「失踪症候群」「誘拐症候群」に続く三部作完結編。これは、警察に設けられたスパイ大作戦的チームを主人公メンバーにしたような連作なのだけど、前2作は、駄作ではないし面白いのだけど、特筆すべき感銘も驚きも正直に言って私にはなかった。
けれど、この完結編は、前評判の「スパイ大作戦対必殺仕事人」「ハングマン対必殺」とかいう、あまりにもネタ的なものとは裏腹に、非常に面白かった。いや、紛れもなくスパイ大作戦対必殺仕事人だったのだけど(笑)、この作者の貫井徳郎がちゃんと本当に必殺者だった点が、この作品を必殺まがい物ではなく、しっかり「作品」として成立させていたんだろうと思う。
一般ミステリファン(こんな言い方があるかどうかは知らぬ)にも、この作品は貫井徳郎作品としては割とメジャーで(TT)、『金で恨みを晴らす、まるで必殺仕事人みたいだけど、実はすごく重いテーマのミステリ』というふうに、必殺が実はすごく重いテーマとして観られるテレビ番組だ(だった)と思ってもらえてないと解る好評ぶりで(T.T)(T.T)。
まあ、その辺の、前期必殺者としての愚痴はさておき、ミステリとして見たときも、さすがは貫井徳郎という仕掛けが施されていて、充分に堪能いたしました。
時々、後期必殺で散見された「名セリフ」がわざとらしく模写されているのはご愛敬。特に前2作を読んでいなくても、これだけで楽しめるとは思う。
恨み、復讐、人が人を殺す、そういったことへの徹底した物語としては、この「殺人症候群」以上のものを今のところ知らない。刊行後、年に一度「殺人症候群」は読み返しているが、読み返せば読み返すほど、この小説の凄み、重み、悲しみをより一層感じさせられる。
もう勘弁してくれ、というところもあるくらいだ。
ミステリとしての部分について追加するなら、もっとも「騙し」のテクニックが発揮された或る人物の「正体」については、物凄く今さらながら、実は意外でもなんでもないはずだったのだと気付いた。なぜって、中村○水は仕○人に決まっていたのだから。。。
3年目になってやっと「あー」と思ったんだから、バカみたいだね(笑)。
「必殺」と絡めても書いておこう。
「必殺仕事人」もIIIの中盤辺りからは一気に「あっけらかん」化に加速がかかり、もうナンも考えずにバラエティを見るように観ていられた。
「必殺仕置人」が「悪の上前をはねる極悪」と山崎努らが自分たちを規定して始まりながら、「なんだかまともな人間になった気がする」などと気持ち良く思ってしまった直後崩壊し、続く「暗闇仕留人」では石坂浩二が難病の妻のために中村主水のスカウトにのって仕置人になりながら、途中それがために逆に妻を失い、最後には「俺たちのやってきたことで少しでも世の中良くなったか?」などと考え始めてしまい、「俺たちにやられた奴にだって家族や好きなやつがいたかもしれないんだ」と思いながら逆に殺されていく……そんなことを繰り返しながら、シリーズが重なるごとにテーマが重層的に増えていった……たぶんそれがいきなり限界になって、「新必殺仕事人」あたりからポキッと折れてバラエティ化してしまったのだと思うのですが。
このようなテーマの流れを、「殺人症候群」のストーリー、プロットと比べ合わせると、「あー」と感じられるものがあるかと(笑)
ちなみに、倉持が接触してきたとき、仕置屋の女性が「お金を貰わなければただの人殺しよ」と言って「なんだそりゃ、金を貰えばただの人殺しじゃなくなるのか、どういう理屈だ」と倉持に笑われていますが、この「金を貰わなければただの人殺しだ」というのが、やはり新必殺仕事人から出てきた三味線屋勇次の得意なセリフなわけです(笑)。
倉持のキャラクターは、例えば山崎努の演じた初代仕置人の「念仏の鉄」などに微かに近い部分があるので、このシーンは、後期仕事人の変に正義の味方ぶった言動に対する、初期仕置人からの揶揄のような感じはします。
