「爆発炎上は男のロマンだぞー。戦隊ものから始まって男子向けロボットアニメ、ハリウッド映画に至るまで、爆発に燃えない男など、男と呼べるか!」と、有川浩の小説『キケン』の中で、主人公・「ユナ・ボマー」の異名を取る上野直也は言い放ちます。いささか過激な発言ではありますが、この言葉に、真っ向反論できる男の子は恐らく皆無と言っていいでしょう。ゆうきまさみのマンガ『究極超人あ〜る』の中にも、「自爆装置は男のロマンだぞ」「そりゃ、わかんでもないですが」というやり取りがありました。
確かに、爆竹とかロケット花火とか、そういうもので遊ぶのは大概男の子と相場が決まっています。子どもを生み育てる女性は本能的に危険を避けようとします。しかし、男性は狩猟本能に根ざした攻撃性や危険を好む傾向があるようです。イギリスのNPO「The Social Issues Research Centre」の報告によると、女性に比べて、男性の方が50〜100%も人身事故を起こす確率が高いそうです。
おそらく、「爆発」という危険にも、本能という名のロマンをかきたてられてしまうのでしょう。
本書でも、まさしくその「男のロマン」=「爆弾」が、一つの大きなきっかけになっています。
主人公・小木文弘は広告会社に勤める四十代後半のサラリーマン。妻と小学五年生の息子と三人で東京郊外の高級マンションに暮らしています。家族は不和という訳ではないが円満とも言えず、文弘はなんとなく「浮いて」しまった感じを味わっています。そんなある日、彼がふと口にした「爆弾(不発弾)」という言葉に、息子は好奇心を刺激され、珍しく自分から話しかけてきます。そこで文弘は、夜のベランダで、
「こういう話は、女には分からないからな。女にはロマンは分からん」
と、小学五年生だった頃のひと夏の思い出を語ります。
小学五年生の文弘の夏は大忙しです。
先生の誉められた同級生への対抗心から、友だちとちょっとした冒険を企てて失敗し、更にもっと大きな冒険に乗り出します。それが「爆弾」=「不発弾探し」です。それらを通じて、友だちとの関係を見つめ直したり、乱暴者の意外な一面を垣間見たり、何となく自分たちとは違うと感じていた都会からの転校生と親しくなったり、あるいは、今まで気付かなかった親の気持ちに触れて、今までの自分の勝手さを後悔してみたり、大人たちの苦労を垣間見たりと、この夏、文弘は多くの経験をし、少し成長します。
どこか微風を思わせる爽やかさを持った、分かりやすい文体で綴られた「文弘の夏」は、懐かしい匂いに満ちています。きっと、そんな夏を経験していない子供達にも、その匂いは感じ取れることでしょう。
そんな本書は、学校の先生方の心もガッチリととらえ、2009年7月に出版されると、翌年の中学入試では一気に15を上回る学校で出題され、単行本から十ヶ月足らずという異例のスピードで文庫化されました。
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夏を拾いに (双葉文庫) (双葉文庫 も 12-3) 文庫 – 2010/5/13
森 浩美
(著)
「お父さんが小学生のときはな……」父が息子に誇りたい、昭和46年のひと夏――小五の文弘は、祖父から町に不発弾が埋まっている話を聞く。様々な家庭の事情を抱えた仲間四人で、不発弾探しを始めるが。「家族の言い訳」シリーズをヒットさせた著者が描く、懐かしく爽やかな青春小説。
- 本の長さ504ページ
- 言語日本語
- 出版社双葉社
- 発売日2010/5/13
- ISBN-104575513512
- ISBN-13978-4575513516
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商品の説明
著者について
放送作家を経て、1983年より作詞家。現在までの作品総数は700曲を超え、荻野目洋子『Dance Beatは夜明けまで』、森川由加里『SHOW ME』、田原俊彦『抱きしめてTONIGHT』、SMAP『青いイナズマ』『SHAKE』『ダイナマイト』、KinKi Kids『愛されるより愛したい』、ブラックビスケッツ『スタミナ』『タイミング』など数多くのミリオンセラーを手がける。06年、初の短編小説集『家族の言い訳』を上梓。短編集第二作『こちらの事情』と合わせて25万部を超すロングセラーとなっている。最新刊は家族小説シリーズ第三弾となる『小さな理由』。
登録情報
- 出版社 : 双葉社 (2010/5/13)
- 発売日 : 2010/5/13
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 504ページ
- ISBN-10 : 4575513512
- ISBN-13 : 978-4575513516
