私淑する大澤真幸の『私の先生――出会いから問いが生まれる』(大澤真幸著、青土社)には、大澤に最も大きな影響を与えた師は見田宗介(真木悠介)だと記されています。そして、見田の著作の『気流の鳴る音』について詳しく論じられています。そこで、『気流の鳴る音』そのものに当たろうと思い、『戦後思想の名著50』(岩崎稔・上野千鶴子・成田龍一編、平凡社)』を取り寄せたところ、収められていたのは著作そのものではなく、「真木悠介 気流の鳴る音――交響するコミューン」(齋藤純一執筆)という解説論文でした。
「本書のライト・モチーフは、近代社会を規定してきた合理性が深い病理を宿しているのではないかという疑念にある。・・・真木悠介が、本書やそれにつづく『時間の比較社会学』において徹底的に相対化しようとするのは、みずからの生を手段化し、他者や自然を支配の対象としてのみ位置づける近代の道具的合理性である。近代の自明性を剥奪し、それを根底から問題化しようとする思考を一般に『ポスト・モダン』と呼ぶなら、1980年代から90年代にかけて広く受容されることになる『ポスト・モダン』の一つの先駆的なかたちとして本書を見なすとしても、それは間違いではないだろう。しかしその際、本書の『ポスト・モダン』が『大地』(ないし『土地』)というメタファーが指し示すような、ユニークな質を帯びていることに留意する必要がある」。
「本書が主要なテキストとしているのは、人類学者のカルロス・カスタネダがメキシコ北部に生きるヤキ・インディオの呪術師ドン・ファンとの交流のなかから学んだ知恵を書き記したものである。・・・人々の生き方が変わるのは何によってかという問いに対して、真木は、抽象的に構成された論理の説得力を受け入れることよりも、他者がその具体的な生き方において示す魅力に触発されることの方がはるかに多いのではないかと答えたことが思いだされる」。
「真木が本書を含む一連の仕事において提起したのは、みずからとは異なるものをその支配のもとにおこうとする『主権的自由』とは異なった自由、みずから自身を他者との出会いへと導き、そのことを通じて自己をそれまでの思考や行動の惰性から解放していくような自由のイメージである」。
ふーむ、かなり手強いようだが、これは、『気流の鳴る音』そのものを読むしかないな。
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戦後思想の名著50 単行本 – 2006/2/11
戦後思想を形作った50冊の「名著」を読みなおしながら、戦後啓蒙の成立、戦後啓蒙の相対化、ポストモダン・ポスト戦後の3つの時代として日本の戦後思想史を描くことを試みる。
- ISBN-104582702589
- ISBN-13978-4582702583
- 出版社平凡社
- 発売日2006/2/11
- 言語日本語
- 本の長さ640ページ
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登録情報
- 出版社 : 平凡社 (2006/2/11)
- 発売日 : 2006/2/11
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 640ページ
- ISBN-10 : 4582702589
- ISBN-13 : 978-4582702583
- Amazon 売れ筋ランキング: - 144,628位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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5 星
見田宗介(真木悠介)の著作『気流の鳴る音』の解説論文
