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新書491オホーツクの古代史 (平凡社新書 491) 新書 – 2009/10/15
菊池 俊彦
(著)
- 本の長さ207ページ
- 言語日本語
- 出版社平凡社
- 発売日2009/10/15
- ISBN-104582854915
- ISBN-13978-4582854916
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登録情報
- 出版社 : 平凡社 (2009/10/15)
- 発売日 : 2009/10/15
- 言語 : 日本語
- 新書 : 207ページ
- ISBN-10 : 4582854915
- ISBN-13 : 978-4582854916
- Amazon 売れ筋ランキング: - 460,952位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2021年6月13日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
オホーツク文化と続縄文文化の関係調査を調査している中で、菊池先生のオホーツク文化の解説が簡潔でよく理解できた。北海道はそれ以前からオホーツクとの交流があったはずなので、なぜ海洋性のオホーツク文化が3世紀に急にでき、5世紀に北海道にきたかを調査していただきたい。(それ以前でも内陸生活はあって、北海道に伝えられて、縄文文化となっていたと考えています)
2013年12月10日に日本でレビュー済み
北海道に住んでいる私であるけれど、恥ずかしながら本書の主題となっている「オホーツク文化」についてはあまり知識がなく、他の道民の方々も、「アイヌ文化」と比べ、馴染みの薄いものではなかろうか。著者の菊池俊彦・北海道大学名誉教授(文学博士)は、北東アジアの古代史、考古学研究の第一人者である。当著は、菊池博士が中国の文献記録や遺構・遺物の検出による考古学的な知見、さらに先達の論究などに基づき、環オホーツク海の古代文化やその担い手たる先住民の実相を明らかにせんとした、一般向けの平易な解説書であり、北海道で暮らす人間にとって、一度は目を通してよい新書かもしれない。
北海道の「文化」と言えば、先ず思い浮かべるのが前述のアイヌのそれであろう。ただ、本書では「アイヌ文化」と「オホーツク文化」との関連などについて、紙幅の関係があったのかもしれないが、具体的に触れておらず、この点に、私はやや物足りなさを感じた。というのも、アイヌを「縄文人の遺民」とする見方があるけれども、彼らが形成してきた文化は、おそらく「縄文文化」や「オホーツク文化」あるいは大陸から入ってきた「文化」の“ハイブリッド”と考えた方がよいと思われ、「アイヌ文化」と「オホーツク文化」の異同と連関を知りたかったからだ。それはともかく、以下の箇所に、私は正直驚いてしまった。
それは『元史』世祖本紀にある、至元元(1264)年11月、「吉里迷(キツリメイ)」の訴えに応じて、モンゴル軍がサハリンに遠征し「骨嵬(コツガイ)」を討った、という記述だ(pp.168-170)。最初に、このモンゴル(元)による複数回にわたる征討(又は懐柔)について、単純に驚いてしまう。つまり、樺太までモンゴルの手が及んでいた、という史実に…。次に、瞠目すべきは、骨嵬とはアイヌのことを指称しているらしく、細説しないが、彼らは吉里迷にとって侵入者である、という点だ。そして、この吉里迷こそギリャーク(ニヴフ民族の旧称)であり、この伝でゆけば、元々樺太にはアイヌ民族は存在していなかったことになる…。
