1.日本講演集が3冊時期をずらして存在する。そのなかの重要な一冊。
野生の思考などのフランス言論界に真剣勝負でのぞんだ著作のはりつめた緊張感はないが
それら難解な本とくらべわかりやすい点で有意味。
2.第二講 「現代の三つの問題 -- 性、開発、神話的思考」 には
初めて読む内容が含まれており新鮮。
現代西欧の人工授精技術の進展による難問
(たとえば父は二人 精子提供者と法律上の父親、母は3人 子宮提供者、卵子提供者、法律上の母が存在する)を俯瞰し
法律的問題と道義的問題を指摘したのち
実は同じ問題事象 未開社会の"人工授精"を紹介する。
「法的心理的見地からは人工授精に相当するといえる方法を案出し実行している(p。87以下)」
あっと驚く内容である。親族の構造にも関わる。ぜひ読まれたい。
3.各3講義のあとに質疑応答が行われその内容も記録されている。
日本人の学者が師を仰ぐように質問しレヴィストロースがやさしく丁寧に回答する。
イスラム的な価値観からもっとも学ぶべきことはなんでしょうか、という女性の学者?の質問
(なんとなくテレビのワイドショーのレポーターのような頓珍漢な質問)に対しては
「お答えできません」と丁寧に拒否し、また結果として質問者を教育している(p。132)
これだけではなく、日本の質問者の質問内容とそれに対するレヴィストロースの回答は、
「レヴィストロースとの対話」(シャルポニエ)、「遠近の回想」(エリポンとの対話)と比較して
よくよむと いろいろ感じるところがある。
極東の島国までわざわざ来ていただいたのであるから仕方がないが
質問の切込みが弱く感じられるのである。
その雰囲気が興味深く読む価値を感じた。
この部分をよむことで上にあげた対話の本をより深く読めるようになると感じる。
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レヴィ=ストロース講義: 現代世界と人類学 (平凡社ライブラリー れ 2-1) 単行本 – 2005/7/1
- ISBN-104582765432
- ISBN-13978-4582765434
- 出版社平凡社
- 発売日2005/7/1
- 言語日本語
- 本の長さ259ページ
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登録情報
- 出版社 : 平凡社 (2005/7/1)
- 発売日 : 2005/7/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 259ページ
- ISBN-10 : 4582765432
- ISBN-13 : 978-4582765434
- Amazon 売れ筋ランキング: - 40,756位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2018年6月4日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2010年4月30日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
1986年にレヴィ=ストロースが日本で行った3回の講演録。
現代世界の抱える問題の解決に対して、人類学がいかに貢献できるかという事がテーマである。
私たちが普遍的な「自然の理」だと考えているものが、文化固有の精神的拘束や慣習に他ならないと、人類学は教えてくれる。
具体的に人工受精や代理母の問題を例にとり、我々が不道徳な行為と考えるものが、「未開社会」において、単純かつ自明のものであるかを明らかにしている。
なかなか考えさせられた本だった。
現代世界の抱える問題の解決に対して、人類学がいかに貢献できるかという事がテーマである。
私たちが普遍的な「自然の理」だと考えているものが、文化固有の精神的拘束や慣習に他ならないと、人類学は教えてくれる。
具体的に人工受精や代理母の問題を例にとり、我々が不道徳な行為と考えるものが、「未開社会」において、単純かつ自明のものであるかを明らかにしている。
なかなか考えさせられた本だった。
2007年10月4日に日本でレビュー済み
1986年に東京で行われたレヴィ=ストロースによる
3回の講演と質疑応答。
訳は、川田順造さんと渡辺公三さん。
第一日目は、
文化人類学とは何か?
その歴史や意義をあきらかにする。
「人類の歴史のおそらく99パーセントに当たる期間、
そして地理的に言えば地球上で人の住む空間の4分の3」
を占めていたのは、いわゆる「未開社会」であったこと。
「人類学者は、私たちの生き方、私たちが信じているもろもろの価値観がすべてではないということ、
私たちのものとは異なった価値体系によって幸福を実現した共同体がかつて存在し、
また今も存在するということを明らかに」する。
第二日目は、
文化人類学の方法や考え方を用いて、
「家族・社会組織」
「経済生活」
「宗教思想」
の3つの側面から分析してみせてくださいます。
「家族・社会組織」の分析例として、
社会における「不妊」の問題が取り上げられています。
生物学的な親と社会学的な親の考え方、
3人の母親(卵子提供者、母体提供者、母親希望者)と2人の父親(精子提供者、父親希望者)の
組み合わせが、人工授精など無い未開社会においても様々な組み合わせがありえること。
でも、文化相対主義・・価値中立をあまり意識してしまうと、
意見が鈍ってしまうかもしれません。
最後の講演では、
人類学が、日本から学ぶこと。
日本での講演会ということもあるのでしょうが、
レヴィ=ストロースさん、日本の芸術に造詣深いです。
特に、19世紀の琳派の芸術を絶賛・・・
そういうと「日本その心とかたち」でもインタビューに出ていました。
「未開社会」・・・発展途上国において、独自の文化が破壊されていく状況、
先進国の二番煎じ、三番煎じの文化になろうとしている状況、
先進国の人間が、独自の文化を守れということは、植民地主義を補完する役割を果たしてしまうこと、
・・・・ちゃんと質疑応答の中で、問題提起されています。
3回の講演と質疑応答。
訳は、川田順造さんと渡辺公三さん。
第一日目は、
文化人類学とは何か?
