松本清張の歴史観、「昭和史観」を分析した書。それを昭和前期(大正末期から2・26事件[1936年]まで)については『昭和史発掘』で、昭和中期(1945年8月のポツダム宣言受諾から1952年4月のサンフランシスコ平和条約発効まで)については『日本の黒い霧』で考察する。
前者では「同時代的」「社会的」な視点、「弱者の目」(p.76)、「生活者の視点」「反教養主義的視点」(p.77)、後者では資料を丹念に洗って事実を訴求していく「実証主義」的視点(謀略史観とは一線を画す、p.187)という特色を引き出している。
今日では、清張の推理が必ずしも妥当でなかったものもあるが、著者は言及されたことが真実だったかどうかというよりも、隠された事実に挑んでいく精神が重要であり、そこに学ばなければならない、という。
また、清張は日本人が「急角度にその性格を変える」という特徴があり、「もし・・問い直しや検証なしに21世紀に身を置くなら、私たちの国は『急角度にその性格が変わっていく』ことになるのではないか。そうした自問をくり返すために松本作品は存在している」と結んでいる(p.220)。
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
松本清張と昭和史 (平凡社新書 320) 新書 – 2006/5/11
保阪 正康
(著)
ダブルポイント 詳細
- 本の長さ216ページ
- 言語日本語
- 出版社平凡社
- 発売日2006/5/11
- ISBN-10458285320X
- ISBN-13978-4582853209
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
登録情報
- 出版社 : 平凡社 (2006/5/11)
- 発売日 : 2006/5/11
- 言語 : 日本語
- 新書 : 216ページ
- ISBN-10 : 458285320X
- ISBN-13 : 978-4582853209
- Amazon 売れ筋ランキング: - 445,243位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう
カスタマーレビュー
星5つ中3.7つ
5つのうち3.7つ
全体的な星の数と星別のパーセンテージの内訳を計算するにあたり、単純平均は使用されていません。当システムでは、レビューがどの程度新しいか、レビュー担当者がAmazonで購入したかどうかなど、特定の要素をより重視しています。 詳細はこちら
11グローバルレーティング
虚偽のレビューは一切容認しません
私たちの目標は、すべてのレビューを信頼性の高い、有益なものにすることです。だからこそ、私たちはテクノロジーと人間の調査員の両方を活用して、お客様が偽のレビューを見る前にブロックしています。 詳細はこちら
コミュニティガイドラインに違反するAmazonアカウントはブロックされます。また、レビューを購入した出品者をブロックし、そのようなレビューを投稿した当事者に対して法的措置を取ります。 報告方法について学ぶ
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2011年5月30日に日本でレビュー済み
松本清張の昭和史感は何か。
なぜ松本清張は「昭和史発掘」と「日本の黒い霧」を書いたのか、ということについて、本書は著者なりの論考を展開したものである。
ただし、それほど突き詰めて論証を試みたものではないため、清張のプライベートな事情やその生活環境への言及はほとんどなく、執筆意図を中心とした論考といったものである。
なぜ清張の「昭和史発掘」が昭和史と謳われていながら「二・二六事件」で終わっているのかとう、興味深い論考だが、基本的に「昭和史〜」と「日本の〜」の既読者対象の文章であるため、それら清張作品の内容の概略はあまりない。
清張の両作品を未読のひとは、ぜひ両作品を読んでから本書を読むことをオススメする。
本書の面白さというか著者の意図は、両作品の内容を知っていてこそ、良く理解できるものである。
清張と歴史というと、古代に思いを馳せた「古代史疑」や「清張通史」などのノンフィクションから「火の路」のような作品が思い浮かぶ。
これが近・現代史となると、ミステリ作品中にさまざまな政治的謀略を取り込んだもの、たとえば「黄色い風土」や「風の息」などが、ぐっと増えてくる。