¥5,282¥5,282 税込
配送料 ¥250 6月28日-29日にお届け
発送元: おもちゃ鑑定団 (Toys & Books) 販売者: おもちゃ鑑定団 (Toys & Books)
¥5,282¥5,282 税込
配送料 ¥250 6月28日-29日にお届け
発送元: おもちゃ鑑定団 (Toys & Books)
販売者: おもちゃ鑑定団 (Toys & Books)
¥2¥2 税込
配送料 ¥240 6月17日-19日にお届け
発送元: バリューブックス 【防水梱包で、丁寧に発送します】 販売者: バリューブックス 【防水梱包で、丁寧に発送します】
¥2¥2 税込
配送料 ¥240 6月17日-19日にお届け
発送元: バリューブックス 【防水梱包で、丁寧に発送します】
販売者: バリューブックス 【防水梱包で、丁寧に発送します】
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
殺人症候群 (双葉文庫 ぬ 1-3) 文庫 – 2005/6/1
貫井 徳郎
(著)
{"desktop_buybox_group_1":[{"displayPrice":"¥5,282","priceAmount":5282.00,"currencySymbol":"¥","integerValue":"5,282","decimalSeparator":null,"fractionalValue":null,"symbolPosition":"left","hasSpace":false,"showFractionalPartIfEmpty":true,"offerListingId":"l5yakOE49CvyvYW49DWW2XH2P1%2F7kgBiX%2FkH%2BipRh6LyuhSDeNLAIhvLV69EgZZ3HDXDWiWSt2GCrQxRi80oy%2BgfRxtm6M0SXlZvx6uQxcdSP8Pqw2BwhwgD5CFM8SCaoLUbFJRtRTj2532mBNVZu6CBmezRUgvtSmvo98QVN%2BDI%2FVV6POSgTybGJNiaw8XL","locale":"ja-JP","buyingOptionType":"NEW","aapiBuyingOptionIndex":0}, {"displayPrice":"¥2","priceAmount":2.00,"currencySymbol":"¥","integerValue":"2","decimalSeparator":null,"fractionalValue":null,"symbolPosition":"left","hasSpace":false,"showFractionalPartIfEmpty":true,"offerListingId":"l5yakOE49CvyvYW49DWW2XH2P1%2F7kgBiqfVqkDMSvJTG2YFh38XQ1wK%2FFsOxSk4l%2BCRvPqOfUFRNuDX1nBZdYG3cZFB2ufkYP4EX6mV%2F4TJ9JwvV0ekQ5N8TBnd6zS9nqrMeBBcGPh9WkvTaEC3h3X9TrKb2pB%2BEzRdNOr6ud6nM0n3iBpJ5YQ%3D%3D","locale":"ja-JP","buyingOptionType":"USED","aapiBuyingOptionIndex":1}]}
購入オプションとあわせ買い
警視庁人事二課の環敬吾が率いる影の特殊工作チームは、現代の必殺仕置人らしく、また鮮やかに悪を葬り去るはずであった。しかし今回の彼らの標的は、被害者の遺族に代わって復習を果たそうとする「殺人者」であった。「症候群シリーズ」の掉尾を飾る問題作!
