「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ。そして聖人は経験から悟る」。鉄血宰相の異名で知られるドイツの政治家ビスマルクはこんな言葉を遺した。
流行という言葉を文章の中に見つけるなら、それは俳聖芭蕉の門弟でもある服部土芳の『三冊子』にあるが、その本来の意味は私たちが日常的に使っているものと遙かに違いもする。「不易流行」として、変わらないものと変わるものとの「関係」を説明する言葉である。
それを実際に示すのが13世紀の昔、ものの移ろいゆく姿を水の流れに例えた鴨長明の言葉でもある。長明の意図は「ものが変化するということ」ではなく、ものが変化するという「事実があること」にあり、この言葉は更に遡り中国の百家争鳴時代の老子の言葉にまで行き着くことにもなる。
憲法学そして政治思想を専門とする樋口先生が、本書のタイトルに態々と「時代遅れ」とのインパクトのある言葉を用いた背景には、現行憲法とそれがもたらしてきた様々な恩恵を私たちがどこまで使いこなすことができているか、との問い掛けがある。
それは今回の総選挙が終わるやいなや待ってましたとばかりに登場している「改憲とそれに基づく戦後レジームからの脱却」のうねりがこれまでにないほどの大きさで押し寄せてきてもいて、その中心にいるのは前回に政権を担当した人物と同じでもある。前回のそれは直裁的な形でそれを前面に出し失敗もしたことを私達は知ってもいる。この本が刊行されたのはそうした当時の状況を映し出した時期に重なりもしその再現に対する危機感の表れといっても過言ではなかろう。
本書で著者の視線が注がれているのは、現行憲法の根幹をなす「人権」であり、それが裏打ちする「主権−主体」の問題である。12のテーマを反射板として用いることで、私たちは果たしてどこまで「この憲法」を自らの財産としそして生かす為の努力をしてきていたかを問い掛けてくる。
ともすれば、時代にそぐわないから憲法を変えようなどとの本末転倒で性急な意見を目にするがそうした中で、そうした主張をされる方々には「本当に『流行』という言葉の意味を知っていますか」と問い掛けることが「今そこにある危機」を回避するための最大の道具であるともいえよう。
芭蕉も長明も人やものが変化する様を生々流転や諸行無常と一言で表してもいるが、その実は「変わらないもの」があるからこそそれを無視しては「変えるべきものがなにであるのか」との「変えるものの本質」を見失いもすると警告を発してもいる。
現行憲法に記される数々の人権を地球上の全ての人間が持つべき「人類共通の理念」とした時、それを全ての人が享受しているとは誰が自信を持って言えるだろうか。
そうした未だ誰もが手にしているとはいえない、夜空に輝く星を求めそれに向かって一歩また一歩と近づいて行こうとする。それが「流行不易」の一言であり、「旧い革袋に新しい酒を盛る」との古人の知恵でもある。
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いま、憲法は「時代遅れ」か―〈主権〉と〈人権〉のための弁明(アポロギア) 単行本 – 2011/5/13
樋口 陽一
(著)
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日本の「憲法学」の権威である著者が、戦後最大の危機と言えるいま、この時代に、厳しい現実を見つめ直し、一市民の立場から、「憲法」の在り方とその活用を、広い視野で語りつくす。
- 本の長さ235ページ
- 言語日本語
- 出版社平凡社
- 発売日2011/5/13
- 寸法13.5 x 2.3 x 19.5 cm
- ISBN-104582835201
- ISBN-13978-4582835205
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登録情報
- 出版社 : 平凡社 (2011/5/13)
- 発売日 : 2011/5/13
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 235ページ
- ISBN-10 : 4582835201
- ISBN-13 : 978-4582835205
- 寸法 : 13.5 x 2.3 x 19.5 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 146,600位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 3,643位社会・政治の法律
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2014年12月31日に日本でレビュー済み