話がアイヌの問題に逸れてしまったので、元に戻そう。菊池博士は、環オホーツク海の文化や民族の考究にあたって、中国唐代の『通典(ツテン)』等の歴史書に登場する「流鬼国」や「夜叉国」に着目し、発掘された種々の古代遺物等の検証も行いながら、それらの所在を探求する。その結果、「流鬼」はサハリンのオホーツクの人たち(ニヴフ民族)、「夜叉」はオホーツク北岸の古コリャーク文化の人たち(コリャーク民族)と、博士は比定する。「オホーツク文化は謎に満ちた古代文化」(p.201)であったけれども、漸く「環オホーツク海の古代文化を見渡せる」(p.202)ような状況になってきた。今後の更なる研究の深化を期待したい。
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北海道に住んでいる私であるけれど、恥ずかしながら本書の主題となっている「オホーツク文化」についてはあまり知識がなく、他の道民の方々も、「アイヌ文化」と比べ、馴染みの薄いものではなかろうか。著者の菊池俊彦・北海道大学名誉教授(文学博士)は、北東アジアの古代史、考古学研究の第一人者である。当著は、菊池博士が中国の文献記録や遺構・遺物の検出による考古学的な知見、さらに先達の論究などに基づき、環オホーツク海の古代文化やその担い手たる先住民の実相を明らかにせんとした、一般向けの平易な解説書であり、北海道で暮らす人間にとって、一度は目を通してよい新書かもしれない。
北海道の「文化」と言えば、先ず思い浮かべるのが前述のアイヌのそれであろう。ただ、本書では「アイヌ文化」と「オホーツク文化」との関連などについて、紙幅の関係があったのかもしれないが、具体的に触れておらず、この点に、私はやや物足りなさを感じた。というのも、アイヌを「縄文人の遺民」とする見方があるけれども、彼らが形成してきた文化は、おそらく「縄文文化」や「オホーツク文化」あるいは大陸から入ってきた「文化」の“ハイブリッド”と考えた方がよいと思われ、「アイヌ文化」と「オホーツク文化」の異同と連関を知りたかったからだ。それはともかく、以下の箇所に、私は正直驚いてしまった。
それは『元史』世祖本紀にある、至元元(1264)年11月、「吉里迷(キツリメイ)」の訴えに応じて、モンゴル軍がサハリンに遠征し「骨嵬(コツガイ)」を討った、という記述だ(pp.168-170)。最初に、このモンゴル(元)による複数回にわたる征討(又は懐柔)について、単純に驚いてしまう。つまり、樺太までモンゴルの手が及んでいた、という史実に…。次に、瞠目すべきは、骨嵬とはアイヌのことを指称しているらしく、細説しないが、彼らは吉里迷にとって侵入者である、という点だ。そして、この吉里迷こそギリャーク(ニヴフ民族の旧称)であり、この伝でゆけば、元々樺太にはアイヌ民族は存在していなかったことになる…。
話がアイヌの問題に逸れてしまったので、元に戻そう。菊池博士は、環オホーツク海の文化や民族の考究にあたって、中国唐代の『通典(ツテン)』等の歴史書に登場する「流鬼国」や「夜叉国」に着目し、発掘された種々の古代遺物等の検証も行いながら、それらの所在を探求する。その結果、「流鬼」はサハリンのオホーツクの人たち(ニヴフ民族)、「夜叉」はオホーツク北岸の古コリャーク文化の人たち(コリャーク民族)と、博士は比定する。「オホーツク文化は謎に満ちた古代文化」(p.201)であったけれども、漸く「環オホーツク海の古代文化を見渡せる」(p.202)ような状況になってきた。今後の更なる研究の深化を期待したい。
2009年10月31日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
〜オホーツク文化は謎に満ちた古代文化〜
北方諸民族の実像に迫る本書。ほとんど知られていない『オホーツクの古代史』を解きほぐす。
北海道の北東部、千島列島、サハリン、カムチャツカ半島などに囲まれた環オホーツク海地域。紀元3世紀から13世紀頃まで、豊饒の海からもたらされる恵みを糧とし、大陸との交流・交易を活発におこなう人々が存在した。「流鬼国」「夜叉国」〜謎に満ちた「環オホーツク海」その古代文化の輪郭を本書は初めて描いた。
著者は北海道大学文学部名誉教授。97年北方文化の研究で濱田青陵賞の受賞者。これまで一般には知られていない古代北方文化を紹介している。