- 本の長さ711ページ
- 言語日本語
- 出版社双葉社
- 発売日2005/6/1
- ISBN-104575510149
- ISBN-13978-4575510140
よく一緒に購入されている商品
対象商品: 殺人症候群 (双葉文庫 ぬ 1-3)
¥5,282¥5,282
6月 28 - 29 日にお届け
通常10~11日以内に発送します。
総額:
当社の価格を見るには、これら商品をカートに追加してください。
ポイントの合計:
pt
もう一度お試しください
追加されました
一緒に購入する商品を選択してください。
この商品を見た後にお客様が購入した商品
ページ: 1 / 1 最初に戻るページ: 1 / 1
登録情報
- 出版社 : 双葉社 (2005/6/1)
- 発売日 : 2005/6/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 711ページ
- ISBN-10 : 4575510149
- ISBN-13 : 978-4575510140
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,563,289位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう
カスタマーレビュー
星5つ中4つ
5つのうち4つ
全体的な星の数と星別のパーセンテージの内訳を計算するにあたり、単純平均は使用されていません。当システムでは、レビューがどの程度新しいか、レビュー担当者がAmazonで購入したかどうかなど、特定の要素をより重視しています。 詳細はこちら
170グローバルレーティング
虚偽のレビューは一切容認しません
私たちの目標は、すべてのレビューを信頼性の高い、有益なものにすることです。だからこそ、私たちはテクノロジーと人間の調査員の両方を活用して、お客様が偽のレビューを見る前にブロックしています。 詳細はこちら
コミュニティガイドラインに違反するAmazonアカウントはブロックされます。また、レビューを購入した出品者をブロックし、そのようなレビューを投稿した当事者に対して法的措置を取ります。 報告方法について学ぶ
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2020年7月9日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
冒頭から引き込まれてしまう展開で、失踪・誘拐症候群と比較すると、先の内容が気にかかり時間を忘れて読みふけってしまう。
「殺しかた」の表現にウンザリさせられる場面も多々あるが、ひょっとしたら作者の思考の奥のさらに奥を垣間見たような気にさせられる。
ラストの数行はどう解釈すべきか?
それは読者次第と言うべきか微妙である。
「殺しかた」の表現にウンザリさせられる場面も多々あるが、ひょっとしたら作者の思考の奥のさらに奥を垣間見たような気にさせられる。
ラストの数行はどう解釈すべきか?
それは読者次第と言うべきか微妙である。
2017年8月14日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
題材としては面白い。貫井徳郎はハマる人にはハマるんでしょう。でも私にはストーリー展開が遅くてハマらなかった。
いろんな角度から見せてる割にはどんでん返しもないし。
それにラストは、スッキリ、できれば幸せが残る終わり方が好きな私にはモヤモヤしか残りませんでした。
いろんな角度から見せてる割にはどんでん返しもないし。
それにラストは、スッキリ、できれば幸せが残る終わり方が好きな私にはモヤモヤしか残りませんでした。
2018年2月14日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
少年法に守られた未成年者が犯す凶悪犯罪とその犯罪被害者について書かれたもの。
自分がこんな犯罪に巻き込まれたら・・という身近に起こりえる恐怖を強く感じた。
暴力的な場面の描写が強烈で、読んでいると気分が悪くなることもあったが、
ストーリーが面白く、読むことをやめられなかった。
読後感の重さは、作品の中でも群を抜いていた。
自分がこんな犯罪に巻き込まれたら・・という身近に起こりえる恐怖を強く感じた。
暴力的な場面の描写が強烈で、読んでいると気分が悪くなることもあったが、
ストーリーが面白く、読むことをやめられなかった。
読後感の重さは、作品の中でも群を抜いていた。
