帯にもなっている堀江敏幸の一文がこの写真集に対する違和感を象徴している。
「二十一世紀の東京の真ん中に天を突く高層建築物が生まれ育っていくのは、地層ができあがっていくのと同様の自然現象だと考えたほうが精神衛生にはいいにちがいない。大切なのは、厳然としてそこに存在する鉄の骨と均一なコンクリートの層に人間らしい浸食とゆがみを加えて不整合面を生じさせ、あたらしいなにかを創りだしていこうとする意志のほうだろう」。
“自然現象だと考えたほうが精神衛生にはいい”とか“厳然としてそこに存在する”なんて文脈は、フツウに考えたら「企画制作:森ビル株式会社」の本の帯にはそぐわないだろう。“精神衛生にはいい”ってのは、「六本木ヒルズは必要悪である」ってことを言ってるわけだし、“厳然としてそこに存在する”って、造ったのは森ビルな訳だし。
“二十一世紀の東京の真ん中に天を突く高層建築物”に消極的肯定の堀江敏幸のエッセイ(実は「六本木ヒルズ」という具体的名称は一箇所も使っていないが)、都市風景のフラットな記録としてのホンマタカシの写真、純粋なアートワークとしてのバーンブルックデザインの表現、それぞれの評価は置いておくとしても、こうした、とても六本木ヒルズに対して客観的な表現の本を、森ビル自らが企画制作して出版することには違和感を抱いてしまうのだ。少なくとも、堀江敏幸の消極的肯定に対する森ビルの見解を聞いてみたい。

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SIX STRATA:ROPPONGI HILLS DEFINED ペーパーバック – 2006/1/26
- 本の長さ128ページ
- 言語英語
- 出版社平凡社
- 発売日2006/1/26
- ISBN-104582277594
- ISBN-13978-4582277593
登録情報
- 出版社 : 平凡社 (2006/1/26)
- 発売日 : 2006/1/26
- 言語 : 英語
- ペーパーバック : 128ページ
- ISBN-10 : 4582277594
- ISBN-13 : 978-4582277593
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,522,977位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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- - 118,293位文芸作品
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著者について
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1964(昭和39)年、岐阜県生れ。1999(平成11)年『おぱらばん』で三島由紀夫賞、2001年「熊の敷石」で芥川賞、2003年「スタンス・ドット」で川端康成文学賞、2004年、同作収録の『雪沼とその周辺』で谷崎潤一郎賞、木山捷平文学賞、2006年、『河岸忘日抄』で読売文学賞を受賞。おもな著書に、『郊外へ』『いつか王子駅で』『めぐらし屋』『バン・マリーへの手紙』『アイロンと朝の詩人―回送電車III―』『未見坂』ほか。
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