この領域を統治した国としては、古代中国の歴史書に「流鬼国」「夜叉国」という国があったとされるが、どこにあったかを第1章〜第5章にわたって逐次検証している。
現存文字史料は非常に乏しく、考古学や民族誌の資料にもとづいて、諸学説をふまえながら丹念に考察推理している。農耕に基づくエネルギー生産の発展段階や国家形成を基準にする歴史学からは漏れてきたものを独自の視点で探求していて、注目される。
北方諸民族の実像に迫る本書。ほとんど知られていない『オホーツクの古代史』を解きほぐす。
北海道の北東部、千島列島、サハリン、カムチャツカ半島などに囲まれた環オホーツク海地域。紀元3世紀から13世紀頃まで、豊饒の海からもたらされる恵みを糧とし、大陸との交流・交易を活発におこなう人々が存在した。「流鬼国」「夜叉国」〜謎に満ちた「環オホーツク海」その古代文化の輪郭を本書は初めて描いた。
著者は北海道大学文学部名誉教授。97年北方文化の研究で濱田青陵賞の受賞者。これまで一般には知られていない古代北方文化を紹介している。
この領域を統治した国としては、古代中国の歴史書に「流鬼国」「夜叉国」という国があったとされるが、どこにあったかを第1章〜第5章にわたって逐次検証している。
現存文字史料は非常に乏しく、考古学や民族誌の資料にもとづいて、諸学説をふまえながら丹念に考察推理している。農耕に基づくエネルギー生産の発展段階や国家形成を基準にする歴史学からは漏れてきたものを独自の視点で探求していて、注目される。
2015年3月21日に日本でレビュー済み
本書の主題は以下二つで、それが密接に絡み合う。
1.7世紀に靺鞨使節に同行して唐に来朝した「流鬼」人とその北方にある「夜叉」人
2.北海道のオホーツク海沿岸に9世紀頃まで遺跡を残していたオホーツク文化人
詳細になされる検証は本書に譲るが、著者が結論として述べる推察はこうである。
・流鬼人=サハリンに居住していたニブフ人(旧称・ギリャーク人)
・オホーツク文化人=北海道北部沿岸に居住していたニブフ人
・夜叉人=カムチャッカ半島の付け根から西にかけて居住していたコリャーク人
つまり唐代においてはニブフ人の祖先が、靺鞨と接するアムール河口付近から、
サハリンを経て北海道北岸さらには千島列島にまで割拠した漁労民だったということ。
また、1000km前後離れたコリャーク人と交易関係を持っていたということでもある。
そして、オホーツク文化人のうち北海道にいたものは9世紀から13世紀にかけて、
縄文人末裔の擦文文化人に吸収され、両者の文化を併せ持つアイヌ民族が登場する。
彼らは元代にはサハリンに侵入してニブフの脅威となり、庇護者の元軍に撃退されている。
本書で描かれる以上のような論旨は、その後の北大の研究で補強されつつあるようだ。
オホーツク文化人の遺骨から採取したハプログループY遺伝子を解析した結果、
ニブフ人と最も近縁であり、かつアイヌ人の20%も同遺伝子を持っていると判明したのだ。
かつて存在した、北海道北岸部を含むかなりの広域に拡がっていた文化圏。
その後のアイヌとの関係性なども含めて、なかなか興味深いテーマの入口として適した一冊。
1.7世紀に靺鞨使節に同行して唐に来朝した「流鬼」人とその北方にある「夜叉」人
2.北海道のオホーツク海沿岸に9世紀頃まで遺跡を残していたオホーツク文化人
詳細になされる検証は本書に譲るが、著者が結論として述べる推察はこうである。
・流鬼人=サハリンに居住していたニブフ人(旧称・ギリャーク人)
・オホーツク文化人=北海道北部沿岸に居住していたニブフ人
・夜叉人=カムチャッカ半島の付け根から西にかけて居住していたコリャーク人
つまり唐代においてはニブフ人の祖先が、靺鞨と接するアムール河口付近から、
サハリンを経て北海道北岸さらには千島列島にまで割拠した漁労民だったということ。
また、1000km前後離れたコリャーク人と交易関係を持っていたということでもある。