2019年5月23日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
症候群シリーズの最終巻で、約700頁の大作である。驚くべきどんでん返しがあり、臓器移植のドナーと復讐殺人、両方共に命をテーマにしているのだが、どこで接点が交差するのかさっぱりわからないまま、話は疾走します。そしてシリーズを読んでいくうちに、主人公達に対して、思い入れが入り複雑な心境になっていきます。ネタバレしてはいけないのだけれど、読後感が哀しすぎる。佗しすぎる。淋しすぎる。でもこういう作品は作者以外の作家は描けないだろうと思う。ただ、肝心要の環の素性が全くわからない。環がどういう境遇なのか、どんな人格でどんな過去があるのか、描いて欲しかった!何とかここはひとつ、環のストーリーを作品にしてもらいたいと切に願うばかり。
2018年6月15日に日本でレビュー済み
15年位前、午前中から日が暮れるまで思わず読んでしまった本です。
初めに読んだときはあまりに強烈でひどすぎる暴力描写とふわっとした結末に読後感が最悪、二度と読みたくないと思いました。
しかしその高いエンターテイメント性故、あれから二年に一回は読み返す本になっています。
今となるとあの結末以外にないと思えるのが不思議です。環は謎のままなのが良い。
未成年者の犯罪や39条の問題、犯罪者に対する復讐、殺人をした者は必ず報いを受けるのか、等まじめに考えるべき点はありますが
それを考えると矛盾がちらほら見えてきてつまらなくなるので、あえて私は何も考えず、ただただ展開のおもしろさを評価します。
女性に対する過剰な暴力描写は非常に嫌ですし一部非現実的な点がありますが、それ以上に圧倒的リーダビリティに抗えません。
今頃レビューを書きたいと思ったきっかけになったドラマも見ましたが、環(渡部篤郎)と鏑木(谷原章介)は入れ替えてほしかった。
30代頃の渡部さん(永遠の仔やケイゾクを演じていた時のナイーブな感じ)は鏑木のイメージ、そして何より「紳士服モデルのような」、何を考えているかわからない微笑を浮かべている環のイメージは谷原さんでした。これが言いたかった。
谷原さん表紙版の「殺人症候群」が発売されたときはイメージ通りと思ったのですが。
話も全然違って原田や倉持は出てこないし武藤はやたらかっこいいし、トラウマになりそうな某登場人物の強烈な死に様は
あっさりしていましたし、別物でした。特に本作で倉持が出てこない点でもう全然違います。
やはり原作は素晴らしいです。また二年後あたりに読むでしょう。
初めに読んだときはあまりに強烈でひどすぎる暴力描写とふわっとした結末に読後感が最悪、二度と読みたくないと思いました。
しかしその高いエンターテイメント性故、あれから二年に一回は読み返す本になっています。
今となるとあの結末以外にないと思えるのが不思議です。環は謎のままなのが良い。
未成年者の犯罪や39条の問題、犯罪者に対する復讐、殺人をした者は必ず報いを受けるのか、等まじめに考えるべき点はありますが
それを考えると矛盾がちらほら見えてきてつまらなくなるので、あえて私は何も考えず、ただただ展開のおもしろさを評価します。
女性に対する過剰な暴力描写は非常に嫌ですし一部非現実的な点がありますが、それ以上に圧倒的リーダビリティに抗えません。
今頃レビューを書きたいと思ったきっかけになったドラマも見ましたが、環(渡部篤郎)と鏑木(谷原章介)は入れ替えてほしかった。
30代頃の渡部さん(永遠の仔やケイゾクを演じていた時のナイーブな感じ)は鏑木のイメージ、そして何より「紳士服モデルのような」、何を考えているかわからない微笑を浮かべている環のイメージは谷原さんでした。これが言いたかった。
谷原さん表紙版の「殺人症候群」が発売されたときはイメージ通りと思ったのですが。
話も全然違って原田や倉持は出てこないし武藤はやたらかっこいいし、トラウマになりそうな某登場人物の強烈な死に様は
あっさりしていましたし、別物でした。特に本作で倉持が出てこない点でもう全然違います。
やはり原作は素晴らしいです。また二年後あたりに読むでしょう。
2016年6月24日に日本でレビュー済み
やっぱり貫井さんの本は読みごたえがあります。
読後感は重いけれど、やはり構想とかうまいなぁと唸ります。
最近トリックだけのミステリーで空振り続きだったので久々に満足できました。
読後感は重いけれど、やはり構想とかうまいなぁと唸ります。
最近トリックだけのミステリーで空振り続きだったので久々に満足できました。
2017年4月5日に日本でレビュー済み
3部作の中でNo.1だと思う作品です。かなり考えさせられた内容です