江戸という大都市で、当時隆盛を極めた寺の「実像」を描いている。
増上寺や寛永寺などは幕府からの篤い保護を競って得ることで権威を高め、
関東近隣の寺院も巧みな広告戦略を立てて、出開帳を行い信者を広げた。
大奥に近づき、葵ブランドを誇示して急成長する寺があるかと思えば、
金融業を営んだり、エンタメ会場として遊女屋まで利用して集客を企む寺も…。
信者団体である講に進物をして気を遣ったり、参拝に来た信者にランク付けして
料理の接待を行う様子まで見ると、ほとんどサービス業である。
いかに幕府や大名、町人に食い込んで、寺として安定した収入を得ることに
細かく腐心していたかを見るにつけ、俗世間を避けてご本尊を奉り
お経を上げているだけではどうにもならなかった経済上の必然性が窺われる。
それを娯楽として楽しんだ江戸の町人文化の華やぎも目に浮かぶ。
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新書495大江戸お寺繁昌記 (平凡社新書 495) 新書 – 2009/11/13
安藤 優一郎
(著)
- 本の長さ215ページ
- 言語日本語
- 出版社平凡社
- 発売日2009/11/13
- ISBN-104582854958
- ISBN-13978-4582854954
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登録情報
- 出版社 : 平凡社 (2009/11/13)
- 発売日 : 2009/11/13
- 言語 : 日本語
- 新書 : 215ページ
- ISBN-10 : 4582854958
- ISBN-13 : 978-4582854954
- Amazon 売れ筋ランキング: - 436,297位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2009年12月20日に日本でレビュー済み
2010年2月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
とても活き活きとした江戸時代のお寺イメージを提供してくれる好著である。個人的には、おおよそ2通りの読み方ができるように思われた。
ひとつは、近世寺院の驚くほどの世俗性を鮮明に理解できるということ。将軍家や大名、さらには大奥といった権威に取り入り媚びを売り、支援金獲得に奔走する大寺院の僧侶たちがいる一方、出開帳や賭博工業などのイベントや、境内での飲食業や娯楽産業やアイドル文化の育成、あるいは各種の講の組織を通して、機を見るに敏な様々なお寺・僧侶たちが、広く民衆を巻き込む集客×収益アップを追求した。日本仏教は近世の「葬式仏教」によって制度化し世俗化し堕落した、と一部の知識人は今なお言いたがるが、この「葬式仏教」とは別の意味で世俗に流れながらも、しかし独特の「国民」的な人心掌握術を、江戸の寺院仏教の当事者たちは必死で開発しようと努力していたわけである。
もうひとつ、終わりの若手僧侶氏との対談からはっきりと示唆されるように、本書は現代のお寺の可能性を問い直すための書としても存在している。さすがに役人や政治家への秘密裏な働きかけや賭博の実施などはマズイだろうが、しかし江戸の寺院がもっていた娯楽性や広告熱は、現在のお寺でも再起動することが不可能ではない。むろん、社会状況が違うので江戸時代と同じことをやってもなかなかうまくいかないだろうが、現代のお寺だから「売る」ことのできるサービスや興行のあり方があるだろう、と考えるためのヒントを与えてくれる、実践的な歴史の本であるという印象があった。
ひとつは、近世寺院の驚くほどの世俗性を鮮明に理解できるということ。将軍家や大名、さらには大奥といった権威に取り入り媚びを売り、支援金獲得に奔走する大寺院の僧侶たちがいる一方、出開帳や賭博工業などのイベントや、境内での飲食業や娯楽産業やアイドル文化の育成、あるいは各種の講の組織を通して、機を見るに敏な様々なお寺・僧侶たちが、広く民衆を巻き込む集客×収益アップを追求した。日本仏教は近世の「葬式仏教」によって制度化し世俗化し堕落した、と一部の知識人は今なお言いたがるが、この「葬式仏教」とは別の意味で世俗に流れながらも、しかし独特の「国民」的な人心掌握術を、江戸の寺院仏教の当事者たちは必死で開発しようと努力していたわけである。
もうひとつ、終わりの若手僧侶氏との対談からはっきりと示唆されるように、本書は現代のお寺の可能性を問い直すための書としても存在している。さすがに役人や政治家への秘密裏な働きかけや賭博の実施などはマズイだろうが、しかし江戸の寺院がもっていた娯楽性や広告熱は、現在のお寺でも再起動することが不可能ではない。むろん、社会状況が違うので江戸時代と同じことをやってもなかなかうまくいかないだろうが、現代のお寺だから「売る」ことのできるサービスや興行のあり方があるだろう、と考えるためのヒントを与えてくれる、実践的な歴史の本であるという印象があった。
2009年12月14日に日本でレビュー済み
最近、京都や奈良の大きなお寺が境内でライブをやったりして
話題になっていますよね。
ああいう報道を見て「最近お寺もファン作りのためにがんばってるなー」なんて思っていたら
江戸のお寺の方がはるかにがんばってました!!