資料などの問題もあったとは思うが、清張の関心というか体制に対する憤りがかなり近・現代史のあたりにあったのだと思わせる。
そのあたり、著者の論点は明確であり、非常に分かり易い。
清張を知るための本は数多く刊行されているが、本書は清張の昭和史観の焦点を当て、そこからの解析を試みたという点で、かなりとっつきやすいし、また非常に分かり易いものである。
なぜ松本清張は「昭和史発掘」と「日本の黒い霧」を書いたのか、ということについて、本書は著者なりの論考を展開したものである。
ただし、それほど突き詰めて論証を試みたものではないため、清張のプライベートな事情やその生活環境への言及はほとんどなく、執筆意図を中心とした論考といったものである。
なぜ清張の「昭和史発掘」が昭和史と謳われていながら「二・二六事件」で終わっているのかとう、興味深い論考だが、基本的に「昭和史〜」と「日本の〜」の既読者対象の文章であるため、それら清張作品の内容の概略はあまりない。
清張の両作品を未読のひとは、ぜひ両作品を読んでから本書を読むことをオススメする。
本書の面白さというか著者の意図は、両作品の内容を知っていてこそ、良く理解できるものである。
清張と歴史というと、古代に思いを馳せた「古代史疑」や「清張通史」などのノンフィクションから「火の路」のような作品が思い浮かぶ。
これが近・現代史となると、ミステリ作品中にさまざまな政治的謀略を取り込んだもの、たとえば「黄色い風土」や「風の息」などが、ぐっと増えてくる。
資料などの問題もあったとは思うが、清張の関心というか体制に対する憤りがかなり近・現代史のあたりにあったのだと思わせる。
そのあたり、著者の論点は明確であり、非常に分かり易い。
清張を知るための本は数多く刊行されているが、本書は清張の昭和史観の焦点を当て、そこからの解析を試みたという点で、かなりとっつきやすいし、また非常に分かり易いものである。
2024年4月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
松本清張の「日本の黒い霧」「昭和史発掘」を筆者がただ読んだ後の感想文である。こんな本を平凡社が出すことが信じられない。全くの期待外れ。
2022年12月9日に日本でレビュー済み
・帯に、大きく「清張史観」の文字。それを追求する書、と謳うが、結論から申せば、誤解を与える表現、と云わざるを得ない。
何故なら著者も引用しているように、清張氏は「わたしの文章は資料と資料の間をつなぐ説明であって、決して思い上がった『解説』ではない。ときに感想を書いているが、それはわたしの随想的な断片にとどめ、資料の印象を拘束しないようにつとめている」としている。対し著者は本書の中で「清張史観は、事実を収集し、関係者の肉声を確かめ、資料を見つめ、それを分析し、その理解を平易に語るという姿勢こそ、歴史を語り得る条件だと教えたのである」と記すが、ここでの内容からして、一般的意味での「史観」という表現は相応しくない。また同じ文の前段で「皇国史観のような感性的な史観は自然と消滅していく宿命を持ち」と対比的な表現をなし、云わずもがなのことまでして、二重の意味で誤りを犯している。
清張氏の記述に当たっての膨大な調査や周到な取り組み、更にはそれらから引き出した理解が、それまでの歴史書等を凌駕するものであったとしても、氏自身の自己規定は尊重されなければならないし、それ故に評価が損なわれるものでもなく、増して要らぬ論争に発展し兼ねないような、贔屓の引き倒しに類する表現がなされていることを、痛く残念に思う。
本書は清張氏が、敗戦までの「昭和前期」と占領期の「昭和中期」をどう観ていたか、著者の評価を含め記すものであるが、「前期」に比し「中期」にはバイアスが掛かり易く、著者の思いに筆致の揺れもみられて、読み取りに腐心を要す嫌いなしとしない。また僅か数年の隔たりであるが、「昭和史発掘」と「日本の黒い霧」との連続性や非連続性について、清張氏の歴史への向かい方などを軸に、記述があってもよかったのでは、と思う。
