子どもの心と身体について粘り強く考察を重ねてきた村瀬さんによる宮崎論。
アニメを見ながらのワクワク感、スリルにも触れてはいるけれど、中心となる視点は、食と排泄、火を持つものとしての人間、過去を継承しながら文化を伝達するということ。
生物は物を食べる、そして菌の力を借りながら消化、排泄する、その排泄物は「腐海」のように一見ネガティブなものに思われがちだが、生命を再生する役割を持っているということ。そのナイーブな外見と違って、ナウシカは火を使い、キキは「性」を感じさせる。その「火」や「性」の宮崎作品における重要さの指摘。絵本に親しんだ経験のある姉妹のみにトトロは現れるし(記憶としての文化の再現)、宮崎作品はガリバーの世界設定に通じる(文化の継承と発展)といった分析。
アニメという不可逆的な表現、その体験に対して、文芸評論のようにじっくりと、そしてアニメの表層を離れて、時にはスタジオ・ジブリという集団の性格の作品への反映をも推理したりしながらの村瀬ワールド。ユニークな読書体験でした。
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宮崎駿の「深み」へ (平凡社新書 243) 新書 – 2004/10/1
村瀬 学
(著)
今年11月に『ハウルの動く城』が公開される宮崎アニメ。『風の谷のナウシカ』から『千と千尋の神隠し』まで、主人公はいったい何を食べ、何を産み出したのかを問う画期的な宮崎論。
- ISBN-104582852432
- ISBN-13978-4582852431
- 出版社平凡社
- 発売日2004/10/1
- 言語日本語
- 本の長さ245ページ
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登録情報
- 出版社 : 平凡社 (2004/10/1)
- 発売日 : 2004/10/1
- 言語 : 日本語
- 新書 : 245ページ
- ISBN-10 : 4582852432
- ISBN-13 : 978-4582852431
- Amazon 売れ筋ランキング: - 614,411位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 601位平凡社新書
- - 774位コミック・アニメ研究
- - 3,130位映画 (本)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2010年10月6日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2009年7月10日に日本でレビュー済み
新書で出されている宮崎アニメ論の中では、その世界観の本質へ迫ろうとする「批評性」を持った数少ない良書の一つだと思う。
宮崎アニメの世界を「ことば」「食べる」「循環」「火」「暦」などのキーワードによって読み取っていく手腕は、さすがに多くの哲学書や文学作品を読み込んで来た作者ならではの思考力を感じさせる。
無論、新書という制約からか、論証が十分でなく、思いつきの域を出ないと思われる個所もあるが(特に作品世界をジブリやアニメ業界の比喩として論じる部分)、数多(あまた)ある宮崎駿論の中でも、正面からその世界観を論じようとした貴重な文献だと言える。
願わくは制約のない専門書として、著者の本格的な宮崎アニメ論が出版されることを期待したい。
宮崎アニメの世界を「ことば」「食べる」「循環」「火」「暦」などのキーワードによって読み取っていく手腕は、さすがに多くの哲学書や文学作品を読み込んで来た作者ならではの思考力を感じさせる。
無論、新書という制約からか、論証が十分でなく、思いつきの域を出ないと思われる個所もあるが(特に作品世界をジブリやアニメ業界の比喩として論じる部分)、数多(あまた)ある宮崎駿論の中でも、正面からその世界観を論じようとした貴重な文献だと言える。
願わくは制約のない専門書として、著者の本格的な宮崎アニメ論が出版されることを期待したい。
2011年4月10日に日本でレビュー済み
これは私個人の印象だが
文体が良く言えば純朴悪く言えば稚拙。
極度に感覚的で緩慢な文章を読むに堪えず数ページで
止めてしまった。
もしかしたら凄く深いところまで掘り下げているのかも知れない
良書なのかも知れない
それでも数ページで読者をウンザリさせる文章というのは
「本」にとって致命的な欠陥だと思う。
文体が良く言えば純朴悪く言えば稚拙。
極度に感覚的で緩慢な文章を読むに堪えず数ページで
止めてしまった。
もしかしたら凄く深いところまで掘り下げているのかも知れない
良書なのかも知れない
それでも数ページで読者をウンザリさせる文章というのは
「本」にとって致命的な欠陥だと思う。
2004年10月26日に日本でレビュー済み
本書は「ナウシカ」の「触れる」という仲介的行為から始まります。
次に「ラピュタ」と「ガリヴァー旅行記」が比較され、
「トトロ」における単なる「自然」と
特別な「自然」について説明されます。
また「宅急便」での「性」の描写、
「紅の豚」に描かれた制作会社の裏事情、
「もののけ姫」で「衣服」の謎について論を展開します。
そして「千と千尋」における「ゆ=喩」、
原作『ハウルの動く城』まで語らています。
筆者は宮崎作品に共通するのは
「有機的世界観」だと主張しています。
生き物は「腐」になり、それが「肥料」となって
次の生命を育てるというサイクルです。
筆者自身述べているのですが、
児童文学関連の立場に立って宮崎アニメが批評されています。
文学的に見るとこうなるのかと思いました。
次に「ラピュタ」と「ガリヴァー旅行記」が比較され、
「トトロ」における単なる「自然」と
特別な「自然」について説明されます。
また「宅急便」での「性」の描写、
「紅の豚」に描かれた制作会社の裏事情、
「もののけ姫」で「衣服」の謎について論を展開します。
そして「千と千尋」における「ゆ=喩」、
原作『ハウルの動く城』まで語らています。
筆者は宮崎作品に共通するのは
「有機的世界観」だと主張しています。
生き物は「腐」になり、それが「肥料」となって
次の生命を育てるというサイクルです。
筆者自身述べているのですが、
児童文学関連の立場に立って宮崎アニメが批評されています。
文学的に見るとこうなるのかと思いました。