- Amazon 売れ筋ランキング: - 289,586位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
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2012年1月4日に日本でレビュー済み
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2009年8月10日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
時は昭和45・6年の設定だろうか?小学5年生の悪ガキたちが、こともあろうに戦時中アメリカ軍が落とした不発弾を発見しようと試みる話です。今やすっかり平成の御世になってしまったが、誰もが確かに過ごした昭和の少年時代の夏休み。「巨人の星」「明日のジョー」に夢中になり、ザリガニ釣り、クワガタ採り等の日々の遊びの中で自我の芽生えを感じ冒険を夢見たあの頃。笑いあり友情あり、そしてほろっとさせる場面もあり、森浩美さんの新境地を感じさせる作品です。現在は会社人間になってしまったオヤジたちよ、この本を読んで少年時代の自分にタイムスリップしよう。
2009年8月20日に日本でレビュー済み
父が息子に手渡す夏の思い出。
平成19年の夏から、一気に昭和46年の、あの夏へ。
4人の少年たちの忘れられないひと夏が、丁寧に描かれる。
当時小学5年生だった、ブンちゃん、つーやん、雄ちゃん、そして高井くんの
4人が、じりじりとした8月の熱に焼かれながら、必死で探し、
追いかけたもの。
おとなの事情を理不尽に感じ、それが最優先されることの裏をかき、
子どもらがたくましく遊びに遊んで成長するさまが瑞々しい。
おとなと子どもの境界線は厳然として在って、それは動かしがたい現実で、
だから、子どもは黙っておとなの背中を見て学んだ。
世の中全体が、前へ前へと雄雄しく進んでいった時代でもある。
貧しさを克服すべく、おとなは働きに働いた。
しかし、それぞれの家庭の事情は、幼なじみであればあるほど
筒抜けの側面がある。
4人の少年の家庭が、みごとに書き分けられていて、興味深い。
同じような家庭でないからこその、4人のキャラクターが引き立つ。
けんか、見栄、思いやり、そして口にはしないが大事な友情の確認。
「不発弾」探しにのめりこんでいく彼らの意地と情熱は
少年らしい“冒険”譚にして、昭和の回顧譚になりえている。
平成19年の夏から、一気に昭和46年の、あの夏へ。
4人の少年たちの忘れられないひと夏が、丁寧に描かれる。
当時小学5年生だった、ブンちゃん、つーやん、雄ちゃん、そして高井くんの
4人が、じりじりとした8月の熱に焼かれながら、必死で探し、
追いかけたもの。
おとなの事情を理不尽に感じ、それが最優先されることの裏をかき、
子どもらがたくましく遊びに遊んで成長するさまが瑞々しい。
おとなと子どもの境界線は厳然として在って、それは動かしがたい現実で、
だから、子どもは黙っておとなの背中を見て学んだ。
世の中全体が、前へ前へと雄雄しく進んでいった時代でもある。
貧しさを克服すべく、おとなは働きに働いた。
しかし、それぞれの家庭の事情は、幼なじみであればあるほど
筒抜けの側面がある。
4人の少年の家庭が、みごとに書き分けられていて、興味深い。
同じような家庭でないからこその、4人のキャラクターが引き立つ。
けんか、見栄、思いやり、そして口にはしないが大事な友情の確認。
「不発弾」探しにのめりこんでいく彼らの意地と情熱は
少年らしい“冒険”譚にして、昭和の回顧譚になりえている。
2015年10月14日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
子どもの読書感想文にと思い買いました。
自分の子供の頃を思い出させるいい作品です。
自分の子供の頃を思い出させるいい作品です。
2010年9月27日に日本でレビュー済み
受験問題に多く取り上げられているとの話を聞いて読んでみることに。
キレイな日本語とはどういうものなのか・・・
でもそんなのは読んでいるうちに頭から消え去っていた。
懐かしい昭和の風景。
絶妙な子どもの心理描写。
どれも昭和に子ども時代を生きた私をその世界に引き込むには十分だった。
同時にわが子にもそんな冒険を経験させたいと思った。
キレイな日本語とはどういうものなのか・・・
でもそんなのは読んでいるうちに頭から消え去っていた。
懐かしい昭和の風景。
絶妙な子どもの心理描写。
どれも昭和に子ども時代を生きた私をその世界に引き込むには十分だった。
同時にわが子にもそんな冒険を経験させたいと思った。
2016年3月17日に日本でレビュー済み
本当に私の昭和時代の子供のイメージってこんな感じです!!
