本書は全文読解本の性格と価格からすると一般向けの概要解説書ではありません。一方、墨子は中国、台湾、日本で共同研究が進んでいますが令和にあっても全文が読解できていない古典です。そのため、全文読解本では翻訳者の解釈と原文とを見比べる必要がありますが、本書には原文はありません。別途、適切な原文を用意して、解釈と原文を比較しないと、原文訓読なのか、創訳なのかの判断はできません。
また、墨子は徹底的な功利主義からの統治と戦争技術論と解釈しますが、兼愛篇や非攻篇の表題だけからの思い込みをもっての全文読解を行いますと、本筋を見誤る可能性があると考えます。
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墨子 (東洋文庫 599) 単行本 – 1996/4/1
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- 本の長さ394ページ
- 言語日本語
- 出版社平凡社
- 発売日1996/4/1
- ISBN-10458280599X
- ISBN-13978-4582805994
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登録情報
- 出版社 : 平凡社 (1996/4/1)
- 発売日 : 1996/4/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 394ページ
- ISBN-10 : 458280599X
- ISBN-13 : 978-4582805994
- Amazon 売れ筋ランキング: - 748,777位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 242位諸子百家・儒教・道教
- - 295位東洋文庫
- - 303位中国の思想(一般)関連書籍
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2020年12月4日に日本でレビュー済み
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2018年1月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
墨子といえば有名な非攻・兼愛のインパクトから理想主義的に思われがちだが、儒家同様神話時代の治世を理想としながらも、それを再現するための現実的解釈こそが墨子思想の原点であり、具体的には「天下之利益」を目的とした「尚同一義」、即ち思想統一による充実した全体主義とも換言出来る。この「天下」を依然周王朝下の封建体制と捉え、対象とした点が墨子と、その時代の限界かも知れない。
また他国侵略の不採算性を実証・実現させるため自ら防衛技術を研究・保持した点はユニークなものの、非攻・兼愛自体は体制内部の競合・衝突を単純に非効率なリソースの浪費として否定するに過ぎず、比重としては非楽・節葬等と変らない。
仮に墨子思想が対象範囲とした「天下」を"国(諸侯国)"レベルに限定・スケールダウンしてみれば、「義」や「天志」は"法"に、「明鬼」や「非命」等は"賞罰"にと現実的な法制度への完全な置換が可能となり、それは殆ど『韓非子』の法家思想と等しくなりはしないか。
尤もこういった論法でゆけば儒家異端の夏禹崇拝派、道教教義体系の根幹、縦横家弁論術の先駆、名家論理思考の母体、兵家軍学の元祖など如何様にも言えてしまう。
が。だからこそ、見る角度により大きく姿を変える『墨子』には、他にない面白さがある。今後の研究に注目したい。
また他国侵略の不採算性を実証・実現させるため自ら防衛技術を研究・保持した点はユニークなものの、非攻・兼愛自体は体制内部の競合・衝突を単純に非効率なリソースの浪費として否定するに過ぎず、比重としては非楽・節葬等と変らない。
仮に墨子思想が対象範囲とした「天下」を"国(諸侯国)"レベルに限定・スケールダウンしてみれば、「義」や「天志」は"法"に、「明鬼」や「非命」等は"賞罰"にと現実的な法制度への完全な置換が可能となり、それは殆ど『韓非子』の法家思想と等しくなりはしないか。
尤もこういった論法でゆけば儒家異端の夏禹崇拝派、道教教義体系の根幹、縦横家弁論術の先駆、名家論理思考の母体、兵家軍学の元祖など如何様にも言えてしまう。
が。だからこそ、見る角度により大きく姿を変える『墨子』には、他にない面白さがある。今後の研究に注目したい。
2014年5月23日に日本でレビュー済み
墨子は、絶対的平和主義を唱え、大国が小国を武力で侵略するのは誤りだと主張するだけでなく、それを阻止するために自ら武力を用いて小国の防衛を行ったという点で、稀に見る思想家です。また、論理学のテキストのようなところもあり、そのような合理主義の貫徹の一方、鬼神の存在を信じるなど、整合性がとれないようにみえる部分があるため、これをどう解するかについて議論があるという、思想としても実践体系としても興味ある存在です。
ただ、この書籍では、東洋文庫の編集方針に従い、翻訳文のみで原文は一切省かれています。初めて墨子を読もうとする人には有益でしょうが、もう一歩進もうとすると、そのための手がかりがないので不満が残ります。そのことを頭に置いて購入するのであれば、すっと読めますし有効だと思います。
ただ、この書籍では、東洋文庫の編集方針に従い、翻訳文のみで原文は一切省かれています。初めて墨子を読もうとする人には有益でしょうが、もう一歩進もうとすると、そのための手がかりがないので不満が残ります。そのことを頭に置いて購入するのであれば、すっと読めますし有効だと思います。
2004年6月26日に日本でレビュー済み
韓非子、荀子、と並んで弁論家としての墨子の面目躍如としている章もいくつかある。思想的には、中国のキリスト教と言うべく、博愛を基本倫理として説いている。荘子などでは、当時流行の思想として儒墨と併称されている程、当時中国中を席捲した新興宗教であった。
墨子がなぜそれ以降全く中国では評価されなかったかを考えるのは中国人、ひいては、日本人の精神構造とヨーロッパ人の精神構造の差を考えるヒントとなるのでは。
思うに、キリスト教は神の国という絶対的な権威づけをおこなった(特にパウロ)のに対して、墨子はあくまでも兼愛という世俗社会における倫理性を主張しつづけた。その戦略的発想の差が西洋でのキリスト教の隆盛を見、東洋では全く廃れてしまった、ということになりはしないか?
墨子がなぜそれ以降全く中国では評価されなかったかを考えるのは中国人、ひいては、日本人の精神構造とヨーロッパ人の精神構造の差を考えるヒントとなるのでは。
思うに、キリスト教は神の国という絶対的な権威づけをおこなった(特にパウロ)のに対して、墨子はあくまでも兼愛という世俗社会における倫理性を主張しつづけた。その戦略的発想の差が西洋でのキリスト教の隆盛を見、東洋では全く廃れてしまった、ということになりはしないか?
2022年6月15日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
訳者の方が言及されていますが、非攻篇に「誅」の文字がありました。
墨子の非攻は、無条件の単純な非攻ではないようです。
墨子の非攻は、無条件の単純な非攻ではないようです。