実際に本書を手にとって読むまでは、NHKの「DEEP PEOPLE」第2回「女性の美を撮る写真家」(2011年4月25日放送)で、番組スタッフから「なぜあの子をもっと撮らなかったんですか?」と繰り返されて「しつこくするのが嫌いなんです。相手を嫌な気持ちにさせたくないんです。いま僕はすごく嫌な気持ちですから」とキレて車に乗る様子を見てから、失礼ながら神経質で気難しい、分かりにくい文章を想像していました。
ところがいざ読んでみると、まるでやさしい教科書を読んでいるようでした。
そして写真を撮る方法だけではなく、むしろ写真の見方について目を見開かされました。
思うにホンマ氏自身の撮影スタイルそのままに、読まれることを戦略的によく考えて細やかに書かれた文章だからなのでしょう。
上記の番組では、写し手の感性や個性に殆ど頼る従来の撮影方法とは異なる、知識と技術が伴わなければ不可能な、ホンマ氏独特の人物撮影法の一端が披露されていましたが、この書籍に記されている「決定的瞬間派」と「ニューカラー派」の文脈に即して言えば、氏は人物撮影に於ける「ニューカラー派」のような立ち位置を人物撮影のジャンルで戦略的にとろうとしておられるのかな…とこの書籍を読んで再考させられました。
もちろん人物撮影ですから、ニューカラー派が景色を絞り込んで撮影する場合とは真逆に、4×5カメラで徹底的に背景から被写体を浮かび上がらせている上に、シャッターを切る「瞬間」はあるのですが、あまり「決定的」には瞬間を特別視せず、視線(カメラ)の位置によるアングルやパースなどの撮影者の痕跡を、アオリを使って可能な限り消去して、出来るだけニュートラルに撮影しようとされている姿勢などから、そう思いました。
(本書ではそういった撮影テクニックについては企業ヒミツのようです)
もっともホンマ氏自身は人物撮影の専門家というわけではなく、多彩な被写体の一部に過ぎないですし、本書の内容もそのように限定的なものでは全くありません。
国内では主として写真家の感性や個性などの才能(天性)によって評価されているのと異なり、国外では実に様々な撮影方法が試みられてきたことが、どのような思想(信念)に基づくものなのかまで含めてよくわかり、写真の多様性と可能性に目を見開かされます。
撮る場合も見る場合も、世界そのものを「写真」で切り取る見方がここに示されています。
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たのしい写真: よい子のための写真教室 単行本 – 2009/5/1
ホンマ タカシ
(著)
- 本の長さ245ページ
- 言語日本語
- 出版社平凡社
- 発売日2009/5/1
- 寸法13.1 x 2 x 19.5 cm
- ISBN-104582231179
- ISBN-13978-4582231175
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登録情報
- 出版社 : 平凡社 (2009/5/1)
- 発売日 : 2009/5/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 245ページ
- ISBN-10 : 4582231179
- ISBN-13 : 978-4582231175
- 寸法 : 13.1 x 2 x 19.5 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 111,948位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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トップレビュー
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2013年5月8日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2016年5月6日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
写真関係の本って哲学者が書いたものが多く難解な本が多いですが、こちらはすごく読みやすい本です。手軽に写真関係の本読んでみたいなってときにはぜひ。
2012年9月7日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
写真の撮り方の指南本は多数あり、それらを読めば3分割構図やハイキー・ローキーの使い方がわかる。でも、そのうち、指南本通りに撮った写真は、どこかで見たような写真に見え、つまらなくなるる時期が来る。そういった時期に読むと良い本。
本書では、ある程度撮り手としてレベルを上げた人間の苦悩が書かれている。つまり、新しい表現なんてものは試されつくされていて、どう撮っても誰かの真似に見える。撮り手の内面性や主体性といったものが、試されつくされている現代では”自己表現”というものが誰かの物真似に見える。一方、”決定的瞬間”を写す写真は、今やカメラマンではなく監視カメラで撮られる時代である。つまり、外部要因(偶然の重なり)による写真を撮るには、人間のカメラマンが不要になりつつある。
こういった撮り手は何を目指すべきか混沌とした現代において、著者は絵葉書のような写真(つまり、撮りつくされた被写体を撮りつくされた構図で撮ること)から始めようと勧める。その奥には深い意図がある。
本書では、ある程度撮り手としてレベルを上げた人間の苦悩が書かれている。つまり、新しい表現なんてものは試されつくされていて、どう撮っても誰かの真似に見える。撮り手の内面性や主体性といったものが、試されつくされている現代では”自己表現”というものが誰かの物真似に見える。一方、”決定的瞬間”を写す写真は、今やカメラマンではなく監視カメラで撮られる時代である。つまり、外部要因(偶然の重なり)による写真を撮るには、人間のカメラマンが不要になりつつある。