そして、オホーツク文化人のうち北海道にいたものは9世紀から13世紀にかけて、
縄文人末裔の擦文文化人に吸収され、両者の文化を併せ持つアイヌ民族が登場する。
彼らは元代にはサハリンに侵入してニブフの脅威となり、庇護者の元軍に撃退されている。
本書で描かれる以上のような論旨は、その後の北大の研究で補強されつつあるようだ。
オホーツク文化人の遺骨から採取したハプログループY遺伝子を解析した結果、
ニブフ人と最も近縁であり、かつアイヌ人の20%も同遺伝子を持っていると判明したのだ。
かつて存在した、北海道北岸部を含むかなりの広域に拡がっていた文化圏。
その後のアイヌとの関係性なども含めて、なかなか興味深いテーマの入口として適した一冊。
2015年5月12日に日本でレビュー済み
一般には、あまり知られていない、オホーツクの古代史についての本。
中国の史書に記された、流鬼国とは、どこのことか、というテーマを中心に、歴史の流れに沿って、様々な学説を紹介していく。
最後には、決定的とも言える証拠を提示しながら、筆者が独自の見解を述べるが、まるで、推理小説を読んでいるかのように、面白い。
それにしても、国家を持たない民族の悲しさを、これほど痛切に感じさせる本は、他にはないのではないか。
中国の史書に記された、流鬼国とは、どこのことか、というテーマを中心に、歴史の流れに沿って、様々な学説を紹介していく。
最後には、決定的とも言える証拠を提示しながら、筆者が独自の見解を述べるが、まるで、推理小説を読んでいるかのように、面白い。
それにしても、国家を持たない民族の悲しさを、これほど痛切に感じさせる本は、他にはないのではないか。
2015年12月27日に日本でレビュー済み
オホーツク文化。北海道のオホーツク海沿岸には、北からやってきた人々が漁労を生業として生活していた。今もって、どんな人々が遺跡を残したのかわからない謎の文化だと思っていた。
ところが、彼らはアムール川河口域から、サハリン、北海道かけて住んでいたギリャーク人で、古代中国の歴史書に流鬼国として記録された人々だった。さらに、オホーツク海北岸の夜叉国の人々と密接に交流し、古代中国とも交渉を持っていた。
流鬼国の王子は長安に向かい、宋銭はオホーツク海の北岸へ、あるいは北海道へと手渡され、モンゴル軍はサハリンでアイヌと戦い、セイウチの牙はカムチャツカ半島の根元から北海道や中国へと運ばれていく。これまでイメージできなかった環オホーツク海での人とモノの交流が浮かび上がってくる。
やがて、彼らは北海道からは消えていく。しかし、アイヌ文化の中に彼らの足跡が残っているに違いない。
ところが、彼らはアムール川河口域から、サハリン、北海道かけて住んでいたギリャーク人で、古代中国の歴史書に流鬼国として記録された人々だった。さらに、オホーツク海北岸の夜叉国の人々と密接に交流し、古代中国とも交渉を持っていた。
流鬼国の王子は長安に向かい、宋銭はオホーツク海の北岸へ、あるいは北海道へと手渡され、モンゴル軍はサハリンでアイヌと戦い、セイウチの牙はカムチャツカ半島の根元から北海道や中国へと運ばれていく。これまでイメージできなかった環オホーツク海での人とモノの交流が浮かび上がってくる。
やがて、彼らは北海道からは消えていく。しかし、アイヌ文化の中に彼らの足跡が残っているに違いない。
2010年3月22日に日本でレビュー済み
流鬼国がサハリンかカムチャッカかという議論の紹介で始まる。
網走で発見された縄文のない黒褐色の土器、その後、千島列島、サハリンでも類似の発見があったとのこと。
オホーツクの文化史に興味がつきない。
網走で発見された縄文のない黒褐色の土器、その後、千島列島、サハリンでも類似の発見があったとのこと。
オホーツクの文化史に興味がつきない。
2013年8月9日に日本でレビュー済み
高校生の頃、博物館で坤輿万国全図を見ました。