私淑する大澤真幸の『私の先生――出会いから問いが生まれる』(大澤真幸著、青土社)には、大澤に最も大きな影響を与えた師は見田宗介(真木悠介)だと記されています。そして、見田の著作の『気流の鳴る音』について詳しく論じられています。そこで、『気流の鳴る音』そのものに当たろうと思い、『戦後思想の名著50』(岩崎稔・上野千鶴子・成田龍一編、平凡社)』を取り寄せたところ、収められていたのは著作そのものではなく、「真木悠介 気流の鳴る音――交響するコミューン」(齋藤純一執筆)という解説論文でした。「本書のライト・モチーフは、近代社会を規定してきた合理性が深い病理を宿しているのではないかという疑念にある。・・・真木悠介が、本書やそれにつづく『時間の比較社会学』において徹底的に相対化しようとするのは、みずからの生を手段化し、他者や自然を支配の対象としてのみ位置づける近代の道具的合理性である。近代の自明性を剥奪し、それを根底から問題化しようとする思考を一般に『ポスト・モダン』と呼ぶなら、1980年代から90年代にかけて広く受容されることになる『ポスト・モダン』の一つの先駆的なかたちとして本書を見なすとしても、それは間違いではないだろう。しかしその際、本書の『ポスト・モダン』が『大地』(ないし『土地』)というメタファーが指し示すような、ユニークな質を帯びていることに留意する必要がある」。「本書が主要なテキストとしているのは、人類学者のカルロス・カスタネダがメキシコ北部に生きるヤキ・インディオの呪術師ドン・ファンとの交流のなかから学んだ知恵を書き記したものである。・・・人々の生き方が変わるのは何によってかという問いに対して、真木は、抽象的に構成された論理の説得力を受け入れることよりも、他者がその具体的な生き方において示す魅力に触発されることの方がはるかに多いのではないかと答えたことが思いだされる」。「真木が本書を含む一連の仕事において提起したのは、みずからとは異なるものをその支配のもとにおこうとする『主権的自由』とは異なった自由、みずから自身を他者との出会いへと導き、そのことを通じて自己をそれまでの思考や行動の惰性から解放していくような自由のイメージである」。ふーむ、かなり手強いようだが、これは、『気流の鳴る音』そのものを読むしかないな。
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2024年2月19日に日本でレビュー済み
私淑する大澤真幸の『私の先生――出会いから問いが生まれる』(大澤真幸著、青土社)には、大澤に最も大きな影響を与えた師は見田宗介(真木悠介)だと記されています。そして、見田の著作の『気流の鳴る音』について詳しく論じられています。そこで、『気流の鳴る音』そのものに当たろうと思い、『戦後思想の名著50』(岩崎稔・上野千鶴子・成田龍一編、平凡社)』を取り寄せたところ、収められていたのは著作そのものではなく、「真木悠介 気流の鳴る音――交響するコミューン」(齋藤純一執筆)という解説論文でした。
「本書のライト・モチーフは、近代社会を規定してきた合理性が深い病理を宿しているのではないかという疑念にある。・・・真木悠介が、本書やそれにつづく『時間の比較社会学』において徹底的に相対化しようとするのは、みずからの生を手段化し、他者や自然を支配の対象としてのみ位置づける近代の道具的合理性である。近代の自明性を剥奪し、それを根底から問題化しようとする思考を一般に『ポスト・モダン』と呼ぶなら、1980年代から90年代にかけて広く受容されることになる『ポスト・モダン』の一つの先駆的なかたちとして本書を見なすとしても、それは間違いではないだろう。しかしその際、本書の『ポスト・モダン』が『大地』(ないし『土地』)というメタファーが指し示すような、ユニークな質を帯びていることに留意する必要がある」。
「本書が主要なテキストとしているのは、人類学者のカルロス・カスタネダがメキシコ北部に生きるヤキ・インディオの呪術師ドン・ファンとの交流のなかから学んだ知恵を書き記したものである。・・・人々の生き方が変わるのは何によってかという問いに対して、真木は、抽象的に構成された論理の説得力を受け入れることよりも、他者がその具体的な生き方において示す魅力に触発されることの方がはるかに多いのではないかと答えたことが思いだされる」。
