「共同研究 転向」上中下三巻は1959-62年に原本刊行、78年に改定増補版が出た。改定増補版を底本に手頃な判型の東洋文庫版六分冊で今回初判完結後60年を経て刊行されたのは喜ばしい。
転向とは編者の思想の科学研究会によれば「権力によって強制されたためにおこる思想の変化」である。「序言・転向の共同研究について」で鶴見俊輔がこう書いている：「転向問題についての自覚さえもたなくなる中間文化時代がーー続くとしても」「やがては日本人は過去にさかのぼって転向体験のほりおこしをするようになるだろう」鶴見の「これから生まれてくる子供にも、転向問題の重みをわかってもらう」願いは果たされただろうか。
今日「共同研究 転向」の持つ意味はなにか。「共同研究 転向」がなにを達成したか。その視角が妥当であり方法が有効だったのか。しかしそれはすでに問題でない。問題は40年以上前にこう設定されている：
[1970年５月30日、明治大学第二十回和泉祭本部企画 講演会]（「日本浪蔓派と現代」）
聴衆「思想というのはどういうふうに始まらなければいけないのか、思想というものがもし情況を超えるものであるとするならばーーーーー、それは最終的に完成するものであるかどうかわからないけれども、その原理的内実としては、どのような位相を選ばなければならないのか」
橋川（文三）「たまたま日本浪蔓派という手掛りをもとにして転向やマルクス主義というふうに遡っていくと、どの時代でも、それを担った日本の知識人というのはちっとも違ってないんです、という観点がまずでてきたんです。それで等価といってきたわけです」
どの時代でも変わらない思考様式。「共同研究 転向」は知識人の思考様式の宝庫である。しかし刊行当時はどこにでも転がっていた大宅壮一、清水幾太郎、丸山真男、宮城音弥など戦後ジャーナリズム界のスター達の著作でさえ今日容易に入手できない（高見順『故旧忘れ得べき』が唯一の例外か）。この現状をみれば著作集、シリーズもので読めるものはそれを補記するのが読者への親切というものだろう。
ても今日書店で入手できるのは高見順の『故旧忘れ得べき』が唯一の例外である。
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
よく一緒に購入されている商品
+
+
総額:
当社の価格を見るには、これら商品をカートに追加してください。
ポイントの合計:
pt
一緒に購入する商品を選択してください。
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
