関わりからいくと、秩父宮を始めとして何らかの軍部クーデターに関わっていたことは否めませんが、その皇子の相談役となった貞明皇后がかなり関与してストップさせたようですね。
承久の乱でも源氏の大勢に初めこそ勢いの良かった後鳥羽上皇軍でしたが、負け戦となった途端に三上皇は閉門して反乱軍との関わりを否定して命乞いしたようです。
この主人公の方が参謀本部の決死の上申にいったんは計画書を収めながら最後は関わりを否定するなど、相変わらず高貴なお方は変わり身上手が伺えます。
ひょっとすると著者はやんわりと、こうした周辺情報とインタビューを重ねて読者に石原莞爾の「◯◯は信用できない」という言葉に集約したのかもしれません。そうなのかな〜かと思うくらい巧みな構成でした。
ということで、このレビューはあくまでも個人の読後感です、しかし戦後にこの主人公の方がコミンテルンのカナダの学者に英語を習うというのは、なにか脇の甘さを感じますね。ちなみに現役の軍人で南京に駐留したときにあの有名な南京事件を伝聞であるにかかわらず、当時の軍部の軍律統制を批判されています。そしてアカ系の軍隊は中国で軍隊の民間人への犯罪など一切なかったと言明されているに至っては、なんとも苦笑です。
ともあれそうしたやんごとなき階層の変わり身と二枚舌がサンプルとして伺える良い書籍でした。
一通り読んだうえで当時の軍部と宮家の関わりからいくと、秩父宮を始めとして何らかの軍部クーデターに関わっていたことは否めませんが、その皇子の相談役となった貞明皇后がかなり関与してストップさせたようですね。
承久の乱でも源氏の大勢に初めこそ勢いの良かった後鳥羽上皇軍でしたが、負け戦となった途端に三上皇は閉門して反乱軍との関わりを否定して命乞いしたようです。
この主人公の方が参謀本部の決死の上申にいったんは計画書を収めながら最後は関わりを否定するなど、相変わらず高貴なお方は変わり身上手が伺えます。
ひょっとすると著者はやんわりと、こうした周辺情報とインタビューを重ねて読者に石原莞爾の「◯◯は信用できない」という言葉に集約したのかもしれません。そうなのかな〜かと思うくらい巧みな構成でした。
ということで、このレビューはあくまでも個人の読後感です、しかし戦後にこの主人公の方がコミンテルンのカナダの学者に英語を習うというのは、なにか脇の甘さを感じますね。ちなみに現役の軍人で南京に駐留したときにあの有名な南京事件を伝聞であるにかかわらず、当時の軍部の軍律統制を批判されています。そしてアカ系の軍隊は中国で軍隊の民間人への犯罪など一切なかったと言明されているに至っては、なんとも苦笑です。
ともあれそうしたやんごとなき階層の変わり身と二枚舌がサンプルとして伺える良い書籍でした。