「明るく自由な空気が大好きです」……『エマ』の森薫さんの書いた推薦文にはこうあります。前巻よりさらに人物の線には磨きがかかり、個々の物語はより一層の深みと親しみを増しました。ですので、前巻を購入してみて気に入った方は「一巻ほど面白くないのでは…」と懸念せずに多大な期待をもって手にとってください。湯浅さんが描く江戸の町はさらなる豊かな広がりを見せています。
二巻所収のエピソード「火の華銀次」は、未だ誰も見たことのない花火を作ることを夢見る花火師、銀次の情熱と悲哀の物語。命を賭けた挑戦者と化した彼の鬼気迫る姿を存分に描きだす本作は、これまでにないほど強烈な迫力を持っているため、一巻までとは若干、雰囲気を異にし、一種、重々しくもあります。が、そうであっても私にとっては『お蝶』全編を合わせて最も気に入った話で、何度となく読み返しています。思わず夢中になること必至なので、ぜひ落ち着いて読める環境で読んでもらいたいと思います。
他の作品もいわゆる「都合のいい話」に終始せず、寂しさや悲しさをも時には感じさせる物語は色気ある絵と合わせて爽やかな読了感を与えることでしょう。とにかくも漫画本来の面白さを持った作品なので、最近の漫画に若干なりとも不満を感じている方には一巻と合わせてぜひ読んで欲しく思います。まっすぐな感動を呼び起こす「得難え糧」に満ち満ちた、美しく素晴らしい漫画です。
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