その歴史や意義をあきらかにする。
「人類の歴史のおそらく99パーセントに当たる期間、
そして地理的に言えば地球上で人の住む空間の4分の3」
を占めていたのは、いわゆる「未開社会」であったこと。
「人類学者は、私たちの生き方、私たちが信じているもろもろの価値観がすべてではないということ、
私たちのものとは異なった価値体系によって幸福を実現した共同体がかつて存在し、
また今も存在するということを明らかに」する。
第二日目は、
文化人類学の方法や考え方を用いて、
「家族・社会組織」
「経済生活」
「宗教思想」
の3つの側面から分析してみせてくださいます。
「家族・社会組織」の分析例として、
社会における「不妊」の問題が取り上げられています。
生物学的な親と社会学的な親の考え方、
3人の母親(卵子提供者、母体提供者、母親希望者)と2人の父親(精子提供者、父親希望者)の
組み合わせが、人工授精など無い未開社会においても様々な組み合わせがありえること。
でも、文化相対主義・・価値中立をあまり意識してしまうと、
意見が鈍ってしまうかもしれません。
最後の講演では、
人類学が、日本から学ぶこと。
日本での講演会ということもあるのでしょうが、
レヴィ=ストロースさん、日本の芸術に造詣深いです。
特に、19世紀の琳派の芸術を絶賛・・・
そういうと「日本その心とかたち」でもインタビューに出ていました。
「未開社会」・・・発展途上国において、独自の文化が破壊されていく状況、
先進国の二番煎じ、三番煎じの文化になろうとしている状況、
先進国の人間が、独自の文化を守れということは、植民地主義を補完する役割を果たしてしまうこと、
・・・・ちゃんと質疑応答の中で、問題提起されています。
2018年9月2日に日本でレビュー済み
1986年に来日したレヴィ=ストロースの日本での3つの講演をまとめたこの本は、1988年にサイマル出版会から「現代世界と人類学-第三のユマニスムを求めて」というタイトルで刊行されたものに、新たに三つのあとがきを追加して、タイトルを変えて再刊されたものです。内容としては、第1講は「西洋文明至上主義の終焉-人類学の役割」、第2講は「現代の三つの問題-性・開発・神話的思考」、第3講は「文化の多様性の認識へ-日本から学ぶもの」となっています。かなり以前に行われた講演なので、医学的な内容ではその後の技術的な進歩が著しいものの、これを含めての人類学的な問題提起は少しも古びていないと感じました。それぞれの講義は、深い思考に基づいた、今読んでも示唆に富む内容のものばかりです。ただ、パラダイム理論ときわめてよく似たことを述べた部分で、トーマス・クーンへの言及が一言もないのは気になりました。
2009年8月21日に日本でレビュー済み
すばらしい。これの原本は1988年。日本での講演を本にしたもの。
「現代世界と人類学」を説いている。
わかりやすく、面白くて、気軽に読めるサイズ。
日本の人類学はこの20年間、レヴィ=ストロースの語ったことを、どのよ
うに受けてめて来たのだろうか。
レヴィ=ストロースの百歳の誕生日を記念して読んだのですが、1986年のこ
の講演からいろいろと新しい発見をしました。
私はポスト・モダンの議論には不満足で、かつ人類学について混乱していた
ので、レヴィ =ストロースのこの本が一つの羅針盤となってくれました。
人類学の真骨頂を知りたい入門者にも、おすすめの一冊。
訳者のコメントも、解説の人選も一見の価値あり。
「現代世界と人類学」を説いている。
わかりやすく、面白くて、気軽に読めるサイズ。
日本の人類学はこの20年間、レヴィ=ストロースの語ったことを、どのよ
うに受けてめて来たのだろうか。
レヴィ=ストロースの百歳の誕生日を記念して読んだのですが、1986年のこ
の講演からいろいろと新しい発見をしました。
私はポスト・モダンの議論には不満足で、かつ人類学について混乱していた
ので、レヴィ =ストロースのこの本が一つの羅針盤となってくれました。
人類学の真骨頂を知りたい入門者にも、おすすめの一冊。
訳者のコメントも、解説の人選も一見の価値あり。
2005年9月2日に日本でレビュー済み