境内地を利用してのエンタメ興行はもちろんのこと、
宝くじや金融業までやっていたのには驚きました。
お寺の格を上げるための、大奥へのアプローチ作戦や
将軍の菩提寺になるための争奪戦が繰り広げられていたなんて、
目からうろこです。
「お寺は総合企業だった!」という著者の視点が現代的でおもしろく、
堅苦しい歴史書にはないような、今どきの感覚で江戸のお寺を知ることができます。
巻末の、インターネット寺院「彼岸寺」のお坊さんとの対談も
「なるほど」「確かに〜!」の連発でした。
お寺に関心のある方、江戸時代に興味のある方、
東京散歩が好きな方には特にお勧めしたい一冊です。
話題になっていますよね。
ああいう報道を見て「最近お寺もファン作りのためにがんばってるなー」なんて思っていたら
江戸のお寺の方がはるかにがんばってました!!
境内地を利用してのエンタメ興行はもちろんのこと、
宝くじや金融業までやっていたのには驚きました。
お寺の格を上げるための、大奥へのアプローチ作戦や
将軍の菩提寺になるための争奪戦が繰り広げられていたなんて、
目からうろこです。
「お寺は総合企業だった!」という著者の視点が現代的でおもしろく、
堅苦しい歴史書にはないような、今どきの感覚で江戸のお寺を知ることができます。
巻末の、インターネット寺院「彼岸寺」のお坊さんとの対談も
「なるほど」「確かに〜!」の連発でした。
お寺に関心のある方、江戸時代に興味のある方、
東京散歩が好きな方には特にお勧めしたい一冊です。
2015年1月17日に日本でレビュー済み
江戸期の寺院の営業努力というか、経済的成功のための涙ぐましい活動について、多方面から紹介したもの。
増上寺と寛永寺による将軍の菩提寺になるための争い、出開帳、大奥との関係でのしあがろうとした寺、幕府からの助成金、イベント会場としての利用、富くじの開催、講のことなどが取り上げられている。
欲望に満ちた生々しい空間であると同時に、寺というものが武士や庶民と密接な関係をもち、生き生きと躍動していたこともわかり、現在の「葬式仏教」的な寺の在り方へも一石を投じている。
増上寺と寛永寺による将軍の菩提寺になるための争い、出開帳、大奥との関係でのしあがろうとした寺、幕府からの助成金、イベント会場としての利用、富くじの開催、講のことなどが取り上げられている。
欲望に満ちた生々しい空間であると同時に、寺というものが武士や庶民と密接な関係をもち、生き生きと躍動していたこともわかり、現在の「葬式仏教」的な寺の在り方へも一石を投じている。
2009年12月9日に日本でレビュー済み
お寺、といって思い浮かべるのは、
「お葬式」くらいのもの。
金閣寺や浅草寺、善光寺などは、
どちらかというと「観光地」といった印象で、
あまりお寺という感じがしない。
だが、その「観光地っぽい」お寺のほうが、
そもそものお寺だったとしたら(すべてではないだろうが)、
ちょっと驚きではある。
この本では、
現代のように、地域の施設もなければ、
ところによっては金融屋もないような
そんな江戸時代のお寺が、
いかに「多目的」に使われ、賑わっていたか
といった話が書かれている。
ある意味、お寺が経済や人のネットワークを
支える基盤となっていたことがよくわかる一冊!
「お葬式」くらいのもの。
金閣寺や浅草寺、善光寺などは、
どちらかというと「観光地」といった印象で、
あまりお寺という感じがしない。
だが、その「観光地っぽい」お寺のほうが、
そもそものお寺だったとしたら(すべてではないだろうが)、
ちょっと驚きではある。
この本では、
現代のように、地域の施設もなければ、
ところによっては金融屋もないような
そんな江戸時代のお寺が、
いかに「多目的」に使われ、賑わっていたか
といった話が書かれている。
ある意味、お寺が経済や人のネットワークを
支える基盤となっていたことがよくわかる一冊!