「真木が本書を含む一連の仕事において提起したのは、みずからとは異なるものをその支配のもとにおこうとする『主権的自由』とは異なった自由、みずから自身を他者との出会いへと導き、そのことを通じて自己をそれまでの思考や行動の惰性から解放していくような自由のイメージである」。
ふーむ、かなり手強いようだが、これは、『気流の鳴る音』そのものを読むしかないな。
「本書のライト・モチーフは、近代社会を規定してきた合理性が深い病理を宿しているのではないかという疑念にある。・・・真木悠介が、本書やそれにつづく『時間の比較社会学』において徹底的に相対化しようとするのは、みずからの生を手段化し、他者や自然を支配の対象としてのみ位置づける近代の道具的合理性である。近代の自明性を剥奪し、それを根底から問題化しようとする思考を一般に『ポスト・モダン』と呼ぶなら、1980年代から90年代にかけて広く受容されることになる『ポスト・モダン』の一つの先駆的なかたちとして本書を見なすとしても、それは間違いではないだろう。しかしその際、本書の『ポスト・モダン』が『大地』(ないし『土地』)というメタファーが指し示すような、ユニークな質を帯びていることに留意する必要がある」。
「本書が主要なテキストとしているのは、人類学者のカルロス・カスタネダがメキシコ北部に生きるヤキ・インディオの呪術師ドン・ファンとの交流のなかから学んだ知恵を書き記したものである。・・・人々の生き方が変わるのは何によってかという問いに対して、真木は、抽象的に構成された論理の説得力を受け入れることよりも、他者がその具体的な生き方において示す魅力に触発されることの方がはるかに多いのではないかと答えたことが思いだされる」。
「真木が本書を含む一連の仕事において提起したのは、みずからとは異なるものをその支配のもとにおこうとする『主権的自由』とは異なった自由、みずから自身を他者との出会いへと導き、そのことを通じて自己をそれまでの思考や行動の惰性から解放していくような自由のイメージである」。
ふーむ、かなり手強いようだが、これは、『気流の鳴る音』そのものを読むしかないな。
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2020年11月19日に日本でレビュー済み
かつて「戦後文学」の語が生れ、一定の役割を果たして忘れ去られました。「戦後思想」の語は、それに比べると、検討機会が少ない分、存在意義を保持し続けているのかも知れません。そして、このことは、敗戦直後に急速に認識された、わが国の新しい世界への参加が、いまだに完結はしておらず、或る意味では、そのとき馴染み始めた国際的基準の何らかの思想にたいして未だにアレルギー反応を起こし続けていることを意味しているのかも知れません。
端的には、或る一つの大戦争の敗戦以後の時代における思想です。
岩崎稔、上野千鶴子、成田龍一の3氏が編者となり、50の名著を揃えました。そして、おのおのの著作を別々の方々が紹介しています。この紹介者にしてこの著作、といった好適な組み合わせが認められる一方、少し著作およびその作成された背景に対する現状認識が甘いと思われる組み合わせもあります。しかし、そのようなことは些事。誰がなんと批評していようが、読者自身が、それぞれの著作をどう評価するか、という自由が確保されていますから、本書の読後、事後の努力に期待しましょう。
表紙の印字をトレースしておきます。
柳田國男『先祖の話』
花田清輝『復興期の精神』
坂口安吾『堕落論』
大塚久雄『近代化の人間的基礎』
川島武宜『日本社会の家族的構成』
きだみのる『気違ひ部落周游紀行』
日本戦歿学生手記編集委員会編『きけ わだつみのこえ』
竹内好『現代中国論』
無着成恭編『山びこ学校』
石母田正『歴史と民族の発見』
丸山眞男『現代政治の思想と行動』