2011年8月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
伊藤博文曰く,「そもそも憲法を設くる趣旨は,第
一,君権を制限し,第二,臣民の権利を保全すること
にある。」
この一節が法曹の間ですら共有されていないことに,
樋口は相当の危機感を覚えたに違いありません。
憲法が日々,どれほど重たい仕事をしているのか。
国家の振舞いをどれほど厳しく縛り付けているのか。
そしてそれが,どれほど脆く儚い約束事にすぎないの
か・・・。
生活との接点が見えにくいだけに,なかなか縁遠い
憲法ですが,同じような危機感を抱いている論者はた
くさんいるようで,本屋には似たようなタイトルの本
がいくつも並んでいます。軸の定まらない改憲論だっ
たり,懐古的で退屈な護憲論だったり,それ自体が立
憲主義と矛盾しそうな政治的主張だったりと,中身は
色々ですが,憲法をめぐる議論が低調であることに危
機感を覚えている点では何となく一致しているようで
す。
この本は,そうした安っぽい議論とは一線を画して
います。創文社の『憲法』と同じように,歴史を参照
しながら丁寧に憲法の生い立ちを紹介してくれるので,
腹に溜まるというか,ずっしりとした説得力がありま
す。
哲学の方法を駆使しながら理詰めで憲法を解剖して
くれる長谷部恭男とは対照的です(とはいえ,ふたり
は師弟関係にあるので,切り口は違っているものの,
方向性に大きな違いは見られません)。
誰の本を手に取るかはともかく,憲法の話は,ちょ
っと掘り下げてみれば,それまで何も知らなかったこ
とがとてつもなく怖く感じるほど,刺激的です。
自分たちが生きる世界は,どんな仕組みで成り立っ
ているのだろうか。何が正しいのかが簡単には分から
ないこの世界で,人はどうやって共存していけばいい
のか。この本を読めば,少しくらい,前を向いて歩け
るようになるかも知れません。
迷える時代の道標に。救世の一冊。
一,君権を制限し,第二,臣民の権利を保全すること
にある。」
この一節が法曹の間ですら共有されていないことに,
樋口は相当の危機感を覚えたに違いありません。
憲法が日々,どれほど重たい仕事をしているのか。
国家の振舞いをどれほど厳しく縛り付けているのか。
そしてそれが,どれほど脆く儚い約束事にすぎないの
か・・・。
生活との接点が見えにくいだけに,なかなか縁遠い
憲法ですが,同じような危機感を抱いている論者はた
くさんいるようで,本屋には似たようなタイトルの本
がいくつも並んでいます。軸の定まらない改憲論だっ
たり,懐古的で退屈な護憲論だったり,それ自体が立
憲主義と矛盾しそうな政治的主張だったりと,中身は
色々ですが,憲法をめぐる議論が低調であることに危
機感を覚えている点では何となく一致しているようで
す。
この本は,そうした安っぽい議論とは一線を画して
います。創文社の『憲法』と同じように,歴史を参照
しながら丁寧に憲法の生い立ちを紹介してくれるので,
腹に溜まるというか,ずっしりとした説得力がありま
す。
哲学の方法を駆使しながら理詰めで憲法を解剖して
くれる長谷部恭男とは対照的です(とはいえ,ふたり
は師弟関係にあるので,切り口は違っているものの,
方向性に大きな違いは見られません)。
誰の本を手に取るかはともかく,憲法の話は,ちょ
っと掘り下げてみれば,それまで何も知らなかったこ
とがとてつもなく怖く感じるほど,刺激的です。
自分たちが生きる世界は,どんな仕組みで成り立っ
ているのだろうか。何が正しいのかが簡単には分から
ないこの世界で,人はどうやって共存していけばいい
のか。この本を読めば,少しくらい,前を向いて歩け
るようになるかも知れません。
迷える時代の道標に。救世の一冊。
2011年8月16日に日本でレビュー済み
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パラダイム・シフトという言葉があります。
「その時代や分野において当然と考えられていた認識や思想、社会全体の価値観などが革命的にもしくは劇的に変化すること」といわれていますが、東日本大震災は確かに想像を絶する規模で被災地を襲い、それに続く東京電力福島第一発電所の原子力発電所事故は「絶対安全」な筈の原発のウソをいとも簡単に暴き、それまで考えられていた認識・価値観などを変えることを強いつつあります。
多くの人たちが被災し命を失い、あるいは難は逃れたものの避難所などで最低限以下の生活を続けており、震災の被害に加え原発事故のために避難し、今後の生活の目処もつかない人たちに日本という国は、政府は、どのような対応をするのか、彼らを遠巻きに見つめる大多数のその他の国民は、何をしなければならないのか?