こういった撮り手は何を目指すべきか混沌とした現代において、著者は絵葉書のような写真(つまり、撮りつくされた被写体を撮りつくされた構図で撮ること)から始めようと勧める。その奥には深い意図がある。
2011年3月19日に日本でレビュー済み
前半のニューカラーやのか決定的瞬間やのか、っていうのは、
まぁ、わかりやすくて良いんですけども、
後半の方はページを埋める為かあちこちから持って来たような感じ
散漫
んで、シャッタースピードと絞りの関係でニューカラーや決定的瞬間を
わけてるけども、自分で撮ってる山の写真に、決定的瞬間的山の写真と
ニューカラー的山の写真ってやってると、バラけるよね
てか、そういう説明の仕方をするなら、
じゃあ、アンセル・アダムスは大型カメラ使ってても、決定的瞬間だよね、
っていうようなそういう話に広げてったらいいのにね
つまり、そうすると、化けの皮がはがれちゃうよ、だって、
決定的瞬間とニューカラーの2つに写真史を解体したっていうと、
そうねーそこの2つってやっぱり大事よねぇ、っていう気もするけど、
要するに、写真はクライマックスかアンチクライマックスか、
どっちかだ、っていう話っていうわけで、なーんだ、そんなの今じゃ
誰だって言ってるよね、っていうことを言ってるだけなのでした
まぁ、わかりやすくて良いんですけども、
後半の方はページを埋める為かあちこちから持って来たような感じ
散漫
んで、シャッタースピードと絞りの関係でニューカラーや決定的瞬間を
わけてるけども、自分で撮ってる山の写真に、決定的瞬間的山の写真と
ニューカラー的山の写真ってやってると、バラけるよね
てか、そういう説明の仕方をするなら、
じゃあ、アンセル・アダムスは大型カメラ使ってても、決定的瞬間だよね、
っていうようなそういう話に広げてったらいいのにね
つまり、そうすると、化けの皮がはがれちゃうよ、だって、
決定的瞬間とニューカラーの2つに写真史を解体したっていうと、
そうねーそこの2つってやっぱり大事よねぇ、っていう気もするけど、
要するに、写真はクライマックスかアンチクライマックスか、
どっちかだ、っていう話っていうわけで、なーんだ、そんなの今じゃ
誰だって言ってるよね、っていうことを言ってるだけなのでした
2013年5月4日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
前半は写真の歴史がホンマタカシさんの視点で面白く纏められています。
歴史的な名作がチラホラ出てきますが
おしい事に、殆どの作品がカラー作品であってもモノクロでしか印刷されていません。
それと、後半はちょっとよく分からない世界に行ってしまいます。
たぶん、ホンマタカシファンにならば分かる話なのでしょうが……
でも、わたしはこの本、好きです。
だって、面白いもの。
歴史的な名作がチラホラ出てきますが
おしい事に、殆どの作品がカラー作品であってもモノクロでしか印刷されていません。
それと、後半はちょっとよく分からない世界に行ってしまいます。
たぶん、ホンマタカシファンにならば分かる話なのでしょうが……
でも、わたしはこの本、好きです。
だって、面白いもの。
2010年8月26日に日本でレビュー済み
ホンマタカシが写真論を!
という事で読んでみました。
正直余り期待はしていなかったのですが。
写真の歴史の流れを素人目にも解り易く読ませてくれます。
写真を勉強されている方にもお薦め。
改めてホンマ写真論で切り口を変えて読むと別の可能性を見いだせるかも。
写真論は難しい言葉を並べがちなので入り難い印象を与えますが
ホンマさんの言葉で整理された文章を読むとすんなりと入ってきます。
ホンマタカシ写真好きの方、そうでない方、ホンマタカシという人間への
かけ橋となる一冊だと思います。
ありがちな写真ハウツー本を読む前に断然こちらで真に迫ってもらいたいです。
という事で読んでみました。
正直余り期待はしていなかったのですが。
写真の歴史の流れを素人目にも解り易く読ませてくれます。
写真を勉強されている方にもお薦め。
改めてホンマ写真論で切り口を変えて読むと別の可能性を見いだせるかも。
写真論は難しい言葉を並べがちなので入り難い印象を与えますが
ホンマさんの言葉で整理された文章を読むとすんなりと入ってきます。
ホンマタカシ写真好きの方、そうでない方、ホンマタカシという人間への
かけ橋となる一冊だと思います。
ありがちな写真ハウツー本を読む前に断然こちらで真に迫ってもらいたいです。
2013年6月9日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
最初は図書館で借りたのですが、返却期日が近づいたので慌てて購入しました。
読んだ上で、「所有したい!」と強く思った本は久しぶりです。
テクニック論ではなく、『そもそも写真って、何だったっけ?』と思った人に最適です。
読んだ上で、「所有したい!」と強く思った本は久しぶりです。
テクニック論ではなく、『そもそも写真って、何だったっけ?』と思った人に最適です。
2009年7月20日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
考えは整理されており、それを表す文章は平易で良い本だと思います。
決定的瞬間派からニューカラー派、そして多様化へという経緯が理解できました。
これから写真を見るとき(読むとき)、撮るときに、この本の影響を受けると思います。
本を読んで、自分が決定的瞬間をとるのが価値ある写真と無意識に思っていたことがわかりました。
そうではない撮り方でもいいのだと感じられて、写真が撮りたくなりました。
中、大判カメラもちょっと欲しくなりました。
決定的瞬間派からニューカラー派、そして多様化へという経緯が理解できました。
これから写真を見るとき(読むとき)、撮るときに、この本の影響を受けると思います。
本を読んで、自分が決定的瞬間をとるのが価値ある写真と無意識に思っていたことがわかりました。
そうではない撮り方でもいいのだと感じられて、写真が撮りたくなりました。
中、大判カメラもちょっと欲しくなりました。