大熊信行『国家悪』
思想の科学研究会編『共同研究 転向』
久野収・鶴見俊輔・藤田省三『戦後日本の思想』
鶴見和子・牧瀬菊枝編著『ひき裂かれて』
谷川雁『原点が存在する』
上野英信『追われゆく坑夫たち』
宮本常一『忘れられた日本人』
橋川文三『日本浪漫派日批判序説』
小田実『何でも見てやろう』
色川大吉『明治精神史』
大江健三郎『ヒロシマ・ノート』
森崎和江『第三の性』
梅棹忠夫『文明の生態史観』
江藤淳『成熟と喪失』
松田道雄『育児の百科』
加藤周一『羊の歌』
吉本隆明『共同幻想論』
村上信彦『明治女性史』
石牟礼道子『苦海浄土』
新川明『反国家の凶区』
花森安治『一㦮五厘の旗』
永山則夫『無知の涙』
宇井純『公害原論』
田中美津『いのちの女たちへ』
国立市公民館市民大学セミナー編『主婦とおんな』
網野善彦『無縁・公界・楽』
鶴見俊輔『戦時期日本の精神史』
鶴見良行『バナナと日本人』
島田等『病棄て』
金時鐘『「在日」のはざまで』
加納実紀代『女たちの〈銃後〉』
高木仁三郎『市民の科学をめざして』
山口昌男『文化と両義性』
真木悠介『気流の鳴る音』
柄谷行人『日本近代文学の起源』
上野千鶴子『家父長制と資本制』
西川長夫『国境の越え方』
酒井直樹『死産される日本語・日本人』
加藤典洋『敗戦後論』
端的には、或る一つの大戦争の敗戦以後の時代における思想です。
岩崎稔、上野千鶴子、成田龍一の3氏が編者となり、50の名著を揃えました。そして、おのおのの著作を別々の方々が紹介しています。この紹介者にしてこの著作、といった好適な組み合わせが認められる一方、少し著作およびその作成された背景に対する現状認識が甘いと思われる組み合わせもあります。しかし、そのようなことは些事。誰がなんと批評していようが、読者自身が、それぞれの著作をどう評価するか、という自由が確保されていますから、本書の読後、事後の努力に期待しましょう。
表紙の印字をトレースしておきます。
柳田國男『先祖の話』
花田清輝『復興期の精神』
坂口安吾『堕落論』
大塚久雄『近代化の人間的基礎』
川島武宜『日本社会の家族的構成』
きだみのる『気違ひ部落周游紀行』
日本戦歿学生手記編集委員会編『きけ わだつみのこえ』
竹内好『現代中国論』
無着成恭編『山びこ学校』
石母田正『歴史と民族の発見』
丸山眞男『現代政治の思想と行動』
大熊信行『国家悪』
思想の科学研究会編『共同研究 転向』
久野収・鶴見俊輔・藤田省三『戦後日本の思想』
鶴見和子・牧瀬菊枝編著『ひき裂かれて』
谷川雁『原点が存在する』
上野英信『追われゆく坑夫たち』
宮本常一『忘れられた日本人』
橋川文三『日本浪漫派日批判序説』
小田実『何でも見てやろう』
色川大吉『明治精神史』
大江健三郎『ヒロシマ・ノート』
森崎和江『第三の性』
梅棹忠夫『文明の生態史観』
江藤淳『成熟と喪失』
松田道雄『育児の百科』
加藤周一『羊の歌』
吉本隆明『共同幻想論』
村上信彦『明治女性史』
石牟礼道子『苦海浄土』
新川明『反国家の凶区』
花森安治『一㦮五厘の旗』
永山則夫『無知の涙』
宇井純『公害原論』
田中美津『いのちの女たちへ』
国立市公民館市民大学セミナー編『主婦とおんな』
網野善彦『無縁・公界・楽』
鶴見俊輔『戦時期日本の精神史』
鶴見良行『バナナと日本人』
島田等『病棄て』
金時鐘『「在日」のはざまで』
加納実紀代『女たちの〈銃後〉』
高木仁三郎『市民の科学をめざして』
山口昌男『文化と両義性』
真木悠介『気流の鳴る音』
柄谷行人『日本近代文学の起源』
上野千鶴子『家父長制と資本制』
西川長夫『国境の越え方』
酒井直樹『死産される日本語・日本人』
加藤典洋『敗戦後論』
2015年4月20日に日本でレビュー済み
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50人の著作を見なくても、あらまし理解できるのがうれしい。特に、きっかけの著者が視点の違う著作をしており、役立っています。