何故なら著者も引用しているように、清張氏は「わたしの文章は資料と資料の間をつなぐ説明であって、決して思い上がった『解説』ではない。ときに感想を書いているが、それはわたしの随想的な断片にとどめ、資料の印象を拘束しないようにつとめている」としている。対し著者は本書の中で「清張史観は、事実を収集し、関係者の肉声を確かめ、資料を見つめ、それを分析し、その理解を平易に語るという姿勢こそ、歴史を語り得る条件だと教えたのである」と記すが、ここでの内容からして、一般的意味での「史観」という表現は相応しくない。また同じ文の前段で「皇国史観のような感性的な史観は自然と消滅していく宿命を持ち」と対比的な表現をなし、云わずもがなのことまでして、二重の意味で誤りを犯している。
清張氏の記述に当たっての膨大な調査や周到な取り組み、更にはそれらから引き出した理解が、それまでの歴史書等を凌駕するものであったとしても、氏自身の自己規定は尊重されなければならないし、それ故に評価が損なわれるものでもなく、増して要らぬ論争に発展し兼ねないような、贔屓の引き倒しに類する表現がなされていることを、痛く残念に思う。
本書は清張氏が、敗戦までの「昭和前期」と占領期の「昭和中期」をどう観ていたか、著者の評価を含め記すものであるが、「前期」に比し「中期」にはバイアスが掛かり易く、著者の思いに筆致の揺れもみられて、読み取りに腐心を要す嫌いなしとしない。また僅か数年の隔たりであるが、「昭和史発掘」と「日本の黒い霧」との連続性や非連続性について、清張氏の歴史への向かい方などを軸に、記述があってもよかったのでは、と思う。
2007年1月21日に日本でレビュー済み
黒い霧とか 昭和史発掘をすでに読み また彼の歴史モノの小説に親しんだ人には 確かに うーんですが まだ未読の人には 入門書代わりになって いいのではないかとおもうが 現時点での 清張史観についての評価が 著者の説明では いまいちわからないので これは もうもうすこし なんとかして欲しかった。
ところで 国庫からくすねた金で 事業を発展させた会社って どこでしょうか?ヒント教えてほしいです
ところで 国庫からくすねた金で 事業を発展させた会社って どこでしょうか?ヒント教えてほしいです
2022年3月4日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
本書を読んで、保阪氏は清張の史観が、新しい世代に対して「事実を収集し、関係者の肉声を確かめ、資料を見つめ、それを分析し、その理解を平易に語るという姿勢こそ、歴史を語り得る条件だと教えたのである。」と記しているが、これはほぼ保阪氏の執筆の姿勢に重なるもので、清張への評価である。
が、一方で「日本の黒い霧」の中の「白鳥事件」の結論に対して、「なるほどという感じがする。しかし、もうひとつ説得力をもたないのはなぜか。松本の着想や推理には抜きんでたものがあるが、それにしても説得力をもつ史実が浮かびあがってこないことである。この点に私は戸惑いを覚えるが、このような着想や推理だけで事件を見ていくことに読者としてもいささか疲労を感じるのではないだろうか。」との批判も含まれている。
「日本の黒い霧」に取り上げられた12の事件が、ことごとくアメリカの謀略という松本の論理には一寸抵抗を覚えるのだが、保阪氏は「12の事件をあらためて検証したうえで、史実として定着しうるのかを精査していくことが重要である。」としている。同感である。
いずれにせよ戦前、戦中、敗戦までに起こった多くの不可解な事件を「昭和史発掘」、「日本の黒い霧」として著した松本清張へ的確な評価を与えている点に大変共感を覚えた。
が、一方で「日本の黒い霧」の中の「白鳥事件」の結論に対して、「なるほどという感じがする。しかし、もうひとつ説得力をもたないのはなぜか。松本の着想や推理には抜きんでたものがあるが、それにしても説得力をもつ史実が浮かびあがってこないことである。この点に私は戸惑いを覚えるが、このような着想や推理だけで事件を見ていくことに読者としてもいささか疲労を感じるのではないだろうか。」との批判も含まれている。
「日本の黒い霧」に取り上げられた12の事件が、ことごとくアメリカの謀略という松本の論理には一寸抵抗を覚えるのだが、保阪氏は「12の事件をあらためて検証したうえで、史実として定着しうるのかを精査していくことが重要である。」としている。同感である。
いずれにせよ戦前、戦中、敗戦までに起こった多くの不可解な事件を「昭和史発掘」、「日本の黒い霧」として著した松本清張へ的確な評価を与えている点に大変共感を覚えた。