まず、本書において決定的に許せないのは自らを権威づけるためにヴァシェを利用した点である、そして、ヴァシェに関する愛情も理解も全くない。資料は確かに読んでいる。ただ、それがどうだっていうのだ?私は体験主義しか真実とは認めない。あなたはユーモアの実践をしたことがあるのか?学者はそもそも感性が鈍い。(大半は)作家に憑依して、その文体をそのまま表現すること、したがって、翻訳にあたってもっとも重要な資質は感性であり、自らも作家であり詩人でなければならない。ヴァシェはこういった学者ぶぜいに弄ばれることを最も嫌う。芸術家であろうとしたブルトンにでさえもだ。アポリネールの「ティレジアスの乳房」に関して。これは証言というより神話だというピエールデスクの証言は間違っています。何らかの騒動が起きたのは疑いようがないし、当時観戦していた、ブルトンやアラゴン、スーポーらに拳銃で撃ち殺すぞと脅したことが私はユーモアの実践をしたと解釈しています。それはシュルレアリスムの誕生とも言える決定的な日だったのです。何故ならヴァシェは何者にもコントロールされず、ユーモアは騒乱状態に身を起き、ある種の瞑想状態で行う、アイロニーではなく、何の意図もあってはならないそのままそれを詩作に転用するとシュルレアリスムの本質ということになる。
ブルトンは当時あまりに対独的な立場だった、アポリネールの書いた記事に失望したとヴァシェは語っており、アポリネールが死んだことに対する衝撃の大きさはそれほどございません。ヴァシェはアポリネールの死後、はっきりと態度を軟化させたと書いてあるが、軟化させてはいない。ヴァシェは死者を侮辱することを嫌っていた。その信条に基づいている。ヴァシェが無償の行為としての自殺?そんなわけはない。あり得ない。そもそもヴァシェを幽霊と表現するのが我慢ならない。一番親しかったジャンヌデリアンはその表現を激怒するだろう。ヴァシェは彼らの中で神格化された存在として君臨していたが、徘徊する幽霊などという表現は失礼極まりない。
ヴァシェはシュルレアリスムのために死を犠牲にした?本当にこの作者はヴァシェを読んだことがあるのか?そんなことなどヴァシェが考えているわけがない。ヴァシェは否定の体現者で、芸術や芸術家をそもそも認めていないし、嫌っていた。シュルレアリスム界隈やナントの友人たちと世界を共有していたわけがない。認めていたのは、ジャンヌ・デリアン、アルフレッド・ジャリ、テオドール・フランケル、辛うじてブルトン。
ヴァシェという共通の幽霊に翻弄される?それがシュルレアリスムの意図なわけがない。そんな芸術運動ではない。頭に蛆がわいているのか。作者は本当に研究者であるのかどうかさえ疑わしい。ヴァシェが事故死だったというのが多数派なわけがない。シュルレアリストたちはセンセーショナルなものとするために、ヴァシェを自殺したことにしなければならなかったと作者は言っているが、ヴァシェの死は確実に自殺である。その根拠は拙書に書いたのでここでは語らない。シュルレアリストたちはヴァシェの狂信者である。1919年に戦争書簡を出版し、「戦時の手紙」の暗唱をブルトンはシュルレアリストたちに求めている。
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シュルレアリスム、あるいは痙攣する複数性 単行本 – 2007/12/1
鈴木 雅雄
(著)
- 本の長さ386ページ
- 言語日本語
- 出版社平凡社
- 発売日2007/12/1
- ISBN-104582702740
- ISBN-13978-4582702743
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登録情報
- 出版社 : 平凡社 (2007/12/1)
- 発売日 : 2007/12/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 386ページ
- ISBN-10 : 4582702740
- ISBN-13 : 978-4582702743
- Amazon 売れ筋ランキング: - 885,304位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 82位ポップアートの美術史
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- - 95位アール・ヌーヴォーの美術史
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2019年9月1日に日本でレビュー済み
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2009年7月9日に日本でレビュー済み
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ブルトンの「ナジャ」、ダリ、バルテュスあたりを好きになり、シュルレアリスムそのものに強い興味を持たれた方には、本書ならびに巌谷国士の「シュルレアリストたち 眼と不可思議」をお薦めしたい。モーリス・ナドーの本はもっと後でいいだろう。
2007年12月20日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
シュルレアリスムとアンドレ・ブルトンの関係がよくわかりました。ヴァシェの存在は大きいんだなぁという感想を持ちました。シュルレアリストが何かしらのアクションを起こすときに、様々な事件(特に死が絡んだ)と共鳴していく様子がとてもわかりやすく書かれていました。レビューになっていませんが、いい本ですよ。