杉浦康平の仕事を手っとり早く知るには好適な本。杉浦も「歴史」の一部になるつつあることが実感され、感慨を覚える。しかし、この著者は杉浦に心酔するあまり、オマージュに終始していて批評がない。駄作もあれば、安直な自己模倣と思われるデザインもあるし、人名をプラス記号で繋ぐ無神経や、場合によっては強制的にテクストを改変することも要求する「作家性」、何より締切やコストを顧慮しないわがままな進行ぶりに辟易した著者や編集者も少なくないはずだ。光だけでなく影も論じなければ十分ではないだろう。
杉浦の文業について一言。デザイナーのなかでは抜群の読書家であり、また書物蒐集家であることは認めるが、文才があるのかどうか。盟友松岡正剛に似て、多読が必ずしも見識に結びついていないのだ。凡庸な大言壮語やステレオタイプな修辞が多い文章である。杉浦は、音楽家や建築家ほどには、著作家や編集者には恵まれなかった人かもしれない。
平凡社新書は、ちくま新書同様、不思議なことに読めるものがほとんどないが、本書は数少ない例外だと言ったら、褒めすぎになるだろうか。地味ではあっても、一応基本的な知識を提供するこの種の入門書あるいはガイドを揃えることを心がけるべきである。
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杉浦康平のデザイン (平凡社新書 511) 新書 – 2010/2/16
臼田 捷治
(著)
ダブルポイント 詳細
杉浦康平はデザイン界の逸材と言われ、一貫して独創的な手法を切り拓いてきた。また、ウルム造形大学、インド旅行での経験から、アジアの伝統文化に目覚め、広くアジアの図像を探求し、曼荼羅のほか、余人の及ばない成果を展開している。その半世紀にわたる活動を浮き彫りにした初めての書。
- 本の長さ254ページ
- 言語日本語
- 出版社平凡社
- 発売日2010/2/16
- ISBN-104582855113
- ISBN-13978-4582855111
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商品の説明
著者について
1943年長野県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。編集の仕事に従事し、雑誌『デザイン』(美術出版社)編集長などをつとめる。現在、文字文化・グラフィックデザインの分野の執筆活動に携わり、女子美術大学非常勤講師。著書に『装幀時代』(晶文社)、『現代装幀』(美学出版)、『装幀列伝』(平凡社新書)、編集協力に『日本のブックデザイン1946-95』(大日本印刷)などがある。2004年の「疾風迅雷――杉浦康平雑誌デザインの半世紀」展では監修をつとめる。
登録情報
- 出版社 : 平凡社 (2010/2/16)
- 発売日 : 2010/2/16
- 言語 : 日本語
- 新書 : 254ページ
- ISBN-10 : 4582855113
- ISBN-13 : 978-4582855111
- Amazon 売れ筋ランキング: - 260,553位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 227位平凡社新書
- - 1,069位グラフィックデザイン (本)
- カスタマーレビュー:
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