昔懐かしの固有名詞のようなものが出てきて(これは本当にあったものでしょうか?)、平成生まれの私は知らないものの筈なのに何故かずっと前から知っていたかのような親しみを感じました。
私の父の子供時代もこんな感じだったのでしょうか。
物語の主人公、文ちゃん、お調子者の雄ちゃん、ビビリのつーちゃん、スカした顔して実はいい奴な高井くん…それぞれが繰り広げる青春物語はいつの時代の子供にも共感できるものがあります。(陳腐な言葉ばかりですみません。)
大人が考える子供の理想像ではなく、ありのままの子供達が描かれています。
だからといって冷たい現実として突き付けるのではなく優しく包み込んでくれるような温かさがあります。
これから他の作品も読んでみたいと思います。
昔懐かしの固有名詞のようなものが出てきて(これは本当にあったものでしょうか?)、平成生まれの私は知らないものの筈なのに何故かずっと前から知っていたかのような親しみを感じました。
私の父の子供時代もこんな感じだったのでしょうか。
物語の主人公、文ちゃん、お調子者の雄ちゃん、ビビリのつーちゃん、スカした顔して実はいい奴な高井くん…それぞれが繰り広げる青春物語はいつの時代の子供にも共感できるものがあります。(陳腐な言葉ばかりですみません。)
大人が考える子供の理想像ではなく、ありのままの子供達が描かれています。
だからといって冷たい現実として突き付けるのではなく優しく包み込んでくれるような温かさがあります。
これから他の作品も読んでみたいと思います。
2018年4月24日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
最初の2.3ページが何かで濡れて乾いた後みたいにゴワゴワになっていて、臭かったです。
ページの折れた後や多少の汚れは古本なので致し方ないと思うのですか、これはさすがに。。。
ページの折れた後や多少の汚れは古本なので致し方ないと思うのですか、これはさすがに。。。
2011年11月23日に日本でレビュー済み
昭和の時代、4人の少年たちが不発弾探しや乱暴者との対決を通じて、悩みながら生き生きと成長していく物語。日常の、なんでもない遊びが繰り広げられていくだけなのに、なぜこうもページをめくる手が止まらないのか。それは出てくる少年たちの、絶妙な等身大ぶりからか。「ああ、こんな気持ちになったなあ、あの頃。」と、一つ一つのエピソードが、さわさわと中年世代の心をくすぐり続けるのだ。放送作家出身らしい時代感覚で当時の風俗もふんだんにもりこまれる。「七年殺し」。なんと胸のキュンと来る言葉だろうか。物語は現代のお父さんが息子に思い出を語る形で描かれているが、小学生の子どもをもつお父さん、ぜひお子さんと一緒に読んでみてください。そして、ひとつひとつのギャグを、子どもの前で再現しましょう。「うーん、マンダム」。