20世紀には、世界史上の大事件が二つ起こっている。一つは世界初の社会主義国家の誕生であり、もう一つはその国及びその友好国家群の消滅であり、崩壊である。
本書はその二つ目の大事件を引き起こした1989年という年がいかなる年であったのか、それを引き起こしたそもそもの要因はどこにあるのか、その歴史的背景及びそれに関連する重要な人物を描くものである。
著者が「あとがき」でも述べているように、本書は多くの部分が引用によって成り立っている。後日譚としてこの1989年を振り返った評論家・ジャーナリストの著述であり、過去の歴史書等からの引用である。願わくば、もっと著者の意向を示してもらいたかったが、1989年に起こったことというのはまぎれもない歴史的事実であり、すべてがリアルタイムで見聞きしてきたことである。主観的要素が入り込む余地がない。
したがって、当然のことながら新聞に書かれたこと、ニュースで映像を見たことと同じことが書かれている。
その中で、「昭和天皇のトラウマ」の部分が面白い。1989年に社会主義国が順々に崩壊して行く様を昭和天皇は残念ながら見ることなく亡くなった。昭和天皇は天皇制を廃止することをテーゼとしている共産党に対してはトラウマに近い恐怖感を持っていたのだ。
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