1986年に東京で行われた3回の講演と質疑応答をまとめたものです。人類学とはどんな学問なのか、その歴史や意義、筆者の人類学の方法や考え方、家族や社会、経済等についてのいろいろな社会の分析等です。筆者の過去の著書や考え方が、端的に紹介されている印象の本でした。
素人ですが、わかりやすく、理解しやすい本でした。良い人類学への案内書でした。また、いろいろな、人類学的な事例もあり、興味深く読めました。サービスでしょうか、日本についての言及も多くありました。
素人ですが、わかりやすく、理解しやすい本でした。良い人類学への案内書でした。また、いろいろな、人類学的な事例もあり、興味深く読めました。サービスでしょうか、日本についての言及も多くありました。
2007年2月22日に日本でレビュー済み
文化人類学とは何か?そしてそれが現代社会や人類に対する果たすべき役割や思考方法が、3回の講義を通じて初めから終わりまで徹底して貫かれており、とても理解しやすく文化人類学入門書、また多様な文化の捉え方を考えるうえで最適な本です。
いわゆる「未開社会」で生活している人々に対して、近代社会の人間が安易に抱きやすい「優越感」や「非合理性」などの価値観に対して、丁寧にその壁を崩していきます。
「人類の歴史のおそらく99パーセントに当たる期間、そして地理的に地球上の4分の3」で、人類は未開社会の中で生活してきたこと、また非合理的に見える信仰や習慣も、数世紀を経てそれぞれの地域で形成されてきたものであるが簡単に崩れやすいこと、そして唯一普遍的な価値観といった枠を持つべきではないし単純に他に当てはめるべきではない、といった提言の数々は人類全体と社会の多様性を考えるうえで頭の片隅においておくべき言葉でしょう。
もちろん、単に入門だけにとどまらず、未開社会における性や神話の特徴と比較、そして遺伝と文化の関係から日本の文化まで論じるなど、その内容は充実しています。個人的には以前読んだ「銃・病原菌・鉄」(ジャレド ダイアモンド著)が思い出されました。未読の人は共に是非お勧めします。
いわゆる「未開社会」で生活している人々に対して、近代社会の人間が安易に抱きやすい「優越感」や「非合理性」などの価値観に対して、丁寧にその壁を崩していきます。
「人類の歴史のおそらく99パーセントに当たる期間、そして地理的に地球上の4分の3」で、人類は未開社会の中で生活してきたこと、また非合理的に見える信仰や習慣も、数世紀を経てそれぞれの地域で形成されてきたものであるが簡単に崩れやすいこと、そして唯一普遍的な価値観といった枠を持つべきではないし単純に他に当てはめるべきではない、といった提言の数々は人類全体と社会の多様性を考えるうえで頭の片隅においておくべき言葉でしょう。
もちろん、単に入門だけにとどまらず、未開社会における性や神話の特徴と比較、そして遺伝と文化の関係から日本の文化まで論じるなど、その内容は充実しています。個人的には以前読んだ「銃・病原菌・鉄」(ジャレド ダイアモンド著)が思い出されました。未読の人は共に是非お勧めします。
2006年2月6日に日本でレビュー済み
この本は人類学という学問が世の中にどのような影響力を秘めているかが鮮明に記されています。
日本にも造詣が深く、世界を代表する人類学の碩学であるレヴィ=ストロース自らが日本で行った人類学の講演をおさめた本書が述べる考えは、今もなおその力を失っては決してないと思います。
今日の資本経済を基盤とする私たちの社会に警鐘をならしています。とはいえ、その立場は比較的謙虚であり、「こうするべきだ!」というものではありません。そうした一連の行為は私たちの生きる社会を考え直すというものであり、人類の羅針盤の指針を確かめ直す作業なのです。
日本にも造詣が深く、世界を代表する人類学の碩学であるレヴィ=ストロース自らが日本で行った人類学の講演をおさめた本書が述べる考えは、今もなおその力を失っては決してないと思います。
今日の資本経済を基盤とする私たちの社会に警鐘をならしています。とはいえ、その立場は比較的謙虚であり、「こうするべきだ!」というものではありません。そうした一連の行為は私たちの生きる社会を考え直すというものであり、人類の羅針盤の指針を確かめ直す作業なのです。