いま起きていることは、まさにパラダイム・シフトそのもので、そのような時にこそもう一度、日本という国をどのように捉え、日本国国民としてどのような国を希求しているのかということを、国民として冷静に見つめるための指針が国の有りようを示した日本国憲法であり、これが立法府に対して、行政府に対して、または司法府に対して守るべき規範を、国民として明確に規定しているものであることを認識するためにも、日本国憲法を読み解く本書は格好のガイドブックとなっております。
「原子力損害の賠償に関する法律」という法律があり、第二章・原子力損害賠償責任(無過失責任、責任の集中)の第三条に「、、、原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる。ただし、その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によって生じたものであるときは、この限りではない。」と明記されております。
原発事故は、想定外の異常な天災によって引き起こされたものであるから、原発避難民は基本的人権も、生存権も考慮する必要はないという論理にはなりません。そんなことを考えるためにも、いま、日本国憲法を熟考すべきときなのです。
「その時代や分野において当然と考えられていた認識や思想、社会全体の価値観などが革命的にもしくは劇的に変化すること」といわれていますが、東日本大震災は確かに想像を絶する規模で被災地を襲い、それに続く東京電力福島第一発電所の原子力発電所事故は「絶対安全」な筈の原発のウソをいとも簡単に暴き、それまで考えられていた認識・価値観などを変えることを強いつつあります。
多くの人たちが被災し命を失い、あるいは難は逃れたものの避難所などで最低限以下の生活を続けており、震災の被害に加え原発事故のために避難し、今後の生活の目処もつかない人たちに日本という国は、政府は、どのような対応をするのか、彼らを遠巻きに見つめる大多数のその他の国民は、何をしなければならないのか?
いま起きていることは、まさにパラダイム・シフトそのもので、そのような時にこそもう一度、日本という国をどのように捉え、日本国国民としてどのような国を希求しているのかということを、国民として冷静に見つめるための指針が国の有りようを示した日本国憲法であり、これが立法府に対して、行政府に対して、または司法府に対して守るべき規範を、国民として明確に規定しているものであることを認識するためにも、日本国憲法を読み解く本書は格好のガイドブックとなっております。
「原子力損害の賠償に関する法律」という法律があり、第二章・原子力損害賠償責任(無過失責任、責任の集中)の第三条に「、、、原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる。ただし、その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によって生じたものであるときは、この限りではない。」と明記されております。
原発事故は、想定外の異常な天災によって引き起こされたものであるから、原発避難民は基本的人権も、生存権も考慮する必要はないという論理にはなりません。そんなことを考えるためにも、いま、日本国憲法を熟考すべきときなのです。
2012年5月15日に日本でレビュー済み
深い歴史的理解に支えられ、近代から現代までの
西洋立憲主義思想に関する論考を縦横に参照しながら
それが現在において有する意味を探り、
薄っぺらい議論に釘を刺して行きます。
それを決して、下品にならず、知ったかぶりにもならず、
あくまでも静かに静かに論じて行かれるのは、
まさに生の樋口先生の語り口そのもので、
こういう本は樋口先生じゃないとかけないよなぁ、
と思って憧れます。
憲法に関心のある人や、論点に疲れている司法試験受験生
などは、ひろい視野で語りかける本書に目を通されると、
曇りが晴れる思いをなさるのだろうと思います。
いま品切れと表示されますが、入手しやすい形で
再刊されるか、増刷されるか、いずれにしても
広く読まれることを願ってやみません。
西洋立憲主義思想に関する論考を縦横に参照しながら
それが現在において有する意味を探り、
薄っぺらい議論に釘を刺して行きます。
それを決して、下品にならず、知ったかぶりにもならず、
あくまでも静かに静かに論じて行かれるのは、
まさに生の樋口先生の語り口そのもので、
こういう本は樋口先生じゃないとかけないよなぁ、
と思って憧れます。
憲法に関心のある人や、論点に疲れている司法試験受験生
などは、ひろい視野で語りかける本書に目を通されると、
曇りが晴れる思いをなさるのだろうと思います。
いま品切れと表示されますが、入手しやすい形で
再刊されるか、増刷されるか、いずれにしても
広く読まれることを願ってやみません。