優良なポップカルチャー論ではあるが、扱っている題材が多岐にわたっており、事前にある程度の知識が必要とされる。
しかし付録の「ニール・ヤング再考」は考察不足の感が否めない。「ジョニー・ロットンをキングと呼んで讃えるニール」(P.344)とか、「"Out of the blue"(忽然と現れ)"and into the black"(闇に消えた)という簡素な色彩対置でジョニー・ロットンのすべてを歌い込んでしまう」(P.350)という記述でも分かるように、著者はニール・ヤングのアルバム「ラスト・ネヴァー・スリープス」において多大な誤解をしているように思われる。ここに参考までにアルバム一曲目の「マイ・マイ、ヘイ・ヘイ」の‘正解’を記しておこう。どのような時代背景で詩が書かれたのかを勘案しながら訳さなければならないと思う。因みに‘ヘイ’とはパンク・ロックのポゴ・ダンスに対するパンク以前のロックの象徴。
俺の‘ヘイ’(と呼ばれるカントリー・ダンスは古臭いが)
ロックン・ロールはここにある
ロックン・ロールは衰えるくらいなら
燃え尽きるべきなんだ
(俺はこのカントリー・ダンスを円舞する)
突然恩恵を得た
ミュージシャンたちはおまえにそれ(ロック)を与えるが
おまえはそのために苦しむ
おまえが突然成功する時
一度おまえが売れてしまえば二度とおまえは元には戻れない
天下をとった人間が死んでも誰も彼を忘れはしない
これはジョニー・ロットンの話だ
さびるくらいなら燃え尽きるべきなんだ
天下をとった人間が死んでも誰も彼を忘れはしない
そうだろう?
俺のロックン・ロールは死ぬことができないんだよ
ロックン・ロールは見た目以上にリアルなものなんだ
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ラバーソウルの弾みかた ビートルズと60年代文化のゆくえ (平凡社ライブラリー) 単行本 – 2004/2/10
佐藤 良明
(著)
- 本の長さ413ページ
- 言語日本語
- 出版社平凡社
- 発売日2004/2/10
- ISBN-104582764908
- ISBN-13978-4582764901
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
戦後アメリカに始まった音楽ムーブメントは、ビートルズの登場で爆発的に拡がり、人々の心の作動のしくみを変えた。60年代に表出した巨大な変化の全体像を探る記念碑的ポップカルチャー論。94年筑摩書房刊の再刊。
登録情報
- 出版社 : 平凡社 (2004/2/10)
- 発売日 : 2004/2/10
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 413ページ
- ISBN-10 : 4582764908
- ISBN-13 : 978-4582764901
- Amazon 売れ筋ランキング: - 596,608位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 4,107位哲学 (本)
- - 26,797位楽譜・スコア・音楽書 (本)
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2015年4月5日に日本でレビュー済み
これは好著。もともとは1989年に岩波書店から出たもので、94年にちくま学芸文庫になった。ぼくはそちらのほうを読んでいて、この平凡社ライブラリー版は未読なんだけど、どうしてもレビューを書いておきたい。それというのも、いわゆる「伝説の60年代」を知るための文献として、何冊かの書籍を選ぶとしたら、かなり上位にくるはずだから。
プロローグにこう書いてある。「……この本には、僕に作用し僕を作ったさまざまな人物のことが語られているが、彼らはただ語られているだけではない。彼らを語る僕を、そもそも彼らの生と思考と作品とが語り紡いできたのだとしたら、彼らこそこの本の真の語り手であって、僕はせいぜいエディターかアレンジャーでしかないわけである。この本のオリジナル・コンポーザーは、つぎの面々である。」
そこで挙げられた名前が、ジョン・レノンを筆頭に、ジャック・ケルアック(『路上』)、ケン・キージー(『カッコーの巣』)、リチャード・ブローティガン(『西瓜糖の日々』)、カルロス・カスタネダ(インディオの呪術師『ドン・ファン』シリーズ)、トマス・ピンチョン(『重力の虹』)、そしてグレゴリー・ベイトソン(『精神の生態学』)。
これらのキャラクターをベースに、ほかにもアレン・ギンズバーグ(『吠える』)とかフリチョフ・カプラ(『タオ自然学』)も出てくるし、あのホール・アース・カタログのことも触れられてるし、当時のキーパーソン、キーワード、キーコンセプトはさりげなく網羅されていると思うんだけど、いちばんのミソは、それらの豊富な情報が、たんなるお勉強のための参考書ふうに並んでるんじゃなくて、まさに著者の手によって軽やかに編集され、アレンジされていることだ。
たいせつなのは、情報そのものではなくて、あの時代の気分、ないしは空気を伝えることだ、というのが佐藤さんのモチーフなんだろう。高度消費社会がいよいよどん詰まりにきた昨今において、改めて60年代を学ぶことはとても大事だとぼくは思うし、そのためにはこの本が役に立つはずだ。
プロローグにこう書いてある。「……この本には、僕に作用し僕を作ったさまざまな人物のことが語られているが、彼らはただ語られているだけではない。彼らを語る僕を、そもそも彼らの生と思考と作品とが語り紡いできたのだとしたら、彼らこそこの本の真の語り手であって、僕はせいぜいエディターかアレンジャーでしかないわけである。この本のオリジナル・コンポーザーは、つぎの面々である。」
そこで挙げられた名前が、ジョン・レノンを筆頭に、ジャック・ケルアック(『路上』)、ケン・キージー(『カッコーの巣』)、リチャード・ブローティガン(『西瓜糖の日々』)、カルロス・カスタネダ(インディオの呪術師『ドン・ファン』シリーズ)、トマス・ピンチョン(『重力の虹』)、そしてグレゴリー・ベイトソン(『精神の生態学』)。
これらのキャラクターをベースに、ほかにもアレン・ギンズバーグ(『吠える』)とかフリチョフ・カプラ(『タオ自然学』)も出てくるし、あのホール・アース・カタログのことも触れられてるし、当時のキーパーソン、キーワード、キーコンセプトはさりげなく網羅されていると思うんだけど、いちばんのミソは、それらの豊富な情報が、たんなるお勉強のための参考書ふうに並んでるんじゃなくて、まさに著者の手によって軽やかに編集され、アレンジされていることだ。
たいせつなのは、情報そのものではなくて、あの時代の気分、ないしは空気を伝えることだ、というのが佐藤さんのモチーフなんだろう。高度消費社会がいよいよどん詰まりにきた昨今において、改めて60年代を学ぶことはとても大事だとぼくは思うし、そのためにはこの本が役に立つはずだ。