２００４年に８５歳で亡くなられるまで図書館員を勤める傍ら絵本作家として活躍されたアメリカの女流作家カールさんの半世紀以上に渡って愛され読み継がれて来た１９５５年刊行の名作絵本です。作者が生涯に遺された絵本は全部で１６冊だそうで、その多いとは言えない冊数にも古き良き時代の優雅さを感じます。おはなしの内容もイラストもおっとりとして可愛らしく、現代の忙しなく殺伐とした雰囲気は全然なくて、のんびりと大らかな楽しさに満ち溢れていて心がウキウキし自然に嬉しくなります。
むかし、ある国に「公爵さま」「公爵夫人」と呼ばれる、おとうさまとおかあさまと１３人のおひめさまが住んでいました。ある日公爵夫人はいつもしている事に飽きてしまい、ふと思い立っておひめさまにケーキを焼いてあげようと決心したのですが・・・・。
おはなしは、公爵夫人がケーキを火にかけるとふわふわふわふわとどんどんどんどんふくらんで止まらなくなり、お尻の下に敷いて止めようとした夫人を乗せたままあれよあれよという間に大きくなって天の近くまで運ばれてしまうという奇想天外さで、スケールの大きさもケーキと一緒にふくらんで行きます。どんどん上に昇って行くおかあさまに向っておひめさまたちが「いってらっしゃい」と呼び掛け、おかあさまもそれにこたえてお互いに両方で手を振り合うというのんきさがおかしくて笑えます。この大騒ぎを聞きつけた王さまと王女さまが将軍を呼び何とかしろと命じて、石投げ機に弓矢隊とあらゆる手立てを尽くしますが全く駄目で、仕方ないわといよいよ諦めかけた時に・・・・。いきなり「エーン、エーン」と泣き出す一番おちびさんのガンヒルダ。よく考えればすぐに誰もが気づくだろうシンプルな解決法に感心し思わずニッコリとします。偉い王さまも将軍も気づかなかった難題に答を出すきっかけを作るのが一番のおちびさんだったという皮肉で意外な結果がとっても愉快です。大人気となって全部で６冊書かれたというこの「１３人のおひめさま」のシリーズの残り５冊もいつか紹介されて読める日が来れば良いなと願っています。
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