昔の地図って、よくわからない部分は想像で補って描いていたりします。坤輿万国全図では、オーストラリアは南極大陸とつながって描かれており、カスピ海とアラル海は合わさって大きな一つの湖になっており、その北には「一目國」と言う、どうにも実在性が疑わしい国の名前が書かれていました。出典がヘロドトスの歴史で、そこに出てくる「アリマスポイ人」である、というのは相当後になって知りました。
さて、その坤輿万国全図には、北極海に実在しない島がいくつも描かれ、そこには「夜人國」と「流鬼」の文字が。字面にかなりインパクトがあるので、「昔の人の想像力はインパクトがあるな」と思って覚えていました。
そんな記憶を抱えてこの本を読んでビックリ。「夜人」ではなく「夜叉」でしたが、どちらも中国の史書に記された実在する民族だというではありませんか。しかも、それぞれの朝貢の様子、推測される住地などを、様々な記録を駆使して可能な限り鮮明に描いています。夜叉からの朝貢の品をセイウチの牙と比定し、セイウチの生息域から夜叉国の場所をオホーツク海北岸のコリヤークの住地と比定し、流鬼国はサハリンのニブヒたちと比定しています。その論証の鮮やかさもさることながら、説明に使われている地名・民族名のマニアックさ、出てくるエピソードの奥深さ(例えば、流鬼国の場所にはサハリン説とカムチャッカ説があるが、流鬼がブタの皮の衣服を着たという記録があることから、カムチャッカでは寒すぎて豚の飼育が困難なことを考えると、流鬼はサハリンの住人でなければならない、など)などは、私のような微妙なマニアをうならせるには充分でした。
この本は、世界史資料集の隅っこに載っていて誰も気づかないような小さなコラムや地名(トラぺザス王国とか、粛慎とか、シュリーヴィジャヤとか、誰か覚えていますか?)が気になったり、そういうものを読んだりすることが好きな人には大変お勧めです。そうでなければこういった本を読むのは時間のムダです。しかし、このレビューで書いたような薄いところをつく話が面白いと思う人は、絶対に買って損はしないと思います。
昔の地図って、よくわからない部分は想像で補って描いていたりします。坤輿万国全図では、オーストラリアは南極大陸とつながって描かれており、カスピ海とアラル海は合わさって大きな一つの湖になっており、その北には「一目國」と言う、どうにも実在性が疑わしい国の名前が書かれていました。出典がヘロドトスの歴史で、そこに出てくる「アリマスポイ人」である、というのは相当後になって知りました。
さて、その坤輿万国全図には、北極海に実在しない島がいくつも描かれ、そこには「夜人國」と「流鬼」の文字が。字面にかなりインパクトがあるので、「昔の人の想像力はインパクトがあるな」と思って覚えていました。
そんな記憶を抱えてこの本を読んでビックリ。「夜人」ではなく「夜叉」でしたが、どちらも中国の史書に記された実在する民族だというではありませんか。しかも、それぞれの朝貢の様子、推測される住地などを、様々な記録を駆使して可能な限り鮮明に描いています。夜叉からの朝貢の品をセイウチの牙と比定し、セイウチの生息域から夜叉国の場所をオホーツク海北岸のコリヤークの住地と比定し、流鬼国はサハリンのニブヒたちと比定しています。その論証の鮮やかさもさることながら、説明に使われている地名・民族名のマニアックさ、出てくるエピソードの奥深さ(例えば、流鬼国の場所にはサハリン説とカムチャッカ説があるが、流鬼がブタの皮の衣服を着たという記録があることから、カムチャッカでは寒すぎて豚の飼育が困難なことを考えると、流鬼はサハリンの住人でなければならない、など)などは、私のような微妙なマニアをうならせるには充分でした。
この本は、世界史資料集の隅っこに載っていて誰も気づかないような小さなコラムや地名(トラぺザス王国とか、粛慎とか、シュリーヴィジャヤとか、誰か覚えていますか?)が気になったり、そういうものを読んだりすることが好きな人には大変お勧めです。そうでなければこういった本を読むのは時間のムダです。しかし、このレビューで書いたような薄いところをつく話が面白いと思う人は、絶対に買って損はしないと思います。