カラヴァッジョ…天才画家の名を欲しいままにし、カラヴァッジェスキなる追随者をも多く生み出した時代の寵児、そして異端児…。
現代を生きる私達はミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョなる画家に対する賛辞を惜しむ事はない。
だが、同時に私達は知っているであろう。
この天才画家が、その偉大さに匹敵する程、スキャンダルにまみれていたという事を。
そして本書は、公私共に複雑、且つ劇的な人生を歩んだ偉大なる画家カラヴァッジョを読み解く為の鍵となる資料を集めた一冊なのである。
本書は、先ず前半にマンチーニ、バリオーネ、ベッローリ、カレル・ファン・マンデル、ヨアキム・フォン・ザンドラルド、フランチェスコ・スジンノに依るそれぞれの“カラヴァッジョ伝”、続く後半は“カラヴァッジョ犯科帳”と裁判記録や書簡を掲載した上で、最後は著者の小論で完結している。
上記に述べたように、何しろ功績と同じくらいに逸話に溢れた人物だけに、これ等の資料は貴重でもあり、カラヴァッジョの研究には欠かせない内容である事は間違いない。
尤も「研究」という言葉を使うと、甚だ専門的な著作だと勘違いされる方もいるかもしれないが、本書は寧ろ、“初心者でも解かり易い研究書”として纏められている所に特色があり、具体的に言うなれば、前半では画業に関する記述がウェイトを占める一方で、後半は彼の人間性や当時の社会情勢に重点を置く事に依って、カラヴァッジョの偉業と醜聞をバランス良く整理しているのだ。
勿論、カラヴァッジョに対する前知識がどの程度あるかに依って、読者それぞれの受け止め方も異なるであろうし、特に、彼に関する著作を多くお読みになっている方にとっては既知の内容も含まれるかもしれないが、総体的には誰もが楽しめると思う。
尚、本書を読むに当たって一番注意しなければならないのは、ここに描かれた全てが真実ではない…という事である。
即ち、かの有名なヴァザーリの『芸術家列伝』が好例であるように、優れた資料である一方で、明らかな誤記もあり、更には偏見もあり得る…という事なのである。
ましてや、カラヴァッジョのように個性的、尚且つ敵も多い人物ともなれば尚更であろう。
こうした意味に於いては、巻末に纏められた著者自身の小論「カラヴァッジョの真実」は本書の中でも重要だ。
何故なら、暴力沙汰や逃亡生活がクローズ・アップされがちなカラヴァッジョではあるものの、果たして彼が本当に特異な存在だったのか…という事を冷静、且つ客観的に分析しているからである。
彼は確かに多くの事件を起こしたかもしれない。
然しながら、当時のイタリアの治安や情勢を鑑みると、ごく自然に起こりうる事件でもあり、逸話ばかりに惑わされてはいけないのだ。
本書が教えてくれるのはカラヴァッジョの作品や私生活だけではない。
周囲の彼に対する眼差しと評価、或いは証言の中に垣間見られる彼の思想、更には当時の社会全体を通して、今、私達が彼の作品に何を見出し、如何なる点を評価すべきかという事を知らしめてくれるのだ。
成程、貴重な一冊である。
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カラヴァッジョ伝記集 (平凡社ライブラリー) 文庫 – 2016/3/10
石鍋 真澄
(編集)
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- 本の長さ237ページ
- 言語日本語
- 出版社平凡社
- 発売日2016/3/10
- ISBN-104582768385
- ISBN-13978-4582768381
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登録情報
- 出版社 : 平凡社 (2016/3/10)
- 発売日 : 2016/3/10
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 237ページ
- ISBN-10 : 4582768385
- ISBN-13 : 978-4582768381
- Amazon 売れ筋ランキング: - 645,463位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2016年10月8日に日本でレビュー済み
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2022年10月2日に日本でレビュー済み
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カラヴァッジョの同時代の人も含むカラヴァッジョの評価が細かく紹介されている。絵画の天才は情動統制が悪く、確かにいろいろな問題を起こして身を滅ぼしたのだということは納得できる。それでももし長生きしたらどんな絵画を描いただろうと改めて早すぎる死が残念に思える。
2016年4月22日に日本でレビュー済み
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カラヴァッジョの足跡を追うことのできる最も重要な三つの文献、すなわちマンチーニ、バリオーネ、ベッローリによる伝記、加えてフランドルのカレル・ファン・マンデルやドイツのザンドラルト、シチリアのスジンノによる記述が載せられている。これだけでもじゅうぶんありがたいが、いっそう興味深いのは、画家の起こしてきた数々の警察沙汰をまとめた「カラヴァッジョ犯科帳」である。暴言や乱暴狼藉、娼婦をめぐってのいざこざから、有名なラヌッチョ・トマッソーニ刺殺までの大小の事件の詳細、そして画家同士の交流が活写されている。
注目すべきは、カラヴァッジョの「ライヴァル」バリオーネとの経緯である。彼はカラヴァッジョが「嫉妬心から」嫌がらせをし、この上なく下品で卑猥な詩で自分を中傷したと言う。バリオーネの切々たる訴え、そしてそのカラヴァッジョ伝には、天才の輝きによって存在をかき消されてしまった彼自身の焦りと嫉妬心が垣間見える。
注目すべきは、カラヴァッジョの「ライヴァル」バリオーネとの経緯である。彼はカラヴァッジョが「嫉妬心から」嫌がらせをし、この上なく下品で卑猥な詩で自分を中傷したと言う。バリオーネの切々たる訴え、そしてそのカラヴァッジョ伝には、天才の輝きによって存在をかき消されてしまった彼自身の焦りと嫉妬心が垣間見える。
2021年3月14日に日本でレビュー済み
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飽くまでも伝記集なので、訳者の記述・意見を期待されている方には不向き
2022年5月4日に日本でレビュー済み
近年になって人気を集めたカラヴァッジョが、17世紀においてどう評価されていたかを知りたく読みました。当時の社会的文脈からすれば理解不能な性格を持つ人間ではないとわかりました。とはいえ、当時でも問題人間ではありましたが。彼への関心の高まりが発掘される古文書の数を見てわかりました。第二次世界大戦に再評価されたのですね。ということはまだ引き上げられていない画家が複数いるのでしょう。それを狙って史料蒐集している人が複数いるはずです。カラヴァッジョへの関心はまだ続くでしょう。